コムアイとOTOTOYがお送りする連載企画「水曜日の淫談〜映画から学ぶエロスの神髄〜」。

はじめてこのコーナーを知った方のために説明すると、10月9日に2ndアルバム『羅生門』をリリースした水曜日のカンパネラのヴォーカリスト、コムアイが、OTOTOY編集部から与えられた映画からエロスを読み解いていくという連載です。なぜ、この連載がはじまったかはこちらの記事をお読みいただくとして、さっそくはじめていきましょう。

3回目となる今回の課題映画は、園子温監督による2011年作『恋の罪』。1997年に渋谷区で発生した東電OL殺人事件にインスパイアされたという本作品。女性刑事の吉田和子、大学教授と売春婦の2つの顔を持つ尾沢美津子、人気小説家を夫に持つ献身的な主婦菊池いずみ、という3人の女性が、円山町を舞台に繰り広げるドラマチックなサスペンスです。見えないなにか=城の周りを、ぐるぐる回った彼女たちが辿り着いた場所とは。『愛のむきだし』『ヒミズ』『冷たい熱帯魚』などの作品を発表し、日本の映画界で異彩を放つ園子温監督の作品から、コムアイが正面からエロスを読み解きます。

取材&文 : ねるねるね〜るね西澤
写真 : 雨宮透貴

本連載から生まれた、水曜日のカンパネラのエロス第三弾シングル

水曜日のカンパネラ / ミツコ(セーラー服ver.)

【価格】
wav / mp3 : 単曲 200円

水曜日のカンパネラのトラック・メーカーKenmochi Hidefumiによる『恋の罪』をテーマにしたトラックと、コムアイのエロスをモチーフにしたリリックが結実した、連載第3弾配信シングル。水カン至上最も難産となった1曲にして、現時点での最高傑作。不穏なイントロとくぐもったサウンドでスタートする本曲は、ぐるぐる城の周りを歩いているように、辿り着きそうでつかない雰囲気が醸し出された内容となっている。水曜日のカンパネラが、新境地を切り開き、次のフェーズへ踏み出すためのきっかけになるであろう作品。

CD版とはミックス違いの高音質版を先行配信スタート!!

水曜日のカンパネラ / 羅生門

【配信形態】
HQD(24bit/48kHz)

【配信価格】
単曲 200円 / まとめ購入 1,200円

【Track List】
1. モノポリー / 2. 素子 / 3. 星一徹 / 4. シャア / 5. マリー・アントワネット / 6. アリババ神帝 / 7. 不二子 / 8. 竹久夢二

>>コムアイ、Dir.Fへのインタビューはこちら

第三回の課題映画『恋の罪』(2011年)



『恋の罪』(こいのつみ、英題:Guilty of Romance)は、2011年の日本映画。監督は園子温、主演は水野美紀。1997年に渋谷区で発生した東電OL殺人事件が元ネタになっている。作品の内容や、それまで清純派のイメージが強かった水野美紀がヘアヌードになったことでも注目を集め、単館系の作品ながら興行収入一億円を突破するヒットとなった。第64回カンヌ国際映画祭・監督週間部門でワールドプレミア上映された。(Wikipediaより)

コムアイによる考察


「お前はきちっと堕ちてこい! 私のとこまで堕ちてこい!」

女のエロスと男のエロスは違うみたいだ。

この映画は、いずみが日記を書くシーンから展開する。

作家の妻として人形のように機械的に暮らしているいずみが、
「何かがしたい。何かが物足りない。夫への愛だけでは我慢できない何かがある」
と吐露するところから始まる。

「何かがしたい」のだが、「そんな自分がいやだ。どうしてなのかわからない」と、
輪郭のはっきりしない欲望を持て余している。

そうだった。

私が「なんとなく何かがしたい」と言うのは、その時だけの気分だったりするけれど、
日常にべったり張り付く切実な欲望である場合もあって、今後の状況が変化する予感だったりする。

いずみも、スーパーで働きだし、
ドールハウスから社会進出したことをきっかけに、自分に隠れていた衝動に素直に従いだす。
新しい自分を導くコーチのような存在もいて、だんだん別人格を見せて来る。

(純真な奥様が夜の蝶になりました~~! だったらありそうなんだけれど、『恋の罪』はそれじゃあ終わらない。
目眩がするような、血と体液とピンクの塗料が飛び散る展開が待っているからまだ観てない人はお楽しみに。)

この「なんとなく」「何かがしたい」という輪郭のない欲望が押し寄せた時、
それに向き合い、現実をすり合わせていくのが女性に多いパターンなのに対し、
男性は形が掴めるまで放置するような気がする。

この映画だけじゃなく、園監督の作品に登場する女性は物怖じしない。
目の前に差し伸べられた手にひょいと掴まり、とんでもない仕事も簡単に受けたりする。

「恋の罪」を観ていると、
彼女らの行動に対して「どうしてそんなことするのかなあ」と不思議に思わせるシーンが何度も出て来る。
でもそれは、個人としてはごくごく自然に理解できる。

