アイドル兼社長として一躍注目を集めた里咲りさ、ソロ・アーティストとして共鳴する大森靖子との相思相愛対談!!
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アイドル・グループ「少女閣下のインターナショナル」を立ち上げ、運営兼メンバーとして“しゃちょー”の愛称で親しまれていた里咲りさ。当時からソロ・アイドルとして、そしてシンガー・ソングライターとしても活動していたが、グループ休止後、自身の活動に専念。9月に待望のアルバム『売れるまで待てない』をリリースした。今作は里咲の思いつきからわずか制作期間2ヶ月で書き下ろしの新曲7曲を録音し、初期衝動全開の全曲A面を宣言した意欲作。楽曲の確かなクオリティにさらなる注目を集めた。そんな最新作を待望のハイレゾ配信!! 特典として「ディアティア」と「僕らの心電図」のアコースティックver.というボーナストラックも新たに収録されている。
つい先日の11月には、2017年9月22日に自身最大規模となるワンマン・ライヴを東京・Zepp Diver Cityで開催することを宣伝した里咲。彼女がこれまでのソロで行ったワンマンのなかでは渋谷MilkyWayが最大キャパだというのだから、とんでもない宣言だ。ただ、2013年にも自身の規模に見合わないと思われたライヴハウスで、ワンマンライヴを大成功に収めた人物がいる。大森靖子──2013年、彼女もそれまで100人以下の規模でのワンマンライヴしかやったことがなかったにも関わらず、渋谷CLUB QUATTROのステージを超満員にした。大森の背を追う里咲、いやそれ以上の共鳴する何かを持つふたりの貴重な対談が実現した。
里咲りさ / 売れるまで待てない
【Track List】
01. さよならキャンディ
02. Little Bee
03. 小年小女
04. WALCALLOID
05. Would Be Good Day
06. ファストガール
07. 窓辺に小鳥はいない
08. TURE
09. ディアティア
10. 最後の曲が決まらない
11. ディアティア(Acoustic) / OTOTOY限定ボーナストラック
12. 僕らの心電図(Acoustic) / OTOTOY限定ボーナストラック
【配信形態 / 価格】
24bit/96kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC
>>ハイレゾとは?
単曲 250円(税込) / アルバム 2,300円(税込)
大森靖子 / POSITIVE STRESS
【Track List】
01. POSITIVE STRESS
02. 非国民的ヒーロー
03. 朝+
【配信形態 / 価格】
AAC : 単曲 257円(税込) / アルバム 771円(税込)
INTERVIEW : 里咲りさ × 大森靖子
大森靖子との出会いは、自分にとってとても衝撃的だった。2011年に出会って以降、彼女の音楽や言葉、活動は、どれもが刺激的かつ革新的。そしてなによりライヴはいつ観ても圧巻、大きな説得力があった。それはいまでもまったく変わっていない。むしろ研ぎ澄まされているように思う。
大森靖子と出会って以降に限れば、自分にとってもっともインパクトの大きかった出会いは里咲りさだろう。運営まで自らこなす彼女は、"ぼったくり物販"で稼ぐDIYアイドルとして各種メディアにも登場し、ライヴでもとにかく観るものを飽きさせない突拍子もないパフォーマンスの連続。しかしなによりも惹きつけられたのは、彼女自身が作るその楽曲だ。
大森靖子は事務所無所属だったインディーズの頃から、自身の楽曲をライヴで観客に聴かせるために、多くの人に届けるためにどうすればいいかを常に考え、実践しながら活動してきた。それがメジャー・デビューや現在の活躍につながった。里咲りさも売れることを常に意識し、シーンの流れを読みながら戦略を練って活動、最近はそれが徐々に実りはじめている。個人事務所のまま、たったひとりで道を切り拓こうとしているのだ。
それまで接点のなかった2人が、今年の2月に出会った。大森が里咲を誘ってアコギを買いにいった。そして今回、対談が実現。大森が里咲に声をかけた理由、セルフ・プロデュースによる活動、さらにこれからの構想など、たっぷりと語ってもらった。今後のJ-POP界を担っていくであろう2人の言葉は、きっと多くの人に響くものであるはず。もしまだ2人の音楽やライヴに触れたことのない人は、これを機にぜひ直接体感してみてほしい。
インタヴュー&文 : 前田将博
写真 : 飯本貴子
大森さんがギターを壊している映像を観たことがあるんですけど、「これ(DOVE)も壊さなきゃいけないときがきたら壊してもいいんだよ」って言われました
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──大森さんと里咲さんは一緒にギターを買ったときが初対面だったそうですが、大森さんは里咲さんのことはすでにご存知だったんですか?
