Eliza & The Delusionals 『Make It Feel Like The Garden』
2022年にデビューしたオーストラリア発のスリーピース・バンドによるセカンド・アルバム。初期The 1975を想起させるようなみずみずしく、キラキラとしたポップ・ロックに、幼少期からヴェロニカズやアヴリル・ラヴィーンに憧れてきたという紅一点ヴォーカル、エリザ・クラットの高い歌唱力と力強い歌声が映える。シンセやサックスなども織り交ぜた華々しい楽曲たちが鮮やかな桃源郷を作り上げていく中、本作一のロックナンバー「Lately」では、シルバーサン・ピック・アップスのブライアン・オーバートが参加。さらにはニルヴァーナやスマッシング・パンプキンズら90年代オルタナの代表作を数多く手がけたガービッジのブッチ・ヴィグがレコーディングで携わっているという。甘い歌声の掛け合いと乾いたUSらしいギターサウンドに惚れ惚れとする1曲。
BANDCAMP
The Album Leaf 「Blast (feat. Aaron D4VD)」
映画・ドラマ音楽の制作に、アルバム/EPリリースと、積極的な活動を続けているアルバム・リーフ。即興から生まれたという本作の5曲は、すべてシームレスに繋がっていくため、30分の大作を堪能しているような気分に。丸みと深みのある音響系サウンドとブレイクビーツが、広大な宇宙空間とそこに生まれる生命の鼓動を表すようで、そこへサックスが甘いメロディを奏でては溶けるように消えてゆくのがまた美しい。アンビエント・ミュージックの側面を持ちながらも、きちんとメロディとリズムが際立たせ、繊細な情緒と迫力のあるストーリーが共に描かれていくのは、彼ならではの妙。壮大なスケール感と煌びやかな音の香水で盛大なフィナーレを飾る「Trajectory」は、ぜひ大音量で聴いて輝かしい宇宙の旅に没入してほしい。
Moses Sumney「Sophcore」
数々のサウンドトラックへの参加やモデル、俳優など活躍が目まぐるしいモーゼス・サムニー。3年ぶりの新作は、言葉からサウンドから歌声から、すべてが官能的。R&B、ジャズをかつてないほどポップスへ昇華、さらにはアフロ・ポップへもチャレンジしたムーディーなトラックたちは、多重録音した自身の声で構成されるコーラス隊やサックス、パーカッションなどでゴージャズに彩られていく。そしてニーナ・シモンを引き合いに出される艶のある歌声は、甘いファルセットを多めに、これまでの作品で最もセクシーに響く。良しと悪し、昔と今、男と女、自分とあなた。相互作用する二体を捉えた歌詞たちは“グレー”というなだらかな繋がりとはまた違う、対である白黒のように、凹凸があるからこそ交わる事象や愛、人との繋がりを讃えるよう。モーゼスの秘めたる欲求を惜しみなく曝け出した究極のラヴ・ソング集だ。