オタク文化とヒップホップの融合ーーネット・カルチャー発のラッパー・野崎りこんって一体なにもの?

電波少女、OMSBへの客演、ぼくのりりっくのぼうよみとの共作など、ネットを中心に活動してきた野崎りこんが、術ノ穴よりデビュー作をリリース。その名も『野崎爆発』!! 兵庫県神戸市出身、キングギドラを聴いたことでヒップホップにハマり、自分の好きなゲームなどの音楽要素を組み合わせてラップをスタートさせた野崎。ニコ動など動画サイトで曲を発表する中で電波少女のハシシから声をかけられ電波少女のメンバーとなった時期や、SIMI LABのOMSBと共演するなど、その楽曲が耳の早いクリエイターに評価されてきた。OTOTOYでは豪華特典音源付きで同作を配信、初インタヴューを掲載する。

待望のデビュー作を特典トラック付きで配信

野崎りこん / 野崎爆発
【配信形態】
WAV / ALAC / FLAC / AAC

【価格】
単曲 257円(税込) アルバム 1,543円(税込)

【収録曲】
1. Tokyo Human
2. Go Stupid
3. rainy rainy
4. Ama Yadori
5. PCクリニカ feat. _本りな
6. 某桜の木の下で feat. ブルスコファー薺
7. no?
8. ネオサイト神樂
9. XYZ feat. USOWA & れをる
10. Ima
11. 青の9号 feat. Scum & 泉まくら

※アルバムまとめ購入で、下記が特典としてつきます。
・デジタルブックレット
・「Go Stupid」「ネオサイト神樂」のアカペラ、インスト音源

INTERVIEW : 野崎りこん

野崎りこんは器用でつかみどころのない男だ。取材に向けてアルバム『野崎爆発』を聴いてみるも、流暢にラップされるフロウの意味が理解できなかった。何度も何度も聴いてみるけどやっぱりわからない。しかしながら、そのトラックとそこに収まりよく乗るラップが非常に心地いいので、またリピートしてしまう。わかりやすさが求められる現代社会において、あいまいさや解釈の幅の広さを持ちつつ、何度も聴きたくなる中毒性を持っている本作品はかなり秀逸な作品といえよう。インタヴューをしてもやはり彼自身のことを掴みきれなかったというのが本音だが、その会話をみなさんにもお届けする。

インタヴュー&文 : 西澤裕郎

オタク文化とヒップホップという遠いカルチャーを混ぜられないのかなって

ーー野崎さんはネットを中心に楽曲を発表してきていますけど、個人的な情報はほとんど出しておらず、謎が多いですよね。なので、気になったことから訊いていきたいんですけど、タイトルの『野崎爆発』はゲームから引用しているんですよね?

野崎りこん(以下、野崎) : はい。「鈴木爆発」っていう日常に潜む爆弾を解除するゲームからです。

ーーいつ頃、ハマっていたんですか?

野崎 : やったことないんですよ(笑)。

ーーえっ!? より謎が深まってしまったので… 順を追って伺っていこうと思います。ラップへの目覚めは、DA PUMPを聴いたことがきっかけだそうですね。

野崎 : 11~12歳くらいの頃、車でDA PUMPの「if…」が流れているのを聴いて、ラップのかっこよさと、ラップという歌唱法を初めて知ったんです。母親の弟が車で聴く用のテープを作ってくれて、そのプレイリストの中に浜崎あゆみや宇多田ヒカルも入っていたので、そこからいろいろなアーティストを知っていきました。

ーー中学生になってから本格的にヒップホップにはまっていったそうで。

野崎 : その時期、日本語ラップがチャートに入り出して。KICK THE CAN CREWとかRIP SLYME、Dragon Ashなんかが流行っていました。なかでも、RIP SLYMEの「one」やSteady&Co.の楽曲を聴いていいなと思って。さらに、KGDRが2002年に活動を再開して、なんじゃこりゃ!! って衝撃を受けました。

ーーそこから高校〜大学進学でハマったものはありますか?

