初期作品『Kung-Fu Master』と『people people』から選抜されたキュートでポップな楽曲たちが復活

EeL / Kung-Fu People Etcetera

2000年代が幕開けた頃、みんなのココロをワクワクさせたEeL初期作品『Kung-Fu Master』(絶賛廃盤中! )と『people people』(絶賛廃盤中! )。長きにわたってファンから再発を待たれていた2枚から選抜されたキュートでポップな楽曲たちに、新曲、リアレンジ楽曲を加えて1枚になって生まれ変わった初期EeL作品のベスト盤的アルバム『 Kung-Fu People Etcetera』が到着。素敵な休日の彩るためのポップ'n' ロック・ミュージック集。OTOTOY限定のボーナス・トラックも収録した全16曲で配信スタートです!

【OTOTOY限定特典】ボーナス・トラックとして新曲「I don't care where」を収録!


制限のある中で生み出されるクリエイティビティ

早いもので、21世紀に入って10年以上が経とうとしている。この10年でもっとも大きく変化したことといえば、インターネットの爆発的な普及であろう。それに伴うようにパソコン上で音楽を聴いたり、動画を観たりすることは当たり前になった。中古レコード屋を何軒もまわって目当ての音源を探して聴くことは、過去の習慣となってしまった。気になる音楽があればネットで"ググって"YouTubeで再生。新しくリリースされた音源も過去に発表された音源も、日本も海外も関係なしにネット上に音楽データがアーカイブされていく。どれだけ音楽を知っているかよりも、どうやって音楽にアクセスするかが必要なスキルとなりつつある。

よくよく考えてみると、お金を使わずにこれだけ多くの音楽に接することができるようになったのだから、90年代に起こった渋谷系のように幅広いジャンルを取り込んだ音楽が生まれてきてもおかしくはない。しかし、どうもそうした動きがあるようには思えない。情報がオープンになり、ダダ漏れ文化とも言える中で、かえって個人の興味は細分化してしまったようである。

関西在住の女性アーティストEeLの『Kung-Fu People Etcetera』は、2001年に発表された2枚のアルバム『Kung-Fu Master』と『people people』から選抜された楽曲に、新曲とリアレンジ楽曲を加えた初期作品のベスト版的アルバムである。今このアルバムを聴いてみると、いくつものジャンルを横断したテクノ・ポップをつくり出そうとしていることが伝わってくる。もともとゲーム会社に務めていたEeLの声に興味を持った同僚のサウンド・クリエーターSandou氏がプロデュースをし、ウィスパー・ヴォイスなどささやくようにEeLが歌を乗せていく。ボサノバ、フレンチ・ポップを取り入れたお洒落な楽曲、スカ、レゲエを取り入れた曲、カラフルなエレクトロニック・ポップまで、どれもキャッチーな曲が並んでいる。予備知識なしでも、EeLの歴史がこの1枚で流れるようにわかるようになっている。

2002年からはmilch of sourceがトラック・メイカーに参加。2004年に発売された4thアルバム『Little Prince』では、音楽的野心を感じさせる大きな変化を見せることとなる。激しいブレイク・コアを筆頭に、エレクトロニカ、ファンクなどを取り入れた職人気質とでもいえるサウンドが展開されていく。

EeLの歴史を辿ってみると、新しい要素を取り入れて音楽の幅が広がっている部分は多いにしろ、ずっと変わらない芯のようなものも感じることができる。それは、制限のある中で生み出されるクリエイティビティとでも言えばいいだろうか。限られたパズルを、他の人が考えないような方法で当てはめて曲を作る。そんな印象を受けるのである。EeLというピースがしっかり見えている分、聴き手を置いていってしまうことのないキャッチーさ、それでいて最先端を行くような曲を作ることが可能なのだ。彼女のヴォーカルに合った楽曲というピースが、とりとめもなく広がっていきかねないトラック制作に待ったをかけている。

今作の発売を記念したインタビューで、Sandou氏が「制作環境に制約がある方が良いこともある」と答えている。それが、この情報垂れ流し社会における次なる音楽を創造するためのヒントを含んでいると思う。思えば、2010年にworld's end girlfriendが発表した『SEVEN IDIOTS』も、自分で作った唄ものの楽曲からヴォーカル・パートを消して、トラックを再構築したものだった。同じように、『Kung-Fu People Etcetera』も、来る新作に向かうために再構築をはかり、次に向かうために必要な作品なのかもしれない。作品がWEB上にアーカイブされていく時代に、廃盤だった2作を再リリースしたことが、本人たちの自覚的な作業かどうかは抜きにしても、この情報社会の中でどのような新作が出来上がったのだろうか、楽しみになる1枚である。2011年1月には、同じくmilch of sourceがトラック・メイカーを担当し、新曲で構成されたニュー・アルバム『for common people』が発表される予定である。(text by 西澤 裕郎)

EeL特集は2011年も続きます!

2011年1月6日(木) 全6曲のフリー・ダウンロードSTART!
『Kung-Fu People Etcetera』からのアウト・トラックをフリー・ダウンロードでプレゼント。お届けするのはworld's end girlfriendのリミックスを含む全6曲。全てwav音源でお届けします。OTOTOYからのお年玉をお見逃しなく。

1月25日(火) 2ヶ月連続リリース第2弾『for common people』リリース!
完全なる新曲満載のアルバムについて、EeL本人へのインタビューも交えて迫ります。

PROFILE


EeL
エレクトリック・パンク・ミュージックをベースに、キュートかつ、ファンキーなポップ・ミュージックを作り出す関西在住女性アーティスト。1999年に初の音源をリリースし、フレンチ・ポップ、ボサの要素を取り入れた音楽を作り出す。2000年1月には、高速打ち込みビート+ウィスパー・ヴォイスのテクノ・ポップ・サウンドへと展開を広げ、アルバム『Kung-Fu Master』(2001年4月)、『EeL early works』(2001年9月)、『people people』(2001年12月)をリリース。2002年4月からトラック・メーカーにROMZ recordのmilch of sourceが参加し、2004年12月、オールド・スクールからブレイク・コア、ファンク、レゲエ、エレクトロニカなどあらゆるジャンルをエレクトリック&ポップに再構築した4thアルバム『Little Prince』をリリース。その他、国内外多数の作品へのコンピレーションに参加したり、ゲーム・ミュージック(pop’n music、beatmania)への参加。capsuleへのゲスト・ヴォーカルでの参加(シングル『プラスチックガール』、アルバム『CUTIE CINEMA REPLAY』)、エレクトロニカ・アーティスト、Hidenobu Itoとのコラボレート・アルバム発売など幅広く活動。

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レヴュー

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筆者について
西澤 裕郎 (西澤 裕郎)

1982 年生まれ。ファンジン『StoryWriter』編集長。http://storywriter-magazine.com/

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