映画監督、ナレーター、俳優、多彩な分野で活躍する田口トモロヲ。彼が元々パンク・バンドばちかぶりのボーカルだったということは、今の若い人たちにはあまり知られていない。ばちかぶりはその過激過ぎるパフォーマンス(ステージ上での嘔吐、炊飯ジャーへの脱糞など)と、叫びに似た歌声、そのインパクトに反した文学的な歌詞で80年代バンド・ブームの最中、一気に注目を集めた伝説的なバンドだ。その中心人物だった彼が15年の時を経て、再びパンク・バンドで歌っているという! しかもメンバーにイラストレーター、ソラミミスト、最近はCMにも出演している安齋肇、「“ヘーコキ”ましたね」のヒットで知られるMEN’S 5のボーカル、淡谷三治、松任谷由美やTRFなどのバック・バンドで活躍するパーカッショニストの小野かほり、HB、セレブスなどで活動するドラマーのMAKI999と、一見脈絡の無さそうな豪華面々が揃っている。しかもこれだけのメンバーが揃いながら、ギターの小野、安齋、ベースの淡谷は敢えて経験の無いパートを選び、楽器を買うところからこのバンドを始めたという。まるで映画「青春デンデケデケデケ(注1)」に登場する高校生たちのようだ。

田口トモロヲと安齋肇。50越えのツー・トップを擁する大人パンク・バンド、LASTORDERZ。新たなジャンル「大人パンク」とはどういうものなのか? 若者のパンクとは何が違うのか? バンド結成の発起人であり責任者でもある淡谷三治=ラスト・サンジと、田口トモロヲ=ラスト・トモロヲに話を伺った。

ちなみに余談であるが、淡谷がリーダーを務めるMEN’S 5の楽曲の中にアニメ「みどりのマキバオー」のエンディング・テーマとなった曲がある。筆者は小学生の頃、この曲が大好きで下校中に大声で歌っていた。思春期になってその意味を知り、遅れて赤っ恥をかき、作詞の淡谷三治という男を恨んだ。思い出深い人物に会えて感涙です。

注1 : 1992年に公開された大林宣彦監督の作品。ベンチャーズに影響を受けロック・バンドを結成した男子高校生たちの青春を描く。原作は芦原すなお。

インタビュー&文 : 水嶋美和

大人のパンク・バンド、LASTORDERZの処女アルバムをwavとmp3で配信開始!

LASTORDERZ / 大人パンク!
好きです。パンク! ホントです。田口トモロヲ(53才 / ばちかぶり)と安斎肇(57才 / ソラミミスト)の強力ツー・トップによるパンク・バンド、LASTORDERZから全ロック・ファンに送る処女アルバムが到着。安斎肇によるアルバム・ジャケットにもご注目!

【Track List】
01. 大人パンク! / 02. I♥GIG / パンク☆ミー! / 04. 安斎ちこく! / 05. フューチャーだらけ! / 06. 気分はAm! ... だった。 / 07. エコバッグでお買い物! / 08. ラゾク! / 09. 病院行って! / 10. リスペクトで行こう! / 11. 死ぬまで生きるぜ! / 12. パンクがいっぱい!

田口トモロヲ × 淡谷三治 INTERVIEW

——バンド結成の経緯について教えていただけますか? きっかけになったのはSex PistolsのSUMMER SONIC出演なんですよね?

ラスト・サンジ(以下、サンジ) : 資料にはそう書いてあるんですけど、本当は違うんです。
ラスト・トモロヲ(以下、トモロヲ) : もう暴露しちゃうの! ?

——え! じゃあ本当は?

サンジ : 小野かほりさん(ラスト・カホリーナ)は本来はユーミンさんのバンドなどでパーカッショニストなんだけど、僕が見に行ったライヴで一曲だけギターを弾いていたんです。他にもギタリストが居たからほとんど当て振りなんだけど、かっこよかったんですよ。「これ、本当に弾けない人ばっかりでやったら面白いんじゃないかな」って思い付いて、他に誰を誘おうかと考えたところで浮かんだのが安齋肇さん(ラスト・アンザイ)だったんですよ。

——安齋さんとはお知り合いだったんですか?

サンジ : そうですね。安齋さんとは、NHKの『みんなのうた』になった「ホャホャラー」の時にフーレンズってバンドを組んでいて、メールで誘ってみたら二つ返事で「やる! 」って返って来ました。

——サンジさんは元々ベーシストではないですよね? なぜベースを選んだんですか?

