いろんな人の存在を世の中に広めたいと
──ちなみにファン太さんにとっての音楽の原体験ってどういうものなんでしょう?
ファン太: 5歳くらいの頃に、鈴木雅之さんがいたグループ、RATS & STARの曲を聴いて、雷に打たれたような衝撃を受けたんです。それからずっと80~90年代の曲を聴くようになって。親がカセットテープをたくさん持っていたので、それをずっと聴いていました。
──他にはどんなアーティストを?
ファン太: 米米CLUBさん、沢田研二さん、山下達郎さん、中西圭三さん、槇原敬之さんとか。平成になってからは平井堅さん、秦基博さんとかですかね。優しい歌を歌う方が多いかもしれませんね。
──結構ソロのアーティストが多いですね。
ファン太: そうですね。鈴木雅之さんのグループは例外的でしたけど、日本でドゥーワップをやってる人は少なかったので、そればかり聴いてました。自然とソロが多くなっていたのかもしれません。
──音楽的な趣向が変わってきたのはそこから高校くらいからですか?
ファン太:そうですね。高校に入ると、僕、柔道で強いところに行ったんですよ。柔道部の寮で生活をしていたんですけど、そこで流れてる音楽を、やっぱり嫌でも聴いちゃうんですよね。それで「最近の歌もいいのあるな」と思い始めたりして。当時流行ってたのはEXILEで、それもよく聴いてました。そこから、個人で歌ってる人たち、SNSとかで探すようになって。「歌い手」という存在がいることを知ったんです。そこから連絡を取り合ったりして、いろんな人の歌を聴くようになっていったんですよね。
──高校くらいから「歌ってみた」カルチャーに触れ始めたんですね。
ファン太:そうですね。「歌ってみた」カルチャーを掘っていって、いろんな人を知って、DMを送りまくってました。世代でいうと、そういう「歌ってみた」の最初の世代だと思います。
──当時はニコ動だけじゃなくて、mixiや2ちゃんねるの掲示板とか、いろんなコミュニティもあった時代ですよね。
ファン太:はい、まさに。そういうのもかじりつくように見てました。で、そこから本格的にニコニコに入っていく、という流れですね。
──自分でも「歌ってみたい」と思い始めたんですね。
ファン太:そうなんですけど、高校では機材も買えないし、寮だし。録音する環境もなかったんです。だから柔道部の友達と文化祭で歌ったりしてました。
──初ライブはその文化祭だったんですか?
ファン太:そうですね。高校3年間、毎年誰か運動部の子が歌う感じだったんです。そこで空いてる枠があったら「一緒にやる?」みたいなノリでした。重量級の柔道部ふたりでEXILEとかを歌ってましたね。
──本気で「歌でやっていこう」と思ったのは、いつ頃ですか?
ファン太:実は、今も「歌でやっていく」という実感が湧かないんですよ。ただ、本当はもっと上手くなりたいと思っていて、ボイトレも行きたいと思っています。歌うこと自体はすごく好きなので、ライブをやらせてもらって、そういう中でいろいろと模索している状況ですかね。
──ファン太さんの音楽活動から配信を見るファンの方もいらっしゃるんですか?
ファン太:ありますね。実際、avexの方がそうですし。でもめちゃくちゃ嬉しいです。ただそこから僕を知ってくれたのは嬉しいんですけど、僕が配信で下ネタとか言う関係上、歌で「いいな」と思って来てくれても、いなくなる人も結構多いんですよね(笑)。
──現在は、avexの所属アーティストとして活動しているわけですけど、現在の心境はいかがですか?
ファン太:アーティストとして「歌を出していくのはどうですか?」という話を早い段階でいただいたんですけど、正直、自分が上手いとは思ってないので、「僕で大丈夫なのかな?」って。でも、その話を断るのはもったいないなと思って。「挑戦できるならしたい!」という気持ちがあって、今回受けさせてもらいました。
──avexという大きな会社に所属することについて、どう感じましたか?
ファン太:光栄だなと思います。ただ、マスクかぶってるし、名前も顔も隠してるんで、友達に自慢もできない(笑)。でも、だからこそできることも多いので、それを活かして「オフイベ(オフラインイベント)」とかやらせてもらってます。
──ファン太さんは、ご自身もアーティストとして活動されながら、avex内に「J STAR RECORD」という音楽レーベルを立ち上げ、主宰をされています。その点について、どう感じていますか?
ファン太:自分が歌うだけじゃなくて、アーティストを選んで歌を出してもらうような立場なので、責任感もありますし、変なことはできないという気持ちもあります。そのうえで、いろんな人の存在を世の中に広めたいという思いがあって、主宰をやらせてもらってるという感じですね。
──その「この人の歌を届けたい」という思いから、最初のコンピレーション『vol.ZERO』のアーティストも選ばれたんですね。
ファン太:そうですね。一発目は、オフラインイベントの特典CDという形で始まったんです。出演してもらった人が中心ではあったんですけど、今後はそういったイベントに出ていなくても、アーティストとしてCDやサブスクでの配信もどんどんやっていきたいと思ってます。