SIBERIAN NEWSPAPERの新作&劇団サントラを配信! 記念座談会を開催
「世の中にない音楽を作って下さい」。そんな、ある意味で無茶とも思えるリクエストを正面から受けとめ、その音楽を作り上げた音楽集団、それが6人組バンド、SIBERIAN NEWSPAPERである。そして、そのリクエストを課したのが、演劇集団キャラメルボックスだ。この一見交わらなそうな2つの集団を繋いだ一つの作品が『無伴奏ソナタ』という作品である。同作は、現代のアメリカを代表するSF作家、オースン・スコット・カードの小説であり、キャラメルボックスが満を持して演劇作品として挑んだ作品でもある。
本作の中心にあるテーマ、それはまさしく音楽である。この話において、子供の頃に才能を見つけられた人は、音楽だけをやらされる生活を送ることになる。しかも、他の人の影響を受けてはいけないという環境でだ。ところが、ある時、主人公はバッハの音楽を聴かされ…。これだけ読んだだけでも、このあとの展開が気になったのではないだろうか? 何より、そこで鳴っている音楽というのはどんな音楽なのだろうと気になったのではないか? そうした疑問を持ったのなら、ぜひ『無伴奏ソナタ』のサントラを聴いてみてほしい。
そして、その楽曲を作ったSIBERIAN NEWSPAPERが完成させた新作『0』もあわせて聴いていただきたい。そこには、いつまでも歌い継がれる音楽、いつまでも聴き継がれる音楽の結晶が垣間見えるだろう。今回はこの2作品のリリースを記念して、SIBERIAN NEWSPAPERとキャラメルボックスから、それぞれお2人ずつお迎えして、座談会を行った。長く歌い継がれる音楽について、あなた自身でも考えてみてほしい。
インタビュー&文 : 西澤裕郎
SIBERIAN NEWSPAPERの新作が配信開始
SIBERIAN NEWSPAPER / 0
「音楽に景色が見える」「世界の音を内包する」と内外から評されてきたSIBERIAN NEWSPAPER。今回はさらにポップやロックをも飲込んで進化し、強烈な個性の存在をストレートに対峙させた唯一無二のオリジナリティ際立つ、これまでに無い新境地へ到達。
演劇集団キャラメルボックスの作品『無伴奏ソナタ』のサントラを配信
CARAMELBOX / 無伴奏ソナタ
音楽と舞台の完璧なる調和。SIBERIAN NEWSPAPERの音楽がキャラメルボックスの舞台を新たな次元へ導く。劇場を「喝采」の渦に巻き込んだ『シュガーの歌』も完全収録して、キャラメルボックス×SIBERIAN NEWSPAPERの奇跡のコラボレーション、配信限定で遂に登場。
舞台を見てきたお客さんたちに伝わらなければいけない(土屋)
――まずはじめに、簡単な自己紹介をお願い致します。
加藤昌史(以下、加藤) : 演劇集団キャラメルボックスの製作総指揮をやりながら音楽監督をしている、加藤と申します。1985年に劇団を作り、それから120本ほど、選曲は全部僕が担当しております。とにかく音楽がないと生きていけないくらい大好きです。根っこはDEEP PURPLEです。宜しくお願いします。
多田直人(以下、多田) : 演劇集団キャラメルボックスで劇団員をやっています、多田直人です。2004年に入団で、今年で入団9年目の中堅です。音楽の事で言えば素人に産毛が生えた程度で、ちょっとギターをやったり、劇団の中でフォーク・デュオ(ペリクリーズ)を組んで、お芝居の前に、音楽にのせて前説をやっていたりもしましたけど、解散しました(笑)。あと、地元の釧路で、ちょっとだけストリート・ライヴなんかもやっていたんですが、寒いから直ぐに手がかじかんで、やめました(笑)。
真鍋貴之(以下、真鍋) : SIBERIAN NEWSPAPER、クラシック・ギター担当の真鍋と申します。えーと、そうだな。僕は家が写真屋さんの長男で(笑)。そこから言っていいですか?
