ボロフェスタの出演者は熱量がすごい
──ムツムロさんは現在、東京在住なんですよね。少し離れた視点から見て、京都のアーティストには、どういう魅力があると思いますか?
ムツムロ : 京都には、世の中の流れに影響されない、屈強な個性を持ったバンドが生まれているイメージがありますね。bed(from Kyoto)や OUTATBERO、NUITOには京都のバンドだけが持っている不思議な空気があると思います。
モグラ : 土地柄でいえば、京都は大学が多いんだよね。学生の割合が多いから、ほかの大きな都市に比べてモラトリアムを感じやすいんだと思う。そして、京都のバンドマンは、学生のうちに社会人になることを想定しない人間がめちゃくちゃ多い(笑)。
ムツムロ : いい意味でも悪い意味でもそうですね(笑)。
モグラ : 「自分のやりたいことってなんだろう?」みたいなことをじっくり考える時間が、ほかの街の学生より長いのかもしれない。自分とだけ向き合って考える時間というものがアーティストの個性を形成していくんだと思う。その結果、強い個性を持ったバンドが生まれているのかもしれないね。
藤澤 : モグラさんもじっくりやりたいことを考えたわけですもんね(笑)。
モグラ : 僕は大学に8年行ってますからね(笑)。
──ハンブレッダーズと浪漫革命の2組は、今年11月3日より開催される〈ボロフェスタ2022〉の初日に出演することが決まっています。ハンブレッダーズは2017年、浪漫革命は2019年にボロフェスタには初出演していますが、その当時の印象はいかがでしたか。
ムツムロ : はじめて出たときは、学生の文化祭を大人のクオリティで、しっかりやっている印象を受けました。なによりも良いなと思ったのが、演者はもちろん、裏方もお客さんも全員が主役になれているところですね。全員が楽しんでいる空気があるのは、独特だと思います。近い将来、自分でフェスをやりたいと思っているんですけど、原点はやっぱりボロフェスタですね。
藤澤 : ボロフェスタには京都のバンドをフックアップする文化があると思うんですよ。初出演したとき、「京都には、こんなにヤバいやつらがほかにもいるんだぜ」という、地元への愛と熱意を感じましたね。
──ボロフェスタでこれまで見たなかで、印象深かったアーティストはいらっしゃいますか?
藤澤 : 僕らがはじめて出た年、セン・モリモトさんも出演されていたんですよ。その日のライヴが本当にすごかった。「こういう人もブッキングしてくるんや! ボロフェスタってすげぇな! 」って思った記憶があります。
モグラ : 信じられないぐらいかっこよかったね。あんなライヴ見たことなかった。ハンブレがはじめてボロフェスタに出た2017年は、クリープハイプのライヴを見ながら袖でムツムロがグッときてたのを覚えているな。
ムツムロ : その2年くらい前に、モグラさんと一緒になんばHatchまで、クリープハイプのライヴを観に行ったんですよね。
モグラ : そう。そのときに“イノチミジカシコイセヨオトメ”から“手と手”っていう、クリープ名物の2曲のつなぎをやってたんだけど、2017年のボロフェスタでも同じ2曲の流れをやってたんよね。
ムツムロ : あれを見たとき、クリープハイプなりのやり方で、あれだけ売れても昔から世話になっているところに恩返しをしにきたんだろうなって思ってグッときたんですよね。
モグラ : 去年20周年のZINEでクリープの尾崎世界観と対談したことがあるんだけど、そのときに「ボロフェスタは独特すぎて、実はあんまり良いライヴできたことないんですよ」って言ってたんですよ。メインステージで演奏していても、地下のステージ(街の底ステージ)に出てるやつらがヤバいライヴをしていたら、下手したら食われてしまうかもしれない緊張感があるって。ほかのどんなフェスより、「絶対俺がいちばん取ったんねん」みたいな想いがどのアーティストも強いって言ってたね。
ムツムロ : 確かにその想いはありますね。
モグラ : ステージの規模もフロアのキャパシティも違うんだけど、地下の街の底ステージに出演していたとしても、ロビーのどすこいステージに出演していたとしても、ボロフェスタの出演者は熱量がすごい。いまとなっては、他のフェスでもいちばん大きなメインステージに呼ばれるようなクリープが、そういうふうに思ってくれてるのは嬉しかったね。
ムツムロ : ボロフェスタは地下のステージでも、ステンドグラスの前でも、平等な機会を与えてくれているように感じるんです。小さなライヴハウスで起こっていることの規模感だけが、そのまま大きくなっているのは本当にすごいと思います。