完成途中のパズルの完成像が頭の中に常にあって、
目の前に残りのピースが差し出されたんだから、取るのが当たり前でしょうっていう、そういう感じ。
そういう感じで、AVに出たり、立ちんぼになったり、自殺したり、しちゃうんだから恐ろしい生き物だ。

女は自分でも気づかないくらい、「新しいことをして、別の何かになりたい」という欲望がとても強い生物である。

女のエロスも、もちろん、この欲と背中合わせだ。
母性で守らなきゃいけない暮らしがあるのに、興味は抑えられない。
それを覚悟して興味を解放していく瞬間の女性は美しい。エロスが滴る。

この映画は複数の女性キャラクターが理解せぬまま衝動を自分のものにしていく、
その瞬間の繰り返しである。

だから高いエロスエネルギー量の、鼻血が出そうな映画になっている。

ここへ来て、男のエロスが全然分からなくなってしまった。そういえば。
今まで、どんなことを感じていたんだっけなあ…。(コムアイ)

美津子がセックスに求めているものって、男女関係じゃない

ーー「なんとなく何かがしたい」という欲望が押し寄せたとき、それに向き合って現実をすり合わせていくのが女性だ、って考察に書いているじゃない? これって、どういうことなんだろう?

コムアイ : 自分の中でなにかが足りていない感覚って、ずっとあると思うんですよ。その感覚がふつふつとしたとき、男性の場合は一旦放っておく気がするんですけど、女性の場合はかなり大事にする気がして。その感覚が、絶対に自分の現実になるなってことを予知している。だから、そこにちょうど当てはまるものが降ってきたときに、すんなり順応しちゃうというか。映画のなかで、いずみがすんなりヌード撮影に応じてしまったり、身体を売るようになっていくのって、それだと思うんですよ。男の人が観ると、もっと考えろよと思うかもしれないけど、当たり前のようにそれが起こるってことが、女性にはわかる。

ーーそれは、女性一般だけでなく、コムアイ個人としてもわかる?

コムアイ : すごくわかる。男性が観ておもしろいのかなって思うくらい、本当に女性バンザイっていう映画だと思う。

ーーぼくがこの映画を観たきっかけも、知り合いの女性がまったく同じことを言っていたからで、本当はこれくらい自己を解放したいってことを熱弁されて。この映画のなかに女性のすべてがあるって言われた。

コムアイ : ほんとうにそう。いろんなキャラクターが出てくるし、それぞれ違うけど、みんな正しいというか、そうだろうなって気がしちゃう。あんまり感情の裏付けがされているわけじゃないけど、自分がその場に立ったらそうなっちゃうだろうなって。どのキャラクターも最後は殺されたり、1000円で身体を売ったり、すごいことになっているけど、その人の身に降ったことをその順番で経験したらそうなるだろうなって全部思った。

ーー主要な登場人物が3人いるけど、美津子というキャラクターに焦点をあてると、大学教授というエリートでありながら、夜には円山町で身体を売るっていう二面性を持っているよね。それも、コムアイからしたら遠い話ではない?

コムアイ : うん、納得できる。全然不自然じゃない。別に愛されたくてそうしているってわけじゃなく、なにかしらセックスが持っている役割があるんでしょうね。

ーーそれは開放感みたいなものなのかな。

コムアイ : う〜ん。美津子がセックスに求めているものって、男女関係じゃないじゃないですか。薬物みたいな感じがする。自分の世界のために、トリップした先の世界のためにやっている気がする。人生とセックスするというか。

ーーたしかに、相手不在のセックスだよね。

コムアイ : そう、相手不在ですよね。

ーー男女の関係を深めるのとは別の役割を、セックスが持っている。

コムアイ : そうですよね。映画の中で、「愛のないセックスをしたらお金を絶対にもらえ」ってセリフがあるじゃないですか。それは相手不在のセックスの裏付けになっている言葉だと思います。

ーーでもさ、なんでそういうセックスを求めるんだろうね。

コムアイ : なんでですかね。自殺した女の人が出てくるじゃないですか。刑事の前にいきなり出て来て自殺しちゃうシーン。あの人は、夫か彼氏のことを愛しているって言いながら浮気するじゃないですか。そこのセックスだけは、感情のやり取りをするためのような気がする。

ーー確かに、そこだけセックスの役割がわけて描かれている感じがするね。

コムアイ : それが橋渡しになっている気がするんですよね。3人じゃなくて、2人(美津子、いずみ)の話だけで終わったら、ものすごいグログロした話になるけど、和子の家族団らんシーンとか彼女の浮気とかは質感が違って。そこだけ夜9時台のドラマみたいな感じなんですよ。あと水野美紀っていう女優も、他の人に比べるとピンクっぽくないというか。そこで観ている人の日常に近づけて、さらにギャップをみせつける感じがします。

ちゃんとすがってもらえるキレイな女王様になりたい

ーーほとんどの女性って和子みたいな立ち位置が近いと思うのね。ただ、普通に考えれば不倫って、倫理観を揺さぶる行為なのに、あの映画のなかでは普通の行為になっちゃうんだよね。

コムアイ : たしかに。浮気で収まっていてよかったと思っちゃうもんね(笑)。

ーーいずみも美津子も、かなり振り切れた環境下にいて、その反動で反対にいったというのはわかりやすい説明なんだけど、大学生でありながら水曜日のカンパネラという2つの顔を持っているコムアイは、その2つに同じ関係性を感じたりする?