――短めにお願いします(笑)。
真鍋 : 短めに。生まれて、どう考えても写真屋さんになる予定やったんですけど、音楽が好きで小学校の頃からブラス・バンドをやるようになって、中学校でギターを始めて、そこから音楽一本です。親の説得を逃れ、もう20年ほどギターをやっており、現在に至ります(笑)。
土屋雄作(以下、土屋) : SIBERIAN NEWSPAPERのヴァイオリンを担当しています、土屋です。SIBERIAN NEWSPAPERというのは6人組の音楽グループで、2005年に結成されました。編成は、ギター×2、ヴァイオリン、パーカッション、ウッドベース、ピアノです。
――ありがとうございます。今回、対談を組ませていただいたのは、キャラメルボックスの『無伴奏ソナタ』という作品にSIBERIAN NEWSPAPERが音楽で参加されていたこと、そしてSIBERIAN NEWSPAPERのニュー・アルバム『0』と同時に『無伴奏ソナタ』のサウンド・トラックが配信されるということで、両者のお話を伺いたいと思いまして。まず最初に、『無伴奏ソナタ』が、どういう話かを教えていただけますか?
加藤 : 『無伴奏ソナタ』というのは海外のSF作品で短編小説なんです。端的に言えば、音楽の天才が音楽をしちゃいけない!と言われる話。その話の中では、子供の頃に才能を見つけられた人は、音楽だけをやらされるんですよ。しかも、その音楽というのは、他の人の影響を受けてはいけないという設定で。ところが、多田の演じた主人公クリスチャンはある時、バッハの音楽を聴かされてしまうんですね。それがバレてしまって、音楽界を追放されて、音楽をやることも禁止される。でも、堪えきれずにピアノを弾いてしまい、指を切られるんです。それで別の仕事に移されるんですが、そこで歌を作って歌ってしまうんです。だから、また捕まってしまい、今度は喉をつぶされます。そして今度は取り締まりをする方にまわされて、優秀な取り締まり係になるんですけど、70歳になった時に解任されて、街を歩いていたら、昔自分が作った歌がまだ若者に歌われていて… というお話です。「ピアノという楽器を知らない、音楽の天才が弾くピアノ」だったり、「まだこの世に無い音楽」「バッハを聴いたことで影響されて生まれる音楽と、バッハを聴く前の音楽」というような難しいシチュエーションが沢山あったので、これは実際に音楽を使うのは難しいだろうな、と思っていたんです。
――なるほど。
加藤 : それで、演出家は音楽ナシでいこう、と言っていたんですけど、その時、「世の中にない音楽をやっている人たちがいるな」と思い出してしまったんです。それが、SIBERIAN NEWSPAPERだったんですね。
――加藤さんは、SIBERIAN NEWSPAPERにはどのような印象をお持ちだったんですか?
加藤 : 僕は2枚目のアルバム、『COMICAL SALUTE』を持っていたんです。それを聴いて、「凄い! 」 と。いわゆるインストゥルメンタルでこの編成だと、ニュー・エイジとかヒーリングっぽくなるはずなのに違う。うるさすぎる(笑)。
真鍋 : 色んな意味で(笑)。
加藤 : でも、僕の中にあるロックではない。あまりにも繊細過ぎる、あまりにも演奏が上手過ぎるという色んな要素があって、この人たちは今までにいないなと思っていたので、相談してみたんですよ。普通、ミュージシャンだったら「世の中にない音楽を作って下さい」と言われて受けることはないだろうと思ってたら、あっさり、やりますよと言って下さって、それがきっかけですね。
土屋 : 実はこれを作る前にキャラメルボックスの前作の打ち上げで話を伺ったんです。『無伴奏ソナタ』は凄く思い入れのある作品なんだと。20年ほどあたためていて、今回、初めてやると。そんな作品に音楽をつけるということに凄く重い責任を感じていました。最初に『無伴奏ソナタ』の原作を読んだ時に、確かにこれは音楽はない方が良いんじゃないかなと思って(笑)。音楽が邪魔になってしまう可能性もあるなと。それに、キャラメルボックスの舞台は、多くの人に伝わるポップさを持っている。ただ単純に「ほら。これだったら今までになかったでしょ」というものじゃなくて、ちゃんと音楽として成立していなきゃいけないし、ポップなキャラメルボックスの舞台を見てきたお客さんたちにちゃんと伝わるものじゃないといけない、というところが、まず、前提としてありましたね。
――やはりそこには、ミュージシャンとして挑戦してみたいという気持ちがあったんですか。
土屋 : 実は、『無伴奏ソナタ』という作品をやりますと言われた次の日に原作を買って読んだんですね。そうしたら、作りたくなってしまって。それで、その場にパソコンがあったので、ヴァイオリンを弾いて、30秒ぐらいの『無伴奏ソナタ』という作品に対する曲を録音して、加藤さんへのご挨拶文と一緒に、こんなの作ってみました、と添付したんです。
――おお!
