誰も知らない回路を作る――橋渡し、初音源をOTOTOY限定で先行配信

その特徴的なユニット名が象徴するように、さまざまなミュージシャンのもつグルーヴを接触させ、誰も知らないような音楽的回路を作り出す。橋本潤(ベース)と渡辺隆雄(トランペット)の2人からなる"橋渡し"の中心にあるのは、そんな哲学だ。ロックやジャズを基調としながらも、あらゆるミュージシャンを招き、常に新たなサウンドに挑んできた彼らが、ついに初の音源『Double Ax』をリリースする。OTOTOYでは、この記念すべきファースト・アルバムを、CD発売に先駆けて配信開始した。数えきれないセッションを経て、ようやく音源として結晶した彼らの挑戦。メンバー2人へのインタヴューとともにお楽しみください。

橋渡し / Double Ax

【配信形態 / 価格】
WAV まとめ購入 : 2,000円 (単曲は各250円)
mp3 まとめ購入 : 2,000円 (単曲は各250円)

【Track List】
01. Ska Junkey
02. Lucky Island
03. Ayatsuri Ningyou
04. Imitazione
05. Shimanagashi
06. Sasabune
07. Q
08. Double Ax
09. Ciboney
10. Jumping high

INTERVIEW : 橋渡し

橋本潤と渡辺隆雄、それぞれの名字の頭をとってつなげて「橋渡し」。はじめは、シンプルに「橋本渡辺」という名義でやろうとしていたそうだが、ちょっとした文字遊びで「橋渡し」という名前になったそうである。横道坊主のベーシストとして活動している橋本と、清志郎バンドやOrquesta Libreのトランペッターとしても活躍する渡辺が、ベースとトランペットという編成(!?)でコンビを組むということ自体、なかなか興味深いことであるが、そこに毎回ゲストを呼び、セッションしながら曲を披露していくということは、かなりエキサイティングなことである。これまで、片山広明、梅津和時、内藤幸也など、名うてのプレイヤーを迎えてライヴを行なってきたが、このたび初の音源化、リリースが決まった。2人の作った曲が、ゲストのプレイによって色を変えてひとつの形になっていくというのは、まさに曲とゲストの橋渡し。あくまでライヴというものが主戦場ではあるが、生きた音楽を鳴らす2人とゲストたちの生々しいサウンドがパッケージされている。2人へのインタヴューとともに、ゆっくりと、そしてじっくりとご堪能いただきたい。

(左から) 渡辺隆雄、橋本潤

インタヴュー&文 : 西澤裕郎

「あんたはそう言うかもしれないけど、俺はこう思ったよ!」ってプレイをしてほしい

――そもそも、お2人の付き合いは長いんですか?

渡辺隆雄 (以下、渡辺) : 2000年に山田晃士のバンドで一緒に音を出したのがきっかけですね。その後、潤さんは横道坊主でロック・ベースを弾いていて、僕はどっちかっていうとジャズ寄りの音楽をすることが多くなって。そんななか、畑が違う2人が中心になって、毎回違うゲストを入れてライヴをやろうということで始めたのが橋渡しです。
橋本潤 (以下、橋本) : 最初のうちは、毎回ゲストに合わせた曲を書いて、ライヴで暴れてもらおうというテーマだったんです。ただ、それだと音として残らないので、今回音源にしようということになって。

――ちなみに、どういうゲストを呼ばれていたんですか?

橋本 : 初回から2人の共通の知り合いのグレースっていう女性にほとんどレギュラーのようにドラムを叩いてもらっていました。あとは、片山(広明)さんだったり、梅津(和時)さんだったり、ロック・フィールドだと内藤幸也くんだったり高木克だったりとか、それまでの知り合いから繋げていきました。

――そもそも、ベースとトランペットっていう2人だけという形態自体、あまり聞いたことがなかったです。

橋本 : コード楽器がいないかわりに、足りないところを毎回好きな人にやってもらえたら、楽しいんじゃないかと思って。だから、最初はゲストのほうが多かったくらいで、本当にフルセットみたいにゲストを呼んでいました(笑)。
渡辺 : 当初、ライヴは年3回ペースだったんですけど、そのゲストに合わせて2人でミーティングして曲を作るっていうのもコンセプトのひとつだったんですよ。ゲストに自分らしさを出しきって活躍してもらうために、こんな曲作ってみようかっていうような。だから曲作りとライヴがひとつになってるんです。

――最初に2人とも畑が違うって仰ってたじゃないですか? 渡辺さんはもともとはクラシック音楽から入られたんですよね。

渡辺 : そうですね。聴くことに関してはクラシックから入って、その後ジャズに行って。ジャズ以降は、一気にロック、ソウル、ワールド・ミュージックに広がっていった感じですかね。

渡辺隆雄

――なにがきっかけでロックを聴くようになったんですか?