野崎 : 家にケーブルテレビを導入したので、スペシャやMTVといった音楽番組を観るようになって余計に音楽にハマっていきました。それこそ宇多田ヒカルのアルバム『DEEP RIVER』が好きで聴いていました。あとはGARNET CROWも好きでした。最初はゲームの主題歌が好きで、その曲が入っているアルバムを借りてからハマっていきました。

ーー音楽を掘るとともに、ゲームも好きだった?

野崎 : ひたすらドラクエをやっていました。オタク気質なので、好きなものにはとことん注力するけど、興味がないものに対しては全く興味がないタイプでした。

ーーゲーム・ミュージックにはあまりハマらなかったんですか?

野崎 : もちろん好きな音楽もありました。「ドンキーコング」の音楽が好きで、自分の好きなラップとゲーム音楽を混ぜられないのかなってことを考えるようになったのもその頃からです。ゲームの音楽をサンプリングして、それにラップを乗せている人はいないのかな? って。その時はインターネット環境が手元になかったので、そういう情報も掘れずにずっとモヤモヤしていました。オタク文化とヒップホップという遠いカルチャーを混ぜられないのかなってことは常に思っていました。

ーーネットを手に入れるまではみつからなかった?

野崎 : 近いものはあったんですけど、ど真ん中のものはなくて。2009年に大学に入った記念にパソコンを買ってもらったんですけど、そこからネットサーフィンをするようになって、ニコニコ動画にたどり着きました。そこでアマチュアでラップをしている人がたくさんることを知って。ゲーム音楽をサンプリングしたトラックの上でラップしているオタクの人もたくさんいて「おっ、みつけたー!!」って(笑)。だったら、僕もやってみようと思ったのが活動を始めたきっかけでした。

交わったことによって同じ部分と違う部分が明確になった

ーー野崎りこんは、パソコンを手に入れたことで始まったわけですね。当時のネットは無法地帯というか、思いついたことがそのまま実践できる場所でもありました。ニコ動でそういうカルチャーを見たときは興奮したんじゃないですか?

野崎 : かゆいところに手が届いた感じがしました。それと同時に自分でもできそうだって(笑)。トラックもあがっていたので、それに乗せれば曲ができるっていう方法がわかったので、マイクを買ったり設備を整えて自分でもやるようになりました。

ーーラップっていきなりできるものなんですか?

野崎 : それが、できちゃったんですよね。

ーーあはははは。

野崎 : 今思えば下手くそですけど、それまでずっとラップを聴いて口ずさんではいたし、フロウみたいなことは理解していたので。ただ、小節数とかそういうことはまったくわかっていなかったので手探りでしたね。そのとき使っていたトラックがアニメ・サンプリングだったので、アニメの世界観を自分なりに昇華して作っていきました。その手法は当時から変わっていないですね。

ーー作った曲をネットにアップして、なにか反響はありましたか?

野崎 : めっちゃ叩かれました。

ーー(笑)。

野崎 : といっても、マイリストにいれてくれている人が3人くらいで、再生数は100~300くらいでした。コメントは否定的なものと褒めてくれるものと半々でしたね。そのコメントを見てやる気になって、どんどん作っていきました。

ーーその頃から”野崎りこん”って名前で活動していたんですか?

野崎 : いや、そのときの名前は「前頭葉」でした。

ーーなんで「前頭葉」(笑)?

野崎 : わからないです(笑)。名前をつけるの適当すぎて。その頃は暇だったので、3日に1回くらい曲をアップしていたんですけど、3曲目くらいでアイデアが尽きちゃって。そこからちゃんと練って作るようになりました。

ーー野崎さんは電波少女の初期メンバーでもありますよね。彼らの出身は九州出身ですけど、野崎さんは神戸ですよね。どこで接点ができたんですか?

野崎 : 曲をアップしていたとき、MCのハシシさんが「一緒に曲を作りませんか?」ってmixiで連絡してきてくれたことがきっかけです。最初の3曲をあげて、次どうしようかなと考えていたときに声をかけてくれたんです。

ーーまずは作ってみる、というところからの転機はいつだったんでしょう?

