脚色を一切しない完全なリアルーー金田康平、ソロ活動とTHEラブ人間を赤裸裸に語るロング・インタビュー!!

ここまで、赤裸々でまっすぐなドキュメンタリー作品を歌う男がいるだろうか? THEラブ人間のヴォーカル、金田康平が、3年ぶりとなる3rdアルバムを完成させた。全編アコースティックの前作『young apple』から打って変わり、本作はトラック・メイキングを主軸にした全17曲を収録。自身のテーマである“起こったことをそのまま歌う”を貫く、ドキュメンタリーであることに固執したエゴと愛欲にまみれた決定作!! これは、ぜひ聴いていただきたい!! ということで、冒頭曲「なつみちゃん」を無料配信!! さらに、THEラブ人間のことを一リスナーとして追い続けてきたライターの前田将博が、2時間に渡るロング・インタビューを決行。金田康平のソロ活動からTHEラブ人間のことまで掘り下げた激アツ・インタビューをぜひご覧ください!!
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金田康平 / NATSUMI
【配信形態】wav / mp3
【価格】単曲 150円 / まとめ価格 2,000円
1. なつみちゃん / 2. サリエリ(モーツァルトをぶっとばせ!) / 3. ぼくがまだ空を飛べていたころ
4. カレーライス / 5. ロックンロール / 6. 運転免許証 / 7. だれとねむる / 8. 悲しみの分け前
9. simple dreams / 10. うたはひきだしに / 11. なっちゃん、海に行こう / 12. 真昼の花火
13. shine a light / 14. かわいいよビッチーズ / 15. Heroin
16. サマー・レッド / 17. 歌手たち
INTERVIEW : 金田康平
THE ラブ人間というバンドは、いつだって忘れていたかった感情を無理やりにでもほじくりかえして、あらわにしてくる。ライヴに行くと、「これが本当のお前なんだ、目を背けるな」と、言われている気がする。その瞬間はいつだって痛い。でも、彼らは一切の手加減なしで、鋭い言葉と音を容赦なく投げかけてくる。ライヴが終わったあとに気づかされる。忘れていたかった感情は、かつてとても大事にしていた感情で、いつしかそこから遠ざかってしまっていたもの。それは、当時好きだった女の子への思いだったり、大切にしていた夢だったり。日々の生活に追われて、自分はなにがしたいんだろう、自分はなんでこんなことをしているんだろうと思うことも多々ある。そんなときに彼らの音楽に触れると、自分にとって本当に大切なものはなんなのか、いつも思い出させてくれるのだ。
彼らは2011年にメジャー・デビュー。その翌年の2012年には早くもLIQUIDROOMを埋めるまでに大きくなり、年末には主催フェス「下北沢にて」で下北沢の街中を彼らの色に染めた。しかし、順風満帆に見えた活動を経て、2013年末にベースのおかもとえみが卒業。バンド結成5周年となる2014年に入り、現在は新メンバーを迎えて初のツアーを行っている。この間、バンドにいったいなにがあったのか。これからどうなるのか。中心人物である歌手の金田康平とともに、これまでのラブ人間の歴史をたどりつつ、いまのバンドの現状や彼らが抱えている思いを訊いた。
また、金田にとって今年は、歌いはじめて15周年という年でもある。そんな金田が元恋人の名前をタイトルに冠した約3年ぶりのソロ・アルバム『NATSUMI』を完成させた。本作に込めた思いや、バンドとの対比、金田にとっての音楽とは。彼が頻繁に使っているという新宿の喫茶店にて、じっくりと語ってもらった。なぜ金田の歌はこんなにもリアルで、心の最深部にまで届くのか。そのわけを探ってほしい。

インタビュー & 文 : 前田将博
お客さんのありがたみを知らなかったんだよね
――今日はTHEラブ人間としての活動をなぞりつつ、ソロの活動についてもうかがおうと思います。ここ半年くらいでバンドの状況にいろんな変化があったと思うんです。まず、昨年末のおかもとさんの卒業ライヴのMCで金田さんが、いまのTHEラブ人間のことを「思い描いていた未来とは全然違う」っておっしゃっていたんですよね。それは「あなたたち(お客さん)に出会ってしまったから」とも言ってて。もともと思い描いていたものはどんな姿だったのかなって。
金田康平(以下、金田) : いきなり答えになっちゃうんだけど、それが今回のソロ・アルバム『NATSUMI』なんだよね。これが俺がTHEラブ人間で最初に思い描いていたことかな。完全なリアルというか、脚色を一切しないっていうことと、人を感動させないってこと。簡単には感動させないって言葉の方が正確かな。
