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INTERVIEW : polly
以前オトトイでpollyにインタヴューしたのが2022年2月。アルバム『Pray Pray Pray』の時だった。それから2ヶ月ぐらいでギターとベースが脱退、そして元LILI LIMIT / MO MOMAの志水美日(Key / Cho)が加入した。ニューEP『Heavenly Heavenly』は新メンバーになっての最初の作品だ。音楽的には『Pray Pray Pray』の延長線上にある音だが、志水の加入で確実に深化・進化したpollyを確認できる。越雲龍馬(Vo / Gt)、高岩栄紀(Dr)、そして志水のトリオになって、音楽的にも人間的にも良いバランスになったようだ。和やかで微笑ましいやりとりが関係の良さをうかがわせ、楽しいインタヴューとなった。
取材・文 : 小野島大
写真 : 稲垣ルリコ
3人の美学がすごく一致した作品になった
──今回のメンバー・チェンジは、ギターが抜けたのにキーボードを入れたっていうのがひとつのポイントだと思うんです。
越雲龍馬(Vo / Gt)(以下、越雲):そうですね。(制作では)ギターは僕が弾けちゃうなっていうのがまずあったのと。それと3枚目のミニ・アルバム『FLOWERS』(2019)から、シンセの音とかピアノの音を多用すようになって、プロフェッショナルなキーボーディストがいると良いなと思って。あと(志水は)LILI LIMIT時代もコーラスで結構歌ってたし、MO MOMAではメイン・ヴォーカルもやっていて。で、前作『Pray Pray Pray』の“Laughter”でフィーチャリングで歌ってもらったら、声の相性がばっちり合うなっていうのがあったので。それで、志水さんしかいないな、っていう。
──なるほど。非常に明快な理由ですね。
越雲:あとはバンドの精神的な面で、僕と高岩だけだと伝わらない、強度が高まらない部分のコミュニケーションの間を取ってやってもらえる。アコースティック・ライヴの時もすごくコミュニケーションがはかどって。音楽的にも絶対良い影響があると思えたので。
高岩栄紀(Dr)(以下、高岩):実際にスタジオに入るうちにどんどんなじんできて。
越雲:コミュニケーションが取りやすくなったのを高岩は感じていたんじゃないのかな。
志水美日(Key / Cho)(以下、志水):想像以上にこのふたりの会話がすれ違ってたんです(笑)。
越雲:共通言語があまりにもなさすぎて(笑)。
高岩:中間を取ってくれるというか、中継してくれるというか(笑)。
志水:翻訳してるんです。
──ずっと一緒にやってきたのになんでそんなにすれ違うんですか(笑)。
越雲:そうなんですよね……いやなんか、ぶっちゃけ4人だった時も……他の3人に伝わってないなっていう瞬間が多かったんです。けどまぁいいか、全部押し切ればいい、みたいな。結構そこのコミュニケーションを怠っていたなっていうことに気づいて。
──あぁ、なるほど。
越雲:そうなんです。うすうす感じてはいたけど、いざふたりになってみると、あれ?……って。コミュニケーションが1対1になるじゃないですか。ちゃんと向き合おうとすると、いままでは伝わっているはずと思っていた言葉が伝わっていなかったという事実に気が付いて。で、僕は結構……ロジカルに説明するよりは、例えば「ドーンといって、バーン! だよ!」みたいな言い方をするんですよ。感覚的な。でも「ここはドーンだよ!」って言っても解釈が違うことが多かったんですよね。なのでそれじゃ伝わらないっていうのが3人でいる時に発覚して。で、志水さんが「たぶんこういうことだと思うんだけど合ってる?」って、間に立って通訳してくれる(笑)。高岩の言ってることも僕に翻訳してくれる。
志水:(笑)。私はどっちの言っていることも理解できるんですよ。
──それは素晴らしいですね。
志水:(ふたりが)極端に離れたところにいるので、コントにしかきこえなくて。
越雲:僕からすれば、こんな無能な、頭の悪い人間がいるのかっていうくらい伝わらないんですよね(笑)。
──なんか無茶苦茶言ってますね(笑)。
越雲:でも高岩からすると、こんなにワケわからないこと言う奴はいないって思っているんですよ。だから絶妙なバランスで。僕としてはそれがバンドらしいと思っていたんです。つまり、同じような属性の人間が集まることほどつまらないことはないと思っていて。
──なるほど。それは言えますね。
越雲:両極端にいたとしても美学は一緒だったりするから、それがおもしろいなと思ったりする。それが高岩とやっている理由でもありますし。でも人間としてのコアな部分はすごく近いと思っているので。
──違う意見を持った人同士だからこそ同じバンドをやる意味があると。
越雲:でも以前はもう……一生伝わらないんじゃないか、みたいな諦めはありました。これはバンドじゃないんじゃないかっていう疑問はずっと抱いていた。ソロ・プロジェクトなの? みたいな。ソロ・プロジェクトなら、独りよがりでいいんですよ、悪い意味でも良い意味でも。でも僕はバンドをやりたい。バンドって、自分が作ったフレーズをほかの人が弾くからこそ、そのズレとかに美しさが生まれるような気がするんですよね。バンドをやる理由はそこだし、うん。他の人のメンタリティやセンスが加わることで、ひとりでは出せないものが見えたりする。たぶん今回の作品って、前作と全然かけ離れたものじゃないと思うんですけど、よりセンシティヴな音になったと思うんです。
──それは私もすごく感じました。
越雲:それはこの3人だからできたこと。いまの方が自分の背景というか、いままで生きてきた、いままで見てきた情景にすごく近づいた作品だと思いますし、美学がすごく一致した作品になったと思います。
──それはやっぱりメンバーが越雲さんの言っていることとか伝えたいことをちゃんと汲みとってくれているっていう実感があるから。
越雲:そうですね。ちゃんと向き合ってくれているなっていう実感がすごくあって。バンドってこれなんじゃないかな、っていう気持ちになりました。
──ただ言われた通りに弾いているのと、ちゃんと理解して弾いているのでは、音として違いが出るってことですか。
越雲:全然違いますね。レコーディングでも、グリッドには合ってるけどなんか違うよな〜っていうのがあんまりなくて。別にグリッドから外れていてもいいんですよね。
志水:私は彼らの人間性が自分的にハマるな、居心地が良いなって感じて(pollyに)入ったんですよ。多分そういう、いままで見てきたもの、土台にある性格とか、そういうのが演奏に出ると思うんですよね。
──人生とか、人間性とか。
志水:そう。同じ楽譜を弾いても違いが出ると思っていて。その人が精神的に持っているものが演奏に出ていて、その感じがたぶん私に合う。人間的で、よりナマモノ感があるバンドだなと。私はもともと機械的な演奏よりも人間的な演奏が強く出やすくて。自分が揺れやすい人間なので、それをそのまま出してもマイナスになりづらい。むしろきっとプラスになってくれる、そんな音楽性かなって。
──ある種の揺らぎみたいなものが、音楽の味わい深さに繋がっている。
志水:みんなけっこう揺れやすいと思うんですよ、この3人。多分。
──非常に良く分かります(笑)。
越雲:(笑)。
志水:もともとの根本みたいなものが近いから、揺れてもバランスがとれる。音楽的に良い味になったりしてる感覚はすごいあります。