YAMP KOLT Interview

「江戸弁を話す人は、もう少ないみたいなんですよ」。YAMP KOLTは笑いながら話し始めた。少し彫りの深い彼が、バリのガムラン・オーケストラ“スダマニ”と一緒に演奏している動画を観てから来たので、いきなりの江戸弁が意外であった。けれどその単刀直入で真っすぐな言葉が、分け隔てなくいろいろなミュージシャンたちを惹き付けるのだなとも妙に納得してしまった。プロフィールを見れば、ベーシスト、イベント・オーガナイザー、楽器製作など、捉えどころがないくらい活動は多彩である。今作には8人もの女性ヴォーカリストと数十人の演奏者が参加している。いったいどのようにして、これほどまでの人たちを呼び寄せ、1枚のアルバムを完成させたのか、じっくり話をうかがった。

インタヴュー & 文 : 西澤 裕郎

8人の女性ヴォーカリストをはじめ超豪華ゲストが参加した1stアルバムを高音質配信

YAMP KOLT / yes

藤乃家舞が、YAMP KOLT(ヤンプコルト)に改名後、初のアルバムをリリース。8人の女性ボーカリスト(やくしまるえつこ、さや、原田郁子、一十三十一、UA、ピカ、ACO、リクルマイ)をゲストに迎えた本作は、ヤンプコルト作詞 / 作曲による歌アルバム。物語は、とある森を舞台に繰り広げられ、歌姫達が、太陽に恋をして、地を駆けるシマリスとなり、南国の色男を讃えながら、ポップで神秘的な森の奥へ奥へと案内してくれます。そして画家、京太郎によるジャケットも『yes』の世界観を伝えている。

【参加ミュージシャン】
芳垣安洋(dr)(ROVO) / 千住宗臣(dr)(コンボピアノ / PARA) / スガダイロー(piano) / 名越由貴夫(gui) / 大野由美子(steelpan)(バッファロー・ドーター) / ギデオン・ジュークス(tuba)(シカラムータ) / 松本治(tb, euph, f.horn)(Trigonometria) / スダマニ(gamelan) / 後関好宏(sax, fl)(ex.DCPRG, stim) / 本郷修子(violin)(ex.ABC交響楽団) / 池田絢子(tabla, bol)(タブラダー) / 西内徹(sax)(REGGAE DISCO ROCKERS) / 川村亘平(suling) / 堂本雅樹(tuba)(ex.原信夫とシャープス&フラッツ) / 山敷亮司(uplight ba) / ベンジャミン・スケッパー(cello) / 田中慶一(dr)

曲を思いついたら、「すいません」とか言って録音しに帰っちゃうタイプなんで(笑)

——今作は、ストーリーありきで作りはじめたんですか?

YAMP KOLT(以下Y) : まったく考えてなかったです。過去のアルバムでも考えてなくて、それが悩みの種でもあるんですけど、いまはそのことを素直に受け入れてます(笑)。

——1番古い曲はどれになるのでしょう?

Y : メロディ・ラインを一番始めに作ったっていう意味であれば、10曲目の「キマグレ ジシャク」です。高2のころ、まだギターのチューニングを知らなかったので、ギターの弦1本だけで作ったんです。それがギターで初めて出来た曲だったんで、嬉しいから何度も弾くわけじゃないですか。それで染み付いちゃっていて、他の曲をレコーディングしていたときに突然思い出したんです。「あの曲を最後に入れれば、このアルバムはうまく収まる」みたいに閃いて、すぐ詞も出来ました。

——録音した曲でいうと、どうですか?

Y : 7曲目の「フォッカの丘」ですね。これは、ピカからレコーディング・エンジニアを頼まれてその話していたときに、電話で彼女の声を聞いていたら曲が出来ちゃったんです。エンジニアをタダでやってあげる代わりに、今思いついた曲をタダで歌ってくれと、物物交換みたいにお願いしました。ピカに「フォッカって何~?」って言われて、「俺にもわからへん」って。「リンドリンドローって何?」「わからへん」「あたしにもそういう事あるわ〜」みたいなことを言って(笑)。

——曲を作ろうと思って作るよりも、日常の偶然からインスピレーションを得ることが多いんですか?

