PACKS 『Melt the Honey』
マデリン・リンクのソロ・プロジェクトとして始動するも、現在はバンド形態で活動するPACKS。おなじみとなったメンバーと共に制作された本作は、メキシコでの合宿を経て、セルフ・レコーディングされたという。前作からさらに成熟したバンド・サウンドでありながら、今プロジェクトの醍醐味ともいえるローファイ感が損なわれないのは、やはり彼女のこだわりなのだろう。粗いギターがそそるガレージ・ポップと少年ライクなダウナーな歌声には、バンドキッズらしいエモさを感じるし、小細工なしのストレートなプレイとノスタルジーを誘うコード進行にはうるっと来る。BoygeniusやSnail Mailらを好むインディー・ラヴァーには間違いなく刺さるはず。
BANDCAMP
Atomic Fruit 『Play Dough』
昨年の新人枠で最も感動したのが、ベルリンを拠点とする4人組バンドによるデビュー・アルバム。まず驚くのは、全編を通して保たれたハイクオリティなサウンドだ。実験的なトリップホップが繰り広げられる中、エレクトロと生楽器は密に融合し、ギターのミュート音からトランペット、シンセまでが同等に並んで、明瞭なまま耳へ届く。複雑なフレージングも流麗に奏でる彼らのテクニックも脱帽ものだ。そしてファルセットを巧みに使いこなすヴォーカルはどことなくトム・ヨークに似た響きがあり、早打ちのビートが駆け抜けるようなハードな楽曲にもムーディーな風合いを生み出すのが良い。中でも特に彼らの才能が光る“Eternal Afternoon”と“Play Dough”は必聴。
BANDCAMP
ZAZEN BOYS 『らんど』
何年と、何度も聴く“性的衝動”という歌詞に飽きることがない、というのは実に不思議な話だ。そんなことを思いながら1曲目を聴き始め、聴き終わる頃にはすでに血が騒いでいた。ソウルのフィーリングが強まれど、アレンジは異なれど、12年という月日を疑ってしまうほどブレない音楽、ブレない精神がここにはある。シンセゼロの生身勝負、人生の深みが滲み出るようなグルーヴとファンキズム、いつにも増したメロディックなヴォーカル、おなじみのヤツから自由で粋な言葉たち。それらを頭で理解する前にハートが反応して暴れ出す。これぞ至福の音楽体験だ。強烈なサウンドとワードセンスで埋め尽くす“乱土”から全てが斜め上を行く“胸焼けうどんの作り方”のNAMAZU2連チャン、あまりの格好良さに打ちひしがれている
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