加藤 : それをすぐに演出家の成井豊に転送したんですけど、「これ良いんじゃない!? 」ということになって。もちろん僕も「これだこれだ! 」と思ったんですけど。演出家もまず喜んじゃいましたね。「出来るんだこんなの! 」と。
土屋 : いやいやいや。
加藤 : 更に、劇中で、クリスチャンが作った歌が世界中で歌われることになる、という設定があって、それをラストにみんなで歌うという台本だったんですね。だから、名曲じゃなければいけない。しかも、世界中で大ヒットする曲じゃなければいけない(笑)。これを作る人はいないだろうと思ったら、この人(真鍋さん)が、ひょいと。
真鍋 : ひょいと、ということになってますけど、大変だったんですよ(笑)。結局10曲くらい作ったんですが、どれもなんか違うなあと。それで、たまたまオフの日が一日あって、その日は初心に戻ろうと思って、バッハの「無伴奏ソナタ」を聴いていたら、ターラララー♪みたいなメロディが頭の中にぴゅーっと出てきて「おおお! きた! 」と思って、そのあと10分くらいでばーっと作って。
加藤 : この二人、やっぱり天才ですね。
土屋 : でも取っ掛かりは、それまでにキャラメルボックスの作品を観させていただいて、そこに感化されているんだと思います。
――それはSIBERIAN NEWSPAPERとしてではなく、1ミュージシャンとして反応したということでもあるんですか。
土屋 : そうですね。加藤さんのおっしゃるように、それまでSIBERIAN NEWSPAPERは音楽的には個性の強い部類に入ると思っていたんです。だから、僕らの作った作品が何かに当てはまっていくということ自体があまり想像出来なかったんですね。逆に言うと「当てはまらせないぞ」というくらいの意識でずっと作っていて。それで、前に、キャラメルボックスの『飛ぶ教室』と『トリツカレ男』という作品に、僕らの既存曲を使っていただいて、それを観た時に、自分たちの音楽も、こういう風に当てはまっていくことが出来るのか! という嬉しさと、当てはめられられちゃった! というちょっとした悔しさがあって(笑)。
――(笑)。
加藤 : キャラメルボックスの舞台は、悲しいシーンで悲しい曲をかけないんですよ。「なぜこの人が悲しいのか」という裏の気持ちで曲をかけたりとか。あと、凄く辛い状況の主人公がいた時に、その主人公を励ましてあげるためにかけるとか。映画とは全然違う手法なんですね。
土屋 : 情景そのものを描写するような曲は使われないですよね。
加藤 : いわゆる「劇伴」と言われるような説明的な音楽の使い方はしないですね。だからいつも苦労するのはそこなんですよ。説明的な音楽はいくらでもあるんだけど、この人がこれをする、その心の中の動きを表現してくれる曲はないかな、というところで。
多田 : 出演している側にとっては、音楽って心強いんですよね。このシーンはこういうシーンだよという説明的な音楽じゃなくて、割とそのシーンの登場人物に寄り添ってくる音楽がかかったりするんで、自分の感情の底上げになるんですよね。
――悲しい時に悲しい音楽がかかるというような、説明的な音楽がかかるよりも演じやすいんですか?
多田 : そうですね。だから逆に、ここでこういう音楽がかかるのであれば、自分はこういう芝居をしようかなとか、新たなアプローチの仕方が発見できたりするんで。
――多田さんは、SIBERIAN NEWSPAPERの音楽で演じるのはどうでしたか?
多田 : 僕らも稽古場で凄くわくわくしていて。もちろん不安もあったんですけど、一体どんな音楽がくるんだろうって。特に最後の「シュガーの歌」なんかは、「きたな!」と思いました。
真鍋 : おお!
