INTERVIEW : kein

2022年に衝撃の復活劇を見せたkeinが、前作のEP『PARADOXON DOLORIS』でメジャー・デビューを果たしてから早8ヵ月、メジャー2nd EP『delusional inflammation』を7月9日にリリースする。
今作のコンセプトとなるのは、EPのタイトルに直結する“妄想による炎症”という奥深い世界観。ここに帰結する書き下ろしの新曲5曲は、自発的に“メジャー感”という部分に着目して制作されたという。それでいてkeinらしさは損なわれておらず、むしろメンバーそれぞれの“個”の力を存分に活かしてこそkeinというバンドが持つ独特な音楽性やオーラといった部分がより鮮明に描き出されている印象だ。
早速、メンバー全員にメジャー2nd EP『delusional inflammation』について語っていただいたインタビューを通して、keinが秘めているポテンシャルを解き明かしていこう。
インタヴュー・文:平井綾子
写真:大橋祐希
俺たちのよくない捻くれ具合が出てる
――前作のEP『PARADOXON DOLORIS』はkeinのメジャー・デビュー作となったわけですが、そちらを経てリリースされるメジャー2nd EP『delusional inflammation』にはどんな青写真があったのでしょうか?
玲央(Gt):前作は、よりエネルギッシュな作品にしようということでメンバーが楽曲を持ち寄った作品だったんですけど、ちょうど『PARADOXON DOLORIS』のリリース直後に回ったツアーの打ち上げのときに「来年もまた作品を出したいね」っていう話が出たんです。そこで、「より抜け感のある、メジャー感のある作品を作ろう」という僕からの提案を、メンバーみんなが良しとしてくれて。
Sally(Dr):その前にも、一度リリースに関する話はしていたんです。
aie(Gt):それが具体的になってきたときに、玲央さんからそういう話があったのは覚えてますね。
玲央:“メジャー感”という部分に関しても、自発的にそういったものを意識した作品にしようっていうことで仕上がったEPではありましたね。

――すると、楽曲の方向性としてメジャー感や抜け感があるといったところを念頭に置いての制作だったかと思うのですが、いかがでしたか?
aie:なんとなく、「自分たちができる表現の仕方で作ってみます」っていうことで揃った曲だったのかな。ポップスではないけど、キャッチーでサビがちゃんとあることが前提の曲というか。ただ、今の話を基に冷静に自分の曲(『幾何学模様』と『晴レノチアメ』)を振り返ると、そんなにメジャーっぽくもないし「あれ?」って思ったけど(笑)。『幾何学模様』はサビでガッと抜けるというテーマで作った曲ではあるけど、最初からそうだとおもしろくないっていう、俺たちのよくない捻くれ具合が出てるというか。
玲央:よくないわけではないですけどね(笑)。
aie:『晴レノチアメ』も、自分が憧れていたり影響を受けたりしたバンドのイメージを膨らませて、かっこいい曲だったりライブが楽しくなりそうな曲だったりっていうのを考えたぐらいで。あとは、今回のリリースの話が出て、実際に「keinの2nd EPを作るぞ」って挑んだときのテンション感が表れている2曲っていう感じかな。だから特に脳みそをいっぱい使ったわけじゃなくて、どちらかというと瞬発力でやった感じというか。
――『幾何学模様』はサビの抜け感はもちろんのこと、サビの前後のギターの音色は聴感的に懐かしさがありました。
aie:そう! それこそ90年代によく聴いていたポップなサウンドというか、シティポップじゃないけど、お茶の間で流れていた曲に影響を受けた部分を俺たちなりに出したというかね。かといって過去の曲を聴き返すこともせず、今までの音楽体験から体が覚えてるものを出すみたいな。
Sally:個人的に『幾何学模様』に関しては好き勝手に、「放っておくとこうなります」みたいな感じで。基本的には、作曲者のイメージや要望みたいなものをベースに膨らましていく感じではあるんですけど、aieさんも「細かいことはご自由にどうぞ!」みたいな感じだったので、自由にやったものを詰め込んでいますね。

――玲央さんは『幻想』を作曲するにあたり、“メジャー感”をどのように昇華していったんでしょうか?
玲央:僕からの提案で“メジャー感・抜け感・キャッチーさ”っていうワードを出したものの、メンバーみんな、ストレートな“メジャーらしい曲”っていうのは作ってこないだろうなってわかっていたんですよ。
――そこは、先ほどもお話に出た“捻くれ具合”ですかね。
玲央:そうですね(笑)。だから僕自身も、あえて「メジャーらしい曲ってこうだよね」っていう曲を作ろうとはせず、自分なりの「“こういう曲”かな」っていう解釈で作っていきましたね。言わばそれが、自分が学生時代とかに聴いていた80~90年代の邦楽ロックバンドのテイストを出したいなというイメージで、8ビートにはかなりこだわりました。
――玲央さんとaieさんは、今回のテーマにおいてご自身のルーツも反映しつつ。
aie:“メジャー感・ポップ感”っていう話をもらってみんなが思い浮かべるのは、90年代の音楽っていう共通する部分があったんじゃないかな。たまたまかもしれないけどね。ただ、やっぱり80年代後半から90年代前半は一番吸収した時代だったと思う。
玲央:音質とか、音数じゃないんですよね。自分が音楽を聴いて魂が震えたときの感じっていうか、そこに懐かしさを感じるのもそうだし、自分たちがアウトプットしていきたいものっていうのは共通してるのかなって思います。