渡辺 : 僕の場合はマイルス(・デイヴィス)ですかね。ジャズ・フィールドの人ってあんまりロックのことを好意的には見てないじゃないですか? だから、ジャズとロックを対等に見ているって意味で、マイルスがひとつのきっかけになっていますね。

――ジャズもロックも通られている渡辺さんとしては、ご自身をどういう立ち位置で活動しているプレイヤーだと思いますか。

渡辺 : これまでいろんなバンドもやってきているので、パーカッションをやっていた時期や、鍵盤を弾いてた時期もあるんです。いまはぐるっと1周回ってきたっていうか。トランペットでなにが表現できるかってことを考えていて。僕は饒舌なプレイヤーじゃないので、メロディーの部分でどういうことを人に伝えられるのかなっていうことを大事にしていますし、もっと追究したいと考えています。その部分で言ったら、ジャンルは関係ないと思っていて。ブラジル音楽もここ10年ぐらいやってるんですけど、いろんな音楽の中にいいメロディーとかグルーヴがあるので、それを自分のラッパで伝えられたらいいかなと。

――たしかに1曲目の「Ska Junkey」とか、メロディーが際立ってますもんね。

渡辺 : あれ、実はもとはベースラインだったんです(笑)。

――そうなんですか(笑)?

渡辺 : 潤さんが考えてきたんですよ。

――そうなんですね!

渡辺 : 潤さんはベースラインを最初に考えてくることが多いんですけど、そのベースラインを聴くと、「ああ、いいメロディーだな」と思うんですよ。だから、それがをそのままAメロにしたり、サビのメロディーにしたりして、再びベースラインを他に考えてもらうっていうのが多いんですよね。

――まさかそんな経緯があったとは!! ちなみに、潤さんはどういう音楽から入られたんですか?

橋本 : 基本的にビートルズ、ローリング・ストーンズが好きでした。でも、さっきのナベさんのマイルスじゃないけど、ストーンズを追っかけてみるといろんな方向に向いていて。ブルースから、ブラジル、アフリカ、ジャズにも行こうとしてる感じがすごくおもしろいなと。我々がロックのど真ん中にいると思ってた人たちが、実はいろんなとこに目を向けてるんだなっていうのは、影響を受けたと思います。

橋本潤

――先ほど、ゲストに暴れてほしいって仰ってたじゃないですか? どうしても横道坊主のことが思い浮かんでしまうんですけど、暴れるっていっても違う意味ですよね(笑)?

橋本 : (笑)。自分らしくあってほしいっていうか、「あんたはそう言うかもしれないけど、俺はこう思ったよ!」ってプレイをしてくれたら、すごくおもしろいんじゃないかなって。自分で意味を出してほしいっていうか、暴れてほしいんですよね。
渡辺 : こっちでメンバー揃えて曲を持ってって、じゃあこの曲をこういうふうにやってくださいってやり方じゃなくて、曲は持ってったうえで、「はい。じゃあ好きにやってください」ってことですよね。