加藤 : あの曲やばいよね。聴いていても泣けるけど、歌うと泣いちゃうんですよね。
――こういう普遍的に歌われる音楽に向かい合ってみて、長い時間、人に歌われる音楽はどういうものだと思いましたか?
加藤 : 僕はやっぱり邪念のない音楽だと思いましたね。世の中に”歌い継がれる”と”売れる”は違うと思うんですよ。別に売れるために作るのが悪いとか言ってるのではなくて。クリスチャンは、工事現場のみんなで歌える歌を作ろうと思っていたんですよ。それで真鍋さんには、キャラメルボックスのみんなが歌えるように、弾けるように、簡単なコードで書いてくださいとお願いしているので、凄く縛りがある中で、ピュアに作って下さったんじゃないかなと。一番嬉しかったのは、お客さんが歌いながら帰っていくという。
――素晴らしいですね。
加藤 : 僕は公演の時はロビーにいるんですけど、お客さんが口ずさみながら帰って行くんですよ。こんなの初めてですよね。凄い曲を作っちゃったんだなこの人、と思って。伝わり易さ、誰の体にも染み込むメロディというのが普遍的なものなのかなと思いました。
土屋 : 僕は、劇中では最初に流れる、主人公クリスチャンが森の中で最初に弾く曲(「eternal sunshine」)を作っているんですけど、それが最初は全然作れなかったんですね。20何年間も森の中で誰とも関わりなく生きてきた作曲家がスパッと弾きだす曲はどんなものだろうって。
加藤 : しかも台本には楽器としか書かれていないしね。ピアノとも限らないし。
土屋 : そうなった時に、行き詰まってしまって。楽器じゃなくて、実は歌いながら作ったんです。
多田 : いつもは違うんですか?
土屋 : 違いますね。その時は、最後のシーンが頭の中にあって、この人はここから(森のシーン)紆余曲折の何年間を送るんだけど、最後はみんなに語り継がれる曲を作る人なんだなということを遡った時に、何も考えていないピュアなものと、色々あった後のピュアなものには絶対共通するものがあると思ったんです。それで、ギターを持って自分で歌いながら作ったら、一つのメロディーが出てきて、それをテーマにして作ったんです。僕はヴァイオリン弾きなのでギターはあんまり弾けないですから、コードを三つくらい使って歌いながら作ったんですけど、シンプルでも「あ、このメロディいいじゃん。楽しいじゃん」と思えるもの、音楽家でも音楽を楽しめるメロディを意識して。結局、自分が楽しめるかどうかですから。 ?
楽しい所は楽しい、徹底的にやる所は徹底的にやる(加藤)
――多田さんは実際にSIBERIAN NEWSPAPERからあがってきた曲を聴いてどう感じましたか?
多田 : お客さんの中には『無伴奏ソナタ』の原作を読んでお芝居を観る方も多いんです。今までも、小説を舞台化した時には、原作のイメージが強くて、自分の想像と違うなという感想を持たれるお客様もいたわけですね。でも今回、僕が公演のアンケートを読んだ中で、そういう感想は一つもなかったんです。「自分の想像と違う」とか「あの楽器の形はどうなんだ」とか。だから凄いことだなと思っていて。
土屋 : 最初のシーンで、「まだ聴いたことのない音楽」として、僕はグラスハープという、グラスの縁を指でこすって音を発する楽器を使ったんです(演奏はマリンバ&打楽器奏者の大橋エリさん)。
加藤 : そう! それで、そのグラスハープを使っているっていうことを演出家が知らないまま、大道具の制作に入っていたんですよ。劇場に行ってリハーサルをやる時に気付いたんですけど、グラスハープの音が出るはずない楽器があったらまずいな、と(笑)。本来、そういうことは無いんですけど、たまたまその美術を決める会議に出ていなくて。それで、かなりどきどきしながら行ってみたら、グラスハープっぽい楽器(道具)があって、総毛だっちゃいましたね。こんな偶然の一致あるんだって。しびれましたね。シビレアン・ニュースペーパー(笑)。
真鍋 : いただきました(笑)。
多田 : でも凄く嬉しかったですね。音楽のプロの方が、僕らのために凄く迷って下さって、音楽とかお芝居とか原作について一生懸命に考えて下さって。しかも稽古場にまで来て下さって。今まで色んなミュージシャンの方の音楽を使わせていただいたけど、実際に稽古場に来てどうなっているのかを見てくれる方はいなかったので。
加藤 : それだけね、やっぱり密接というよりも、音楽ありきの芝居だったから、こんなのはないですよね。
多田 : キャラメルボックスのお芝居って、とにかく間を空けないでどんどん台詞を詰め込むんです。2時間、徹頭徹尾エンターテインメント。だから喋る量が多いんですが、『無伴奏ソナタ』のクリスチャンに関してはあまり喋っていなくて、自分がどういう人間なのか、とかどう感じているのを喋らない。だから、その時に流れている音楽とかクリスチャンが作った音楽で、彼の感情を、台詞の代わりに語っていてくれたというか。だから僕が語らずとも音楽が語ってくれていたので、おいしかったです(笑)。
――SIBERIAN NEWSPAPERのニュー・アルバム『0』もリリースされますが、『無伴奏ソナタ』の曲を作ることで、何かしらの影響はあったと思いますか?