コムアイ : 全然感じない。どっちも表の顔だからな。

ーーじゃあ、その反動で出てきそうな顔ってコムアイの中にある?

コムアイ : ありますね。最近、ちゃんとした女王様になりたいと思いました。言い方は変かもしれないけど、ちゃんとすがってもらえるキレイな女王様になりたい。鞭をふるわれて褒められて幸せそうな表情をする男の人を見たんですよ。そんな顔するんだ… と心に残って。私も!! と思いました。楽しませてあげたいんです。SMバーにこっそり出入りするようになったら、それは多分裏の顔なんでしょうね。

ーーそういう気持ちはいつからあるの。

コムアイ : ずっとあります。言いづらいけど好きっていうものは多い方だと思います。もともと事件ものに興味があって、この映画のもとになった東電OLの事件も興味があります。人間ってどうしてそういうのに惹かれるのかな。

ーー見てはいけないものを見たい欲求みたいなものかもね。いずみに焦点を当てると、窮屈な生活のなかで、ここではない自分がいるかもしれないといううずうずを感じていて。セックスを通して自己が解放されていって、飛び越えてしまう。

コムアイ : セックスをし始めてからキラキラしてたもんね。でも、う~ん、どうなんだろう。わたしはあんまり関係ないと思うんですよね。

ーーセックスは、きっかけにすぎない?

コムアイ : そうかも。一回セックスしたからって数時間で変わるわけはないと思う。魔法じゃないんだから。でも、一線越えたような気分になるっていうのは大事かもしれないですね。そしたらなんでもかんでも越えちゃった気分になるのかも。

ーー今日屋上にのぼって撮影したけど、あれも生と死の一線上にいたよね。

コムアイ : そう。飛び越える線はこれか!! って思ったの。絶対に飛び越えないけど、はじめて飛び降りて来た人全員がみてきた光景を観れた気がする。

ーーそれってどういう感覚なんだろう。

コムアイ : ここからダイブしてスコーンと落ちて身体が壊れるまで何秒かあるわけじゃないですか。その瞬間のことを初めてイメージできたんですよね。ふっといきたくなる気もしなくないなって。

飛び出すことに義務感を持ち始める気がする

ーー普通は、そっちにいったら戻ってこれないことを感じているから、飛び越えないように自制してると思うんだけど、なかには飛び越えちゃう人もいるわけじゃん。そういう人はなんで飛び越えてしまうんだろう。

コムアイ : どうせここにいても仕方ないから、って思っているからじゃないですかね。ここから違うところに移ったほうがまだましっていう感じかも。なにがベストなのかはわからないけど、なんでもベターだと思うみたいな。そう思い始めると、どんどんいまいる状況が抜け出さなきゃいけないものにかわってくるというか。飛び出すことに義務感を持ち始める気がする。

ーーいずみは、どうしたら向こうに飛び越えなかったと思う?

コムアイ : ちょうどいい不倫とかができたらよかったんじゃない。

ーーそれこそ和子みたいな。

コムアイ : そうそう。あんだけ夫だけ愛せてるんだっていうほうがよっぽど気持ち悪いじゃないですか。その生活を一回受け入れた時点でかなり素質がある(笑)。どっちかというとそっちのほうが越えられない線だと思う。

ーーしつこいくらいスリッパをそろえるシーンとかでてくるもんね。

コムアイ : 夜9時になると玄関に立って待ってね。紅茶を3分きっかりで淹れるとかね。旦那も気持ち悪いもんね。爆笑でした。コメディで作ったんじゃないと思うんですよ。だからよけい笑えちゃう。

ーーああいう人、いないことはなさそうだもんね。

コムアイ : そうそう。だからぞわーとして笑っちゃうというか。

ーーいずみには不自由を強要しておいて、自分は外で自由奔放に遊び回っていることに対してはどう思う?

コムアイ : 彼にとって、お家は聖地なんじゃないですか。自分の中に両方あるわけじゃないですか。おいしい紅茶を飲んで、サボンドマルセイユで身体を洗うっていう美しい生活が。ぴったり7時に家を出て21時に家に帰ってくるって生活を毎日することに、聖地を守る意志を感じる。

ーーそれこそ城みたいだよね。

コムアイ : ほんと城ですよね。そのお城を大事にしているんですよね。自分のなかで大事な空間を作りたいから、現実にその空間を作って、女の子を一人飼ってっていう状況ですよね。まさにお人形ですよね、いずみちゃんは。