――THEラブ人間でもそこを目指していたと。そのあたりをもう少し詳しく教えていただいてもいいですか。
金田 : 誰かを感動させるためじゃなくて、俺がどんなことを思っていて、どんな人間であるかだけを置いていくっていうものをやりたかったんだよね。ドキュメンタリーにとことん固執して。だからはじめはTHEラブ人間ってバンド名じゃなくて、「カネダコウヘイ & I LOVE YOU」っていう名前で。それから4ヶ月で、最初の音源『恋街のすたるじい』を2009年の4月にリリースしたときにバンド名をつけた。そのくらいからすでにちょっと変わってたかな。お客さんを無視できない、無視したくないなって思うようになった。
――誰かを感動させるためではないと言っても、結成当初から多くの人に広めたい気持ちはあったんですよね。
金田 : それはもちろん。とにかく一番になりたかったから。だから、お客さんを楽しませようとは思わなくても、みんな好きになると思ってたんだよね。お客さんがどうとか、シーンがどうとか、流行がどうとかは俺の音楽には関係ない。お客さんはどんなことが楽しいのかも関係ない。関係なく、俺の音楽が彼らを楽しませることはできると思ってた。
――それを無視できなくなってきたのは、それだけお客さんのレスポンスが予想以上に大きかったってことでしょうか。
金田 : お客さんにも自我があるんだなってはじめてわかった(笑)。THEラブ人間をやるまで、ちゃんとお客さんがつくようなバンドをやっていなかったから、お客さんのありがたみを知らなかったんだよね。だから、ちょっとびっくりした。人の前で歌って人が楽しんでる姿を見るのはこんなに素敵なものなんだなって、俺もステージ上で感動しちゃって。それからは、ドキュメンタリーというのは希薄になっていったかな。最終的にTHEラブ人間はエンターテイメントになっていかなきゃいけないんだろうなって。でも、それは5年間ずっと答えがでなかったことでもある。
――歌ってることは自分のことでありつつも、それをもうちょっとエンターテイメントとして昇華させると。それはすぐに実現できましたか?
金田 : 俺はあんまりできなくて、ほかのメンバーがそうしてくれてたのかなって。うちのメンバーはみんなお客さんを楽しませたいし、もっとわかりやすくライトで楽しいライヴにしたい人たちだから。そこでいっぱい衝突もした。メンバーが歌詞を「これじゃあまりにもエグすぎる」って言ってきたりすることも『SONGS』ではあったし。そこが不思議なバンドなんだよね。事務所やレーベルはなにも言わなかったから。
そのときに思っちゃったんだよね、やっぱり通用しないんだなって
――THEラブ人間のライヴは、確かにみんな楽しませようという思いを感じます。でも、一番きわ立っているのは、やっぱり金田さんのリアルさというか、エグいところだと思うんですよね。ほかのお客さんもそこを求めてる人は多いと思うんです。それをわかりやすい形で提示してるっていう意味でのエンターテイメントでもあると思うんですけど、そこに徹してるというのは少し意外でした。
金田 : それはたぶん、俺だけ徹してないからだよ(笑)。俺みたいな苦いやつが、甘いポップさを持ったエンターテイメントのなかにぽつんといるから、余計に浮き彫りになってるんだと思う。
――それでもエンターテイメントであろうとするのは、なぜなんでしょう。
金田 : 普通に考えたら窮屈な話なんだよね。でもなんで俺がTHEラブ人間を解散させないかっていうと、やっぱり幻想なのよ。ロック・バンドっていう魔法みたいな幻想を、どこかしらで信じちゃってる。もちろんイライラするから辞めたいなって思うことはいっぱいあるけど、13歳でバンドをはじめたときの気持ちがいまだに残ってるから辞められない。
――それは、もともと13歳の頃に思っていたバンドっていうものに対する幻想を追っているからなのか、THEラブ人間のメンバーと一緒にやってできるものに可能性を感じているのか、どっちなんでしょう。
金田 : それはもちろん、THEラブ人間だと思う。自分の作った音楽が、うちのメンバーが演奏したりアレンジしたり口出したりすることで、音楽として、受け皿として大きいものになっているっていうのを信じてる。メンバーひとりひとりの性格とか思い入れとか、そういうものを全部ひっくるめてまだやれるって思うし。

――THEラブ人間は2011年にメジャー・デビューしましたが、それはもともと想定していたことだったんですか?