土屋 : 『0』のレコーディングをしている最中も、真鍋さんが、ずっとロビーにいるんですよ。何してるのかなと思ったら、パソコンに向かいながらずっと『無伴奏ソナタ』の曲を作ってて。「今7パターン目やねん」とか言って(笑)。
多田 : 『無伴奏ソナタ』に限らず、他に何か映画や舞台を観て、その影響を持ち帰って曲にすることもあるんですか?
土屋 : 勿論。今回の『無伴奏ソナタ』で、自分のSIBERIAN NEWSPAPERに対する作曲の考え方はちょっと変わったかなと思っています。先に額縁を決めてから作るというか。今まではそこら辺の壁で良かったんですよ。それが、あらかじめ枠を作ってみて、そこに当てはめてみよう、というような作り方を出来るようになりました。
加藤 : 今後もどんどんはめさせて頂きます(笑)。
土屋 : はまっていきます。
加藤 : あの、すいません。話したいことを思い出しました(笑)。いいですか?
――どうぞ。
加藤 : 『無伴奏ソナタ』の公演が終わった後、25年くらい観てくれているお客さんからメールが来たんですよ。「拍手のタイミングはあそこで良かったのでしょうか?」って。
多田 : あぁ。
加藤 : というのも、ラスト・シーンは真鍋さんが作って下さった「シュガーの歌」をみんなで歌うんですよ。クリスチャンが引退して街を歩いていたら若者が歌っていた、というところから広がって、世界中の皆が歌っているかのような大合唱に広がっていくというアレンジで。それで、大合唱が流れている時に出演者全員が出てきて、舞台の奥に立ってクリスチャンに拍手を送るんです。それで、クリスチャンが、ゆっくり正面を向いて灯りが消えていくというのが、ラスト・シーンなんです。でも、そのクリスチャンに対して演者が拍手を送るっていうシーンで、客席からも拍手が起きたんですよ。演技の拍手なのに、多田じゃなくてクリスチャンに対する拍手が起きたんです。これで初日にぼろぼろ泣いちゃって。その時に先陣を切って拍手していたのがその人だったんです。「思わず手を叩いてしまったけれども、それで良かったのでしょうか。演出の意図はどうだったのでしょう」と不安になったらしくて。「いやあ、あれですよ! 」と返して。でも、翌日も拍手が起きたんですよ。というか、ずっとだよね。ここで拍手して下さいなんて当然言わないですけど、お客さんも拍手したくなる瞬間!
