這い上がりたいし、永遠に登り続けたい
──楽曲制作はどのようなプロセスですか?
Bimi : DJ dipっていうライヴも一緒に回ってくれるDJがいるんですけど、彼と一緒に作っています。彼がトラックを作って、自分が作詞してメロを入れて、という感じです。あとは先にコードやキーをオーダーして何回かやり取りする場合もありますね。
──DJ dipさんとはどういうところから出会ったんですか?
Bimi : 音楽活動がしたくて悶々としていた時期に、俳優の仕事でイベントに出たんです。そのときにいたメイクさんに、宇宙の壮大さがわかる動画を観ながら「自分、音楽がやりたくて仕方がないんですよ」って相談していたんですよ。そしたら、そのメイクさんが「知り合いに1人音楽作ってる人いるし、その人も宇宙の話をしていたよ(笑)」と言ってくれて。そのあと、焼肉屋で、DJ dip と会いました。そこで酒を飲みながら宇宙の話もしつつ音楽の話をしましたね。大体通ってきた音楽も似ていて、意気投合して「じゃあBimiくんに1曲書くから、それで合わなかったら馬が合わないということで」って言ってくれて、翌日にデモを送ってくれたんです。それがめちゃくちゃ良かったから、自分もすぐ返事して。結局できたのがMVも作ったインディーズの最初の曲“Tai”って曲ですね。
──そういう出会いだったんですね (笑)。歌詞の世界観はどのように構築していくんですか?
Bimi : 実体験が6割、妄想4割くらいで書いています。
──言語感覚はどのように培っていったんですか?
Bimi : 国語は昔から好きでした。あとは人の感情に敏感だったと思います。でも敏感すぎるがゆえに自分を強く見せようとイキがっていました。人気者ではあったんですけど、人気があっても自分が幻滅させるようなことしたら、すぐに嫌われるんだろうなと幼少期ながら思っていましたね。17歳で上京したんですけど、いきなり東京にきて俳優を始めたので、なんもわからず1、2年過ごしていました。そこで人と向き合うためにどうしたらいいか考えていたと思います。高校時代も授業は好きじゃなかったので、電子辞書の中にある文学を読んでいました。普段は小説好きじゃないですけど、そういうところも影響していると思います。
──どんな文学を読んでいたんですか?
Bimi : 芥川龍之介とかの文豪の小説を読んでいました。日本語のエロさを味わったり、海外のストレートさを知ったりしました。日本人の変態気質な部分は日本人の良さと思っているので、そうした言語感覚は大事にしたいですね。日本っぽい奥ゆかしさとか独特の変態性、間接的に伝える感じは自分の作品に纏わせたかったです。「月が綺麗ですね」みたいな情緒はかなり好きですね。
──日本のアーティストで衝撃を受けた人物、あるいは作品はあるんですか?
Bimi : アーティストだと、「たま」が書く歌詞はすごいと思いますね。“オゾンのダンス”という曲で、「かわいた土手に水をまこうよ そしたら開くよ曼珠沙華」って歌詞があって、これはやばいなと思いました。そういう言い回しが好きでしたね。
──Bimiさんの口から、たまの名前が出るのは意外でした。
Bimi : 退廃的で色気があるんですよね。音楽が好きな人からしたらかっこよさはわかるんですけど、音楽に詳しくない人からしたら声も変だし、かなり独特じゃないですか。でもあの感覚はすごく好きです。Bimiもいろんな声を出すのはたまの影響ですね。
──Bimiさんは現在4ヶ月連続リリースを行なっています。まずは10月17日にリリースした“babel”ですが、どんな楽曲に仕上がりましたか?
Bimi : “babel”に関しては売れる売れない関係なく、自分の人生を考えたときにここに置いておきたかったという思いがあります。この曲はBimiが売れたあととか、自分が死んだ後に、メジャー1発目にこの曲をリリースする意味が出てくるのかなと。Bimiという価値観や自分の人生がバベルの塔みたいに螺旋を描くけど、結局分かり合えない、だからこそ真の意味で繋がるしかないよねという思いを込めました。歌詞の通りで、人間関係に正解はなくて、でもなぜか人間関係を諦められなくてもがいている様が美しいなと思っているんです。「自分がどんな境遇になっても立ち直れるよ」という曲です。
──この曲は実体験がベースになっているような印象を受けました。
Bimi : これは実体験がほぼ100%ですね。
──「俺の人生 億の借金」という歌詞は衝撃的でしたよ。
Bimi : 「なんでBimiっていつもイライラしているんだろう」とか「俳優もやっていてどうせ小遣い稼ぎでやっているんでしょ」とか思っていると思うんですよ。人ってそんなに自分に興味を持っていないと思うので、冷やかしでも1回聴きにきたときに、伝えるべきことは伝えないとなと。「なんで俺だけ? 幾たびも思い なんて俺は特別だと酔う」というラインはうまく表裏一体を描けたかなと思います。
──この楽曲からは、這い上がろうとする思いが感じ取れました。
Bimi : そうですね。這い上がりたいし、永遠に登り続けたいです。日本は海外に比べると規模が小さいじゃないですか。海外の方がアーティストとして神格化されてしまうのは癪なので、日本人としてどこまでも頑張りたいです。
──気に入っている歌詞はありますか?
Bimi : 「生きるとは人とのsession」ですかね。例えば、犯罪者であっても人の愛に飢えている部分もあると思うし、引きこもりだろうが、人とつながらないと生きていけないと思うんですよ。コミュニケーションって絶対に必要だし、自分の内面を出すために芸術があると思うので、もっと芸術に触れられる世界になればいいなと思いますね。あとは「物事の持つ多面性×各々持つ感受性=babel」の部分は、韻も踏みつつ芯を食っているんじゃないかなと。25年生きてきた中で生まれた価値観を詰め込んだ曲になっています。
──Bimiとしての活動は、自分の価値観を全面に押し出す楽曲が目立っているような印象です。
Bimi : そうですね。Bimiは自分として戦っている感じです。役者としてはその役を演じて、そのキャラを通じてお客さんとコミュニケーションしているんですけど、自分の内面を見たかったら、こっちを見てほしいですね。
──俳優さんの音楽活動は「演技の一環だ」として取り組むケースも多いですが、Bimiさんは逆に、音楽活動の方で自分自身を表現しているんですね。
Bimi : そうですね。