大森靖子(以下、大森) : 吉田豪さんやぱいぱいでか美、嶺脇社長(タワーレコード)とか、いろんな人が名前を出していましたからね。CD-Rをはじめてタワレコに置いたって訊いて活動を追ってみると、アイドルのなかだと異端に見えることをやっているんですけど、どれもインディーズのミュージシャンがこれまでやってきたことなんですよね。そういうことを真面目にわかりやすくアイドルとしてやっているので、すごいなって印象でしたね。
里咲りさ(以下、里咲) : 最初に会ったときに、それを言われました。あと「CD-Rを焼くのはやめな」って言われたのをすごく覚えてる(笑)。
大森 : 焼く時間があるなら曲を書きなって(笑)。
里咲 : そのときに、物販も人を探してやってもらった方がいいって言われました。でも自分で作ってお客さんに売っていると、お客さんがなにを欲しがっているか肌でわかるんですよね。でも忙しくなってくるとメールの返信とかも追いつかなくなってくるので、スタッフがいたらいいなと思うことはあります(笑)。物販を運んだりCDを焼いたりしてくれる人を雇えるようになりたい。
大森 : 早く雇いな(笑)。
里咲 : まだ雇えないんです(笑)。
──里咲さんはライヴでアイドルのようにオケを流しながら歌ったりしつつも、ファンにもらったミニ・ギターでの弾き語りもやっていました。そこからちゃんとしたギターを買おうと思ったのは、なぜなんですか?
里咲 : 音楽をもっとちゃんとやらなきゃいけないなって思ったんです。去年「ビートたけしのTVタックル」に出させてもらって、ぼったくり物販が取り上げられてバーンって知名度が上がったんですけど、バラエティ要素が強くなりすぎちゃって。テレビ番組は楽しくて大好きだからたくさん出たいんですけど、音楽の方ももっと広げるためにいろいろやっていかなきゃと思って、弾き語りだけのライヴをやったんですよね。そのときにお客さんがいっぱい来てくれたのに、ミニ・ギターだと後ろまで音が届かなかったんですよ。
──今年の2月20日の池袋Hoteyesですよね。初の弾き語りのみでのワンマン・ライヴでした。
里咲 : そうです。それで編曲をしてもらっている灘藍さんに相談して、翌日にギターを買いに行こうと思っていたときに、二宮(ユーキ / 大森靖子スタッフ&カメラマン)さんから「大森がギター買いに行こうって言ってる」ってメールが来て。そのあとに大森さんからも「明日空いてる?」ってDMが来ました。それまでまったく直接的な関わりはなかったのに。
大森 : 私は相談していることはなにも知らなくて、弾き語りの動画を観たときに「このギター酷い」と思ったんです(笑)。これで曲作れるのかなって。曲はギターに引きずられるので、早くちゃんとしたものを買ってほしいと思ったんです。最初は自分が持っている使っていないやつを貸そうかと思ったんですけど、買う気があるなら一緒に行こうと。
里咲 : タイミングばっちりでしたね。奇跡的です。
──それで、本当に翌日の2月21日にギターを買いに行ったんですよね。
里咲 : ちょうど大森さんのリリイベがあったので、その終わりに待ち合わせして、新宿のお店に行ったらTaylorをすごく勧められたんですよ。私はそれでいいかなと思ったんですけど、大森さんが「帰るよ。この店はTaylorを売ろうとしているだけだからダメだよ」って(笑)。
大森 : ふふふ(笑)。
里咲 : そのあと御茶ノ水の中古屋さんに行って、大森さんに勧められてDOVEを弾いたら、一発で「これだ!」って思って、キラキラキラってなったんですよ。値段を見たら30万円で、お店の人には「ローン組めますよ」って言われたんですけど、かっこ悪いと思って現金で買いました(笑)。
大森 : 私が買ったときは3年ローン組みましたよ(笑)。でもうらやましかったですね。最初にギターを買ったきらめきは、もう味わえないじゃないですか。それは絶対にあるので、出会うまで買っちゃダメなんです。Taylorのときは、そのきらめきが顔になかった。
──その店って、大森さんがハミングバードを買った場所なんですよね。
大森 : 最初のハミングバードを買った店だと思います。19か20歳くらいのときに1万円くらいのMorrisを買って使っていたんですけど、加地(等)さんに言われて3~4ヶ月でハミングバードを買いました。そのあと、それを壊すんですけど。
里咲 : 私、大森さんがギターを壊している映像を観たことがあるんですけど、それを買ったときに話したら「これ(DOVE)も壊さなきゃいけないときがきたら壊してもいいんだよ」って言われました。
大森 : 壊さなきゃどうにもならないというか、「壊して」っていう空間の声とかギターの声みたいなものが聴こえたら、もうしょうがない。でも聴こえなかったら楽器は大事にした方がいい(笑)。あと壊すときはカメラの位置とかを確認して、いい角度でね。
──そこまで考えた上で壊していたと。
大森 : そりゃそうだよ! もったいないじゃん(笑)。
最初がアイドルだったから、シンガー・ソングライターの界隈の人から見ると、なぜかちょっと下に見られてしまうこともあって… それがすごく悔しい
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──里咲さんは実際にこのギターをライヴで使ってみて、だいぶ変化を感じたんじゃないですか?