多田 : お客さんと演者というのが一瞬なくなる瞬間で、誰がなにやらみたいな感じで。みんなが何か一つのものに向かって拍手しているという。後から、DVDで観たんじゃ伝わらない何かがそこにはあったなと思う。演劇と音楽が一つになってみんなで高まっていく中に自分がいられたのは、僕自身も感動した。
真鍋 : いやあ、僕もラスト・シーンで周りを見て、あれれ? みたいな。自分の作った曲でワーッ! となるわけじゃないですか。それは初めての経験だったから鳥肌が立って、良かったぁ、と。その時にやっと今回これで良かったんだ、間違えてなかったんだなと思って。
多田 : ずっとヒリヒリしたシーンが続く中で、まだお芝居が終わるかどうか分からないタイミング、もしかしたら話は続くかもしれないのに劇場全体が盛り上がって。
加藤 : あれは奇跡的でしたね。27年間やってきて初めての経験をしました。
――見事に皆さんの気持ちが伝わった作品だったわけですね。次は7月21日から『アルジャーノンに花束を』が始まるんですよね。
多田 : そうなんです。世界中で愛されていると言っても過言ではない『アルジャーノンに花束を』をこの度、キャラメルボックスが舞台化する事になりました。今、絶賛稽古中なんですけど、えっと、何を言えばいいですかね(笑)。今回も原作もので、これまで北村薫さんの『スキップ』、東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』とか原作ものをずっとやってきたキャラメルボックスが満を持して、経験を活かして、この傑作に挑んでいます。
加藤 : 去年、地震があってもういつ死んじゃうかわかんないなと思ったんですよ。それで2012年の演目をどうするか話をした時に、「出し惜しみはやめましょう。全部順番にやっちゃいましょう! 」というライン・ナップになったんです。『無伴奏ソナタ』もそうですけど、これをやらなきゃ死ねないよと思って。
多田 : 『アルジャーノンに花束を』は色んなところで映像化されているし、タイトルだけでも皆さんご存知だと思いますけど、そういう大傑作をまた改めて舞台化するというのも一つのチャレンジですし、今回はメイン・キャストをダブル・キャストで演じるというもう一つのチャレンジも乗っていて、一筋縄ではいかないですよ。
加藤 : でも、所詮キャラメルボックスなので、クラシックの演奏会のような緊張感ではなく、SIBERIAN NEWSPAPERのライヴのように楽しい所は楽しい、徹底的にやる所は徹底的にやるっていうポップなステージになると思う。今悩んでいるのは、SIBERIAN NEWSPAPERの曲をまた使っていいのかどうか。3本連続で使って良いのか迷っている(笑)。
土屋 : 別にいいんじゃないですか(笑)。
加藤 : かかっていたら笑って下さい。僕、もう逃れられなくなっているんで、SIBERIAN NEWSPAPERから。
一同 : (笑)。
SIBERIAN NEWSPAPER過去作&参加作も配信中!!
キャラメルボックス関連音源も多数、配信中!!
SIBERIAN NEWSPAPER LIVE INFORMATION
2012年7月16日(月・祝)@ROUTE26
2012年7月28日(土)@大塚GRECO(40名限定ライブ)
4thアルバム『0』レコ発ワンマン・ツアー
2012年8月4日(土)@名古屋 CLUB QUATTRO
時間 : OPEN : 18:00 / START : 18:30
チケット : 前売3,500円 / 当日4,000円 (※ドリンク代¥500別)
ぴあ : Pコード : 170-569 / TEL : 0570-02-9999
ローソン : Lコード : 41803 / TEL : 0570-000-777
e+
問い合わせ : TEL 052-936-6041(ジェイルハウス)
2012年8月7日(火)@大阪 心斎橋BIGCAT
時間 : OPEN : 18:30 / START : 19:00
チケット : 前売3,500円 / 当日4,000円(※ドリンク代¥500別)
ぴあ : Pコード : 170-955 / TEL : 0570-02-9999
ローソン : Lコード 55685 / TEL : 0570-000-777
e+
問い合わせ : TEL : 06-6258-5008(BIGCAT)
2012年8月8日(水)@東京 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
時間 : OPEN : 18:30 / START : 19:00