他人が苦しんでいるのを観るのが好きなんですよ

ーーこの映画の世界に出てくる人は、大なり小なり両面を持っていて、バランスが不安定なとき、セックスがスイッチになって越境してしまうのかなって感じがするよね。

コムアイ : うん。でも、線を越えるのって難しいですよね。あと、いつ越えたかってわからないじゃないですか。それをわかりやすくするためにセックスしているのかもしれないですね。

ーー強いていうなら、コムアイはこの映画のなかで誰が自分に一番近いと思う。

コムアイ : カオルかな。

ーーそうなの? 彼はいずみをデルヘルに斡旋したり、他人のことに首をつっこんで笑っていて、最後は殺されてしまう、俯瞰者的存在だけど。

コムアイ : 城の話をするおもしろい人がいるっておもしろがる気持ちも本当にわかるし、最後の修羅場で巻き込まれて殺人を手伝わされるわけじゃないですか。なんとなくそうなっちゃうのはわかっているけど、おもしろくて冷やかして、ずっと笑っているというか。「うわー、こんなの観られないよ」って笑っいてると思うな、わたしも。ちょっと滑稽じゃない。最後利用されて、その上殺されちゃう。

ーーなんでそこに近さを感じるんだろうね。

コムアイ : なんだろう。おもしろいものみたさみたいなところに勝てないんだろうな。他人が苦しんでいるのを観るのが好きなんですよ。

ーーまさか、そういう部分で近いという理由がでるとは思わなかった。

コムアイ : いずみが、ホテルで旦那をみつけたシーンで笑っちゃうところとか、すごくわかる。

ーー見たら笑っちゃう?

コムアイ : そう。ビッチの味はどう? みたいな。「これ、夫婦だよ」みたいな。ふふふ。

ーー僕だったら、ちーんってなって目を反らしちゃうかもしれない。

コムアイ : 絶対にならない。うん。うわーすげえことだなこれって。

苦しんでいるところを観るとぞわぞわってします

ーーあと、考察で男のエロスと女のエロスがわからなくなったって書いていたけど。

コムアイ : そう。女の人は、いまみたいな話が土台にあって、越境できるのかどうかとか、越境する瞬間のキラキラした感じがエロスを漂わせると思うんですよ。死を感じさせるような瞬間にエロスが立ち上ったりするじゃないですか。

ーーコムアイも屋上に上ったとき生き生きしていたもんね。

コムアイ : そう、生き生きするんですよね。男の人はそういうイメージがあんまりないかもしれない。普通に努力して頑張り続けているときのほうがかっこいいというかエロスを感じる気がする。

ーーそれが、この映画をみてわからなくなっちゃった?

コムアイ : わからなくなっちゃった。強烈すぎて。

ーー実は男からエロスを感じてなかったんじゃないの?

コムアイ : あるはずなんだけど。あっ、苦しんでいるときとか好きですね。苦しんでいるところを観るとぞわぞわってします。うううー嬉しいって思っちゃう。

ーー女の人は乗り越えていく瞬間にエロスを感じるのに、男の人はダメになっていく瞬間にエロスを感じるっていうのがおもしろいね。

コムアイ : そうですね。昇進してもエロスを感じないかもしれないもん。

ーーそれってあながち間違ってないかもしれないね。知り合いのAくんにセックスフレンドが出来たんだけど、相手の旦那さんがかなり地位のある人で子どもも生まれて不自由がないらしいのね。でもセックスだけが足りないっていって、休日は子どもを旦那さんに預けて、ホテルに来るんだって。

コムアイ : 旦那さんに、かわいげがないんじゃないですか。でもそういう旦那さんみたいな人たちは人たちで、どっかで叱られたいみないな欲望があるんじゃないですか。

ーーやっぱりバランスがとれないと、自分を保てないのかもね。

コムアイ : 子どものころってなんでもあったじゃないですか。沢山叱られて、いじめて、いじめられてって。成績では負けてスポーツでは勝ってみたいな。先生には授業中にうるさくて怒られるとか。なんでもありましたよね。

ーーそうだね。大人になったら、どこかに偏ってしまうからね。

コムアイ : 心と身体を守るために、そういうのを排除していくんでしょうけど。安全にしたらしたで、そういうのがないと不安定な心になってしまう生き物なのかもね、人間って。

ーーみんな、偏っていくものを正してくれるものを求めている気はするよね。

コムアイ : そうですよね。新しいものになりたい、それこそ、いずみみたいになりたいって感情はみんなあると思うんだけど、その感情も元はと言えば安定したいというか、完全にさせたいっていう気持ちからはじまると思うんですよね。

ーー上からかぶせものをして見ぬふりするんじゃなく、ほじくり出して向かい合わないと根本の解決にならないんだろうね。

コムアイ : でも、最終的にいずみは幸せだと思いました。殺された美津子は幸せじゃないかもしれない。殺されても城にはたどり着けないわけでしょ。でもいずみは鼻血だしているシーンでめちゃめちゃ笑顔で終わったから、しかもあのカットが長かったし。そして、子どもの前でおしっこしてるっていう(笑)。

ーー(笑)。もし、和子がいずみの方向に進んだら幸せになれると思う?