里咲 : 変わりました! だって、ギターの音が後ろまで聴こえるんですもん(笑)! だから最初のライヴが終わったあと泣いちゃって… 大森さんと二宮さんに「本当にありがとうございました」ってメールをました。とにかく感激して、ここからはじまるんだって思いました。
──3月5日の下北沢Lagunaでのライヴですよね。あの日の里咲さんは本当にうれしそうでした。
里咲 : 買ったとき、大森さんに「ギターと自分が一緒に鳴るような感覚がわかってくるよ」って言われたんです。それまでは歌とギターがバラバラだったし、そもそも私は歌詞と声とメロディさえあればいいと思っていました。でも、だんだんその感覚がわかってきたので、オケや楽器のことをもっと考えるようになりましたね。だからこれでひと月1000万円くらい稼げるようになりたいです(笑)。
──大森さんはギターを変えたときに、作曲には影響がありますか?
大森 : あるある。頭に鳴っている音が変わるわけだからね。
里咲 : 私も変わりましたね。それまではチープな音が鳴っていたので(笑)。『売れるまで待てない』はDOVEにしてからはじめて作ったアルバムですけど、すごくバンド寄りのアレンジになりました。
──先日の誕生日のワンマンも、初のバンド編成でのライヴでしたよね。
里咲 : 音楽をもっとしっかりやりたいと思ってバンドでやりました。でももっとガチっと見せられるようにしたいなって思いましたね。大森さんはどこでやっても大森さんの世界観がしっかりとあって、ライヴが作品として成立しているじゃないですか。私もちゃんとアーティストとして大森さんと対等に刺激し合えるくらいにならないとと思って、いまがんばっています。あと私の場合は最初がアイドルだったから、シンガー・ソングライターの界隈の人から見ると、なぜかちょっと下に見られてしまうこともあって… それがすごく悔しいんですよね。
──そういう偏見のようなものは、いまだにあるんですね。
里咲 : 学校も仕事も全部捨てて音楽をやっているのに、「所詮アイドルでしょ」みたいな態度を取られたことがあってそれがすごく悔しかったの覚えてます。「あなたより売れてるし、いまのアイドル・シーンは最高なんだぞ!」と(笑)。あれは結構な屈辱と悔しさで、アイドルを名乗ったまま自分の音楽をより真剣にやる原動力にもなった。もちろん、そうじゃない方もたくさんいるんですけど。
大森 : 私はその界隈の方がダメだったんだよね。カメラとか壊したこともあるし(笑)。おじさんがいっぱいいて、ライヴ中にずっと写真を撮っているんだよ。ライヴ後に池袋の駅まで追いかけられたり、家まで勝手についてこられたりしたこともあるし(笑)。シンガー・ソングライターだとわかると、すごくがっついてくるんですよ。自分が運営みたいな気持ちになるんでしょうね。逆にアイドルのファンの人たちの方が距離を保っているというか。
里咲 : よく聞きますよね。イベントに出た子から相談されたりします(笑)。私は地下アイドル界ではいろんな人のおかげでなんとかがんばれてるので、いまはさらに広がりがほしいんですよ。尊敬してる同世代のシンガー・ソングライターの方もいるんですけど、認めてくれない人たちがいるのも本当のところで。だから次はシンガー・ソングライター界隈やバンド界隈にも出ていって、そこの人たちにも認めさせるぞって。
大森 : そんなところに広がらなくていいよ(笑)。1~2回だけそっちのイベントに出れば、来るべき人は全部さらえるから、ずっと出る必要はないよ。
なにもしない人は辞めていくだけだから、永遠に自分で考え続けないといけない
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──里咲さんはもともとはアイドルではなく、シンガー・ソングライターを志していたんですよね。
里咲 : そうですね。それで中学から作詞・作曲をしていました。だからアイドル市場がこんなに大きくなる前だったら、最初からシンガー・ソングライターの方を打ち出していたかもしれないですね。