金田 : 2009年1月に結成したときに「紅白に出られるバンドになりたい」って最初に言ってたし、「ビートルズよりかっこよくなりたい」とか、「世界一になりたい」とも言ってた。だから、ずっとメジャーとかよりもっと上を見てる。メジャー・デビューは夢だったけど当たり前のものっていうか、この国ではまずはそこまでいかないと話にならないだろうなって思ってた。メジャー行っても音楽がかっこよくないと売れないっていうのはわかってたし、結局こっち次第なんだろうなって思ってたしね。
――当時はほかの同世代のバンドがまだ下北でやっているなか、ラブ人間はもうクアトロでワンマンをやるくらいの規模になってて、ほかのバンドがクアトロにきたと思ったらもうリキッドルームでやってて。常にほかのバンドの先を行ってる印象がありました。
金田 : 俺も完全に頭が一個抜けたなって思った。近くにいるやつにこそ負けたくなかったし。ただ、そこでちょっとほっとしたところがあって、それが良くなかったのかなって思う。その頃に、『恋に似ている』のツアーが終わってから、またエンターテイメントをやるより音楽だけで勝負したいって思ったんだよね。だからあの頃からMCをしなくなった。
――あの時期はMCもしなくなって、物販にも出なくなったんですよね。
金田 : お客さんを煽ることもしない。俺は曲にも歌にも自信があるから、それだけで絶対にやれるってメンバーに言って。それでライヴをやって『SONGS』を作って、そのあとくらいかな。アルバムのツアーで東京のワンマンは下北沢GARDENって言われて、「あ、そうなんですね」って。もうリキッドは埋められなくなってる。そのときに思っちゃったんだよね。やっぱり通用しないんだなって。
いい音楽をやらなきゃ意味がないって思いがあった
――それでまた、エンターテイメントにシフトしていった。
金田 : 『SONGS』ってアルバムが不当な評価を受けてほしくなかったの。すげーいいアルバムだと思ってるから、それをわかってほしかった。それでツアー初日が渋谷o-westで忘れらんねえよと2マンで、半年ぶりくらいにMCでしゃべった。
――では、当時は結構ストレスを感じることも多かった。
金田 : ストレスなんてのは、5年間ずっと感じてる。その『SONGS』のツアーは地獄だったよ。だから、本当はあのツアーで解散しようと思ってたんだよね。ツネにだけは言ってたんだけど、ストレスが溜まりすぎてやってて楽しくないって。でも、GARDENでライヴをやったときに、ここまでできるんだって思って。バンドへの幻想がまたツアーを駆け抜けてるあいだにキラキラしてた。で、ツアーが終わって1ヶ月くらいライヴがなかったから、そのあいだにツネと話して、やっぱり続けようかって。
――そこまで深刻だったんですね…。でも、また続けようと思えたってことは、ずっと悩んでいたことが吹っ切れたと。
金田 : そう。俺は頭が堅かった。それまでは、ドキュメンタリーやるんならとことんドキュメンタリーやらなきゃダメじゃんって思ってたんだよね。ドキュメンタリーができなかったらエンターテイメントしかできないって思ってたし、その状態を咀嚼できなかった。そうじゃないっていうのは、半年間MCをしなかったからわかったことではあるんだけど。THEラブ人間はドキュメンタリーをドキュメンタリーのまま、エンターテイメントとして呈出できる唯一のバンドなのかなって思ったの。それでいまは超すっきりしてる。
――それでいまのTHEラブ人間の方向が定まったわけですが、そのあとにまた、おかもとさんの卒業という危機が訪れるわけですよね。