Y : どっちもですね。無いパターンは無いんですよ。リズムからとか、ギターからとかって、全然決めてないんです。もし今思いついちゃったら、多分すいませんとか言って録音しに帰っちゃうタイプなんで(笑)。

——(笑)。突然思いついた曲は、今作の中にありますか?

Y : 全部そうですが、例えば「南国色男」は、僕の鼻歌だったんです。あるときから、「南国色男~」ってずっと鼻歌で歌っていたら、その他のパートも歌詞も出来て、これは原田郁子ちゃんに歌ってほしいなって思ったんですね。でもその時は全然知り合いじゃなくて、たまたま好きな画家のエキシビジョンを観に行ったら、郁子ちゃんも観に来てて、共通の知り合いに紹介してもらいました。「はじめまして」って言う前に「歌ってください!」って言ったら爆笑されて、「南国色男」って歌詞を見せたら「あっ、イカす」って言われたんです。レコーディングし終わったあとで、「8割くらいはタイトルで決めました」って言われて、タイトルをこれにしてよかったと思いましたね(笑)。

——(笑)。やくしまるえつこさんが歌っている「おひさまは太陽」は、どのようにして出来た曲ですか?

Y : 買ったばかりの古いギターで、レギュラー・チューニングじゃないチューニングをしている間に、ギターのフレーズが出てきたんです。それを録音して、キーボードを入れて、ベースを弾いて、仮ドラムを叩いたまでは覚えているんですね。ただ、そのまま忘れてたんですよ。

——未完成のままですか?

Y : そう。それで、リキッドルームの6周年のイベントに呼ばれたとき、対バンが相対性理論で、でも2年間くらいずっとレコーディングをしていたから、ものすごい浦島太郎状態で(笑)、彼らのことを知らなかったんです。みんながいいバンドだよっていうから、じゃあと思ってばっちり見たら、4人が好きなことを本当に好きにやっている感じで、何かを目指してる感じがしない、でもそれでひとつのバンドになっているから、いいバンドだなって。

——それでお願いすることになったんですか?

Y : はい。スコアを探してみたら、まったく記憶にないんですけど既に曲に歌詞が書いてあったんです。いつの間にか自分で作っていたみたいで、すごくびっくりして。読んだら最初は自分にも難解な歌詞で(笑)、太陽をガチで彼氏にしちゃう女の子の歌で、ものすごく彼女(やくしまるえつこ)っぽいなと思って。

——それは、すごい運命的な話ですね! 今までのお話を聞いていると、けっこう偶然が重なったり、友達や知り合いから繋がっていっているんですね。

Y : ほぼ、そうですね。UAも映画館で出会ってからですから。僕は彼女のものすごいファンで、UAも僕がインドネシアとかでレコーディングしていることを知っていてくれて、そこから付き合いが始まって。以来10年くらいの付き合いですね。

——他の方々との出会いも教えてもらえますか?

Y : さやちゃん(テニスコーツ)は一番付き合いが古いかも。一十三十一ちゃんは、僕がやっていた「サノバラウド」ってイベントを見に来てくれていたんです。彼女も趣味趣向が360°の人だから、僕がガムランをやっているのを聴いて、彼女の曲をガムラン・アレンジで、というイベントに呼んでくれたのがきっかけだったかな。

——ピカさんはどうですか?

Y : ピカは、大阪の今はもう無いファイアーフライというクラブのバー・カウンターで、僕が後ろに並んでいたら、ウーロンハイにするかウーロン茶にするかですごく悩んでいて、その違いが80円だった。すごい長考したあげくに「ウーロン茶!」って言ったから、後ろから「何で!?」って突っ込んだら、「だって高いやん」って言うから、じゃあ俺が80円出してやるから飲めよって(笑)。「えっ、ほんまに~! 80円分あたし踊るわ!」って言ってずっと踊っているから、面白いやつだなって思ったら、バンドをやっているっていうんで、ビデオとかテープ送ってもらったんです。あふりらんぽのかなり初期のころで、相当いいなと思って、もうイベントの経費をフィックスしちゃって交通費しか出せないけど「サノバラウド」に来てって言ったら、「いくで~、東京でライヴしたことないねん!」って来てくれて、そのあと見る見るうちに全米ツアーとかに行ったり。

——すごい出会いですね!

