人生は紆余曲折あって寄り道の数だけ人間の深みが出てくる。そうした考えを受け入れられないほど、日本は余裕のない社会になりつつある。いかに学歴や資格を持っているかが関心事項になり、就職することがゴールであるかのような錯覚に陥ってしまう。しかし人生はそんなに単純なものではない。一度レールから外れてしまっても違った方法で目的地に辿り着くことは可能だ。人の数だけレールは出来ていく。
仙台出身のKGMは、そうした人生を体現しているアーティストである。一度は音楽活動を諦め料理人としての道を進むが、音楽への愛情に再び向かい合う。ジャンル・レスに音楽を聴き、研究することと積み重ねることを怠らないという。それはある意味で寄り道をしたことで生まれた姿勢である。壁を乗り越えることで人は成長するように、平坦な道を進んでいても深みは生まれない。KGMの歌う楽曲が深い余韻を残しダイレクトに聴き手の心情を揺さぶるのは、彼の人間としての深みの表れであろう。2作目となる『CARAMELISE』は、レゲエを根底にしながらビーチ・ボーイズや馬場俊英などのポップさも感じさせる。そこからはKGMの人柄が滲み出ている。

インタビュー&文 : 西澤裕郎

研究すること、そしてその積み重ねを大切にしています

—音楽はいつ頃始められたんですか?

中学生の時にギターを始めて、高校生の頃はクラブで歌ってました。20歳で一度音楽を辞めたんですけど、25歳の頃またやり始めて26歳頃から本格的に活動しだしました。一度辞めたのは、人前で歌うことが得意じゃなかったことと、自分に才能がないと思って別の道に進もうと思ったからなんです。

ー別の道というと何をされてたんですか?

音楽に触れられる仕事がしたかったので、店をやろうと思って調理師になりました。それで料理を作っていましたね。その頃に友人が作ったMIX CDがあって、それに対して東京から反応があったんです。それで仕事をメインにしながら、寝ないで曲作りを並行してしていました。その頃27歳くらいで、料理も音楽も中途半端で挫折するのが嫌でどうしようか葛藤していました。そこで、「1年間音楽を頑張ってそれでダメなら料理の道を進もう」と覚悟を決めて音楽を選んだんです。それがCDを出せるところまでくることが出来た。28、29歳での遅咲きだから、どこか自信を持ちきれないところもあったんです。とにかく研究することを怠らないことと、その積み重ねることを今も忘れないようにしています。

KGMさんのルーツにはレゲエがありますが、アコースティック・ギターで歌う曲があったり、本来イメージするレゲエ・ソングばかりではありません。レゲエであることにはこだわっていないのでしょうか?

ジャマイカのレゲエ、アメリカのレゲエ、それぞれのスタイルがあるじゃないですか。僕は仙台に住んでいるので、自分なりにレゲエを取り込んで曲にしようと思ってやっています。例えば、ジャック・ジョンソンはハワイを取り入れたレゲエだと思うんですね。僕はポップスも好きなので、ビーチ・ボーイズとかビリー・ジョエル、馬場俊英さんなどに影響を受けた仙台のレゲエだと思ってます。

ーなるほど。では曲作りは、どのような点を意識して作っているんですか?

シンプルで楽器の音数が多くない中で、隙間を生かした音を出せるよう意識していますね。音を詰め込めば迫力は出しやすいですが、音圧だけになってしまうのでもっと歌を浮き上がらせたいんです。

ー歌を浮き上がらせるために、具体的にどのようなことをしたんですか?

とにかく色んな音楽を沢山聴きました。「どうしてこのアルバムはこういう音になっているんだろう? 」とか考えながら、出来るだけ多くの音楽に触れていったんです。その中でも、古い作品に惹かれる部分が多かった。音はクリアじゃないしノイズも入っているのに、シンプルでテクノロジーとは別のよさがあったんです。聴いたあとに言葉では表せないけど残るものがあるんですよね。

ー確かに同感です。アナログで作品を出してみたいって気持ちもありますか?

はい。レコードを作りたいとはずっと思っています。7インチとか時間に制限がある中で完結させるっていうのもいいなって思うんです。ただ、それを聴ける環境の人が少ないので実際に作るとなるとなかなか難しいですね。

これからはもっと地方で音楽シーンが生まれて、それぞれの場所を行き来するようになると思う

KGMさんは今年レーベルを立ち上げています。どのような意図で始められたのでしょう?

今の時代、メジャー/インディーの差異ってそこまで大きくないと思うんです。例えば、メジャーだからお客さんが10倍になるとかそういうわけじゃない。だったら、自分の出来ることと出来ないことを把握しながら自分の手で作っていこうと思ったんです。各地を巡って、自分で感じて、それを反映させていきたいと思っています。

ー浜松や岡山、横浜など本当に全国各地を巡ってらっしゃいますよね。地元・仙台のライヴを集中的にやっていないのは意外です。

東京と違って地方で盛り上がるとその土地の中だけの盛り上がりになりがちなんです。それか東京を意識してやるか、大体どちらかになりがちなんですね。だから僕は別の方法で出来ないかなと考えたときに、各地方をまわることで活動しようと思った。仙台出身の僕が他の地方をまわることで、外から見た仙台が意識できるんです。多分仙台のイメージって、牛タンとかモンキー・マジックなんですよ(笑)。それは仙台だけで活動していると意外と見えなかったりする。そうした客観的な視点を持ちながら、それ以外の仙台のイメージを出せればいいなと思っています。

ーなるほど。mixiのコミュニティなどでは、全国各地の人からコメントがよせられていて、KGMさんの活動が実を結んでいるんだなと思いました。そうした実感はありますか?