金田 : 10月の終わりくらいかな。『彼氏と彼女の24時』のレコーディングをして、「下北沢にて」でそれを売るぞってときに。そのときも解散するかもって思ってた。
――また解散を意識したと。
金田 : ツアーの前に、えみが辞めるって言った2日後くらいに下北のガストに男4人で集まって、どうするって話をして。すぐには決まらなかったけど、THEラブ人間ってもはや屋号みたいになってるから、それを下げるのは絶対に違うでしょって話になったから、続けようって決めた。それで、俺は絶対にサポートは嫌だったから、続けるにしてもメンバーは入れようと思って。でも、どこのバンドの誰を入れようっていうのはつまらないって思ったから、メンバー募集をした。
――そこまでの動きも早かったですよね。
金田 : ライヴを観る段階で悲壮感が漂ってるのは嫌だったから。せっかく楽しいライヴを俺たちがやるのに、解散ライヴみたいになっちゃうのは嫌だった。だから、お客さんにちゃんとラブ人間は続くんだなって理解してもらったうえで、えみのラスト・ツアーをまわりたかった。
――ちなみに、おかもとさんが辞めるといったときに、引き止めようとはしたんですか?
金田 : 俺はしなかったな。やる気をなくしちゃった人を引き止めてもしょうがないし。さみしい気持ちよりももっと強く、いい音楽をやらなきゃ意味がないって思いがあったから。あともうひとつは、歌詞も曲も書けて歌も歌える人間が、それができないバンドに在籍し続けるっていうのは、俺だったら超つらいなって。ベーシストに徹して5年やるってこと自体がすごいって思った。あと、俺とえみは最も気楽な関係というか、メンバーのなかで唯一、もしかして友だちなんじゃないかって思っちゃうような関係だったのね。だから、自分の友だちがやりたいことをやるんだったらって思うと、全然引き止めなかった。もしかしたらほかのメンバーは各々引き止めてたかもしれないけどね。
――金田さんらしいなって思いますね。
金田 : 俺が逆だったら、引き止められても絶対に辞めるしね(笑)。
ナツミに対して俺は引きずってないって気づいて、その瞬間にぞっとして
――そういう経緯だったり、さっき言ったようなTHEラブ人間に対する思いが吹っ切れていたからなのか、去年の12月23日のおかもとさんの卒業ライヴは一切迷いがなかったですよね。悲壮感なんてもちろんなくて。そこからたった2ヶ月で新メンバーお披露目ツアーがあるわけですが、ここまでの動きも早かったですよね。
金田 : 応募してきた人たちと、本当にたくさんスタジオに入ってセッションして決めた。最終的にこいついいなと思ったメンバーと飲みにも行ったし、じっくり決めたかな。俺はいいと思うけど、お前はやれんのっていうことをもっと訊いたり、話したり、青臭い夢の話とかまでして。それで、こいつとやりたいなって思ったから入れた。
――先日、実際にライヴを観て、すごくしっくりきたんですよね。それまでは正直、不安もあったんですけど、これは逆に楽しみしかないなって。なにより、ステージ上のメンバーがみんなすごく楽しそうだった。
金田 : 結局それなのよ。あんなに楽しくやれるんだって思った。めちゃくちゃ下手だったけど、関係ない。スタジオでもすごい独り占めしてる気分だもん。こんなにいい音楽を誰にも聴かせてやりたくないなって(笑)。
――なるほど(笑)。いまはラブ人間としての状態はすごくいいわけじゃないですか。そんなときになぜ3年ぶりにソロで、もともと思い描いていたドキュメンタリーに特化したアルバムを出そうと思ったんですか?

