
轟音ギターと独特の歌声を中心に、渾然一体の音世界を表現する4人組バンド、sjue。最近では民族楽器や新たな音楽要素を導入し、VJや他のミュージシャンとのコラボレーションも積極的に展開。そんな彼らが5年ぶりとなるアルバムを7月24日(水)にリリース。OTOTOYでは、それに先駆け、アルバム収録曲から「elen」をフリー・ダウンロードをスタート。メンバー全員へのインタヴューとともにお届けする。イラストレーションを手掛けるVo.やちこの絵画的センスとも融合した、唯一無二のポップスに触れてほしい。
5年ぶりとなるsjueのニュー・アルバム
sjue / Favorite Color Scene of
【配信形態】
HQD(24bit/48kHzのwav) / mp3 単曲 200円 / まとめ 900円
※HQD版のボーナストラック「Tonight,Tonight[bonus track]」は16bit/44.1kHzのwavとなります。
【Track List】
1. odima
2. Elen
3. It's My Quarter Favorite
4. Cetus
5. Good night,Good bye
6. Tonight,Tonight(Bonus Track)
>>>「Elen(24bit/48kHzのwav)」のフリー・ダウンロードはこちらから
INTERVIEW : sjue
sjueが、5年ぶりにリリースするアルバム『Favorite Color Scene of』は、これまでの特徴であった轟音が薄れ、各々の音がよりクリアになった印象を受けた。メンバー・チェンジなどを経て、より大きく広がる可能性を持った音楽へと変化している。バンド結成から間もなく10年を迎えるいま、彼らはまるでバンドをはじめた頃のようなワクワク感を感じていると話す。バンド自体もどんどん大きくしていきたいと語る彼らにとって、このアルバムが再スタートの一歩となるような予感を感じる。今回のインタヴューでは、sjueのこれまでの歴史と、アルバムに込めた思いを訊いた。ここから彼らのいまを感じてほしい。
インタビュー&文 : 前田将博

sjueの結成
ーーsjueはどういったメンバーで結成されたんですか?
やちこ(Vo、Gt) : はじめは私のソロ・プロジェクトみたいな感じでスタートしました。
今井貴雅(Dr / 以下、今井) : 僕とやちは違うバンドだったけど、同じスタジオを使ってた仲間だったんだよね。
やちこ : 私は、美術学校の浪人してるときに遊びでバンドをやっていて。
今井 : それで、ドイツオレンジというバンドのヴォーカルに「お前うまいから歌は続けろよ」って言われて組んだんだよね。で、そのまま絵の学校はすぐにやめたっていう(笑)。
やちこ : 入ってすぐ辞めたよね(笑)。3ヶ月くらいで。

ーー学校を辞めたのは、音楽活動に専念したいからですか?
やちこ : いや、そういうわけではないです(笑)。私はデザイン科に入ったんですけど、論文とかを書くんですよ。作品を作るのはすごく楽しかったんですけど、そこは黄金率とか比率とか、知識をベースにやってたんです。特に1年生だから。で、2ヶ月あまりであれよあれよと課題が50個くらいたまって(笑)。自画像とか、描く系の課題は全部提出したんだけど、それ以外のものはさっぱりやる気が起きなくて。私は絵を描きたいだけだもんと思って、もういいやってなって辞めました。
今井 : それ、はじめて聞いた。今日までバンドやりたいから辞めたんだと思ってた(笑)。
やちこ : ないない(笑)。
ーー2006年に諏訪さんが加入するんですよね。
今井 : 1stアルバム『Luck by The Peace Sign』の前に、シングル『リトル・ライト』を出したころかな。はじめて流通に乗っかったやつ。だから、シングルのレコーディングのときはまだいなくて。それをリリースする前に「すごい入りたいんです」って言われたんです。彼は別のバンドでギター・ヴォーカルをやってて、こっちはちょうどベース・レスだったので、「いまはベースしか空いてないよ」って言ったら、「それでもいいよ」って。そのあと、やる気を確認するためみたいな感じで一緒に家で鍋をやって、次の日にはベースを買ってスタジオに入ったんです。で、そのリリース・ツアーは全部諏訪が弾いてくれて。あれ、入ることが決まってからツアーまで、あまり日がなかったよね。
諏訪敬祐(Ba / 以下、諏訪) : 1ヶ月もなかったよね。
今井 : しかも、ギタリストだったからベースははじめてだったのに。
ーーそこまでしても入りたかったと。sjueにどんな魅力を感じたんですか?
諏訪 : 一緒にやりたくなるような魅力があったんですよね。
ーー人間的な魅力という意味ですか?
諏訪 : 人間性は知らなかったですね。やっちゃんの第一印象は最悪だし。
やちこ : 泥棒扱いしたらしいですよ。
諏訪 : 千葉LOOKで対バンしたときに、普通にタバコを持って楽屋に入ったら「やちのタバコ盗ったー!! 」って。まだひと言もしゃべる前ですよ。
やちこ : 初対面でしたね(笑)。
諏訪 : なんかすごい嫌なやつがいるなって思った(笑)。
やちこ : 探してただけで、別に悪気はなかったんだけどね。
ーー尾嶌さんが入ったのは最近なんですよね。