サンジ : やっぱり、パンクやるならシド・ヴィシャスかなって(笑)。で、俺が初心者だから怒らない優しいドラマーがいいなと思ってマキちゃん(ラスト・マキ)を誘ったんです。そしたらマキちゃんからもやるって返ってきたんだけど、肝心のかほりさんが首を縦に振るまで1年ぐらいかかりましたね。「やっぱり弾けない。」「俺も弾けないけどこれを機に始めるからやろう! 」って説得して。

撮影 / 三浦憲治

——高校生っぽい! 本当に初期衝動なんですね。

サンジ : 安齋さんは元々ボーカルだけで誘ってたんだけど、「僕もギター弾けないけど始めるから、一緒にやろうよ。」って言って、それが効いたのかはわからないけどとりあえず楽器を買って、またそこから半年ぐらい(笑)。

——バンドの話をし始めたのはいつ頃ですか?

サンジ : 2007年前半ぐらいから言ってて、年越して春ぐらいにSUMMER SONIC 08にSex Pistolsが来るのを知って、安齋さんに「なんとか出れませんかね〜? 」って言ったら「出れるかもしれない」って(笑)。そこから練習スタジオに入り始めたんです。

——一回も合わせてないのにSUMMER SONICが決まったんですか! ?

サンジ : 安齋さんが出たテレビ番組にたまたまそういう権限を持ってる人が出てて、安齋さんが「出してくださいよー」ってお願いしたら、その人も面白がって「いいですよ! 」って答えて、証拠が残ったからこれはもう出れるなと。当日行ったら1万人ぐらい入る会場で、まさかそんな凄い場所でライヴ出来るとは思いませんでしたね。

——それが初ライヴですか?

サンジ : そうですね。しかも同じ日にWORLD HAPPINESSの出演があって、SUMMER SONICの出演が終わってすぐに移動しました。

——WORLD HAPPINESSも相当大きいフェスですよね。

サンジ : あれは、誰かの個展を見に行った時に、主宰の高橋幸宏さんの事務所の方とばったり会って、「安齋さんとパンク・バンドを始めたらしいじゃないですか。WORLD HAPPINESS出ません? 」「出ます! 」で、決まりました。2008年はそれと、年末に一回やったのと、計三回ですね。

パンクなのに企画書があったんです(笑)

——そこにトモロヲさんが入ったきっかけは何ですか?

サンジ : その年の年末に共通の知人の飲み会で会って、その時に「今パンク・バンドやってるんです」ってバンドのプロフィールと音源を渡して、「歌ってくださいよー」って言ってみたんです。冗談でも「いいよ」って言ってくれたら「言ったよね!? ね!? 」って無理矢理引き込めるなと思ったんだけど、そこはさすが大人だからうやむやにされた(笑)。
トモロヲ : 「安齋さんがいらっしゃるじゃないですか〜」ってかわして(笑)。
サンジ : その次の日ぐらいに僕が下北沢をぷらぷら歩いてると、前からトモロヲさんが歩いてきたんです。
トモロヲ : 昨日会ったばっかりで、偶然また同じ街で会うっていうのが今まで無かったからすごい驚いて、これはロックの啓示かなって(笑)。その時「やりますよ」って返事しました。
サンジ : 道端で会って軽く話して、別れ際にさらっと「あ、やりますよ。バンド。」って全然声のトーン変えずに言うから、「あー、はい! 」って言って別れて、電車の中で「あれ? 」ってなったんです。で、急いで連絡先を他の人に聞いて「本当ですか? 」って確かめて。

——トモロヲさんは音源は聴いてたんですか?

トモロヲ : 聴いてました。パンクなのに企画書があったんですよ

一同 :

トモロヲ : それに目を通して、音を聴くのは大人として当然の礼儀なんで(笑)。単純に面白かったんです。元々音楽シーンに居た人が楽器を持ち替えてやる、その初期衝動こそがパンクだ! っていうマニフェストとか。パンクの全員持ち回りボーカル制っていうのも新しかったし、女子率が高いのもひきになりましたね。いちいち面白かったんです。

——トモロヲさん、バンド活動はすごい久しぶりですよね。

トモロヲ : 15、6年ぶりですね。ばちかぶり以来かな。

——その後、俳優、映画監督やナレーションなどで活躍されてましたが、自分でまたバンドをやろうとは思わなかったんですか?

