INTERVIEW : 前島亜美
前島亜美のデビュー・アルバム『Determination』に収録されている楽曲たちは、とてもバラエティーに富んでいる。ときにキュートに、ときに力強く、ときに切なく、その歌声は心に届く。今作を聴いていると、「前島亜美」という人間がこれまでに生きてきた人生を感じるような気がしてくる。それはきっと、彼女が今作に強い「決意」を込めたからなのだろう。まだまだはじまったばかりの、前島亜美のソロ・アーティスト活動。ライヴがすごく楽しみだ。
インタビュー&文 : 西田健
どの私を知っていても、驚いてくれると思います
──2024年11月20日、ソロ・アーティストとしてのデビュー・アルバム『Determination』がリリースされます。今回のデビューについての話を訊いたときは、どんな気持ちだったんですか?
前島:今後の方針を事務所の方と相談していく中で、「アーティストとして歌ってみない?」という話をいただいたんです。ステージに立つことは好きだったんですけど、歌に自信があったわけではないので最初は迷っていました。その中で、レーベルの方に歌を聞いていただく機会があって、だんだんとアーティスト活動をやりたい気持ちが大きくなっていったんです。
──バンドや、ユニットなど、アーティスト活動の方法にもいろいろありますが、なぜ今回ソロで活動することを選んだんでしょう?
前島:私はひとりで何かを考えるのが好きなタイプなんです。もしも音楽活動ができるなら、ソロがいいなと思っていました。もちろん大変だと思うんですけど、ひとりでやるからこその感動があると思うんです。周りの友達の声優さんも、ソロで活動してる方がすごく多くて。音楽活動のお話も聞かせてもらったりして、憧れもあったのでやってみたいなと思いました。
──なるほど。音楽活動において、憧れの声優さんはいますか?
前島:同世代だと伊藤未来ちゃんですね。未来ちゃんは声優をしながらライヴ・ツアーもやって、キラキラしてるんです。あと、最近は事務所の先輩の南條愛乃さんとお話をさせていただく機会があって、すごく憧れています。南條さんは作詞やアルバムのコンセプト、衣装などを自分のアイディアから作られているので、そういう話を聞くとすごいなと思いますね。
──今作では“Determination”、“Azurite”の2曲で作詞にも挑戦されていますね。
前島:作詞は今回がはじめてなんですけど、エッセイの連載をやっていたこともありましたし、文章を書くことはすごく好きでした。ただ、作詞の作業はエッセイとは違う難しさがありました。全然やり方がわからなかったので、ひたすらメロディを聞いてイメージを広げていきました。デビュー曲“Determination”は、ソロで活動したいなと思った時期からデビューまでの日記を振り返りながら書きましたね。
──日記を書かれてるんですか?
前島:7年くらい書いています。19歳の時に書きはじめて、そこから手書きのものとデジタルの両方で書いてます。「3年日記」というのをやっていて、1ページに同じ日付けが3年分並んでて、過去のことを振り返りながら3年で完成させるんです。厚さが辞書くらいあって持ち歩けないので、ふと思ったことはデジタルで書いています。
──なぜ日記を書こうと思ったんですか?
前島:19歳でアイドル・グループを卒業した時、故郷を出るくらいの決心をしたんです。その心境は言葉にしておいたほうがいいよってことで、1冊目の3年日記をいただいて、そのときに書くことって大事なんだと気づきました。日記には、「親知らず抜いたら、すごく痛かった」とか観劇した舞台のこととかを書いていました。最初は全然慣れなかったんですけど、気付いたら日記を書くことがストレス発散にもなっていました。過去の日記に励まされたりもするので、大事なルーティンになりましたね。
──今作『Determination』はどんなコンセプトで制作していったんですか?
前島:今回アルバムを作る中で、名刺代わりになるような作品にすることと、バラエティに富んだ曲を集めること、のふたつを軸に楽曲を作っていきました。キャラソンしか聴いたことのない方やアイドル時代しか知らないという方、舞台の女優活動しか知らないという方でも、みなさんそれぞれ驚いてくれるんじゃないかなと思っています。でもそのすべてが前島亜美であるという、自己紹介にもなる1枚です。本当に宝物になりましたし、ずっと大切な自分の芯の作品になるかなと思います。
──タイトルの『Determination』は「決心」、「決意」、「決断」という意味の単語ですね。
前島:そうですね。まずは指標のようなものが欲しくて最初にタイトルを決めたんです。デビューへの思いをまとめるなら「決意」かなということで、“Determination”にしました。
──今回せっかくなので、10曲それぞれ話を訊いていきます。まず1曲目は、リード曲の“Determination”。こちらは、前島さんが作詞、Elements Gardenの藤永龍太郎さんが作編曲を担当しています。
前島:エレガの藤永さんは声優作品の方で長くご一緒していまして、曲を提供いただけるのをすごく楽しみにしていました。はじめての作詞で緊張しすぎて、ギブアップしそうなくらい大変だったんですが、ここ数年間の思いを詰め込んだ、大切な楽曲になりました。
──すごく良い歌詞ですよ。
前島:ありがとうございます。歌詞の面では南條(愛乃)さんにたくさん相談させていただきました。締め切り前に頭を抱えた私を連れ出してくださって、お話を聞いてくださったりしたんです。南條さんが「今の自分の気持ちを書けば絶対伝わると思うよ」って言ってくださって、その言葉を大事に歌詞を書いていきました。
──歌詞にはどんな思いを込めたんですか?
前島:歌詞には、タイトルの通り、今回のデビューへの決意の気持ちを込めました。これまでにも人生のなかで、グループとしての活動をはじめるとき、声優としての活動をするとき、といろんな決断をしてきたんです。自分のなかでも、このソロ・アーティストとしてのデビューは、大きな決断だと思っています。だからこそ、この先アーティスト活動を長く続けていきたいという思いを込めて、この言葉を書きました。
──歌詞のなかで、大切にしたワードはありますか?
前島:今回絶対入れたかったのが「ねえ見て、君へのステージだ」と「迎えに来たんだ」っていう二つのセリフです。これらを主軸に歌詞を書いていきました。私は、応援してくれる人にとっての「誇り」になりたいとずっと思っていたので、落ちサビの「全て“誇り”だと語ろう」はすごく大切に歌っています。
ーー青空の下で踊るMVも素敵でした。
前島:すごく元気な映像になりましたね。私自身はなかなか太陽の下に出ないんですけど(笑)
ーー(笑)。MVでは、涙を流すシーンが印象的でした。
前島:あのシーンは本当に泣いたんです。涙が結晶になって、そのあと花が降るんです。デビューの祝福っぽい感じもあり、華やかな映像になりましたね。