「illiomoteだったら話せるかな」って思ってもらえたら
──やっぱり謙虚なんですね、illiomoteは。
YOCO:謙虚でいたいです。
MAIYA:謙虚でいないと人を傷つけちゃいそう。
YOCO:たぶん誰しもだと思うんですけど、ちょっと気を抜くと傲慢な部分が出てきちゃうと思うんですよ。
──僕は完全にそれです。
MAIYA:自分もそうです。
YOCO:余裕がなくなるとそうなっちゃって、「あー、もうこんな自分やだな」を毎回繰り返すんですよ。「もうこんなことしたくないのに」みたいな。
──わかった!
YOCO:な、なんですか(笑)。
──すみません、だんだんわかってきたぞと思って。illiomoteのやりたいことは、たぶん「聴け!」とか「うちらについて来い!」ではないんですね。
YOCO:あ、そうですね。それはしたくない。
──そうじゃなくて、外から受けた刺激にリアルタイムで素直に反応している。弱い感情も含めて。
MAIYA:うん、そうですね。確かに「聴け!」って言ったことないよね。「聴け!」は大事だと思うしうらやましいけど、そうじゃない、うちらは。
YOCO:「聴いてほしいな~」ぐらい(笑)。
MAIYA:「聴くよ」のほうがよくない? 「聴くよ。話そ」みたいな。
──それですよ、きっと。illiomoteは「聴け!」じゃなくて「話そ」なんだな。
MAIYA:そのほうがいい。「illiomoteだったら話せるかな」って思ってもらえたらいいな。お友達で呪われてるんじゃないかって思うぐらい苦労続きで心を病んでる子がいるんですけど、「YOCOの歌詞はしんどいときでも聴ける」って言ってて、めっちゃうれしくて。そういうとこがあるんじゃない? 主張じゃなくって「話、聴くよ」とか「一緒に話そ」みたいな。
YOCO:うれしいね。どの曲?
MAIYA: “A.O.U” 。
YOCO:(笑)。確かに聴きやすい。
MAIYA:あいつ、かわいいよな。
YOCO:かわいい。さっきリアルな人間関係って話しましたけど、“Mid” には身近にモデルがいるんです。わたし、音楽活動に本腰を入れる前に看護学校をやめたんですけど、すぐに曲を出しはじめたわけじゃなくて、すごく悩んだ時期があるんです。そのときに、中学のころからずっと仲よくしてた友達が「ドライブしようや」って家の近くまで車で来てくれたんですよ。大学の友達を連れて、「こいつ免許取りたてで、練習させっから」って。わたしは「落ち込んでる」とかなにも言ってないのに。それまで夜とか本当眠れなくて、「あーもう死んだ。未来のこととか考えらんない」みたいな感じだったんですけど、その夜はなんか普通に楽しんじゃって、自然と「あ、なんかワクワクできるな」とか「楽しいかも」みたいな気分になれたんですよね。その人だけじゃないんですけど、いまも同業の友達が「大丈夫そ? 最近」とか夜中に電話くれたりして。
MAIYA:いいやつだよな……(泣き出す)。
YOCO:えー! ティッシュない? ティッシュ!
MAIYA:(涙を拭いながら)なにも言ってないのに、しんどいときだけ連絡くれるんですよ。いいよな、あいつら。わかるよ、どっちも。
YOCO:その子たちも家庭環境があんまよくなかったりとか、いろんな悩みを抱えてるんですよ。痛みを知ってるからこそ人のことを気にかけられる。そういう優しい人がありがたいことにたくさんいて、この人たちがいるから暗いわたしもそれなりに明るく生きてけてるな、とか。マジ人とのつながりサンキュー! なんですよ。別に “Mid” を聴いてそうなってほしいわけではないんですけど。
──そういう気持ちで書いた曲だってわかるだけで気持ちが楽になる人がいると思いますよ。だからその、なんて言えばいいかな……弱くて小さな人間同士、支え合って生きていきましょう(笑)。
MAIYA:マジそれ。そうしよ。
YOCO:手つないでね。
MAIYA:そうするべきなのに、なんでみんなそうできないんだろう。人間ってなんなんだろうって本当に思います。本当に人間が憎たらしいんですよ。でも好き。だからウザいんですよ。
YOCO:最近、いろいろ考えてたら、人間はなんで生まれたのか、って思っちゃって。もう野生動物でいいじゃん。全員全裸で野に放って、群れに入れないやつは死ぬ、いちばん強いオスが好きなメスを抱ける、みたいな。それでいいじゃないか、こんな悩むぐらいなら……って。なぜだかわたしたちは脳みそがムダに発達しちゃって、文明だけ発展してるけど、心はそれに全然追いつけてなくて。もう生きんのむずい(笑)。
MAIYA:ほんと生きんのむずいよ~。あとさ、コロナのせいもあってコミュ障になった気がする。高校生のときや卒業したばっかのときは、もっといろんな人と話せたのに。単にまだいろんなこと知らなかったから話せたのかもしんないけど。いまはしんどいです、本当に。