Y : ACOちゃんは、ピットインにUAを見に行った時にACOちゃんも見に来てて知り合いました。リクルマイちゃんは、アルバムを作っている間に1曲ゼロから曲を作りたいなと思って、イントロで「ダーデレゲダーデレゲ」ってやってるボルと、ケチャが一緒の曲がいいなと思って、それでマイちゃんが歌ったらおもしろいだろうなと思ってお願いしました。「走るシマリス」のアンサーソングが物語上要ると思っていて、シマリスがシマリス個人の想いだけで突っ走る「走るシマリス」に対して、シマリスを遠くから見てる人の歌、っていう内容の「一番大きな木の上から」が出来ました。

——歌ってもらっているのが全員女性ですけど、なんで女性ばかりになったんですか?

Y : それは、僕が一番最初に思ったことです(笑)。なんでだろう・・。女性で全部作ったら上手くいくんじゃないかなって思ったからかな。

初めてアコースティックで、ボディ・ソニックを感じたんですよ

——YAMP KOLTさんは、いろいろな伝統音楽や伝統楽器に精通していらっしゃいますが、どういうところから興味を持ち始めたのでしょう?

Y : 正直言うと理由はよくわからないんですけど、ひとつにはスネークマンショーとかからかも。スネークマンショーでは桑原茂一さんがいろんな音楽を選んでいたんですよ。ただガムランってレコードとかで聴いてもピンと来るものじゃなくて。たまたま20代半ばくらいに、知り合いからバリ島に行ったら合うよ、って言われて行ったら、はまっちゃったんです。

——理屈じゃなくて、ピンとくるものがあったんですね。

Y : そこで最初に友達になったのが、その後ずっと一緒に演奏することになるスダマニ(ガムランオーケストラ)のメンバーだったんです。島のいろんなところに行ってみて、いろんな音楽を聴いてみたら、もしかしてスダマニってスゴいのかも、と思って。分からないなりにも、分かるじゃないですか。観光客とか一切いない地元の人たちだけのお寺の演奏があって、オーケストラのまん中に座っていいと言われて、初めてアコースティックで、ボディ・ソニックを感じたんです。ダブとか低音をクラブのスピーカー前で聴くとかじゃなくて、高い音から低い音からぐわーってなって。湿気とか何から何まで関わりがあると思うんですけど、それを体験して「まいったな」って感じましたね。

——そこから一緒にやるようになったんですか?

Y : 最初に会ったときに、彼らは知らない音楽と一緒に演奏がしたいと言っていたんです。それを彼らはコンバインって言うんですけど、今で言うとコラボレーションみたいなものかな、彼らも一緒にやりたかったみたい。

——YAMP KOLTさんも一緒にやりたいと思ってたんですね。

Y : ちょっと話が逸れるかもしれないけど、藤乃家舞って、高校の時のあだ名だったんですよ。で、中学のときに美術のレコードの課題でレコードジャケットを作れっていうのがあって、作ったことを忘れていたんです。でも少し前にそれが出てきて、2枚組になっていたんですね。そこに「YAMP KOLT」って書いてあって、クレジットを見たら、世界中の自分の好きなミュージシャンが参加していることになっていたんですよ。ジミ・ヘンドリックスとか。そのころから勝手な妄想をしていたんだから、そういうコラボレーションがしたかったんでしょうね。

——バリ島において、宗教音楽とか民族音楽のようなものは、彼らにとってどういう音楽なんですか?

Y : 村によりますが、ある意味でポップスですよ。彼らは伝統的に音楽を継承しているんです。譜面とか録音物もない時代から、おじいちゃんが演奏して孫が覚えるって感じ。そのうちに、「変えようぜ」って人が出て来ると伝統音楽にも革命が起きたり。朝起きれば誰かしら演奏をしているのが聴こえてきて、下手すると寝るまでずっとやっている。もちろん繁華街も何カ所かあって、そういうところではいわゆるtop40がかかっていたりしますけど。

——世界中で売れているものとその土地の音楽が、同じように鳴っているんですね。

Y : もちろんバリだったらこう、ってことではなくて、僕が行った村はそうだったんです。売れてるポップスってのがそのあたりまで行くと通用しない。インターネットなんかもちゃんと繋がってないし。

——YAMP KOLTさんは、自分の音楽をヒットチャートに入るものにしたいと思いますか?

