
人力ミニマル・テクノ・バンド、ヨルズインザスカイが新作を発表
YOLZ IN THE SKY / DESINTEGRATION
崩壊から創り出されたミュータント。冷めたビートと高鳴りで踊る。永遠に繰り返されるビート、上質な織物のように何層にも折り重なるサウンド。そして突如現れては霧のように消える声。音楽の様々な様式を、またバンド自身をまさに壊すように突き進み、未だ進化過程、しかし今ここに刻まれるべき発明品の様な作品の誕生。
【DISC 1&2 TRACK LIST】
01. FAST CAR DRIVE / 02. C'MON / 03. WAVER WAVER
01. FAST CAR DRIVE (ver.2) / 02. C'MON (ver.2) / 03. WAVER WAVER (ver.2)
全6曲アルバム購入のみ 1800円
音楽というプールの中を潜水でどれくらいまで泳げるか
音楽的要素だけで、ここまで勝負できるロック・バンドが今の日本にいるだろうか。少なくとも僕が知っている限りはいない。仮にいたとしても、彼らが他のバンドにひけを取らないことを確信している。この3人組は、とんでもないバンドへと深化し続けている。YOLZ IN YHE SKYは、これまでに2枚のアルバムをリリースしている。デビュー作となる『YOLZ IN THE SKY』は、設立20年を迎えた老舗レーベル、less than TVからのリリースで、どちらかというとハードコア・パンク色が強い作品だった。2作目となる前作『IONIZATION』は、クラウト・ロックを思い起こさせるハンマー・ビートを用いたミニマルなロックに様変わりし、それまでのファンを驚かせた。続く今作は、その流れをさらに押し進めた新作ということになる。前作のリリース・タイミング時に、ギターの柴田健太郎とドラムの平瀬晋也にインタビューを行った。そのとき、柴田が話してくれたことが印象的だった。
「(風穴を)開けてやるっていう思いは、多少はあるかもしれない。でも自分で作った音に満足することができて、それでライヴをやることが基本なんで。それをやった結果として風穴が開いていたらいいなと思います」。彼らにとっての基本は、あくまでも自分たちが納得できる音楽を作ること。恐らく、今もそれは変わりない。その姿勢はライヴにも現れていて、柴田と平瀬の2人で演奏が始まり、途中でヴォーカルの萩原孝信が登場する。しかし、演出的な盛り上がりはそこだけ。あとはMCもなく、持ち時間いっぱいまで途切れることなくライヴが続く。そういう意味で、彼らはまったく戦略的ではないし、サービス精神があるわけでもない。外部に気をかけることより、自分たちの内なる声に耳を傾けることに重きを置く。そうした選択をしただけのことではあるが、それを貫くことは実は難しい。そして、その姿勢を突き詰め、自分たちの音楽のみで周囲を黙らせるまでに成長した。

今回のメタル・ボックス仕様にしても、僕らが思うほど大きな意味はそこにないだろう。既存の何かをぶち壊したい気持ちも、前回のインタビュー時には多少あったようだが、今ではどうか分からない。彼らの現状を例えて言えば、音楽というプールの中を潜水でどれくらいまで泳げるか、そんな状態にいるに違いない。他のバンドが息をあげてしまうところで、彼らは顔をあげず水中を進み続けている。まだ見えない景色を見るため。その一心だけで。
前作のリリース後、メンバー脱退という大きな出来事があった。それでも彼らは水面に顔を出さず泳ぎ続けた。もはや、これは他人との競争ではなく、自分の限界をどこまで越えられるかだ。これはYOLZ IN THE SKYのYOLZ IN THE SKYに対する挑戦なのである。そのような状況下で先鋭化されていった彼らの音楽は、クラウト・ロックから人力ミニマル・テクノにまで発展した。そのサウンドは、ライヴ・ハウスよりクラブが似合うし、クラブよりもライヴ・ハウスが似合う。ライヴ・ハウスでもクラブでもない、第3の空間を彼らの音楽は必要としている。それくらい、YOLZ IN THE SKYのライヴは凄まじい。その一つの道として、元映画館だったライヴハウス渋谷WWWで、スクリーン全体に都会の映像を映して行ったライヴは革命的だった。まるで都会のビルの屋上から、都市に暮らす人々に対してサウンドを鳴らしているような圧倒的のステージだった。彼らは自己の内にある音楽的感覚を目指して深く深く潜ることで、外部の環境を切り開こうとしている。しかし、本人たちにとっては結果にすぎず、さらにプールの底を息継ぎせずに進んでいくのだろう。その深化がどうなっていくのか。それはまったく想像がつかないが、とんでもない世界を見せてくれるに違いない。それだけは、僕にもわかる。(text by 西澤 裕郎)
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YOLZ IN THE SKY SCHEDULE
『YOLZ IN THE SKY presents GO TO “DESINTEGRATION” release show』
2012年5月1日(火) @渋谷 WWW
w / KIMONOS
『KAIKOO POPWAVE FESTIVAL 2012』
2012年4月21、22日(土、日) @船の科学館 野外特設ステージ
YOLZ IN THE SKY PROFILE
Vo : 萩原孝信
Gt : 柴田健太郎
Dr : 平瀬晋也
2003年結成。less than TVからファースト・アルバムをリリース後、Fuji Rock、SXSWなどに出没。2009年にはfelicityより2ndアルバム『IONIZATION』を発表。その後もライヴ活動を中心に、多種の音楽性を吸収しながら進化を続ける。 無機質であるがゆえに揺り動かされるビート。テクノかと思えば、カオティックなノイズが、カタルシスを感じさせるギター。いつ落ちるか分からない雷のようなハイトーン・ヴォイス。言うならば、一心不乱に踊り狂うためのミュージックである。
>>YOLZ IN THE SKY official website