YOCO:ひとつなにかに気づいちゃったら……。
MAIYA:「うわっ、この人そういうタイプの人なんだ」ってなって、話せなくなる。人が苦手になっちゃってる。いまも話せてるとは思うけど、無理してるから。前は無理しなくてもできたのに。なんなんだろうね、もう。
YOCO:無理しないとわたしみたいになるよ(笑)。わたし基本的に家から本当に出なくて、田中さん(マネージャー)とかMAIYAちゃんとしか会わないんです。
MAIYA:わたしもそうよ。
YOCO:わたしよりは会ってるほうだよ。無理しないってなるとマジで人と会わなくなって、いい人とも出会えなくなっちゃうから。
MAIYA:そうだね。臆病になっちゃう。
YOCO:MAIYAは知ってくれてるからね。人間が嫌いなわけではないんですけど、やっぱ気づいてしまったから、そこに踏み込みづらい自分がいるんですよ。
MAIYA:でも気づいたほうがいいじゃん? なのに気づいた人が生きづらいの、なんなんだろうね。「いいよな、気づかないですむ人たちは」って思っちゃう。その人はそういう立場じゃなかっただけなのに。
YOCO:想像力って今後めちゃくちゃ必要になってくると思います。わたしは自分を閉ざしてしまう傾向が強いから、もっと人のことを想像して、勇気を持って踏み込んで曲を作ってかないとなって。
──「illiomoteと話してみない?」ですね。最後になにか言っておきたいことはありますか?
MAIYA:ライヴを見に来てほしいです。音源で聴くとたぶんクールなイメージを抱くと思うけど、実際に会ったら全然違うから。あんまり話してくれなさそうって思うかもしれないけど……。
YOCO:メイクもきついしね。
MAIYA:きつくしてるのは、ナメられたくないからだったりもするんですよ。
YOCO:きつくしとくと攻撃されないからね。警告色みたいな(笑)。
MAIYA:結局、見た目でみんな判断するから。黒髪でオフィス・カジュアルや制服だとみんな話しかけてくるけど、これだと話しかけられない。でも、なんかそれもイヤだよね。(黒髪のオトトイ梶野さんに)話しかけられます?
──(梶野)そうですね。ナメられがちだとは思います。
MAIYA:ナメてんじゃねえよって思うんですよ! 本当に(激怒)!
YOCO:額に「死」とか書いて前髪で隠しといて、話しかけられたら「おまえ、これが見たいのか?」って見せるとか(笑)。
MAIYA:ほんと憎たらしい。ぶつかってくる人いるじゃないですか。ぶっ叩いてやりたい。格闘技習おうかなって最近思ってる。絶対負けたくないから。
YOCO:えーと、言っときたいことがあるとしたら、YOCOがいちばん好きな歌詞は「ハロー今シブヤなの」(“Wake up soon”)です♪
MAIYA:わたしもお気に入りです。
──僕も好きです。
YOCO:かわいいなと思って。でも書いてるわたしは家から出ない。
MAIYA:渋谷なんか音楽の用事がないかぎり来ない(笑)。
YOCO:今日めっちゃ久しぶりに来た。そんな人間が書いてる歌詞です。
MAIYA:いいじゃん。たまにしかいないYOCOが “ハロー今シブヤなの” って言ってる。
YOCO:そうとうワクワクしてるってことだよ。IKEAで家具買って、ホットドッグもソフトクリームも食べちゃうぐらい(笑)。
編集:梶野有希
ロック色が増した、illiomoteの新作!
illiomoteの過去作はこちらから
関連記事
PROFILE : illiomote
幼稚園からの幼馴染みである YOCO(ヨーコ/Vo,Gt)と MAIYA(マイヤ/Gt,Sampl)からなる2人組。池袋を拠点とし作詞からトラックメイクまでを2人で手掛けている。2019年3月にYouTubeに投稿した「In your 徒然」が、ロックからポップス、ルーツミュージックまで混ぜ合わせたNEOな楽曲センスと、2人のHAPPYなバイブスが投影されたミュージックビデオで突如話題となり、楽曲発売前にも関わらず「POPEYE」や「BRUTUS」などのカルチャー雑誌やWEBメディアでピックアップされる。2020年に1st EP「SLEEP ASLEEP...。」、そして2021年2月3日にセカンド・EP「Teen Trip Into The Future」、2022年7月にサード・EP「side_effects+.」、2023年3月15日『HMN</3』にリリース。
■公式ホームページ:https://illiomote.amebaownd.com/
■公式Twitter:https://twitter.com/nekonootiri