REVIEWS : 108 合成音声音楽(2025年10月)──yaginiwa

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューするコーナー。今回は自身もボーカロイドを用いて音楽制作するyaginiwaが、合成音声音楽をテーマに執筆時から3ヶ月の新譜を9枚ピックアップ。
OTOTOY REVIEWS 108
『合成音声音楽(2025年10月)』
選・文 : yaginiwa
故やす子 『ういういかーかー』
故やす子によるアルバム『ういういかーかー』が〈OMOIDE LABEL〉よりリリース。マスコアやノー・ウェイブ / ポスト・パンクのような、不協和音とトリッキーなリズム・パターンが特徴的な故やす子。本作では、”らしさ”溢れるアヴァンギャルドなギターが炸裂しつつも、NUMBER GIRLをはじめとしたオルタナティブ・ロックからの影響を感じる、疾走感溢れるドラム・パターンが印象的です。歌詞に関しては、死臭が漂いつつもシュール / ナンセンスな言葉遊びと混ざり合い、自然とポップな印象を受けるバランス感が心地よい。実験的な音楽が好きな方はもちろん、故やす子の音楽世界への入口として、ギター・ロック / オルタナティブ・ロックが好きな方にも聴いていただきたい作品です。
迷妄羊 - 『「 」を手放そう』
2007年よりニコニコ動画に投稿しているボカロP、ひつじPこと迷妄羊によるアルバム。知声歌唱の美しいメロディの上に、鋭利なノイズ・ギターが棘剥き出しで壁のように張り巡らされる10曲入り。ほとんどの曲がノイズ・ギターとメロディの2音というミニマルな構成ながらも、その音の隙間の”余白”がとにかく美しく、あっという間に30分が過ぎ去ってしまいます。最後の10曲目に収録されている"花"のみサイケ / プログレ / シューゲイズな、他の曲とは違ったアプローチをしているのも印象的。余白が美しかった前9曲に対し、持続的に続く音に陶酔するように包み込まれていきます。ちなみに"犀の羽"、"りんごの匂いでいっぱいの空"など一部楽曲は過去に投稿されている別アレンジも存在するのでそちらもぜひチェックを。
エモくてオルタナでカッコいい 『Eingebrannt』
キタニタツヤのボカロP名義、こんにちは谷田さん主催の〈エモくてオルタナでカッコいい〉よりリリースされたコンピレーション・アルバム。紅白歌合戦への出演も果たしたキタニが、前作『エモくてオルタナでカッコe.p 5』から7年の時を経てサークルより発表した新作コンピです。新進気鋭のボカロPが中心に参加している本作は、フレッシュなボカロ×オルタナティブを感じつつも、キタニがリスペクトする〈残響レコード〉からの影響も感じます。主宰のこんにちは谷田さんによるカゼヒキ歌唱のマスロックをはじめ、ǢǪによるHyperflip / Breakcoreのニュアンスも取り入れた楽曲など、多様なオルタナティブを感じることができるコンピレーション作品です。






















































































































































































































































