やっぱり素直になったほうがいいんだな
──他人って意外と自分のこと好いてくれていますよね(笑)。つい「嫌われているんじゃないか」とか「距離がある」とか思ってしまいがちですけど。
さとう:いま思い出したんですけど、もうひとつ大きな変化がありました。東京のバンド・メンバーたちと1年ぐらい一緒にやってて、最初のころはリハーサルだけで会うような感じだったのが、普通に休日とかにも遊んだりするようになったんです。少しずつ距離が近くなって、最初は隠してたネガティヴなことも話したらちゃんと聞いてくれて、わたしもそれぞれの考えを聞いて…ってしてたらすごく仲よくなれて、気持ちが軽くなりました。それも「やっぱり素直になったほうがいいんだな」って思えたきっかけのひとつですね。そのメンバーたちと“魔法”も一緒に演奏できてうれしかったです。
──すてきなエピソード。演奏はバンドで、アレンジはきなみうみさんと清水哲平さんという、ちょっと珍しいパターンですね。
さとう:自分で考える時間が全然なくて、弾き語り音源を渡してアレンジしてもらったんですけど、この曲がよくなったのはふたりのおかげと言っても過言じゃないです。その前に1回ディレクターさんがふたりと会う時間を作ってくれたんですね。一緒にスタジオに入って「いいアイデアが出るといいね」って。そのころわたし全然元気がなかったから、ふたりが励ましてくれるような形になっちゃったんですけど(笑)、おかげで才能と技術がめっちゃすごいのもわかったし、なによりふたりとも人柄が本当にすてきなんですよ。わたしの意見も反映させながら、広い層の人に刺さりそうなアレンジを考えてくれたんですけど、いままでの作品とけっこう違う感じだったので、また話を聞いてもらって、ファンキーな方向に寄せてもらいました。
──おふたりともすごくもかさんの音楽を理解して歩み寄ってくれている印象を僕も受けました。
さとう:本当にそう。感動したし、清水さんがすっごくおもしろかったんですよ。年上の方なんですけど、親戚のおじちゃんみたいな感じで接してくれて(笑)。レコーディングを朝の11時から翌朝の6時までやったんですけど、ずっと笑顔で元気に振る舞ってくれて、本当に尊敬しました。きなみさんは23歳で若いんですけど、知識がすごく深くて、ディレクションも丁寧だし、とっても謙虚で優しい方でした。バンド・メンバーも時間がないなかでめっちゃ考えてきてくれて、キーボードのヌマさん(沼澤成毅)も仕事終わりに来て朝まで付き合ってくれて。みんな優しかった……。

──タイアップ曲だけど、さとうもかの作品として胸を張れるものになった?
さとう:そうですね。最終的には自分の気持ちをちゃんと入れられて、しっかり自分の作品になったなって気持ちがあるし、インタビューとかでも話したくなるような曲になったと思います。
──“魔法”の歌詞には、「部屋」「またね」「助手席」「花火」「ドライブ」「背中を押した」「手を繋いで」など、“melt summer”や“melt bitter”や“Glints”と共通するワードや設定があるのがおもしろいですね。
さとう:わたしの曲はどれもつながってるっていうか、一貫性がないようで実はあるんですよ。今回は歌詞をすごく悩んだっていうこともありつつですけど、実際、“Glints”のころはこういう気分だったから、「素直になる」っていういまの気持ちを軸にして、そこに当時の気分や自分のものの考え方を混ぜて、過去の曲と関連づけながらやれたらいいかなって思いました。こういうことって自分から言うのはネタばらしみたいでおもしろくないかもしれないけど(笑)、ずっと聴いてくれてる人は気づいてくれるかなって。
──そもそも夏の歌が多いですもんね。好きな季節ですか?
さとう:夏がいちばん好きです。
──何月生まれでしたっけ?
さとう:6月です。
──人は自分が生まれた季節を好きになるって話を聞いたことがあります。あと、自分が生まれた時代の文化に惹かれるとかも。
さとう:90年代か~。でもそうかも。ちょうどわたしもそういうこと考えてたときがあって、好きな音楽の時代が30年刻みなんですよ。30年代と60年代と90年代の音楽が、いま振り返ったら好きだなって。ってことは2020年代の曲も好きなのかも(笑)。
