鼎談 : ムツムロアキラ(ハンブレッダーズ) × 藤澤信次郎(浪漫革命) × モグラ (ボロフェスタ,nano)
〈ボロフェスタ〉には、さまざまな魅力がある。知名度やジャンルにとらわれないバラエティーに富んだアーティストのラインナップ、どのステージでも変わらない熱量のこもったパフォーマンス、DIY感溢れる会場装飾、ここでしか食べることのできない美味しいフード、京都という街にしかないバイブス……とあげていけばキリがない。しかし、最大の魅力は、観客はもちろん、演者も裏方も含めて全員が楽しむことができる空気感なのだと僕は思う。
国内外で、いろんなことがあった2022年。今年の〈ボロフェスタ〉のテーマは"架け橋"だという。この言葉には、音楽を通して人と人との繋がりができるきっかけになれば、という思いが込められている。混沌とした現代のなかではあるけれど、〈ボロフェスタ〉というフェスは、きっと新たな音楽や人との出会いの"架け橋"になってくれるはずだ。
インタヴュー&文 : 西田健
編集補助 : 東原春菜
僕らはnanoという箱のおかげで、ちゃんとミュージシャンになれた
──ムツムロさんと藤澤さんは同じ同志社大学の出身なんですよね。
藤澤信次郎(以下、藤澤) : そうなんですよ。でも、実はムツムロさんとはあんまり喋ったことなくて…。
ムツムロアキラ(以下、ムツムロ) : そうそう。共通の友達はすごく多いけどね (笑)。
モグラ : てっきりふたりは大学が一緒だから、昔からの先輩後輩みたいな感じだと思ってた。
藤澤 : いやいや。でも、話す機会はなかなかなかったんですけど、ムツムロさんのことは入学してすぐの頃から、すごい先輩として知っていたんですよ。学生時代の僕らにとって、ハンブレッダーズと加速するラブズの2組は、尊敬する先輩バンドの二大巨頭でした。
モグラ : 軽音サークルに入ったばっかりの子からすると、ライヴハウスでオリジナル曲をやっている先輩って、めっちゃヒーロー感あるからね。
ムツムロ : 浪漫革命は、ふじぴー(藤本卓馬)が加速するラブズを辞めて、新しいバンドを組んだっていう話は噂で聞いてたんですよ。そして、2017年に〈eo music try〉ってコンテストがあって、そこではじめて共演したんですよね。でも、そのイベント自体がコンテストということもあって、みんなシビアですごくピリピリしてたのを覚えています。
モグラ : 浪漫革命は〈eo music try〉のときに「自分らの思う演奏ができなかった。だから、そこからめちゃくちゃフィジカルを見直した」って言ってたよね。それから、急激に伸びた感じはある。
藤澤 : バンドとしてもターニングポイントでした。あのとき、最終的に優勝したのは弾き語りの女の子だったんですけど、そのバック・ミュージシャンがゴリゴリに上手かったんですよ。イベントのあと、メンバーとじっくり話をして、音楽に対する意識が変わりました。それまでは学生気分が強かったんだと思います。
──モグラさんとムツムロさんは、どういう流れで出会ったんですか?
ムツムロ : 高校生の頃、nanoにハヌマーンのライヴを観に行ったんですよね。その日がすごく思い出に残っていて、いつかこのnanoという箱でライヴがやれたらいいなって思っていました。それからバンドとして音源を作って、nanoに「ブッキング組んでください」って伝えにいったんですよ。初対面のときは、強面のモグラさんが柄シャツ着て出てきたから、超ビビってました(笑)。
モグラ : そうだったんや(笑)。こっちはムツムロがそんなにビビってるとは知らず、妙に親近感覚えて「前に会ったことあるよな?」って言った気がする(笑)。
ムツムロ : 初対面でしたけどね(笑)。
モグラ : そこからハンブレは、自主企画でレコ発をやったり、個人的にもnanoとしても、すごく濃い付き合いになっていったね。
──藤澤さんは、モグラさんの第一印象はどうだったんですか?
藤澤 : モグラさんの第一印象は、気さくな良いおっちゃんでしたね。最初から「モグリン」って呼んでた記憶がありますね(笑)。
モグラ : そうそう(笑)。浪漫革命のことは、京都のレコーディングスタジオmusic studio SIMPOのエンジニアの小泉さんが「浪漫革命っていう良いバンドの音源を録った」ってSNSにあげていたのを見て知ってたんですよ。しかも、活動をはじめたばっかりの年にライジングとサマソニに出るって聞いて、ヤバいバンドが出てきたなと思っていました。
──モグラさんから見て、ムツムロさん、藤澤さんのふたりはどういう存在ですか?
モグラ : ふたりとも最初は若造やったけど、いまとなっては、nanoの周囲にいる本当に信頼のおける人間ですね。彼らとはよく「この音源聴きました? ヤバいですよね」みたいな音楽の話をするんですよ。いろんな音楽を聴いて、しっかりミュージシャンであろうとしてると思います。
ムツムロ : 僕らはnanoという箱のおかげで、ちゃんとミュージシャンになれたと思うんですよ。
藤澤 : 確かにそうですね。僕らがいまみたいな活動ができているのは、nanoというライヴハウスが、僕らが音楽をやれる場所を全力で提供してくれたからなんですよ。nanoは、バンドが育っていく出発地点になっているのが素敵だなって思いますね。