野崎 : それこそ電波少女のメンバーだったころに作った『廃盤』っていうアルバムの反響がすごくあって、一気にリスナーの数が増えたんです。その流れで、2012~2013年くらいにOMSB(以下、オムスくん)が僕の曲を聴いてTwitterでつぶやいてくれたんですよ。しかもコンタクトもとってきてくれて、オムスくんの2ndアルバムにフィーチャリングにも呼んでもらって。ニコラップっていう狭いシーンからヒップホップシーンにちょっと出れたきっかけは、オムスくんかなと思っています。

ーーネット上でのラップと、ヒップホップ・シーンではまた違う文化があると思うんですけど、昔からヒップホップを聴いてきた野崎さんとしてはどのようなことを感じましたか。

野崎 : ヒップホップの人たちと自分では住んでいる場所が違うってことは感じていたし、それまでも自分なりの表現をしているつもりだったんですけど、交わったことによって同じ部分と違う部分が明確になりました。そして、改めて自分の立ち位置がくっきりしたなと。変わったラップをしているという自覚はあります。


ない / 野崎りこん × Jinmenusagi

ーー変わったラップっていうのは?

野崎 : やっているトピックスや歌詞の内容も、ヒップホップシーンの中でみると変なんだろうなって。自分なりにヒップホップが好きなので、ヒップホップとしてやっているつもりなんですけど、ど真ん中にはならない感じというか。

ーーヒップホップって人それぞれに定義があると思うんですけど、野崎さんのヒップホップのコアには何があると思いますか?

野崎 : 自分の等身大を出すことですかね? こういうのが好きという表現だったり、自分のスタンスを伝えるというか。

神戸に住んでいなかったら、こういう感じにはなってないかもしれない

ーー今回トラックメーカーいろんな方が参加されていますけど、どういう繫がりでみなさん参加されたんですか?

野崎 : その人のトラックが好きで声をかけた人もいますし、RhymeTubeやwill o wispはニコラップで仲良くなった人です。Pigeondustは電波少女に元々いた人で、その繫がりですね。Silvervineもニコニコ系。TPSOUNDさんは、術ノ穴の繫がりで、他の方は単純に僕がファンでトラックがいいなと思って声をかけました。

ーートラックに関して、野崎さんから何かしらリクエストはしているんですか?

野崎 : 「こういうトラックにしてください」ってことはリクエストしていますね。RhymeTubeが絡んでいる曲に関しては、自分の意見をほとんど言いました。

ーーさっき言っていたゲーム・ミュージックの匂いは、そこまで感じないサウンドですけど、やっぱりその延長線にはあるんでしょうか?

野崎 : 延長線にはあると思います。例えば、「某桜の木の下で feat.ブルスコファー薺」は「ときめきメモリアル」のエンディングに流れていそうなキラキラめのトラックにしてください、ってお願いしました。

ーーちなみに「ときメモ」では誰が好きでした?

野崎 : 「ときメモ」もやったことはないんですよ。

ーーえっ、これもやったことないんですね(笑)?!

野崎 : イメージだけなんですよ。僕自身、めっちゃ偏っているんですよね。RPGしかやっていなくて。今回は「ときメモ」の世界観がいいなと思って作りました。

ーーアルバムの中で、「Ima」は1曲だけ色合いが違いますよね。くるりだったりサカナクションだったり、そういうメロディだったりサウンドを感じました。

野崎 : この曲が1番最後にできたんですけど、9曲目「XYZ feat. USOWA(SIMI LAB),れをる from REOL」と11曲目「青の9号 feat.Scum, 泉まくら」の繋ぎになる曲はどんなものだろうって考えたら、こういう系かなと。転換点のつもりで作った曲です。ちょっと邦楽ロックっぽい感じで歌モノにしたかったんです。


野崎りこん feat. USOWA(SIMI LAB),れをる from REOL「XYZ」リリックビデオ

ーー野崎さんは、すごく器用ですよね。

野崎 : 器用に見せているだけです(笑)。

ーーちなみに、電波少女からはなんで離れたんですか?