自分さえ出せれば、同じことを考えていても違うものになる

――ゲストの方が入ってくると、2人が後ろに引かざるを得ない部分もあると思うんですけど、そういう部分でどういうプレイをされるんでしょう。

橋本 : むしろ僕なんかはベースなんで、真ん中にいくことに慣れてないんですよ。誰かが行こうとしたら「どうぞどうぞ!」っていうスタンスなんですよね(笑)。

――むしろ、ゲストの方が入ることで想像を越えるようなことが起こると。

橋本 : もちろん。そちらのほうが大きいですね。
渡辺 : それがバンドの一番の醍醐味ですよね。

――実際にそういう変化ってレコーディングの際に感じましたか。

渡辺 : それはもちろん。今回のアルバムでも、ゲストが4人いるんですけど、4人とも予測をはるかに上回るプレイをしてくれて。コントロール・ルームで聞いていて、あとからゲストの音が重なって音楽自体がこんなに変わるんだっていうのにはビックリしました。
橋本 : その4人っていうのが、ギタリスト3人とピアニストなんですけど、自分の居場所をわかっているというか。一番いい場所にすぽんっ入っていくんですよね。それがおもしろいなって。
渡辺 : そうそう。最後の曲は全員でやっているんですけど、なにも言わずに譜面を渡して、「ここに全員の音が入るので、あんまり音は埋めないでください」ってことだけお願いして。特に指示しないでやったんですけど、いま潤さんが言ったみたいに、数少ない隙間をうまく一人一人が見つけて自分らしさを出していくんですよ。そのガラリと変わる様子が、絵を書いているみたいでした。水彩画だったら、もともとあった色に赤をたらすと滲んでがらっと色が変わったりするじゃないですか。そういう感じが聴いてておもしろかったですね。
橋本 : ちゃんと顔を出している感じですよね。「あれ、どこにいるんだろう?」じゃなくて、いるべきところにいる。
渡辺 : あと今回のアルバムには入ってないんですけど、長見順さんってギター&ヴォーカルの方が、橋渡しの曲に詩をつけてくれて。そういうことをしてもらうとガラっと変わりますよね。「この曲がそんなふうになってしまうの?」って。それがバンドをやっている一番の醍醐味ですよね。ひとつの素材にいろんな命が注ぎ込まれていくっていう。

(左から) 今井秀明、橋本潤、渡辺隆雄、グレース

――とはいえ、名うてのプレイヤーたちの集まりなので、そのなかで個性を出すっていうのは難しいんじゃないかなと思ったのですが。

橋本 : 結局、自分さえ出せれば、同じことを考えていても自ずと違うものになるじゃないですか。橋渡しに参加してもらっているのは、それができる人たちなので、そういう意味では楽でしたよね。
渡辺 : ギターが3人いるからおもしろかったですよね。2人目でボトルネック(※スライド奏法に使う特殊な道具。酒瓶の首の部分を切り取って作られたことからこう呼ばれる)を使っちゃったから。
橋本 : 実は3人目がスライド奏法が得意な人だったんですよ(笑)。それはそれで違う居場所を探していくことになって、すごくおもしろかった。あえて不自由ななかでやってもらったわけだけど、それがよかったですね。

音楽だからできること、音楽にしかできないことがあると信じている

――こんなことを聞くのも畏れ多いんですけど、お2人が音楽を続けてこられたのってなんでだと思いますか。30歳前後で解散してしまうバンドも少なくないので。

橋本 : 現実的なことを言えば、親が元気だったりってことはありますよね。僕の知り合いの有名なミュージシャンでも、親の介護でやめざるをえなかったりとかするし。そういう意味では周りの人に感謝ですよね。やらせてもらえているっていう。

――なるほど。

橋本 : もちろん、「また新しいもの見つけちゃったよ、どうしよう」っていう興味もあるし、周りの環境に感謝しつつも、興味を失っていないっていうのは大きい。新しいものが出たら聴いてみたいし、知らないこと言われたらすごく悔しい。っていうのが自分のなかでなくなったら、もうダメかなとは思いますけどね。持っているものだけを家で聴くようになっちゃったら、新しいものを作る資格はないんじゃないかなと思います。ただ、それを踏まえたうえで、それを可能にする環境を作ってくれている周りの人に感謝ですね。

ライヴの様子

――環境もそうですけど、音楽に対する好奇心も覚めないと。

橋本 : そうですね。知らないことを言われたら、なんじゃそりゃって聴いてみたくなるし。っていうのがあるうちは、まだまだできると思っています。正直、もうダメかなとか、もういいかなって思ったこともありますけど、でも、「いやいやいや、まだこれ知らないのは悔しい」とか「せめてこれ聴いておかないと」とかっていうのがあって。それがあるうちは、おもしろがれるから。

――渡辺さんはいかがですか。

渡辺 : 大部分は似ているんですけど、最終的には気持ちが続くかどうかだと思うんですね。タイムリーな話題でいくと、サッカーの本田(圭佑)ってガンバ大阪のジュニア・ユースにいたんですけど、当時のコーチとかにしたら全然印象に残っていなくて。それでも小学校の卒業の作文に「ぼくは将来プロのサッカー選手になって、セリエAにいく」って書いていて、実現させてしまった。目立つ選手じゃなかったのに、強い想いを持ち続けてプロになることも、ヨーロッパに渡ることも、セリエAに入ることも全部実現していった。それは自分の気持ちが折れなかったからだと思うんですね。

