
エイフェックス・ツインが江戸時代に舞い降りた?! 恐るべき三味線ブレイクコア!
Artificial Lover / Nava
大内一範による暴虐三味線ユニット、Artificial Loverの1stアルバムが到着。エフェクター、ボウ弾き、パーカッション・プレイなど、伝統を逸脱した奏法でテンションの高いハードコア・ミュージックでありつつ、ところどころに雑多な音楽の要素が顔を出すユーモアに満ちた一面も魅せる。高速変拍子のお祭り騒ぎと殺気立つ空気。クレバーなのか、狂っているのか。Atari Teenage Riot好きなら悶絶の2曲目から5曲目のTRIPへ、古典楽器ならではの情緒漂う空気を分断するかのように、一気に駆け抜けます。
販売形式 : mp3 1500円 / wav 1800円
★アルバム購入者にはArtificial Loverのライヴ映像をプレゼント!
未知なる世界のお祭り騒ぎ

個性の強い2つの要素を組み合わせることによって、思いもよらないものが生まれることがある。雄ライオンと雌トラが交わって生まれたライガーや、雄ヒョウと雌ライオンが交わって生まれたレオポン、はたまたトーストと小倉あんが交ざって生まれた小倉トースト(ちょっと違うか? )など、どの分野を見ても、そうしたハイブリッドなものはあるものだ。倫理的な問題がつきまとう場合こそあれ、異種交配することによって、それぞれの長所を持った新しいものが生まれてくる。もちろん、まったく異なったものが交わるのだから、上手く交わらなかったり、奇形なものが生まれる可能性も非常に高い。つまるところ、2つの異なる要素を交配することは、リスキーな作業でもあるわけだ。そんな作業を音楽の世界で実験しているのが、今回紹介する大内一範の一人ユニット、Artificial Loverである。
そうは言っても、音楽の世界では、2つ以上の音楽を組み合わせることは決して目新しいことではない。ジャズを基調にロックやファンクなどを交配させたフュージョンや、Limp Bizkitを代表とする90年代後半に起こったミクスチャー・ロックなど、音楽における交配活動の歴史はそれほど浅いものではない。そう考えると、三味線とブレイクコアを交配しようという試みも、新しいことではないのかもしれない。それにも関わらず、大内は異種交配することにこだわり続けている。自身のブログやtwitterでも、折に触れて2つのものが交配することに関して言及している。なぜ、そこまで彼はこだわるのか。それは、ドラスティックな変化が起こっていない近年の音楽シーンへの挑戦だ。大内はロックの歴史だけでなく、音楽理論などにも精通している。つまり、過去の音楽や理論を組み合わせることで、まったく新しいものを生み出そうとしているのだ。そして、あくまで一過性ではない耐久性のある音楽を作り上げようとしている。その行為自体が、目新しさを求めることに終始しがちな音楽業界への批評として機能している。
Artificial Loverは、活動当初、紙芝居や巨大ゼリーを取り入れて活動していたようで、三味線を取り入れたのは、その二年後の2004年だという。2006年と2009年には、アメリカ・ツアーも行っている。三味線を取り入れてから7年という歩みを見ても、全世界的に通用する、見たことのない音楽を作ろうとしていることが伝わってくる。伝統的で土着的な楽器の三味線を、ブレイクコアという無機的なフォーマットと融合することによって、文化的背景をとっぱらいながら伝えていく。そうした姿勢は積極的に評価されてしかるべきだろう。
フュージョンやミクスチャー・ロックは、大きなムーブメントとなり一つの市場を築き上げたが、三味線ブレイクコアが同じくらいの規模のムーブメントになるとは考えにくい。だからこそ完全なるオリジネイターとして、Artificial Loverの名を刻んで洗練していってほしい。この異種交配は、まだまだ進化することが出来る余白がある。もっと進化する可能性を秘めているはずだ。まったく予想もできないくらいの未知なる世界を切り開いていってくれることを期待してやまない。(text by 西澤裕郎)
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PROFILE
Artificial Lover
大内一範による暴虐三味線ユニット。殺気立ったテンションの高いハードコア・ミュージックでありつつ、ところどころに雑多な音楽の要素が顔を出すユーモラスな演奏者。津軽三味線についても、エフェクター、ボウ弾き、パーカッション・プレイなど伝統を逸脱した奏法を使っている。2006年初のアメリカ・ツアー、シカゴおよびオハイオ州でライブ。2009年2度目のアメリカ・ツアー。ニューヨークで2公演。国内ではクラブとライヴ・ハウスの垣根も取っ払い、全国各地で精力的に活動中。