The Drums 『Jonny』
これまでも自身の性や愛、幼少期のトラウマについて幾度と向き合ってきたジョニー・ピアーズ。そんな彼が再び人生を回帰し、ようやく自分を愛せるようになった末に生まれたのが本作だという。約4年ぶりのニューアルバムは、The Drumsといえば、なサーフ・ポップな音楽性から、70'sポストパンク、80'sニューウェイヴ色を強めた新路線を開拓。まるで積み重ねてきた怒りや悲しみを放出するように、最も理想的な愛を訴えるように、希望と絶望を繰り返す人間の美しさを叫ぶように、彼史上最も色彩豊かな楽曲が揃う。剥き出しの体を捉えたアートワークは、虐待現場となった父親のオフィスで撮影されたもの。過去の苦しみと物理的に対峙したからこそ生まれたであろう力強い生命力を、作品全体からひしひしと感じる。
BANDCAMP
RINSE 『Sinkerº'』
オーストラリアはブリスベン / ミーンジンを拠点とするRINSEことジョー・アギウスによるニューEP。ポストパンク、ニューウェイヴ、シューゲイザーなど幅広いルーツを持ち、それらを独自に解釈したオルタナ・ポップを展開してきた彼だが、本作ではシンセが華やぐダンサブルな楽曲揃いに。Pet Shop Boysのようなポップ性やダンス・ミュージックに接近して以降のPrimal Screamを想起させつつ、Nine Inch NailsやCurveのようなインダストリアルなテイストも取り入れた重厚感のある音楽性で、無機質なヴォーカルもよく映える。憧れの時代を象徴するかのような、レトロなビジュアルと映像がクールなMVもおすすめ。
tenbin O 『Lack Of Heroism』
“英雄主義の欠如”という作品タイトルにまず惹かれる本作は、2022年1月結成の3ピースバンドによる1stアルバム。ガレージ色が混じるポストパンクからモダンソウル、サイケ・ポップ、オルタナティヴ・ロックなど、さまざまなエッセンスが交わるムーディーな全8曲は、生感が残る紛うことなきバンド・サウンドでありながら、纏う雰囲気や描く情景はどこか浮世離れしている。可憐で無重力な歌声から幽玄的な低音まで楽曲ごとに移り変わるヴォーカルも掴みどころがなく、それがバンドの非現実的な魅力にも繋がっていく。かつての禁断の多数決のような現代的ヴェイパー・ウェイヴとJ-POPの融合を感じさせる一面もあり、後に収録曲を“モール・ソフト”の生みの親・猫 シ Corp.がリミックスしたのも納得。
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