大森 : もういろんなアイドルがいっぱいいたからね。私ももうちょっと遅かったら、アイドルだって言わなきゃいけなくなってたかもって思うもん。私のときはバンドや弾き語りのミュージシャンが使っていたライヴハウスに、BiSとかのアイドルが徐々に出るようになったんです。その盛り上がりにどんどんお客さんが取られていって、クリエイターもどんどんそっちに行くようになった。
──大森さんがTIFに出たのは、ちょうど飽和する直前くらいのタイミングだったんじゃないですかね。あのライヴの空気感は、だからこそ生まれたものだったようにも思います。
大森 : あのときは、お客さんが「ここは黙るのが盛り上がることなんだ」っていうのを感覚でわかってくれたんです。私の音楽を理解してくれた上で、手をすっと下ろして聴いてくれた。
里咲 : 私はそれも逆で、アイドルとして出ているからそっちの人にウケる曲を書こうと思って、最初はそっちに寄せて、コールを言えるような曲を書いていたんですよ。だけどそういうものをやりたいわけではないから、途中で自分も破綻してくる。でもそうじゃない曲を書いて発表しても、アイドルのお客さんはちゃんと理解してくれるんですよね。オーイングとかしない方がいいんだとか。
大森 : 結局、ばれちゃうんだよね。意味がちゃんとあればいいけど、そこに意味がなければついてこない人たちだと思うから。
──2人ともそういう意味でも、お客さんが求めているものとか、シーン全体の動きとかに対する感覚がすごく鋭いと思うんですよ。それでいて戦略的な部分も考えていて。
大森 : 私の表現は感情が前に出過ぎている感じだから、ほかをロジカルに埋めていかないとバランスがおかしくなるんです。進めなくなっちゃう。でも、後付けだからね(笑)。みんな説明すればわかってくれるから。
里咲 : 私もすごく考えています。いまひとりでやっているので、自分が経営の作戦とか次の手とかを考えないと誰もやってくれないですからね。
大森 : そんなの、まわりに人がいるようになっても誰もなにもやってくれないよ(笑)。なにもしない人は辞めていくだけだから、永遠に自分で考え続けないといけない。
里咲 : ゴールがない(笑)。だから感覚を研ぎすまして、次にどういう曲を書いたら響くかなっていうのは常に考えています。自分が歌いたい曲っていうのは大事なんですけど、それをどうやって売ったら響くのかなって。しかも私も場合は、ずっとインディ―ズのまま自分の会社を大きくしたいと思ってやっているから、メジャー・デビューはないんですよ。ひとりでやっていても、エイベックスさんと対等にできるくらいがんばろうって思っています。
──大森さんはインディーズの頃から、メジャーに行きたいとおっしゃっていましたよね。
大森 : 会社に音源とかを送りまくっていましたね。
里咲 : わたしはひとりでインディーズでやっているからテレビに出られているんだと思うし、自分でもそういう部分がおもしろいと思っているから。それでメジャーの人と同じくらい売れたら、かっこいいと思うので。でも、結婚して子供が生まれたりして、もう誰かに頼みたいって思ったら頼むかも(笑)。
──関わる人が増えていって、会社やプロデューサーが主導権を握って活動している人もいると思うんです。
大森 : それができる人もすごいんですよ。それができればいいんだけど、私にはプロデュースされる才能はないから。でも、私もあの人(マネージャー)とグーグル・カレンダーのしもべですけどね(笑)。
里咲 : 私にもその能力はないです。だからアイドルをやるときも、曲とかも書いて自分から出てくるもので勝負しないと食べていけないって思っていました。
大森 : 結局、自分の方向性を決めるのは自分だし、それを提示しないとみんななにをやっていいかわからないですからね。「私は大森靖子をこうしていきたい」っていうのが共通認識としてないと。みんな、それを手伝ってくれているわけだから。
作品を作ることって引き戻し合いみたいに、ここで勝負をかけたらその次はこうやって裏切るっていうことの繰り返しじゃないですか
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──大森さんの場合は特に、ずっとすごいスピードで進み続けていますしね。
里咲 : 大森さんは結婚して、お子さんを生んで、書く曲が変わったとかありますか?
大森 : うーん… 変わった?