Y : 好きな事をやった結果、そうなったら嬉しいです。多くの人に聴いてもらいたいです。それ以外、ライヴとかを除くと、録音してから先は驚くほど興味がないんですよ(笑)。

——音楽は聴く人がいるからこそ、成り立つ部分もありますよね。

Y : もちろん。でも音楽って多分人間が作ったものじゃないんですよ。太古の昔、地球の動きが活発だったときに、マグマがドコドコいっている所とかを聴いたらすごかっただろうなと思うんですよ。スピーカーをばんばん積み上げて低音のダブなんか流しても勝てないかも。

——確かに、想像できないくらいの音が鳴っていそうですね。

Y : 例えば、UAのために頼まれて曲をつくっているというよりは、僕が普段からつくっている中で「あっ」って曲が出来ると「こんなん出ました」ってUAにデモを送るんです。だから、向こうも僕に頼まないんですよ。UAのインタビューでも「あの人はいいタイミングで曲を送ってくるから」とか言っててくれて(笑)。UAの「golden green」ってアルバムで「Paradise alley/Ginga cafe」って曲を一緒につくったんだけど、ライヴで合唱ソングになっていて、自分が日々の中で好きに作った曲を野音で3000人のお客さんが歌っているんですよ。もちろん人数ではないんですけど、何か心が動いて、自分の何かが動いたってことを受け止めなきゃいけないと思って。だから、何かのマネとかではなくて、自分にとっての新鮮さに正直に演奏した曲こそ、お客さんに届いてなんぼ、と再確認しました。

——こういう感じにしようと限定しないようにしているんですね。

Y : そうですね。毎回出来るだけ違うことをやろうと思っています。こういう曲はやらないって決めちゃうと、自分の可能性のドアを閉めちゃうわけでしょ。例えば次が全曲ヘビメタだったりしても面白いし。例えば、フォーマット的な曲でも、やった事がないなら面白いなと思えるかもしれませんね

>>>インタビューは後半へ続きます!

Profile

YAMP KOLT(ヤンプコルト)
名前を藤乃家舞(mai fujinoya)からヤンプコルト、YAMP KOLTへ変える。ベーシスト、ギタリスト、作曲、作詞、プロデュース、レコーディング・エンジニア、楽器製作(ワイヤフォン、 YAMP KOLT SPRING)、Mac.ベイスのオリジナル・レコーディング・ソフト"REX"開発、オーガナイズ、リミックス、DJ等、多岐に渡る。藤乃家舞(mai fujinoya)名義で『サノバラウド』(2002)、『FAR』(2004)、『Hanger-on-off-Kingdom』(2005)、『dance on white』(2007)、『gold leaf』(2007)等のソロ・アルバムの他、UAへの楽曲提供とプロデュース(CD『SUN』『golden green』『ATTA』(作曲 / プロデュース))、画家の大竹伸朗とのDVD『MOUSE ESCAPE』、DVD『ドレミノテレビ』(NHK)等に様々な形で参加。マーク・リボーやジミ・ヘンドリックス・ジプシーズのジェラルド・ベレッツ、バリ・ガムランの 天才集団"スダマニ"等とも共演。内橋和久、外山明、梅津和時、大倉正之助 等と数々のインプロヴィゼションのセッション。

映画音楽 :『W/O』(音楽監督)、『エレクトリックドラゴン80000V』『五条霊戦記』『空中庭園』 参加、『ねじ式』『殺し屋1』(リミックス)等。
リミックス :『ミーン・マシーン』等。
インスタレーション :『dqpb』(doubleNegatives)(宮城県 / 感覚ミュージアムに常設展示)。『ジャック』(w/志賀理江子)(山口県 / YCAM)。
レーベル(セメタリーレコーズ / FAR)、イヴェント『サノバラウド』『live FAR』シリーズ主宰。