トモロヲ : やはり、大変だったので。ばちかぶりは僕が年長者だったからリーダーにならざるをえなくて、バンドを維持するということにどれだけ意志の強さと体力が必要なのかを思い知っていたので、またバンドを組もうとはあまり思いませんでしたね。だから今回、「お、ラスト・チャンスだ! 」って思いました。責任者が居るっていうのはすごい良い事だと思う。

——パンク・バンドで「責任者」って肩書もあまり無いですよね?

サンジ : 普段無責任なんで、そう言われることで自覚しつつ、実際にそれを全うしてるかどうかはまた別なんですけど、否定しない方がいいんだろうなと思います。

——バンド名の由来は何ですか?

サンジ : 最初、「チャージバックス」って名前だったんですよ。
トモロヲ : そうなの!? それは初めて聴いた。
サンジ : でも、スタジオのおじさんに「チャージバックスって他にいるよね? 」って言われて「そうなんだ! 」って、その後すぐ他のバンド名を考え直したんです。居酒屋で。でもなかなか決まんなくて、というか、途中からふざけるじゃないですか(笑)。くだらない方に行っちゃって、そしたら居酒屋の人に「ラスト・オーダーです」って言われて「LASTORDERZでいいんじゃない? 」で、今に至ります。で、トモロヲさんが入ってくれるってなった時にもう一度バンド名を考え直したんです。
トモロヲ : でも結局ぐだぐだして、「やっぱりLASTORDERZでいいんじゃない? 」って一周したんですよね。もうほとんど人生のラスト・オーダー入ってるし、逆に良い気がしてきたなあって言って。

安齋さんは遅刻はするけど遅刻する時間には正確なんです

——曲について話を聞かせてください。タイトルで一番最初に目に付いたのは「安齋ちこく! 」だったんですけど、やっぱり遅刻されてたんですか?

サンジ : しない時ないですね、今のところ。でもそんなに大きいのは無くて、2、30分ぐらいですかね。初リハの時に安齋さんが遅れてきて、待ってる間に出来た曲が「安齋ちこく! 」なんです。

——じゃあ初めて出来た曲なんですね。

トモロヲ : みんなの初めての共同作業がこれだったんだ!

——これを聴いて、初めて遅刻が作品化されたなって思いました。

サンジ : 安齋さんって、遅刻はするけど遅刻する時間には正確なんです。大体遅刻の連絡って「30分ぐらい遅れます」とか「半ぐらいに着きます」とかじゃないですか。でも安齋さんの場合、「26分遅れます」って微妙な分刻みなんです。でも本当にその時間ぴったりに来る。
トモロヲ : 細やかな遅刻。遅刻に対して紳士なんです。僕がこのバンドに入って真っ先に食いついたのがこの曲です。人生の先輩を呼び捨てにするなんて、素晴らしい! 名曲だ(笑)。

撮影 / 三浦健治

——「フューチャーだらけ! 」って、お酒飲みながら作りました?

サンジ : いや、飲んでないと思う(笑)。

——失礼しました(笑)。歌詞が「未来はフューチャーだらけ! 」から「毛だらけ」、「ボーボー! 」、「誰か淋しがり屋を慰めろー! 」で、最後は「デストローイ! 」で締めるじゃないですか。振り幅がすごいことになってるなと思って、つい(笑)。

トモロヲ : 宮藤官九郎君がコメントで「真面目な歌詞が一切ないのがいい」って言ってくれてたんですよね(笑)。

——「気分はAm! ... だった」は、何でAm(エー・マイナー)なんですか?

サンジ : 僕もかほりさんも初心者だったから、Amの曲ばっかりが出来ていったんです。

——それは、押さえやすいから?

トモロヲ : そうなんじゃないですか?
サンジ : 多いって気付いて、それだけですね。で、最初は「気分はAm」だけだったんですけど、トモロヲさんが入ってから「だった」を付けたんです。世界初のAmを擬人化した曲だと思います。
トモロヲ : 「プロジェクト・パンク」ですね(笑)。
サンジ : 結構前の曲だったから、過去形にするのは理にかなってるんじゃないかなと。

——二回目の語りはAmの気持ちですか?

トモロヲ : Amの気持ちってこんなだったんだって思いましたね。Amって「ちょっと暗いんじゃない? 」って言われ続けてますから。

>>インタビューは後半に続きます!

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