金田 : そもそも俺はいつでも曲を書いてて、いつでもレコーディングしてるから、いつでもアルバムを出せるんだよね。で、ナツミと一緒にいるときにもいっぱい曲を書いてて、去年の夏の終わりに別れた。その瞬間にカチっと自分のなかではまって。THEラブ人間でやってることとは違う、誰の心にも届かなくていいから、俺のための、もしかしたらナツミにも届かなくていいかなってくらいの作品を作るかって思った。
――それは、THEラブ人間としての方向が定まったから、余計にそういう欲求が生まれたのかもしれないですね。
金田 : 逆に『NATSUMI』を作ったのも良かったんだよね。これはTHEラブ人間ではできないわ、やりたくないわって思うようにもなった。
――そういう意味でも、本当にドキュメンタリーというか、嘘のない作品ですよね。
金田 : ほかの音楽を聴いてても、嘘が多いなって思うんだよね。歌ってる内容じゃなくて、歌のキーを機械で合わせたりとか、音がもっときれいにまとまってるものっていう。そういう意味でも嘘のないものを録ろうと決めた。もう全部、金田康平っていうものだけを封じ込めて、食いづらくて飲み込みづらいものだけを封じ込めて。だから、音が悪いって思う人もいるだろうし、内容も重苦しいなと思う人もいるだろうけど、知らんと思ったね。
――THEラブ人間のMCなどでも言っていますけど、金田さんの曲は聴いてて痛くなるような、目を背けたくなるような曲も多いと思うんです。しかも今回は元恋人のことを歌っている。それって聴いている我々以上に、本人はもっと痛いんじゃないかなって思ったんですよ。
金田 : すごく痛いです。今回の『NATSUMI』って、ナツミのここが好きで、ナツミのここが嫌いで、ナツミと俺のこんないろんな時間があって、ナツミと俺の「ああもう終わってしまうんだな」って言う瞬間がある。そもそも別れた時はつらくてしょうがないし、会いたいし触りたい。つらくて曲ばかり書いてる。でも、これを作り終わったときに、めちゃくちゃすっきりしたの。ナツミに対して俺は引きずってないって気づいて。その瞬間にぞっとして、俺は音楽がありゃいいんだなって思っちゃったんだよね。
――それは結構、人としては危険な領域ですよね(笑)。
金田 : そうそう(笑)。だから、このアルバムってナツミのことを歌ってるアルバムじゃないじゃんて思ったの。それで最後の「歌手たち」っていう曲を追加で書いた。その前の「サマー・レッド」が別れぎわのことを歌ってて、その曲でナツミとのことは終わってる。で、最後17曲目で「以上16曲を歌ってたのはこんな人間です」って言ってる。だから、このアルバムは俺っていう人間そのものになんだよね。
俺は嘘だらけの音楽に本音は勝つんだよって思ってる
――最後が「サマー・レッド」だったら、すごく美しい終わりだと思うんですよ。「歌手たち」が入ることで美化してないというか、よりドキュメンタリーになっている気がしました。
金田 : これ、結構人のことを叩いてるような内容だけど、自分のことを叩いてるんだよね。ろくでもないねって。「simple dreams」だって俺の夢をたくさん書いた歌だし、結局これもナツミをとおして自分のことを歌ってる。2曲目の「サリエリ!(モーツァルトをぶっとばせ)」も、本当にバンドやっててイライラした気持ちをぶつけてる。THEラブ人間は超かっこいいぜっていう曲をひとりで歌ってるんだよね。
――普通のミュージシャンや人の前に立つ仕事をする人って、恋人の存在に触れなかったり隠していたりするじゃないですか。金田さんはそれを昔から当たり前のようにさらけ出していて、そういう経緯もあるから歌がよりリアルだし、普段からすごく覚悟があると思うんですよ。それは僕が知る限りずっとぶれてない。そこまでまっすぐあれるのはなぜだと思いますか。
金田 : 今回俺もわかったのは、ナツミへの気持ちがアルバムを作ったら昇華されるように、こうでもないとうまく生きていけないんだったら、そりゃぶれないわって。毎日曲を書いているのも、最初はたくさん曲を書いたらもっといい曲を書けると思ってはじめて。でも、ここ2年くらいは自分を保つために書いていることがすごく多い。