コムアイ : ううん。彼女は戻る気がする。

ーーそれは、和子の振れ幅が、いずみほど大きくないからかもね。

コムアイ : それが、園子温が唯一用意した、最後の救いなんじゃないですかね。ほぼ救いがないけど、これを観ているみなさんは水野美紀みたいに暮らしていて、たぶんそっち側にはいかないし、行っても幸せになれないと思いますよっていう(笑)。ポジティブなんだかネガティブなんだかって感じなんですけど。

ーーかなり倫理観を揺さぶる話ではあるよね。和子だって、戻ってきても不倫はしているわけだから。でも、それが人間の本来の姿ですよっていうことを言っているのかなと思った。人間ってこういうもんだぜって。肯定とか否定じゃなく、人間はバランスを取りながら振り子のように生きているってことを描いているんじゃないかな。

コムアイ : たしかに、これを観ていて共感させるっていうのはかなりの悪事ですからね(笑)。たぶん、でもそうだろって感じで描いているんだろうなって。

これ(ミツコ(セーラー服ver.))は越境しまくっている曲なんです

ーーそして今回は、楽曲もかなりこだわりましたね。

コムアイ : 思い入れが本当に強いです。本当に曲がよくて。デモが来たときにうわーと思って、すごく聴いていたから。映画を思い浮かべて、その効果で好きになるとかじゃなくて、それがなくても同じような世界観が広がるんですよ。

ーー曲として気に入るものだったから、さらによいものにしたかったと。実際、最初のデモからかなり変化をみせましたね。

コムアイ : これは、越境しまくっている曲なんですよ。何回越えるんだってくらい。何度も自分のところに戻ってくるんだけど、そのたびに伸びしろが長くなっている。

ーーコムアイからケンモチさんへは、どういうことをリクエストしたの?

コムアイ : そんな偉そうなこと言ってないですよ(笑)。

ーーいつもはケンモチさんの好きなようにやってほしいって言ってるじゃん。だから、コムアイの意思が出ているってのが興味深くて。

コムアイ : 女の気持ちをわかって!! みたいなのに近いのかもしれない。うーん、違うかな。ぱっと作ったデモが、そっけなくてノーテンキな明るさを持ちつつ、エロスも感じるような出来で。爽やかなほうがよっぽどエロスを感じるというか、勝手にどこかのぼっていっちゃうって感じがするんですよ。そういう曲です。だから、あんまり考えるとやりづらい曲なんじゃないかな。それが心配です。

ーーほんと、時間をかけて練り直しているよね。水曜日のカンパネラ・チームとしては、なかなかの難産曲だったよね。

コムアイ : 考えれば考えるほど、地に足が着いちゃうんですよ。すごく難しい。今まではケンモチさんがぐっと頑張ってくれたら作れたんですけど、この曲はぐっとしたらうまくいかない曲なんじゃないかな。だから苦戦したんじゃないかと思います。

ーーほんと城を廻っている感じですね。

コムアイ : そう。今回、はじめて曲中に怒鳴るんですよ。だから、これを歌うとほんと他の曲が歌えなくて。ライヴでも一番最後にやるしかないんじゃないかな。おっさんみたいな声になっちゃう(笑)。

ーーなにより、ここまで大きい越境をする曲はなかったから、この曲がどうなっていくか楽しみです。

コムアイ : 最近はぽこぽこ曲を作って次にいこうって感じだったけど、今回はそうはいかないなと思って。気合いが入っているんだけど、気合いが入っちゃうと方に力が入る曲になっちゃう。「マリー・アントワネット」とかはにらみつけるような曲だからいいんですけど、今回の曲はもっと抜けてほしいんですよね。宙を観る感じになっていくといいなと思います。

ねるねるね〜るね西澤の編集後記


エロスなんてなさそうな映画をコムアイに観せて、困った顔をみてきた本企画ですが、今回は真面目!! でもさ、男からエロスを感じられなかったなんて言ってちゃいけないよ、コムちゃん。僕は沢山感じたよ、エロス。強烈な人がいるじゃん。ねえ。わからない? 園子温監督ですよ!! この人がいなかったら、この映画自体生まれなかったわけ。すべてのエロスの塊は彼にあるんですよ。僕は監督の本も、自伝本も全部読んだからね。もう人生が壮絶。スケールが大きい!! 1990年代前半に横断幕を掲げて「ガガガ」と叫びながら渋谷や新宿の街を練り歩くパフォーマンス集団「東京ガガガ」を主宰していたり、家出して上京した新宿駅で出会った女性にホテルでいきなり植木バサミを出され「一緒に死にましょう」と言われたり、半端ないわけですよ。園子温監督こそ、エロスの塊なんですよ。それなのに、男のエロスを感じないなんて言ってしまうなんて、まだまだ修行が足りない!! なにより、ねるさんこと私にエロスを感じないなんてどうにかしてるぜ!! 今回コムアイがんばったけど、ねるねるね〜るね西澤にエロスを感じなかったから、マイナス40点!!