やちこ : この10年で考えると、一昨日くらいの出来事ですね(笑)。お披露目したのは一昨年。
尾嶌亮(Gt / 以下、尾嶌) : 最初に会ったのはやちこさんで、ギターやらないかって誘われて。
今井 : その当時はギターがいなくて、会う人会う人を誘ってたんですよ。それに引っかかった人です(笑)。
やちこ : 稲毛K's Dreamでnemlinoのライヴがあって、打ち上げで隣に座ったら「ギターやってた」って言うから、「じゃあ入りな」って。
ーー尾嶌さんはsjueに対して、どんな印象がありましたか?
尾嶌 : 3人でのライヴを観ておもしろそうだなって思ったんです。向こうは僕の演奏を見たことはなかったので、純粋に人手が欲しかったんじゃないですかね(笑)。それで、ちょっとスタジオにお邪魔して、そこで入ろうってなりました。
やちこ : なんでおもしろそうだと思ったの。やっぱり歌がよかった?
尾嶌 : 僕が最初に見た感想は、ドラムとベースがよかったなって。
一同 : あはははは!
今井 : 2連敗ですね(笑)。
やちこ : やっぱそうですよね…。
ここ4年くらいでバンドも変化しました
ーーsjueが普段、どういうシーンで活動してるのか気になります。仲のいいバンドや盟友バンドを相関図にしていただいのですが、秀吉、日の毬、mothercoat、the Sing 2 You、THE ANDSなど、自分たちの道を歩んでいる方が多いですね。
今井 : そうですね。ただ、シーンとかあまり意識はしないですね。前のアルバムを出した頃はシューゲイザーって言われたけど、僕らはその頃シューゲイザーって言葉を知らなかったし。
やちこ : 渋谷とか下北とか、いろんなライヴ・ハウスでやってます。でも、ホーム的なところはないですね。
今井 : 渋谷屋根裏はお世話になりましたけどね。
やちこ : 逆に、どういうところでやれば売れますかね?
ーーやちさんの歌を聴いていると、ふくろうずなんかと対バンしたら合うんじゃないかと思いました。
やちこ : 私、ふくろうず大好きです!
今井 : イベントをやるたびに名前は出るんですけど、呼んだことないんですよね。
やちこ : 呼びたい! 周りの人にキャラが似てるって言われるし、音楽も好きだし、本当にやりたいですね。

ーーぜひやってほしいです。今回のアルバム『Favorite Color Scene of』は、尾嶌さんが加入してすぐにレコーディングされたんですよね。
今井 : リーダーが入ったから音源を作ろうって作りはじめたんですけど、レコーディング開始から足掛け1年にかかりました。ミックスで揉めたりとかして、それが思いのほか長引いて。
ーーどういう理由で揉めたんですか?
やちこ : レコーディングは初心者みたいなもんだったから、みんなわかんないってなって。
今井 : でも、わからないなりにこだわらせてもらった。ミックスもやり直してもらったし。
やちこ : 私たちにあまり学がないから、「こういうふうな感じにしたいんだけど」って言ってもなかなか伝わらなくて。それで、1回やったのを聴いてみて、「もうちょっとこうしよう」みたいな感じで進めていった。
ーー1stアルバムのレコーディングのときはどうだったんですか?

