本当のルーツはディズニーの音楽なんですよ
──おふたりは同年代なんですよね。
なとり:そうなんですよ。生まれた年は一個違うんですけど、同学年です。
友成空(以下、友成): 以前、しゃぶしゃぶ屋さんでご飯をご一緒したことがあるんですよ。会うのはそれがはじめてでした。マネージャーさんから「共通の知り合いがいて、なとりさんご飯行けることになったよ」って聞いて、「マジか!」ってテンション上がりました。
──お互いの印象はどうですか?
なとり:すごくかっこいい曲を作る人だなって思ってました。TikTokというカルチャーから出てきたアーティストではあるけれど、そこで一括りにされない人というか。世の中を楽観的に見てる感じがあって、実際会ってみてもそのままでしたね。
友成:なとり君は音楽的にも生き方的にも、バランスが取れてる人だなと感じました。自分自身を客観視しながら進んでいるというか。悪い意味じゃなく、“生きるのがうまいな”って。楽曲で言えば、なとり君はメインストリームとは違う場所にいる人たちにも寄り添ってくれるような音楽を作っている印象でした。そういう音楽を作るところが、僕も目指している部分でもあって。
なとり:僕は友成君には、底知れない“何か”を感じていて。SNSが発達したこの時代に生きている僕らの世代って特に、どうしてもネガティブなものを受け取らざるを得ない瞬間があるじゃないですか。僕みたいな人間は、それを受け入れたうえでどんどんダークになっていっちゃうタイプなんですけど、友成君はそのネガティブを「でもこれも個性じゃん」って割り切って、「ええじゃないか!」って言ってるような印象があって。そのネガティブの受け入れ方が、他の人と一緒くたにされない要素なんだろうなと思います。
友成:めっちゃ嬉しい。
なとり:僕、最初に聴いたのはピアノの弾き語りカバーだったので、もっとオーセンティックなポップスを作る人だと思ってたんですよ。でも“鬼ノ宴”が出たとき、「こっちもいけるのか!」「ネットカルチャーの側にも寄り添える音楽を作れる人なんだ」って衝撃を受けたんですよ。世間的には「“鬼ノ宴”の友成空」の印象かもしれないけど、“改札”みたいな温かい曲も作れるし、どこかクールな側面も持ってる人だなって思いました。だから正直、楽曲を聴いて「うわー負けたな」って感じることもあって。
友成:いやいや、そんなことないよ。でも本当にそういう印象を持ってもらえてたんだなって思うと、ありがたいですね。
──おふたりは同年代とのことなんですが、音楽的なルーツには違いがありそうですね。
なとり:僕はルーツでいうとJ-POPなんですよ。最初に衝撃を受けたのはORANGE RANGEさんの“キリキリマイ”のリミックスなんです。姉の影響でオリジナルの“キリキリマイ”は知ってたんですけど、そのリミックスは、サビがなくてずっとオートチューンがかかっていて。そのときに「音楽ってこんなことしていいんだ!」って衝撃を受けて。そこから音楽が好きになって、いろいろ経てネットカルチャーにハマって、今の自分の曲につながってる感じです。
友成:僕は歌謡曲とかも聴いてきたんですけど、本当のルーツはディズニーの音楽なんですよ。でもメインテーマよりも、魔女が出てくるときの曲とか、道に迷ってるときの曲とか、サントラから音楽に惹かれた感じがあります。作曲を始めたときも、歌ものじゃなくてインストからでした。

──共通点もありそうですね。
友成:お互いに影響として大きいのは「ボカロ」なのかなと思うんですよ。僕はじんさんが作られた曲を聴いていた時期があって、だから最近のなとりさんの曲を聴くと、自意識が形成された、あの頃の自分の気持ちを思い出すんですよ。まあそこは、それはなとりさんの声とソングライティングの方法の両方の力があると思うんですけど。
なとり:うれしいですね。言われてみたら確かに、じんさんの時代感は通ってると思う。
──友成さんがボカロを通っているというのは、結構意外な印象があります。
友成:ただ、僕自身は「通ってはいるけど詳しくはない側」なんですよ。だからコンプレックスがあって、あんまり「好きです!」って公言できない。ネットカルチャーって、詳しくないものについて厳しい印象があって…。
なとり:わかる。僕も正直、いまだに「ボカロ好きです」って言うのはちょっと怖い(笑)。めちゃくちゃ言ってるし、そういう曲もいっぱい作ってるけど、どこかでやっぱりプレッシャーはある。
友成:“鬼ノ宴”をリリースしたとき、「これに似てる」って言われることが結構多かったんですよね。しかもその似てる曲がボカロだったりして。でも僕、本当に詳しくなかったから、その曲がわからなくて。
──その感覚はまさにSNS時代ならではのトラブルですよね。調べたらいくらでも“元ネタのようなもの”が出てくるわけじゃないですか。
友成:そうですね。だから正直ビビりながら曲を作っているところがあって。ヤマハの「歌っちゃお検索」っていうアプリがあって、それは鍵盤で旋律を入れると、その旋律が含まれてる曲が表示されるんですよ。だから僕メロディーを作ったあとで、そのアプリで検索をかけるんですよ。それで似てる曲が出てしまって、実際やり直したことも何度もありますね。
なとり:なるほど! 僕はメロディー自体はほとんどこの世にあるんだろうなって、ある意味諦めているんですよ。だから、そこからどうアプローチしていくかを考えるようにしてますね。歌い方も例えば「ここで地声入れる人なんていないだろう」とか。そういう部分で違いを出すのが良いのかなと思っています。
































































































































































































































































































