第4回の課題映画は「??????」

現在、Dir.Fとねるねるね〜るね西澤で誠意選定中です。

いましばらくお待ちくださいませ。

水曜日のカンパネラのライヴ情報

THIS IS PANIC presents『パニック:レボリューション vol.3』
2013年11月28日(木)@代官山・山羊に、聞く?

渋谷女子音楽会
2013年12月5日(木)@渋谷 O-nest

虹色J・POP「クリスマススペシャル」
2013年12月6日(金)@瓦RECORD

音泉温楽2013・冬 信州長野 渋温泉@金具屋
2013年12月7日(土)〜12月8日(日)@金具屋

MUSHIFEST 2013
2013年12月14日(土)@shibuya CYCLONE (闇STAGE) & GARRET udagawa (光STAGE)

Our Shining Idol~今君に会いたい~お正月SP
2014年1月7日(火)@新宿ロフト

エロスの連載を振り返っておこう

本連載から生まれた、水曜日のカンパネラのエロス第一弾シングル

水曜日のカンパネラ / モスラ(幼虫Ver.)

【価格】
wav / mp3 : 単曲 200円

水曜日のカンパネラのトラック・メイカー、Kenmochi Hidefumiによるモスラをテーマにしたトラックと、そこに乗っかるコムアイのエロスをモチーフにしたリリック。連載第一弾配信シングルにして、すでに最高傑作ともいえる湿気たっぷりのエロス・ソング!! 怪しくくぐもったサウンドにエモーショナルな鍵盤が絡まるロマンティックでエロティックな楽曲にときめきを感じてみては? 水曜日のカンパネラが羽化していくことを予感させる名曲!!

>>第一回『モスラ対ゴジラ』の考察ページはこちら

本連載から生まれた、水曜日のカンパネラのエロス第二弾シングル

水曜日のカンパネラ / ラオウ

【価格】
wav / mp3 : 単曲 200円

水曜日のカンパネラのトラック・メイカー、Kenmochi Hidefumiによる北斗の拳をテーマにしたトラックと、そこに乗っかるコムアイのエロスをモチーフにしたリリック。連載第二弾配信シングルにして、エロス・ソングとしては最大の問題作。

>>第二回『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章』の考察ページはこちら

OTOTOY限定のSPECIAL Editionも配信中!!

ここでしか手に入らない限定版

水曜日のカンパネラ / ノルウェイの盛り

【価格】
wav 単曲 200円 / まとめ購入 400円
mp3 単曲 150円 / まとめ購入 300円

【Track List】
1. モノポリー
2. ものぐさ太郎
3. 素子

PROFILE

水曜日のカンパネラ

2012年、夏。初のデモ音源「オズ」「空海」をYouTubeに配信し始動。

「水曜日のカンパネラ」の語源は、水曜日に打合せが多かったから… と言う理由と、それ以外にも、様々な説がある。当初グループを予定して名付けられていたが、現在ステージとしてはコムアイのみが担当。それ以降、ボーカルのコムアイを中心とした、暢気でマイペースな音楽や様々な活動がスタートしている。

コムアイ
担当 : 主演 / 歌唱
1992年7月22日生まれ。
神奈川県出身。

成人しても未だ「クロール」と「逆上がり」ができないという弱点を持つ。
高校生時代には、いくつかのNGOやNPOに関わり活発に動き回る。
サルサ・ダンスに毒され、キューバへ旅し、同世代100人のチェキスナップとインタヴューを敢行。
その後は、畑の暮らしを体験したり、たまに海外へ。
最近は、鹿の解体を習得中。
好物は、今川焼と明石焼といきなり団子。

また、“サウンド・プロデュース”にKenmochi Hidefumi。
その他、“何でも屋”のDir.F。
などが、活動を支えるメンバーとして所属。

>>水曜日のカンパネラ オフィシャル HP

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"suiyoubi::suiyoubi"の最新アーカイヴ

