RAYは、拳を上げなくても、棒立ちでも、笑っても泣いてもOK
内山:RAYは台湾、中国、韓国には行ったことがありますが、欧米にはまだ行ったことがないんですよ。やっぱり英語力が課題なので、みんなで勉強しようと言いながらも、なかなか進まなくて……。海外のファンの方が日本に来てライブを見てくれることもあるんですけど、もっと伝えたいのに単語が出てこなくてもどかしいです。おふたりは海外ではそういう経験はないですか?
大野:そこはあんまりないかな。でも海外で活動しようと思えば、助けてくれる人は必ず出てくる気がするよ。だから思い切って、おもしろそうな人たちと一緒にやるのもいいと思いますよ。
大黒:アイドルには「チェキ会」という文化があって、海外でもやるんですよ。その交流時間を楽しみに来るお客さんが多いので、言葉が通じないともどかしさが残るんですよね。バンドは音で伝える部分が大きいですが、アイドルはコミュニケーションそのものが目的で来る方も多いので、そういう文化の違いはあるのかなと。
大野:たしかに。前に海外でサイン会をやったときも、私たちは言葉がわからないから「Thank you」ばっかり言ってたんだけど、向こうのファンは感想や想いを直接伝えてくれるんだよね。その熱量に応えようとしても言葉が出てこないから、もどかしくなるのかもしれないね。
吉永:でも前に関西出身のPAの人を海外でのライブに連れていったら、全部「Can I〜?」で成立させてたよね(笑)。
大野:そうそう。「ベースアンプの位置をちょっとだけ動かしたいんですよ」って言いたいときも、全部「Can I〜?」だった(笑)。
吉永:だから結局、間違っていてもはっきり言えば相手は聞いてくれるし、もじもじしないのが一番だと思うよ。

内山:ありがとうございます。アイドルは特にファンとのコミュニケーションを大事にするところがあるんですけど、おふたりは自分たちがやりたいこととファンの反応の間にギャップが生まれることってありますか? 例えばアルバムを出したとき、「前のほうが良かった」とか「あれをやってほしい」と言われたり。
吉永:基本的には気にしすぎないようにしています。ファンの方も、私たちがそういう声をあまり受け付けないのをわかっているのか、あまり言ってこないですね。
大野:バッファローとして活動を始めた最初の頃、お客さんが本当に少なかったんです。下北沢の小さいライブハウスで、ほんの数人しかいない。でも、そのお客さんたちが全然盛り上がらず見ていることもあって。それでも「私たちの音楽を好きな人は絶対どこかにいる」と信じて続けていたら、本当にそういう人たちが見つかったんです。だから、まず「自分たちがいいと思うものを出す。それを好きな人が必ずいる」と信じてやっているんです。「やってください」と言われたことを試すこともありますが、うまくいかなければ「やっぱり違うな」となる。そこはアイドルとは少し立ち位置が違うかもしれませんね。
吉永:ライブ後にSNSを見たりもするんですけど、私たちは「こうじゃなきゃいけない」という定義を作っていないので、聞いた人の解釈に任せていますね。
内山:音楽の楽しみ方を縛らない、というのはRAYも大事にしているところでもあるんです。例えばアイドル文化にはMIX(タイガー・ファイヤーなどの掛け声)という文化があるんですけど、曲によって「入れないでほしい」「入れてもいい」など論争があったり、ライブで「拳を上げろ」と指示するグループもあるんです。でもRAYは、拳を上げなくても、棒立ちでも、笑っても泣いてもOK。他人に迷惑をかけなければ自由に楽しんでほしいと常に言っているんです。そういう意味でも、今回の3マンライブではみんなに自由に楽しんでほしいですね。
──最後になりますが、今回の3マンライブ「Destroy the Wall」では、どんなステージを見せたいですか? 意気込みを聞かせてください。
内山:今回は2BDさんとの対バンも楽しみなんですけど、チョコパコさんとの共演も楽しみなんです。民族音楽とエレクトロニカを融合させたりして面白いことをやっているアーティストですし、いろんな音楽が混ざり合う1日になりそうだなと思っています。この3組が揃うことなんて、この先もうあるのかというくらいですよね。
大野:私たちもアイドルのステージを生で見る機会は少ないので、楽しみです。チョコパコは息子たちと仲が良いんですよ。たぶん、RAYのみなさんは息子たちと同世代くらいなのかな。そんな年代も飛び越えたライブができるのは嬉しいですね。
内山:そうなんですね! 今回の3マンでは、みなさんに負けないように特殊なVJや繋ぎを入れたセットを用意しています。普段RAYを応援してくれている方には新しい一面を見せたいですし、バンドのファンの方には「こんなアイドルがいるんだ」と知ってもらえるステージにしたいです。音楽的にも純粋に楽しんでもらえるよう、VJも入れて、Buffalo Daughterさんへのオマージュも盛り込みます。
吉永:フェスだとアイドルの前後でお客さんが入れ替わることもあるんですけど、今回は最初から紹介してもらえるので安心ですね。RAYさんのステージは激しいと聞いているので、私たちもいつもよりは、少しハードな方向で合わせようと思っています。
内山:RAYのファンにもBuffalo Daughterさんの音楽が好きな方は多いので、今回のライブを楽しみにしている人は多いと思います。だからこそ、すごくいい1日にしたいです。
