それでも自分たちは進んでいくし、何周でも巡っていく
──アルバム・タイトルの『Orbital』は「軌道」という意味ですね。
神門:はい。リード曲の"ココロ"の最初のタイトルが「Orbital」だったんですよ、じつは。"ココロ"には「巡り巡って ふとした瞬間 / いつか貴方を救う過去になる」という歌詞があるんですけど、それは未来に向けて歌っていると同時に、過去を肯定したいという気持ちもあって。それが軌道みたいだなって思ったんですよね。星の軌道みたいに同じところを回っていたとしても、一周回ってきたという事実は消えない。いままでやってきたことと、新しいスタートの両方の意味で『Orbital』というタイトルを今作に付けました。"ロックバンドなら""ディアマイフレンド"を再録したのも……。
──これまでとこれからのつながりが感じられて。
神門:そうなんですよね。それが自分自身の感情と向き合うことにもなるのかなと。
──久米さん、中野さん、松本さんは"ココロ"に対してどんな印象を持ってますか?
久米:『Orbital』の圧倒的なリード曲を作るために、神門がずっとトライ&エラーを重ねていて。何曲か送ってきてくれたなかで、"ココロ"のデモを聴いたときに「すごいな」という実感があったんですよね。さっき神門が言ったように、いままでとこれからのAtomic Skipperをつなぐ曲になると思ったし、自分たちの強みもすごく出ていて。中野の声の良さが出るメロディだし、疾走感のあるサウンドもそうだし。これからの僕らを代表する曲になると思います。
中野:歌詞を最初に見たとき「希望しかない」と感じたし、絶対に歌いたいと思いました。前からそうなんですけど、神門の歌詞から教えてもらうことがすごく多くて。"ココロ"に関しては、「いますぐに前を向くためだけに音楽があるんじゃない」と思ったんです。下を向いてしまった経験はたくさんあるけど、そのたびに前を向いてきて。"前を向いたことがある自分"はずっと自分のなかにいるし、それを忘れないでいれば、いつかまた信じる道を進める。そうやって肯定してくれる力がある曲だなって思いますね。私自身、落ち込むときはちゃんと落ち込むタイプなんですよ。物事をポジティヴに捉えられない瞬間もあるけど、そんな自分だからこそ伝えられるものもあると思っていて。そこは正直でありたいなと。
松本:"ココロ"は僕らの強みでもある合唱のパートが入ってるんですよ。最近ようやくライヴでも歌えるようになったし、ツアーでシンガロングできるのも楽しみです。ライヴで3回くらいしかやってない時期から、一緒に歌ってくれてるお客さんもいるんですよ。「リリース前なのに、どこで覚えたの!?」ってビックリしたし、すごく嬉しかったですね。
中野:テンション上がるよね。
──アルバムの新曲のなかで、特に印象に残っている曲というと?
神門:俺も知りたい(笑)。
久米:強いて1曲挙げるとしたら"周回軌道列車"ですね。『Orbital』というアルバム・タイトルとリンクする歌詞もあるし、こういう曲調もけっこう久しぶりで。
──かなりアグレッシヴなサウンドですよね。
久米:分かりやすくのれるし、1回聴けば楽しめるんじゃないかなって。楽器隊としても制作してて楽しかったし、自分の好きなエッセンスもちょっと入れてるんですよ。たとえばスラップ・ベースだったり、音を歪ませたり。マキシマム ザ ホルモンが好きなので、その影響もあるかも(笑)。
神門:いいよね。"周回軌道列車"は(バラード・ナンバー)"もう帰ろう"とつながってるんですよ。"周回軌道列車"には「急行電車乗り換えて / 波の間に君が見え隠れ」という歌詞があって、"もう帰ろう"には「間違えて乗った快速急行列車」というフレーズがあるんですよ。自分たちが通ってきた道が合っているのか間違っているのかは、いまの段階では結論が出ないと思っていて。それでも自分たちは進んでいくし、何周でも巡っていくっていう……。『Orbital』というタイトルを付けたことによって、新しく作った曲たちもこの場所に集まってきた感覚がありましたね。
──曲と曲をつなげることは、これまでにもやっていたんですか?
神門:やってましたね。これまで自分たちがやってきたこと、作った曲をその場所に置いていってしまうのはもったいないと思ってて。たとえば"ココロ"の「流星群や額縁の花に重ねていた」という歌詞は、前回の〈額縁の花ツアー〉(2022〜2023)と重なっているんですよ。あと、"星降る夜" "アルテミス"などの星をテーマにした曲たちとつなげたい気持ちもありましたね。