――本当に、それこそ根っからのミュージシャンというか。プライベートもソロもバンドも全部繋がってるというか、金田さんはいつでもあくまでミュージシャンとして存在している気がします。
金田 : そうなんだよね。このアルバムを聴くと余計に思う。だから、いつか枯渇して枯れ果てたら終わりだし、それまではちゃんと作っておかないとなって思ってる。枯渇したら辞めちゃうだろうし、それでいいと思うようになってきたんだよね。無理やり音楽を作ることは辞めた。無理やり絞り出して作るくらいなら、きちんと働いてた方が楽しいはずなんだよね。みんなそうだと思うけど、俺はただ幸せになりたくて生きてるわけだから。目標はなんですかって訊かれたら「幸せになることです」って答えるし。だから、音楽以外で幸せになりたいものができたら、きっとそれで幸せになるだろうし。それがきっと歌が枯れ果てる瞬間だから、それまでは1秒も止まっちゃいけないんだなって思う。結婚もしたいしね。
――そうなんですね。最後に、今後の活動や音楽に対してどんなビジョンがありますか。もちろん行き着く先は変わらないとは思うんですけど。
金田 : 俺は嘘だらけの音楽に本音は勝つんだよって思ってる。これはTHEラブ人間も一緒。最大公約数みたいな音楽じゃなくて、そういうものが最終的に生き残るって思うし、50年後、100年後に歌い継がれていく歌を俺はやっぱり歌いたいから。だから、今回のこの『NATSUMI』っていうアルバムがイレギュラーだと思われたくない。これがレギュラーで、これが届くことが当たり前のことにしたい。本当のことを本当のまま歌ってることが人間として真っ当なんだから、それを音楽にしてるし、それがちゃんと普通に生きてる人たちのなかに入っていければいいなって思う。音楽をやるのに使命があるとすれば、それしかないかな。
――だから金田さんの歌は、聴いていてほかのどの歌よりも深く心に響くんだと思います。
金田 : 先端を尖らせてるからね。俺はみんながひた隠しにしているものをひっぺがして捕まえて、目の前に引きずり出して、「お前のなかにこんなものがあるぞ」って言う。結局それは、THEラブ人間だとか金田康平だとかは関係ない。それをやり尽くそうと思っています。
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LIVE SCHEDULE
金田康平ライヴ情報
金田康平ひとり会「100人の肉」SOLD OUT
2014年3月26日(水)@渋谷guest
THEラブ人間ライヴ情報
LIVE GOW!! Vol.3
2014年3月18日(火)@福岡BEAT STATION
サヌキロックコロシアム
2014年3月21日(金)@高松オリーブホール
ラックライフ presents『GOOD LUCK vol.25』
2014年3月29日(土)@なんばHatch
マキタスポーツのショービジネス
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Rock’s UP vol.02~3rd アニバーサリー“シゲキ的な夜に☆”
2014年4月19日(土)@横川シネマ
PROFILE
金田康平
1986年8月13日 東京に生まれる。
音楽集団「THEラブ人間」の歌手であり、ソングライター。
1999年に音楽活動を開始。
幾つかのバンドを組んでは解体し、2009年にTHEラブ人間を結成。
2011年夏、プロとしてのキャリアをスタート。
現在までに2枚のLPと3枚のEP、3枚のシングル、1枚のスプリット盤をリリース。
ソロ作品に至っては全曲iPhone録音の代表作「young apple」を筆頭に、膨大な量のレコードを録音制作している。
獅子座のO型。
好きな飲食物はカレーライスとアーモンドクラッシュポッキーと珈琲。
好きな絵描きは岡田愛梨。
好きな写真家は大橋仁 / 喜多村みか。
好きな映画監督はジョン・カサヴェテス / レオス・カラックス / アキ・カウリスマキ。
最近の流行は腕時計をつけて街を歩くこと。
冬になったのでライダースを引っ張り出した。