杏窪彌(アンアミン)、箱根にインスパイアされた温泉ソングを配信開始!!

新宿から電車で1時間半、東京近郊の人にとっては身近な温泉地、箱根。この場所にインスパイアされた温泉ソングが誕生しました。歌っているのは、台北生まれの少女ヴォーカリストMINを擁し、独特のゆるーい楽曲で中毒者を続出させているバンド、杏窪彌(アンアミン)。OTOTOYでは、そんな彼女らの新作『箱根にしようかE.P.』(3月8日よりCD発売開始)から、「オン泉とオフ呂」と「箱根にしようか」の2曲をひと足先にお届けします。相対性理論を思わせるサウンドながら、どこか脱力した歌声と、ほっと和まされる楽曲は癖になること間違いなし。まさに温泉のように私たちをリラックスさせてくれる音源となっています。杏窪彌へのメール・インタヴューとともにお楽しみください。
杏窪彌 / 箱根にしようかE.P.
【Track List】
1. オン泉とオフ呂 →配信中
2. 箱根にしようか →配信中
3. 愛・アイヤー
4. まんが喫茶「桃源郷」
5. チャイナタウン抗争、恋愛沙汰
【配信フォーマット / 価格】
MP3 まとめ購入 : 300円 (単曲は各150円)
WAV まとめ購入 : 400円 (単曲は各200円)
懐かしい未来を予言的に唄う、ネオ歌謡がテーマです
杏窪彌(アンアミン)から、初の全国流通音源となる『箱根にしようかE.P.』が届いた。音源を聴いてみると、ゆったりとしたポップ・サウンドに乗せて、ところどころに中華テイストを感じさせるギター・リフが登場。そして、かわいらしい女の子がまるで温泉に浸かっているかのようにのほほんと歌っている。このいい感じに脱力した歌が、一度聴くと耳にこびりついて離れないほどキャッチーである。そう、彼女たちの曲はどれも抜群に中毒性が高いのだ。代表曲のひとつである「ジャイアントパンダにのってみたい。」を聴いてしまった日には、一日中そのメロディが脳内をループすることは必至。最終的に自分自身もジャイアントパンダに乗りたくてたまらなくなってしまう危険性があるので、要注意だ。彼女たちはいったい何者なのだろうか。杏窪彌自身の言葉とともに、その魅力を紐解いていきたい。
杏窪彌は、2011年に結成された台北生まれ東京育ちの"エキゾチック・ポップ・バンド"で、ヴォーカルのMINは台北出身であるとのこと。ゆるい女性ヴォーカルやポップなギター・サウンドは、相対性理論やタルトタタンなどの流れを感じさせる。実際、タルトタタンへの楽曲提供もしているようだ。まずは、杏窪彌とはどういう意味なのかを率直に訊ねてみた。
ごちそうさんの杏、窪塚洋介の窪、草間彌生の彌、でアンアミンとお呼びください。
杏、窪塚洋介、草間彌生という、およそ普段は横に並ぶことはないであろう3人の名前が飛び出してきた。共通点を挙げるとすれば、自由奔放でアーティスト気質なところだろうか。そもそも、なぜ台北出身のMINが東京でバンドを組もうと思ったのだろう。彼女たちが思う日本とは。
日本は混じりあうことが上手く、"和む"の「和」と呼ばれます。そんな国で、アジアの和え物をつくったらどんな味になるのか、面白そうだったしイマジネーションが湧いたのです。かつて、仏教と神道が混じりあって神仏混淆が起きたように。台湾という国と、日本という国が、国境を跨いで刺激され合っている感じです。

なるほど。さまざまな国の文化を独自の解釈で育むことで成長を遂げていった日本という土地で、アジアのテイストを織り交ぜた杏窪彌ならではの音楽を練り上げようということか。一方、バンドのコンセプトは、よりファンタジックなものであるようだ。
空想国家、杏窪彌王朝がありまして、人口は4人です。あらゆる夢、憧れ、冒険、さらにはアジアに対する間違えたエキゾチズムが、この国のエネルギーです。異文化に接したような感触を大事にしていて、それは落とし所のない気分にさせるアートに繋がります。これから来るであろう、懐かしい未来を予言的に唄う、ネオ歌謡がテーマです。
「懐かしい未来」という一見矛盾した言葉が登場したが、不思議と違和感は感じない。彼女たちの音楽はたしかにどこか懐かしい歌謡曲のテイストや、幼少期にNHK「みんなのうた」で聴いたような哀愁が感じられる。それでいて、歌っているのはあくまで空想や理想なのだ。それはきっと、彼女たちが思い描いている未来の風景なのだろう。杏窪彌王朝に住む4人=バンド・メンバーは、そんな未来を音楽で創ろうとしている。
MINが三蔵法師で、悟空が翔、沙悟浄が玲生、八戒が肉まんドラマー幹として西に遊びながら天竺を目指していますが、どうせならもっとたくさんの人たちを連れて、みんなでいきたいと思ってます。
天竺というのは、ここではユートピアのような存在なのだろうか。続いて、好きな音楽や影響を受けた音楽について訊いてみた。
鄧麗君(テレサ・テン)、望春風(※台湾の歌謡曲)、サディスティック・ミカ・バンド、チャクラ(※シンガーの小川美潮、プロデューサーの板倉文が在籍したニューウェイヴ・バンド)、坂本九、小林旭、吉幾三、水前寺清子、町あかり、むせいらん、マーティン・デニー、YMO、北風小僧の寒太郎、みんなのうた、はっぴぃえんど、大滝詠一、など。