――はい。

渡辺 : それと僕の場合、両親も健在だから、そういう意味では好きなことやらせてもらえる恵まれた環境だったんだけど、経済的なことを考えたりすると、とても順調に続けてきたわけじゃなくて。どうしようと思っているときでも、とりあえず練習に行ってみるとか、曲を作ってみるとか、次の一歩を踏み出せる自分が常にいたんですよ。音楽が好きだからっていったらそれまでなんだけど、その気持ちが俺はたまたま折れなかった。本田のことでいうと、俺より上手いトランペッターって世の中にたくさんいるんですよ。子どものころから吹いているんですけど、俺より上手いトランペット吹きっていっぱいいたんですよ。だけど、その人たちが続けているかっていうと、そういうわけじゃない。才能あっても辞めていく人はたくさんいるし、辞めないっていうのは、たまたま気持ちが折れなかったってだけなんじゃないですかね。
橋本 : 続け方にもよると思いますけどね。本当に毎日スタジオに入ってっていう生活ではないですから。ふっと俺はこれでいいのかなって思うこともありますけど、やり始めるとそっちのモードに切り替えられるからまだまだやれるかなって。

――いまっていろんな娯楽があるじゃないですか。そのなかで音楽の聴かれ方も変わっていると思うんですけど、そうした状況で、音楽は社会を変えられると思いますか?

渡辺 : それは震災以降ずっと考えていることなんですけど、生活のなかに生きた音楽がどんどんなくなってきているじゃないですか。具体的に言うと、家にステレオがない家庭ってすごく多い。俺たちが子どもの頃って、たいていラジオとかLPとかCDが聴ける環境があったじゃないですか。でもいまってほとんどケータイでしか聴いてないから、そういう意味では、これから社会のなかで音楽がどういう立場になっていくんだろうって考えることは多いですね。

――たしかにそうですね。

渡辺 : あと、震災以降東北に毎年行っているんですけど、音楽だからできること、音楽にしかできないことがあると信じているんですよ。人が生きる勇気をもらうとか、明日もがんばろうって明るい気持ちになれるとか、そういう部分で、経済では計れないんだけど、音楽って人間が生きていくうえで大きなエネルギーになれると思うんですね。ただ、届け方とか、その役割をどうやって果たしていけばいいんだろうっていうのは、ずっと考えていますね。
橋本 : 震災以降、僕は信じられなくなったときがあるんですよね。音楽じゃお腹いっぱいにならないし、食っていけないし。でも、被災した人から一晩中横道を歌ってましたとか聴くと、あ、そういう力のあり方ってあるんだなと思って。実際にお腹はふくれないけど、昔歌っていた歌とかでもすごい力になるんじゃないかって思うんですよね。確かに商売としてはつらいのかもしれないけど、ふとした瞬間に口ずさんでるってことがあれば、すごい力だと思うんですよね。
渡辺 : これからは、本当の豊さがなんなのかってことを考えないといけない時代だと思うんですよ。そこで言うと、音楽の果たせる役割ってあると思うんですよね。

――いろんな取材をするんですけど、こうやってずっと音楽を続けてらっしゃるみなさんの存在って本当に心強いです。ツアーが終わったあとも、橋渡し、ぜひ続けていってほしいです。

橋本 : 絶対に次を作りたいと思っているし、ツアーもほんの狭いエリアしか行けてないので、北だったり南だったり行ってみたいし、どんな人たちに会えるのかっていうのもあるので、楽しみにしていてください。

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>>特集ページはこちら

LIVE INFORMATION

『Double Ax』発売記念ライヴ!!
2014年2月7日(金) 下北沢 440
開場 / 開演 : 19:00 / 19:30
料金 : 前売 3,000円 / 当日 3,500円 (1ドリンク別)
出演 : 橋渡し(橋本潤、渡辺隆雄、グレース) with 今井秀明(Gt)、酒井泰三(Gt)、高木克(Gt)、吉森信(key)
メール予約 : live@galabox.jp
詳細 : http://www.club251.co.jp/440/ (下北沢 440)

PROFILE

橋渡し
ぶっとい低音で日本のロック・シーンを支えてきた橋本潤(ベース)と、ジャズ、ロック、ブラジル音楽のシーンで存在感を発揮してきた渡辺隆雄(トランペット)。この2人がタッグを組んだ"橋渡し"は、2008年のスタート以来、魂の女性ドラマー、グレースをはじめとする数々の強力なゲスト陣に支えられ、深く、熱く、濃厚な世界を展開する。

>>OFFICIAL HP (Facebook)
>>galabox disx (所属レーベル)

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筆者について
西澤 裕郎 (西澤 裕郎)

1982 年生まれ。ファンジン『StoryWriter』編集長。http://storywriter-magazine.com/

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