えみそんからX JAPANみたいにしてくれって
──2021年の8月4日にはニュー・アルバム『SOLAR』がリリースされます。『SOLAR』というタイトルに決まった理由はどこからだったんですか?
えみそん : ライヴに来てくれたお客さんから、「元気出た」とか「フレンズは近くに感じられるような存在なんだよね」と言ってくださることがすごく多くて。今回、フレンズというものについて考えたときに、そこがすごく頭にあったんです。これから作るアルバムは、どんな悲しい曲でも楽しい曲でも聴いてくれた人に寄り添えるものにしよう、フレンズは太陽のような存在でありたいなって思って。太陽は私たちかもしれないし、聴いてくれてる人が太陽かもしれない。だから、太陽の近くにいる存在でもありたいし、太陽にもなりたいので、「太陽」のSUNじゃなくて、「太陽“の”」という意味をもつSOLARにしました。
──なるほど。今作にはかなり前にシングルとしてリリースされたものも収録されていますが、アルバムとして作りはじめたのは、いつ頃でしょうか?
関口 : えみそんの家で4人で集まって、「急上昇あたしの人生」を固めるときに、その段階で“Hey Boy Hey Girl”のベースを涼平くんが入れていたので、その頃からアルバムに入る曲とかは出揃っていたかな。本格的にレコーディングしたのは4月ですね。
──新体制で初のシングル「急上昇あたしの人生」はタイトルからアッパーな楽曲ですが、この曲はどういう想いで作られたんでしょうか?
えみそん : この曲は、ドラマ『取り立て屋ハニーズ』の主題歌として書き下ろしさせてもらったんですけど、テーマは「人生の波」なんです。今までにないテーマだったので、シリアスさのなかに、フレンズの持ち味のポップさを合わせることを考えて作りました。
──間奏のギターとベースの掛け合いもすごくおもしろいですよね。
長島 : 最初、えみそんからX JAPANみたいにしてくれってオーダーがあったんです。めちゃくちゃHEATHかTAIJIで悩んだんですけど、最終的には長島涼平で行こうって決めて(笑)。
えみそん : ライヴでお立ち台に片足をかけて弾くイメージが浮かんできて、それをやって欲しくて(笑)。
長島 : えみそんのなかでお立ち台のイメージがX JAPANだったっていう(笑)。曲の後半を加速させるようなパートになればいいなと思って、いくつかパターン作ったんですけど、結局当日その場で太郎君とふたりで作ったやつが入ってますね。
三浦 : リハのスタジオでめっちゃ転調も入れたよね。
えみそん : 人生の波の感じを表現しようと思って、4回くらい転調したら「やりすぎ!」って怒られて、結局2回になりました(笑)。曲は、みんなに各パートを任せて、その場でセクションを決めていったり、これまでにない作り方をしたんです。編曲のJUVENILEもそこを損なわないようにアレンジをしてくれたので、みんなのエッセンスがたくさん入っています。
──編曲といえば、“FUTURE PEOPLE”と“Hey Boy Hey Girl”では、アレンジをTAARさんが担当されていますよね。
関口 : TAARは僕の友達なんですよ。えみそんと太郎君からデモがあがってきたときに、TAARと一緒にやったらすごく合いそうだと思って。
三浦 : 最初はシンセ・アレンジをやって欲しいなと思っていたんですけど、TAAR君の「こういうのを入れたらどうですかね?」ってアイデアがすごい豊富で、これはもうシンセ・アレンジだけじゃなくて編曲だということにもなったんで、クレジットに入れさせてもらいました。
関口 : TAARも「バンド・メンバーになった気持ちで楽しかった」みたいなことを言ってましたね。
えみそん : 嬉しい。じゃあTAARくんもフレンズだね(笑)。
──今回、全員で歌っている曲も多いですよね。
えみそん : 作っていくうちにみんなの声が入ってた方がフレンズっぽくて良いなって思って歌ってもらいました。
──メンバー全員で歌う “元気D.C.T~No at all~”は毎回アルバムに収録されているシリーズの曲ですが、今回はどんな曲になりましたか?
えみそん : 「太郎くんに元気出してもらおう」がテーマのシリーズですね。太郎君はよく「あの人って誰々に似てるよね~」って言うんですけど、それが全く似てないんですよ。でも、大きい宇宙の中で見たら、それは全て同じ人だ。つまり、「太郎の目は宇宙の目だ」という曲です。
三浦 : いじられてます(笑)。
──これ、何語で歌っているんですか?
えみそん : これ、英語なんですよ。
三浦 : 固有名詞が入っているので、英語じゃない言語で聞こえてるのかも。
えみそん : キダタロゥーってね(笑)。お洒落なバーとかカフェの店員さんに、フレンズのアルバムをかけたときに「いつも“元気D.C.T”はミュージカル調だから、お店の雰囲気に合わないし飛ばすねー」って言われることが多くて。今回は飛ばさないでもらいたいなって思って、お洒落なアレンジにしてみました。

──“海のSHE”はこれまでのフレンズにはあまりなかった、グランジやオルタナティヴ・ロックの要素を感じて驚きました。
えみそん : この曲は、シンセも鍵盤もいれないでメンバー4人だけでやろうと思って固めた曲ですね。
三浦 : この曲はえみそんがギターを弾いてるんです。「はじめてハウリングをやるんだ」って言ってやってたんですけど、普通にプロかな? っていうレベルで上手くてビビりましたね(笑)。
えみそん : いいハウリング出ちゃったね(笑)。
三浦 : たくさんのミラクルを見てきて、かなり自信の1曲になりました。4人で出来るすごい曲になったなって思います。
長島 : これはもともと「暗い曲も欲しいよね」っていう僕の案があって作ったんです。実際、話してみるとメンバーそれぞれが思う暗さとかアプローチが全然違うんですよね。この曲は、僕が思ってた暗いイメージの曲じゃなかったし、むしろ前向きな曲だなって思ったんです。でも、自分がアイデアを出して、それが予想と違う感じで大きなものになってたりすると、「こういうのがバンドマジックだな、バンドって良いな」って思いますね。
関口 : 僕もお気に入りのうちの1曲ですし、オルタナやグランジも大好きなので、当日もスマッシング・パンプキンズのTシャツを着て、「オルタナの神降りてこい」って祈りながら叩きました。
──オルタナとかグランジの感じを入れようってアイデアはどこから出てきたんですか?
三浦 : これはえみそんが言い出したよね。
関口 : 「暗い曲が欲しいんだけど、単純な暗さじゃなくって」って話を涼平くんがしてた時に、「シガー・ロスとかレディオヘッドが出てきた時期のオルタナのロックの歌詞ってあんな感じだよね」って話をしたから、その辺が頭に残ってたんじゃないかな。
えみそん : 確かに。それがこんな感じに変換されてたかも(笑)。
──歌詞はかなり内面を描かれていますよね。
えみそん : 白いワンピースを着ている女の人がいて海に立っている、その奥にも誰かなのかわからない女性がいて、というイメージが頭のなかにずっとあったんです。言葉としては、コロナ禍で思っていたことや、みんなそれぞれに同じ想いを抱えている瞬間を感じる場面が多くて、こういう歌詞になりました。新体制になってこれまで以上にみんなと話す機会が増えたなかで、自分の言葉や意思を込めた曲もフレンズで歌えるなという安心ができたので、今回入れさせていただきました。