野崎 : 性格的に自分の曲は自分で仕切りたかったんです。クルーとなると、いろんな人が意見を出し合って作るじゃないですか? 人と作るのはいいんですけど、クルーとなると協調性がないと迷惑も掛かるし、方向性も違ったのでソロでやったほうがいいんだろうと思って。『廃盤』を出したタイミングで抜けました。

ーー「XYZ feat. USOWA(SIMI LAB),れをる from REOL」のリリックに〈元電波 おれが抜けらすぐ売れたね〉ってことも書かれていたので、どういうふうに思っているのかなと思って。

野崎 : 実際会うと優しいですし、仲はいいです(笑)。

ーー今回のリリースを期にもっと現場に出て行こうという気持ちはあるんですか?

野崎 : あまりそこは意識できていなくて。自分のやりたいことが広がっていけばいいなとは思っています。より自分らしさが出していけばいいなって。

ーー楽曲もそうですけど、こうやって話していても方言はでないですし、地元の神戸感はあまりないですね。

野崎 : 正直、住み辛かったんですよ。ヤンキーが多くて、気が強い人が多かったから。東京って人がフラットで、無関心で、僕にとっては住みやすいです。人が多いのが難点ですけど。

ーー神戸をレペゼンすることはない?

野崎 : まったくないことはないんですけどね。神戸に住んでいなかったら、こういう感じにはなってないかもしれないなとは思います。

アルバムを通して一つの世界観を表現したいという欲求が生まれた

ーーこの作品が初の全国流通作ということで、また1つ転機になりそうですね。

野崎 : 今回のアルバムを作ったことで、自分の中で課題が生まれたなと思っていて。今までコンセプトEPをフリーで2枚出してきたんですけど、今回は売り物、しかもフル・アルバムってことで、名刺代わりになるような作品にしたくて。全体のコンセプトを一貫させるというより、いろんな曲を入れたアルバムにしようと思って作ったんです。でも、やっぱりコンセプトアルバムを作りたいなと思いました。アルバムを通して一つの世界観を表現したいという欲求が生まれました。

ーーちなみに、前作2作はどういうコンセプトだったんですか?

野崎 : 1番最初に出した『Love Sweet Dream EP』は「LSD」っていう夢の中を彷徨うゲームがあるんですけど、そのゲームのようなカオスな世界観を出そうとして作りました。

ーーそれも、ゲームの世界観を想像で膨らませて?

野崎 : そのゲームはやったことがあるんです(笑)。

ーーあるんだ(笑)。

野崎 : 2作目の『コンプレックスEP』は青春映画とか淡いパステル感を出したくて作りました。自分が学生時代、スクールカーストが高くなかったので、そういうコンプレックスを元に青春を描いているので、あんまりキラキラはしていないです。

ーーその2作があったうえで、『野崎爆発』は名刺がわりの作品集になったと。

野崎 : 今までの総ざらいです。これが俺です、みたいなアルバムになっています。

ーー気が早いですけど、次作の構想はもう練っているんでしょうか?

野崎 : 構想もあるし作り始めています。術ノ穴のスタッフさんにトラックを聴かせたら「暗いよ!!」って言われました(笑)。でも、わがままを通そうかなと思っています。

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PROFILE

野崎りこん

兵庫県神戸市出身。小学生の頃に叔父が作ってくれたドライブ用のカセットがきっかけで音楽に興味を持ち、2002年にキングギドラを聴いたことでヒップホップにハマる。2009年3月に、自分の好きな音楽の要素を組み合わせて、より自分好みのヒップホップを作りたいと思いラップを始める。動画サイトなどで曲を発表する中で電波少女のハシシ、SIMI LABのOMSBなどと知り合う。2017年6月7日に1stアルバム「野崎爆発」を術ノ穴よりリリース。

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筆者について
西澤 裕郎 (西澤 裕郎)

1982 年生まれ。ファンジン『StoryWriter』編集長。http://storywriter-magazine.com/

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