やちこ : 全部1発録りだったよね。
今井 : 基本それで、少し重ねてった感じ。あと今回は、レコーディングのときはレーベルがまだ決まってなくて、自分たちで作ったからね。前回はレーベルがお金を出してたから、社長が横にいてサクサクいかされた。だから、自分たちもやり足りない感があった。
ーー今回は納得できるものができましたか?
やちこ : いや、全然下手くそだよ(笑)。もう1回やりたいよね。
今井 : 終わったあとは絶対そう思っちゃいますよね。録ったなかでは最大限納得できるまでやらせてもらったって感じです。
ーーアルバム全体の雰囲気も、以前のシューゲーザーぽい感じは薄れて、歌を引き立てるようなクリアで聴きやすいアレンジになっていると感じました。
今井 : ここ4年くらいでバンドも変化しましたからね。前はみんな、"俺が俺が"って感じだったから。
やちこ : ガキーンてやらないと勝てないじゃん。ライヴ・ハウスだと。だから、勝手に音が大きくなっちゃってたんですよ。昔はとりあえず勝ちたいから、音量で勝とうって言う発想だよね。たぶん。
今井 : あと、当時言われたのは、ドラムがでかいから周りをデカくしないと聴こえないって言われて上げられたりとか。
震災、失恋、家がない、みたいな時期だった
ーー歌詞なんかは、ぼんやりと景色が流れていくような印象を受けました。曲の世界観に合う言葉を選んでいるような。
やちこ : 1曲目の「odima」とかはそんな感じで、すごいうまくいったなって思います。曲に書かせてもらった。これを書いたときは結構大々的にフラれた時期で、それが自分的には強く入ってる。あと、震災もあったから、それを受けた人の歌詞だなって思う。
ーー音楽性の変化も、震災などが影響しているのでしょうか。
今井 : 前回はもっと派手でしたよね。ぼやっとした色合いになった感じはします。たぶん、そういう時期だったんじゃないですかね。
やちこ : 私は混沌が大好きで、それを踏みしめて安定ではない平和を築こうみたいなタイプなんですけど、踏みしめる混沌が結構多くなってきましたね。
今井 : やちが1人でなんとかできる感じじゃなくなってきたよね。
やちこ : いままでは自分自身のなかの混沌だったの。でも、最近はもっと大きいですね。だから、自分に置き換えて歌詞を書くのが大変。モヤモヤしてるのをそのまま出すんじゃなくて、「それでもやっていこうぜ」みたいな達観した感じで歌詞を書きたいんですよ。私自身がそういう曲を聴きたいから。でも、最近は大変なんです。達観すべきものがすごい大きいし。
今井 : 自分ではどうしようもできない問題をいっぱい抱えてたもんね。震災、失恋、家がない、みたいな時期だった(笑)。

ーー今回のアルバムのなかでは、「Tonight, Tonight」は異色ですよね。
やちこ : あれはボーナス・トラックなんですよ。
今井 : ミックス中に、やちが「曲を作ってきたから録りたい」って言って持ってきた。
やちこ : マスタリングの最終日だよね(笑)。私、今日で終わるんだなって思ったら感動しちゃって。実際は終わらなかったんだけど。7月くらいの夏の日に、「これで終わりかー」って思いながら朝行く前にシャワー浴びているときに、曲ができちゃって。その感動だけで曲ができた。
ーーあの曲は、みんなで歌ってますよね。
やちこ : そうそう、ボーナス・トラックだし。自分が作った曲を他人に歌ってもらうのっていいものなんですよ。自分の歌を鼻歌で友だちが歌ってくれてるのとかを聴くと、すごくうれしくてグッとくる。
今井 : しかも、その場で聴いてその場で歌うっていう(笑)。よく聴くと歌詞を間違えているところとかもありますよ。
ーーお客さんとみんなで歌っても楽しそうですよね。
今井 : そういう感じですね。sjueはボーナス・トラックがいつもあるんですけど、前回のアルバムも最後にみんなで歌ってる曲があって、お客さん30~40人くらい?みんなで大合唱しています。
ふと思い出したときにちょっと聴きたくなるような音楽になればいい
ーーこのアルバムは、どんな人に聴いてほしいと思いますか?
やちこ : 私は個人的には同性に聴いてほしい。自分は女の子だから、女の子がわかる歌詞を書いていると思っています。歌詞を作るときに、自分が感動できるかどうかっていうルールがあるの。そのときに想像するのは、だいたい女子だから。
諏訪 : たぶん女の人が聴いたら、そういう感覚で聴こえると思うんですよね。
ーーなるほど。
今井 : 今回は、親とか仕事で関わる大人の人とかに「こんなバンドやってます」っていうふうに聴かせられるようなものを作りたいと思っていました。前回は親とかに渡すのは恥ずかしいなって思ったりもしたんですけど、今回は友だちとかにも恥ずかしくなく渡せる。
やちこ : 私、今回のほうが恥ずかしいよ(笑)。
諏訪 : それはさらけ出してるからじゃないの?
今井 : 全然普通の人、音楽をあまり聴かないような人にもわかりやすいっていうところも最近目指してる。だから、誰にでも聴いてほしいですね。そういう感じで、誰かに聴いてもらおうとか狙って作ってる感じではないから、こういうぼやっとした少し色あせた感じになったのかなとも思いますね。でも、こういうの好きなんですよ。Yo La Tengoみたいな感じで。
やちこ : なんか、いい曲ばかり入ったよね。人に残る曲、個人に深く根付く曲が作りたいなって思ってたら、名曲ばかりのアルバムになっちゃった。
今井 : こういう人たちに好かれたいって感じもなくなったかなって思いますね。前は子供たちというか、若い人に好かれたいみたいなものがあった気がしますけど。すごい集中して聴いてもらうよりは、ふと思い出したときにちょっと聴きたくなるような音楽になればいいなって思っています。