台湾関連のアーティストや楽曲のほか、歌謡曲や日本のロック創成期に活躍したバンドの名前が多く挙がった。そしてやはり「みんなのうた」も。また、現在彼女たちと近いシーンで活動しているアーティストの名前が登場する一方で、いわゆるJ-POPの全盛であった90~2000年代に活躍したアーティストがすっぽり欠けているのは興味深い。なお、曲作りは宅録をメインに行っているとのこと。楽曲制作については、次のように語ってくれた。
縄文時代は、この世で完璧でない壊れたものがあの世で生きる、逆にこの世で完璧なものはあの世では生きない、と信じられていたそうです。それで、わざと土偶などを壊してからお墓に入れたそうです。いまの時代が無機質だからこそ、そのような、完璧でない音楽、どこか壊れていて人間らしい、未完成なものをつくっていきたいです。
未完成であるかはさておき、詰め込みすぎないサウンドと脱力したMINの歌声は、心にどこか安心感を与えてくれる。未完成なものとは、安らぎの象徴なのではないだろうか。そんな彼女たちが今回、箱根という場所にインスピレーションを受けたのも、ごく自然な流れだったのだろう。
現実に対して"HAKONE"は楽園、ユートピア。その場所への切符を手に入れるには、ロマンスを持つこと。具体的にいえばそれは、恋愛だったり何かに熱中すること。我を忘れること。それさえあれば、楽園としての"HAKONE"へいつでも行ける。たとえ現実の世界ですっかり寒くなってしまっても。そして、ロマンスを持って空想世界としての"HAKONE"にゆくと、そこには快楽=温泉が待っている。湯の中には恋人もいる、愛するものだけがたくさんある。
さらに、それは
かつて中国の知識人たちが現実世界に疲れて夢見た、道教的なユートピアで自然と遊んで暮らす生活、という現実逃避にも似ています。

と表現している。"HAKONE"にインスパイアされて作られた「箱根にしようか」は、「そんな現実と楽園について歌っています」とのことだ。最後に、彼女たちの今後についても訊ねてみた。
小林旭に「恋の山の手線」という曲があるのですが、歌詞で山の手線の駅をダジャレにして一周分歌っちゃうんです。そのアイディアをリスペクトして「恋の中央線」とか、どうでしょう。あまり、ロマンチックじゃないかな。
また、ライヴ活動については、
花やしきで、ヒーロー戦隊ものをやるようなステージがあるのですが、そこで野外イベントをできないかな。浅草の芸人さん、アキバのローカル・アイドル・グループなど呼んで、対バンさせていただきたいです。
と語っている。中央線や花やしきが持つ独特の昭和感は、彼女たちのイメージと合致している。懐かしい未来は、このあたりにもふんだんに詰まっていそうだ。今後も理想郷を追い求めて、音楽とともに旅を続けていくことは間違いなさそう。そんな、彼女たちの夢とは。
紅白歌合戦に出ること。あと、ジャイアントパンダにのってみたい。
紅白はまさに昭和の歌い手が目指した到達点のひとつ。実現してもらいたい。そのときはぜひ、台湾からの生中継でジャイアントパンダとの共演を果たしてほしいものである。
インタヴュー & 文 : 前田将博
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LIVE INFORMATION
〈ALT presents「AMAZON SHOW」〉
2014年3月16日(日) @渋谷 O-nest
開場 / 開演 : 17:00
料金 : 2,500円(前売) / 3,000円(当日)
出演 : NINJA MOB / SHUT YOUR MOUTH / RHYDA / MCKOMICKLINICK & WATTER / TOKYO HEALTH CLUB / 杏窪彌(アンアミン) / ALT / and more
PROFILE

杏窪彌(アンアミン)
台湾からやってきた謎の美少女ヴォーカルMINを擁する、台北生まれ、東京育ちのエキゾチック・ポップ・バンド。観光気分で懐かしい未来を唄う、東洋一のネオ歌謡。
MIN : Vo.(台北出身)
翔 : Ba.とか
玲生 : Gt.まんが
幹 : 肉まんどらまー