背中を押してもらって、手を伸ばして引き上げてもらってきた
──謙虚ですね(笑)。7月23日にはファースト・シングル『Wish for you』がリリースされます。表題曲はTVアニメ『公女殿下の家庭教師』のオープニング・テーマのタイアップですね。
前島:初のタイアップにふさわしい、超王道のアニソンですね。歌詞もキャッチーで耳に残るんですけど、ただキラキラしてるだけじゃない、芯のある言葉が並んでいるところが好きです。『公女殿下の家庭教師』のひたむきな努力だったり、人を思いやる心の温かさも楽曲に取り込めてるなと思います。ファースト・シングルとしてベストな曲ができたんじゃないかなと思います。
──ご自身のなかで一押しポイントはありますか?
前島:サウンドが本当に綺麗なんですよね。ストリングスも入ってるんですけど、その上品さが『公女殿下の家庭教師』の高貴な世界観にも合っていると思います。ライブでも披露したんですけど、「あの曲はきっと前島さんが歌ってなくても僕は好きだったと思う」という感想もいただいてたんです。アニソンが好きな方にはすごく刺さるのかなと思います。
──歌詞もすごく前向きですよね。
前島:そうですね。私が一番好きなのが2番Aメロの「夢を見るために資格は必要ないのだと 心が知ってる勇気はもう受け取ってる」という言葉なんです。ポップなメロディーで軽やかに歌ってはいるんですけど、言葉ひとつひとつがすごく熱量を持っていて、まっすぐな思いが込められているんです。それにDメロの「自分を信じることは 誰かを信じることよりも ずっと難しい」にも本当に大共感です。私もそういうタイプの人間なので、歌っていて思いが入るんです。あとサビの最後に「大好きだよ」って告白が入ってるんですけど、こんなまっすぐに「大好きだよ」っていうことってなかなかないので、ちょっと照れちゃう(笑)。でもまっすぐ愛を伝えるのが作品にも合っているなと思っていて、バッチリな歌詞だなと思います。

──レコーディングで意識したポイントはありましたか?
前島:実はこのレコーディングは、アルバムの制作と同時進行で自分自身まだまだ手探り状態の時期でした。だから少し初々しさも残っているんです。でもそれが逆に、作品のフレッシュさとうまく噛み合った気もしていて。とにかく「良い歌にしたい」っていう思いでたくさん歌った記憶があります。
──TVアニメ『公女殿下の家庭教師』では、前島さんはカレン役を演じられるんですよね。
前島:そうなんです。大きな声では言えないですけど、一番かわいいです…(笑)。レコーディングのタイミングで、役が決まっていたので、カレンちゃんなりの思いを込めたいと思っていました。カレンちゃんは、主人公アレンの血のつながらない妹なんですけど、お兄ちゃんに対する憧れとか、背中を追いかける気持ちを歌いたいなと思って歌いました。サビの「ときめきに溢れてる毎日だから」っていうフレーズが、作品を一番よく表しているんです。そんな素敵な作品に、こんな良い歌詞をいただけて感謝しています。
──タイアップという経験はいかがでしたか?
前島:夢でした。中学生の頃の自分に教えてあげたいですね。音楽活動している声優さんが、出演しながら歌も歌うっていうのが、私にとっては憧れの形だったんです。「アーティストデビューするからにはいつかは…」と夢を持っていましたけど、こんなに早く挑戦させていただけるなんて、思っていませんでした。本当にありがたいですね。
──まさに、作品の中でも描かれている“夢”が叶ったという感じですね。
前島:本当に、そうですね。
──歌詞は背中を押すような内容ですけど、ご自身が背中を押された経験ってありますか?
前島:背中を押してもらうばかりの人生ですね(笑)。私は一人じゃ歩けない人間なので、本当にたくさんの方に背中を押してもらって、手を伸ばして引き上げてもらってきたなと思います。なかでも声優の先輩の南條愛乃さんにはめちゃくちゃお世話になっていて、クリエイターとしてもアーティストとしても、アドバイスをいただいています。ファースト・ライブにも来たいって言ってくださってたんですけど、当日はご自身のツアーがあって、来られなかったんです。でも素敵なお花を送ってくださいましたし、当日の南條さんのライブでも「今日は亜美ちゃんがライブなんだ」って話してくださっていたそうなんです。そんな愛を注いでくださる先輩がいることが、本当に幸せだなと思っています。南條さんから「いつか亜美ちゃんに歌詞を書きたい」という言葉をもらったので、実現できたら嬉しいですね。
──今回のシングルには、表題曲に加えて“劇薬”、“アミュレット”の2曲が収録されています。“劇薬”は“Wish for you”から雰囲気がガラッと変わりましたね。
前島:タイトルの通り、「劇薬」です(笑)。今回はじめてのタイアップだったので、「初めまして」の出会いがたくさんあるだろうなと思っていたんです。だからこそ、このファーストシングルに「前島亜美の“すべて”を込めたい」みたいな思いがありました。だから“Wish for you”で王道のアニソンをやって、“劇薬”では魂の叫びを通して、私のフィジカルの爆発力や表現の力を見せたくて、この曲になりました。
──様々な歌い方にも挑戦されていますよね。
前島:パンチ力勝負というか。ボーカロイドのような遊び心のある歌い回しもあり、Adoさんのようなシャウトもあったりして。レコーディングではすごく汗をかきながら頑張りました。この曲もライブでやるときは振り付けをつけて、踊って歌いたいです。歌詞も感情の闇や、破壊衝動みたいなところまで、すごく感じるようなものになっています。割と私のダークな面が出ていて気に入っています。