水曜日のシネマ淫談 〜映画からまなぶエロスの神髄〜 第4回 大人になっちゃったらエロスはなくなるの?
[SUIYOUBI]・2014年01月31日・連載「水曜日の淫談~映画から学ぶエロスの神髄~」第4回 大人になっちゃったらエロスはなくなるの? コムアイとOTOTOYがお送りする連載企画「水曜日の淫談〜映画から学ぶエロスの神髄〜」。 はじめてこのコーナーを知った方のために説明すると、2013年10月9日に2ndアルバム『羅生門』をリリースした水曜日のカンパネラのヴォーカリスト、コムアイが、OTOTOY編集部から与えられた映画からエロスを読み解いていくという連載です。なぜ、この連載がはじまったかはこちらの記事をお読みいただくとして、さっそくはじめていきましょう。 4回目となる今回の課題映画は、リュック・ベッソン監督による1990年作『ニキータ』。警察官を殺してしまった少女(ニキータ)が、政府の秘密警察を名乗る男(ボブ)から暗殺者になることを求められ、葛藤や愛を得ながら訓練し生活していった先に… というフランス映画です。コムアイ自身、邦画のほうが好きだということもあり、あえて今回は洋画を選定。いつもとは違った視点からエロスは読み取れたのか? 映画をご覧になった方も、まだの方も、エロスを考えながらゆっくりご覧ください。 取材&文 : ねるねるね〜るね西澤写
by 西澤 裕郎
水曜日のシネマ淫談 〜映画からまなぶエロスの神髄〜
[SUIYOUBI]・2013年11月20日・ コムアイとOTOTOYがお送りする連載企画「水曜日の淫談〜映画から学ぶエロスの神髄〜」。 はじめてこのコーナーを知った方のために説明すると、10月9日に2ndアルバム『羅生門』をリリースした水曜日のカンパネラのヴォーカリスト、コムアイが、OTOTOY編集部から与えられた映画からエロスを読み解いていくという連載です。なぜ、この連載がはじまったかはこちらの記事をお読みいただくとして、さっそくはじめていきましょう。 3回目となる今回の課題映画は、園子温監督による2011年作『恋の罪』。1997年に渋谷区で発生した東電OL殺人事件にインスパイアされたという本作品。女性刑事の吉田和子、大学教授と売春婦の2つの顔を持つ尾沢美津子、人気小説家を夫に持つ献身的な主婦菊池いずみ、という3人の女性が、円山町を舞台に繰り広げるドラマチックなサスペンスです。見えないなにか=城の周りを、ぐるぐる回った彼女たちが辿り着いた場所とは。『愛のむきだし』『ヒミズ』『冷たい熱帯魚』などの作品を発表し、日本の映画界で異彩を放つ園子温監督の作品から、コムアイが正面からエロスを読み解きます。 取材&文 : ねるねるね〜るね西澤写真 : 雨宮透貴
by 西澤 裕郎
水曜日のシネマ淫談 〜映画からまなぶエロスの神髄〜エピソード2「真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章」
[SUIYOUBI]・2013年10月02日・ コムアイとOTOTOYがお送りする連載企画、「水曜日の淫談〜映画から学ぶエロスの神髄〜」。 はじめてこのコーナーを知った方のために説明すると、10月9日に2ndアルバム『羅生門』をリリースする水曜日のカンパネラのヴォーカリスト、コムアイが、OTOTOY編集部から与えられた映画からエロスを読み解いていくという連載です(OTOTOYでは先行配信中!! しかも高音質!!)。なぜ、この連載がはじまったかはこちらの記事を読んでもらうことにして、さっそくはじめちゃいたいと思います。 2回目となる今回の課題映画は、『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章』。筋骨隆々の男たちが自分の信念にしたがい闘う姿。きっとそこにはエロスが溢れているに違いない。そんな想いからコムアイに映画を見てもらいました。しかし、結果は思わぬ方向へ。いや、なんとなくわかってましたけど…。そして、今回も映画に基づき新曲を作っていただきました。そのタイトルは「ラオウ」!! 強さとはなにか、エロスとはなにか、りんご音楽祭へ向かう車中にて、コムアイ、サウンド・プロデューサーのKenmochi Hidefumi、何でも屋のDir.Fの3人に話を聞きました
by 西澤 裕郎
水曜日のシネマ淫談 〜映画からまなぶエロスの神髄〜
[SUIYOUBI]・2013年08月30日・ ほんとうにはじまりました!! コムアイとOTOTOYがお送りする新連載、水曜日の淫談。 はじめてこのコーナーを知った方のために説明すると、水曜日のカンパネラのヴォーカリスト、コムアイが、OTOTOY編集部から与えられた映画からエロスを読み解いていくという新連載です。なぜ、この連載がはじまったかは先月の記事を読んでもらうことにして、さっそくはじめちゃいたいと思います。 記念すべき第一回目の映画は、『モスラ対ゴジラ』。「無茶ぶり!?」と思ったあなた!! なんにもわかってない!! エロスはいろんなところに潜んでいるのです。否、自分で作り出していかなければならない!! まだ21歳のコムアイも然り。そう、これはコムアイのエロス成長騨なのです。エロスの道は遠く険しい。いざ本編へ!! 取材&文 : ねるねるね〜るね西澤写真 : 雨宮透貴 本連載から生まれた、水曜日のカンパネラのエロス第一弾シングル水曜日のカンパネラ / モスラ(幼虫Ver.)'【価格】''wav / mp3 : 単曲 200円水曜日のカンパネラのトラック・メイカー、Kenmochi Hidefumiによるモスラをテーマにしたトラックと、そこに乗っかるコ