はい。実感はありますね。前回のアルバムを出したときよりも規模は広がっていて、同級生の友達が僕のCDを持っていてくれたりしたんです。全国各地の方もすごく応援してくれて、今度岡山でライヴをするんですけど、そこで初めてフル・メンバーでバンド・セットのライヴを行うんです。スノー・ボード・ショップの方なんですけどCDを出す前から呼んでくれていて、今回もいくらかかってもいいからバンドで来てほしいって言ってくださって。本当に嬉しいですよね。

ーそれはすごく素敵な話ですね! 少しずつ結果が出て行く中で、次の目標はどこに定めていますか?

これからはもっと地方で音楽シーンが生まれて、それぞれの場所を行き来するようになると思うんです。そういうライヴ中心のアーティストが増えていくと思うんですね。10代の人たちが音楽をやりたいと思っても、メジャー・シーンしか頭になかったら諦める人が多いかもしれないけど、地元のライヴ・ハウスが盛り上がっていたら若い人たちにも夢を与えられるし、自分もプラスになると思うので、これまでの活動の延長線上に目標はありますね。

ー本当にライヴを通して人との結びつきを大切にしていらっしゃるのですね。では、音源とライヴの違いはどういう点にあるとお考えですか?

CDなどの音源は聴いて伝わるものじゃないですか。それに対して、ライヴはMCなどを含めてストーリーを伝えられると思うんです。なのでライヴでは演奏を間違えることがあっても、ストーリーを伝えることが大切だと思ってやっています。

ーちなみに歌詞にメッセージは込めてらっしゃいますか?

もちろんメッセージはあると思います。僕はあまり本音とかはっきり感情を表に出せないんですね。だから、どちらかというとそうした部分を歌詞に込めて歌っています。

ー今作では、仙台在住のヒップホップ・グループGAGLEのHUNGERさんをフィーチャーした「Heartbeat」という曲が収録されていますが、どういう経緯でこの曲はできたのですか?

もともとGAGLEがすごく好きで、いつかお会いできたらいいなと思っていたんです。それが音楽をやるようになってHUNGERさんと知り合う機会ができたんです!それで地元のフリー・ペーパーの対談で一緒に曲を作ろうと意気投合して作ることになりました。9月に発売されたGAGLEの『SLOW BUT STEADY』にも一緒にやった曲が収録されています。

ー音楽を選んでその努力が実を結んでいっていることは、僕としてもすごく励みになります。では最後に、OTOTOYの読者にメッセージをお願いします。

是非ライヴに足を運んでほしいですね。僕の参加しているイベントは一般的なコンサートより値段も安いですし、カフェのライヴとかも面白いですし、一度観に来てもらえば新しい世界が広がると思います。それにお客さん同士の結びつきで友達が出来ていくっていうのも魅力だと思います。なので、ぜひライヴに来てください!

心を揺さぶられるヴォーカル作品を紹介


Animation for oink,oink! / 次松大助

2009年4月、解散を発表した THE MICETEETH.のヴォーカル次松大助がソロ・アーティストとしての活動を本格始動。数々の名作を生み出してきた次松自身が、"最高傑作"と豪語する会心の仕上がり!叙情的で文学的な詞世界、美しくてちょっぴり切ないメロディー、温かみ溢れる歌声が様々な楽器に楽しいリズムで彩られ、唯一無二のポップス・ワールドを生み出しています。ジャズ、ラテン、室内楽あらゆるサウンドを身に纏い、軽やかに舞い踊ります。


サイダー / ゆーきゃん

京都で歌い始め、現在は主に東京で活動しているシンガー・ソング・ライター。アシッド・フォーク/サッド・コアを体現するようなその声と日本語詩は、聴くものに儚くも強烈な印象を残します。今作はギターとヴォーカルのシンプルなつくりでありながら、その歌声はグッと心に染み渡る力を持っています。ギターの弦の音や呟くようなヴォーカルを、高音質HQDファイルでよりリアルに感じられます。


旅人のリズム / タカツキ

"ウッド・ベースの吟遊詩人"ことタカツキ。ウッド・ベース弾き語りでラップという他に類を見ないスタイルのみならず、そのキャッチーなメロディと奥深い詩の世界は、ソロ・プロジェクトならでは。ヒップホップ界のみならず幅広い支持を受け、話題を呼んでいる。「アカツキ・コンダクター」「できるなら京都で」「music,」の先行シングルを含む全10曲。ゲストを起用せず熟成させた、タカツキの完全ソロ・アルバムです。

LIVE SCHEDULE

  • 10/27(火)@横浜Thumbs Up
  • 11/3(火・祝)@大阪Bar take
  • 11/4(水)@大阪Chelsea Market
  • 11/15(日)@北上 ギャートルズ
  • 11/16(月)@仙台(詳細未定)

PROFILE

KGM
仙台在住のシンガー・ソング・ライター。アコースティック・ギターを抱えて日本全国でライブを行い、そのあたたかい声とリズム、歌詞で聴く人を魅了する。圧倒的な歌唱力と心揺さぶるリリック。 自身のルーツであるREGGAEを土台としながら、 あらゆる種類の音楽を吸収し奏でる等身大のうた="ライフ・ミュージック"。

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筆者について
西澤 裕郎 (西澤 裕郎)

1982 年生まれ。ファンジン『StoryWriter』編集長。http://storywriter-magazine.com/

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