ーーバンドの等身大の姿が反映されているのかもしれないですね。
やちこ : それはありますね。男女混合バンドだけど、それは強みかなと思っていて。私は女性だけど男性も3人いるから、きっと半々に受け入れられるべきバンドだと思うし、男子にも女子にも好かれる素材があると思います。バンドとしては、男の子にも聴いてほしいよね。
今井 : キッズみたいな人にもね。文化祭でコピバンやりますみたいなものも、すごいうれしかったよね。
やちこ : 私、そのライヴを隠れてこっそり観にいったら、すごい泣いちゃった。お客さんもすごい楽しそうにゆらゆらしながら観てるわけ。それですごいグっときた。
今井 : そういう人が増えれば無条件にうれしいですね。好きでコピーしてくれるわけだし。
ーーやちさんのTwitterなどに、いまはバンドの状態がすごくいいって書いていましたよね。
やちこ : いま、初心者みたいな感じなの。
今井 : はじめてリリースするときってうれしいじゃないですか。僕らは何回かやってるけどリーダーはレコーディング自体はじめてだったし、もう1回ワクワクして楽しい状態なんですよ。
ーーsjueはプラネタリウムなどでもライヴをやられていますが、今後やってみたい会場はありますか?
やちこ : 武道館! この前Sigur Rosがやってたから(笑)。
今井 : 野外とかでもどんどんやりたいですけどね。単純にクアトロやAXでやりたいっていうのはもちろんあります。
やちこ : でも、実際どこでもやりたいよね。
今井 : やりたい。海の家とかでもやりたい。
やちこ : あれ、楽しかったよね。去年海の家でライヴやったんだけど、リーダーが仕事休めなくて欠席して、3人でやった。
今井 : 3人でアコースティックでやったんですよ。
ーー野外も似合いそうですよね。
やちこ : あと、コーチェラ(Coachella Valley Music and Arts Festival、アメリカの砂漠地帯コーチェラ・ヴァレーで行われる野外ロック・フェス)でやりたい! それか、フジ・ロックのルーキー・ア・ゴーゴーに出たいです。去年は3通出した(笑)。だってあれ、通し券もらえるんですよ。
今井 : なんで普通に出ようとは思わへんの(笑)。来年か再来年あたりには、ちゃんとしたルートで出たいですよ。
やちこ : 普通に行ってももらえるのか! そっか、じゃあ普通に出たい(笑)。
今井 : フェスとかはやりたいですね。どこでもやれるような強さは欲しいです。バンドもどんどん大きくしていきたいです。
LIVE INFORMATION
2013年7月2日(火)@新代田FEVER
2013年8月4日(日)新宿Motion
((sjue presents "Favorite Color Scene of" レコ発記念
出演 : sjue、日の毬、メトロオンゲン、YOIYOI、the nonnon
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PROFILE
sjue
2006年にやちこ、今井、諏訪など主体となるメンバーが集まり、本格的に活動を開始する。2008年には1stアルバム『Luck by The Peace Sing』をリリース。轟音ギターの中をVo.やちこの独特の歌声が泳ぎ回る、渾然一体の音世界を表現。そのオリジナリティに注目が集まる。同年夏のツアー以降は、様々なジャンルの奏者たちと交流。轟音を核とした表現のみならず、民族楽器や新たな音楽要素を大胆に導入し始める。最近では、VJや他のミュージシャンとのコラボレーションを積極的に展開。イラストレーションを手掛けるVo.やちこの絵画的センスとも融合した、唯一無二のポップスを発表し続けている。