by 西澤 裕郎
水曜日のシネマ淫談 〜映画からまなぶエロスの神髄〜
[SUIYOUBI]・2013年07月29日・ それは、じめじめとした6月の深夜のことだった。 OTOTOY編集部に届いた1通のメール。差出人は水曜日のカンパネラのヴォーカリスト、コムアイ。彼女が写ったチェキとともにレキシへの熱い想いが書かれていた。そして「ラブレターを書いたので掲載してください」という簡潔な一言。連日にわたる徹夜の編集作業で疲弊していたOTOTOY編集部、ねるねるね〜るね西澤(※)は、ラブレターを掲載すればコムアイに慕われるのではないかという下心から、特集ページにラブレターを掲載してしまう。 それに味をしめたコムアイは毎週ラブレターを送ってくるようになり、ずぶずぶな関係が続いていくことになる。そんな動機からはじまっただけに、ラブレターは話題になることもなく、ただ毎週更新されるだけの意味不明のコーナーに。そして7回も続いてしまう…。OTOTOY上層部に気づかれたらまずいと思ったねるねるね〜るね西澤は、思い切ってコムアイの元へいき、今後の展開について話し合うことにした。指定されたのは、下北沢の鈴なり横町のバー。ラブレターの反省からはじまったトークは意外な方向へ…。果たして、この連載企画はどのような結末をみせるのか。行き先不明の旅がいまはじ
by 西澤 裕郎
水曜日のラブレター
[SUIYOUBI]・2013年06月26日・ 岡村靖幸さん “和製プリンス”ってチャッチイから嫌い。岡村さんはそんなに“大丈夫”なミュージシャンではないと思う。私が生まれる前から、岡村さんが声を上げれば、老若男女がヒィヒィ言いながら、「ヤバい!」「カッコイイ!」とついていっていた、らしい。(音楽家としての岡村靖幸黎明期を、今回初めて知りました。私のなかにある岡村さんの記憶は、ここ2年くらいだけど、それからずっと気になっています。)音楽同様、観られることにもピカイチの才能があると皆さんは言う。「間違ってないけどいまそれをやる場面じゃない」というおもしろさは、岡村靖幸さんの持てる才能である。でも、他の人と違うのは「みんなの前の岡村靖幸」との付き合い方じゃないかしら。岡村さんがもう少しバカだったら、「一線越えちゃってる俺、カッコイイな」岡村さんがもう少し器用だったら、「これはパフォーマンスしてる俺だから」とか、バーで漏らしながら割り切れるんじゃないかな。私が好きな岡村さんはやたら真面目でまともな人。すごく真面目な思考回路を持って、「なんとなくの常識」を習得せずにいたら、「間違ってないけどいまそれをやる場面じゃない」ってズレが生じたのかな。普通と変態が、一緒
水曜日のラブレター
[SUIYOUBI]・2013年06月19日・ 小山田圭吾さん 小山田さんのイメージは白です。フリッパーズギターも白いけど、その白は健全な白。フリッパーズギターの白を白いTシャツと例えるなら、小山田さんの白は、白衣です。コーネリアスの作品で使われている、ギターや声やサンプリングされた環境音。どれも普通に鳴らせばあたたかい音なのに、雑味を削ぎ落としてあるからか、生活圏とは遠い音に聞こえる。聞いたときに、自然の風景が浮かばず、白い部屋でギターを弾き、白い部屋で声が鳴って、白い部屋で水滴が落ちている。「デザインあ」を初めて観たときもそう感じた。リミックスアルバム「PM」を聴いたときはそんな印象を感じなかったので、やはり編集者に拠るらしい。眩しいほど明るい、真っ白に片付いたオペ室で、小山田さんは機械的に、緻密に、患者の内臓を取り出しては小山田さんが好むように配置し直している。周りに立つ助手たちは、小気味良いリズムで動き従う。こええええ。小山田さんこええええ。もしくは「時計仕掛けのオレンジ」の白装束。目を見開いた小山田さんは、まるで、催眠から解けて白い部屋で再び暴れる少年アレックス。研ぎすまされている音楽の細部が、小山田さんの手下のように動く。うん、小山田さん、
水曜日のラブレター
[SUIYOUBI]・2013年06月12日・ 大根仁さん あなたは世を見渡しています。2ヶ月ほど前、深夜上映の『恋の渦』を観たのですが、なんというか、あんな変な空気の漂うシアターは初めてでした。観客の「ひいいい」とか「がははは」とか、そういう客席全体の反応がぴたりと合っていて、観客全員の共通の友人の生活を覗き見て、笑っているような。そういうユニゾン感でした。長いホームパーティーのシーンがこちらに写されていた。予告編を観たときは、「ああ、ドキュメンタリーらしく仕立てたフィクションだけど、どっちつかずになってそうな」と鷹をくくっていました。ただ、ピンクのそっけないタイトルと、その間ずっと鳴っていた単調なキックとタンバリンの、「ドン、ドドン、タン! 」という音が他人行儀だったのが気にかかって、観ました。感想は… 悲惨。リアルすぎるキャラクターの描きわけに、唸り声や悲鳴があがる。『モテキ』なんてマイルドなものだ。でもそもそも、『モテキ』とは観客と登場人物の取り合わせが違う。『モテキ』を観る人々と登場人物は似た人種だったので、自分を見ている痛々しさが増して「カップルで観に行かない方が良い」映画だという感想をよく聞いた。一方で『恋の渦』は、シネマ☆インパクトの企
筆者について
西澤 裕郎 (西澤 裕郎)

1982 年生まれ。ファンジン『StoryWriter』編集長。http://storywriter-magazine.com/

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