前作から約6年、F.I.X.RECORDSがおくる『Pure』シリーズ最新作をDSD配信開始
F.I.X.RECORDSがおくる高音質CDプロジェクト「Project Pure」シリーズの第3弾となる『Pure3 Feel Classics -Naoya Shimokawa-』が、SACDハイブリッド盤とアナログ盤のリリースに続き、配信でも販売開始された。2007年に第1弾『Pure AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS』、2011年に第2弾『Pure2 Ultimate Cool Japan Jazz』が発売。どちらもアニソン・ファンだけでなくオーディオ・ファンの間でも高評価を獲得、ロングセラーとなった。また続編の制作は早くからアナウンスされていたこともあり、前作から約6年を経て満を持して発表された今作を、心待ちにしていた人も多いのではないだろうか。
Pure3 Feel Classics -Naoya Shimokawa-
【配信価格】
(左)DSD(2.8MHz)+mp3 まとめ購入のみ 3,240円
(右)WAV / ALAC / FLAC(24bit/96kHz) 単曲 324円 / まとめ購入 3,240円
【Track List】
01. FeelingHear / 02. 心はいつもあなたのそばに / 03. ありがとう / 04. 時の魔法 / 05. POWDERSNOW / 06. FreeandDream / 07. 君をのせて / 08. ヒトリ / 09. さよならのこと / 10. キミガタメ / 11. Closing / 12. FeelingHeart
プロデューサー下川直哉による全曲解説(F.I.X.RECORDS内ページ)
壮大なファンタジー映画の世界に迷い込んでしまったかのような気分
AQUAPLUSの代表を努め、自ら多くの楽曲制作にも携わり、このシリーズのプロデューサーでもある下川直哉は、コンセプトとして「僕たちが作っている音楽に慣れ親しんでいる人たちに、いい環境で聴けるような最高の音とトッププレイヤーの演奏を知ってもらいたい」、そして「アニメ・ゲームサウンドの分野のリファレンスになれるようなものが創りたかった」と語っていた。第1弾発売から10年が経ち、彼の言葉どおり、このシリーズはリファレンスとしての役割を果たし、アニメ・ゲーム音楽シーンにおいてハイレゾは現在、多くの人に浸透してきた。
それぞれのタイトルにあるように、第1弾『Pure』はアコースティック、第2弾『Pure2』はジャズがキーワードだった。3作目となる今作はクラシック。さらに下川自身が作曲したものだけを集め、シリーズではじめてヴォーカルを入れないインストゥルメンタル楽曲のみで構成されているのも、今作の大きな特徴だろう。レコーディングされたのは2012年と2013年の夏で、場所もホールやスタジオなどいくつかの場所にわけて行われたという。これまで同様、トップ・クオリティの作品を作るために注がれた多くの時間と手間が垣間見える。
そんな『Pure3』は、同シリーズのなかでもっとも感情豊かで、ドラマチックな印象を受けた。アレンジも多彩で、前半はチェロとピアノという編成で奏でられるM3「ありがとう」、繊細なピアノの音のみで聴かせるM4「時の魔法」など、シンプルな構成で演奏された楽曲が並ぶ。後半は音数が増え、M10「キミガタメ」、M11「closing」はゴージャスなオーケストラ・アレンジでクライマックスを演出。さらにアルバムの最初と最後は同じ「Feeling Heart」のミックス違いが収録されており、まるで物語が繰り返されるように何度でもループして聴くことができてしまう。
序盤で心を奪われたのは、バイオリンを主役に添えたM2「心はいつもあなたのそばに」。下川が音楽監督を努めたTVアニメ『WHITE ALBUM2』で使用されていたこともあり、曲の展開にあわせて移りゆく風景が脳裏をよぎる。弦楽器が紡ぐ繊細な音色は、最後の音が途切れる瞬間まで聴き入ってしまう。同アニメで流れた「さよならのこと」をはじめ、実際にゲームやアニメの劇伴として使用されている楽曲もいくつか収録されているためか、ほかの曲も聴いているとさまざまな景色が浮かんでくる。
今作のなかでは少し異色ともいえるM6「Free and Dream」は疾走感のあるチェロの演奏が印象的。細かく刻まれるリズムに思わず胸が踊りだすような同曲は、アルバムのなかでほど良いアクセントとなって、後半へと繋がっていく。こんな楽曲が中盤に配置されていることも、今作の幅広さを物語っている。一方で、「アルパ」というハープのような楽器を中心に奏でられるM8「ヒトリ」は、ひときわ大きな安らぎを感じさせてくれる。ストリングスの隙間を自由に飛び回るように奏でられる優しくも不思議な音色は、聴くたびに新たな発見がある。
そして特に強烈な存在感を放っていたのは「キミガタメ」。実はこの曲はシリーズで唯一、全作に収録されている楽曲でもある。『Pure』『Pure2』ではともにオリジナル・ヴァージョンを歌っているSuaraのヴォーカル入りで収録されていた。今回は楽曲をとおして、オーケストラならではの抑揚がもっとも激しく表現されており、圧倒的な立体感を演出。要となる歌をあえて抜いたことで、次々と主役となる楽器が入れ替わり、まるで壮大なファンタジー映画の世界に迷い込んでしまったかのような気分にさせられてしまった。
すべてをインストゥルメンタルで表現することで、これまで生み出してきたひとつひとつの楽曲、メロディの良質さがより改めて浮き彫りになっていくようだった。今回収録された楽曲をはじめといて、下川やF.I.X.RECORDSが手がけてきた音楽が多くの人に長く、そして深く愛されている理由を実感させてくれるような作品。BGMとしてはもちろんのこと、時間を作ってヘッドフォンやスピーカーで贅沢にとおして味わいたくなるような聴きどころ満載のアルバムであり、きっと今作も、手にした人たちに長く愛されていくことだろう。(text by 前田将博)
DISCOGRAPHY
Pure2 Ultimate Cool Japan Jazz
アクアプラス作品の名曲を中心に厳選した楽曲(アクアプラス以外のカバー2曲を含む)をジャズアレンジ。一流ジャズミュージシャンの演奏によるピュア・サウンド・アルバム。“和でJAZZでROCKなサウンド”を名に冠した気鋭のピアノ・トリオWaJaRo(ワジャロ)のメンバー、Pf:Shuntaro(シュンタロウ)、Dr:Shirane(シラネ)、B:SutMaru(ストマル)を中心に、元クライズラー&カンパニーの竹下欣伸(BASS)、元キンモクセイの後藤秀人(GTR)、オルケスタ・デ・ラ・ルスのホーンセクションのメンバーなどが参加。
Pure AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS
「Leaf/AQUAPLUS」と「Elements Garden」とのコラボレーションが遂に実現!一流スタジオミュージシャンの演奏による「Leaf/AQUAPLUS」の名曲をアコースティックアレンジしたピュアサウンドアルバム。音楽プロデュース・アレンジには「Elements Garden」の上松範康・藤田淳平・藤間仁が参加。ボーカルにSuaraをフィーチャリングし、セルカバー等4曲のボーカル曲を収録。
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