チケット : 前売3,500円 / 当日4,000円(※ドリンク代¥500別)
ぴあ : Pコード : 170-955 / TEL : 0570-02-9999
ローソン : Lコード 55685 / TEL : 0570-000-777
e+
問い合わせ : TEL : 03-5459-8716(duo music exchange)
PROFILE
SIBERIAN NEWSPAPER
阿守孝夫(アコースティック・ギター)
土屋雄作(ヴァイオリン)
真鍋貴之(クラシックギター)
藤田"軍司一宏(ピアノ)
山本周作(コントラバス)
平尾正和(パーカッション)
2005年結成のインストゥルメンタル・グループ。現在は阿守孝夫(アコースティックギター)、土屋雄作(ヴァイオリン)、真鍋貴之(クラシックギター)、藤田"軍司"一宏(ピアノ)、山本周作(コントラバス)、平尾正和(パーカッション)の6人編成。2006年イギリス「IN THE CITY」、2007年「FUJI ROCK FESTIVAL」出演。2006年~2010年にアルバム4枚、DVD1枚、を発売。『NOT JAZZ!! BUT PE'Z!!!』参加。2011~2012年に掛けて、様々なジャンルのアーティストとの競演や360度のスクリーン映像を使用するなど独特なワンマンLIVEも実施。テレビ番組等で頻繁に楽曲が使用される状況が続き、海外ではフランスのJ-MUSIC紹介サイト「Ongaku Dojo」に、インタビューが掲載された。さらに演劇集団キャラメルボックスの公演、「飛ぶ教室」「トリツカレ男」にて印象的な場面での楽曲使用が注目され、2012年5~6月公演の「無伴奏ソナタ」では、音楽の天才として生まれながら音楽を禁止されてしまう主人公の物語の音楽という、最高に高いハードルに挑戦している。
SIBERIAN NEWSPAPER official HP
キャラメルボックス
演劇集団キャラメルボックスは、 1985年に早稲田大学の学生演劇サークル「てあとろ50'」出身の成井豊、加藤昌史、真柴あずき、らを中心に結成された劇団。 結成当初は、いわゆる「社会人サークル」として、週末だけ練習をして年に 2回春と秋に公演するという活動をしていたが、結成3年目に「プロになろう!」と決意し、練習回数を増やして年間3~4公演行うようになる。その後、 1990年12月には観客動員が1万人を突破。と同時に、それまで活動の拠点だった新宿の小劇場シアターモリエールから、シアターアプル、紀伊國屋ホールなどの中劇場に進出。1993年夏には、早くも観客動員は2万人を突破。 1995年には、劇団員の上川隆也(2009年退団)が突如抜擢されて主演したNHKのドラマ『大地の子』が大ヒット。そして、1996 年春に観客動員が3万人を突破。 1998 年夏には 4万人を突破し、その頃から「春の公演からほぼ 1年中休みなく稽古と本番を繰り返しながらクリスマスを迎える」というパターンで1年間を過ごす。
劇団員の数は、俳優が35人前後。 1公演につき約 20人が関わって作品を創っています。 中心的な俳優は、男優では西川浩幸、岡田達也、大内厚雄、畑中智行、女優では坂口理恵、岡田さつき、前田綾、岡内美喜子。毎年オーディションを行い、1~4名の若い俳優が入団しています。そして、毎年新人がデビュー。キャラメルボックスの舞台作りの基本精神は、「1ステージ完全燃焼」。 そのため、1公演でのステージ数を最多でも 50ステージとしている。“人が人を想う気持ち”をテーマに、“誰が観ても分かる”“誰が観ても楽しめる”エンターテインメント作品を創り続けています。
作風は、一言でいえばエンターテインメント・ファンタジー。 SF、時代劇、ラブ・ストーリー、どのジャンルにおいても、日常の中で非日常的なことが起こるのがキャラメルボックス作品第一の特徴です。これを「笑って、興奮して、感動して、泣ける」芝居にしているのが、息をもつかせぬスピーディーな展開と、ミュージカル並に音楽を重視した演出。そして、手に汗握るクライマックスと、大きなカタルシスをもたらすハッピーエンドのラストシーン (“ハッピー”と言い切れない場合もありますが)。劇団員全員が「アーティストである前にエンターテイナーであれ」を指針に作品を創っています。ライバルは、ディズニー、 スティーヴン・ スピルバーグ。目標は、 宮崎駿監督作品『天空の城ラピュタ』。
近年は、北村薫氏、梶尾真治氏、恩田陸氏、東野圭吾氏など、現代を代表する人気作家の小説を次々と舞台化。「原作の世界をうまく表現しつつ、それでいてキャラメルボックスらしさもある」と非常に高い評価をいただいている。