──以前とは確実に届けようとしている層が変わってきていると思うんですけど、それは結婚や出産だけが理由ではない気がしますね。これまでの大森さんの活動の一連の大きな流れの中で、必然的に変わっていったように思います。
大森 : たしかに。メジャーに行ったりとか、そういうことも全部含めての流れだよね。ただ子供がいることによって安定するし、簡単に死ぬわけにはいかなくなった。それで曲が書けている感もなくはないので、楽にはなりましたね。もともと衝動的に書いていたわけではないけど。
──楽になったというのは?
大森 : 状況って勝手に変わるから考えないわけにいかないんですけど、考えずに済むと楽なんですよ。子供がいて楽っていうのは、子供がかわいいってだけで思考停止できるから楽っていうこと。でもやっぱり考えちゃいますけどね。
──考え続けたり、モチベーションを保ち続けることって大変なことだと思うんですけど、なぜそれができていると思いますか?
大森 : 作品を作ることって引き戻し合いみたいに、ここで勝負をかけたらその次はこうやって裏切るっていうことの繰り返しじゃないですか。メジャー・デビューして、J-POPが好きだからそこにはめ込んだものを『洗脳』で作ってみて、この人はなんだろうって見られているから奇をてらっているとか言われながらフェスとかでいろいろやってみたり。そうなったときに、なんでこんなことをやっているのかっていう説明の曲を作らなきゃいけなくなって、「マジックミラー」を作ったりとか。いまある状況に対してこういうことをしないといけないっていうのを、ずっとやってきただけなんですよ。なにもないところから生みだそうっていうことではないから。
──でも、それができずに終わっていく人も多いと思うんですよね。
里咲 : アイドル・グループもすぐに終わっちゃいますからね。私はなにか足りないって思っていないと曲が書けないので、足りないものを探したりしています。そうじゃないと、上には行けないので。
──逆に、止まりそうになったことはありますか?
里咲 : 何度もありますね。最近はタワレコの新宿店とか渋谷店とかで、メジャーのアーティストに混ざって里咲りさって名前がランキングに入るようになったわけですよ。これでいいじゃんって思いそうになることもあるんですけど、それだと絶対に下がるときがくるし、勝負を辞めたら終わるから。だから、常に代表作を出さなきゃっていう気持ちで書いています。常にホームランを狙って、その規模が大きくなるように、さらに遠くまで届くように。Mステだけ見ているような人にも届けたいから、まずはタワレコと契約しなきゃとか、そういうことをずっと考えています。
大森 : やっぱり、社長ですよね。「マネーの虎」を観ているみたい(笑)。じゃあ、自分の音楽でしたいことはなんなの?
里咲 : 声が良いって言われるから、聴いた人が癒さるような曲は作りたいと思っていますね。今回のアルバムもバンド・サウンドなんですけど、声はウィスパーで歌っていたりしているんですよ。あとは、こんなふうにひとりでがんばっている人がいるんだよっていうのを含めて見せていきたい。それで「がんばろう」って気持ちになってくれたらいいなって。大森さんはありますか?
大森 : 私は自分が好きな世界を作りたいだけですね。自分の歌詞とかで人の許容範囲を大きくして、こんなことを言っていいんだとか、こんな世界もあるんだって知ってもらいたい。いまは肯定力が足りないんです。絶対的に全員に全部「大丈夫」って言いきる力を持っている人がいない。それは嘘になってしまう可能性もあるから。でも、大森靖子なんてみんなで作っている嘘みたいなものなんですよ。だから大森靖子は「絶対に大丈夫」って言っていい人なんです。そういう存在がいるだけで単純に人は死ななくなるし、明日も生きていけたりとかする。TwitterのDMを誰でも送れるようにしているので、すごい悩んでいるiPhone5個分くらいの長文とかが届くんだけど、他人から見たらたいしたことじゃなくても、本気で人生の終わりみたいに悩む人もいるじゃないですか。それに対して「別に大丈夫だよ」って言える人がいた方がいいと思っているんです。
里咲 : すごい… 救世主ですね。
大森 : でも、それもみんなが私にやらせているだけなんですよ。だから、みんながんばってっていう気持ち(笑)。
──最近は特にその傾向は強くなっているように思います。最初は「マジックミラー」だけが特別な曲なのだと思っていたんですけど、『TOKYO BLACK HOLE』や『ピンクメトセラ』でもその流れは続いていて。
大森 : 結果が出てきていますからね。そうすることで変えられるんだってわかったし、私に影響されてなにかをはじめましたっていう人が本当におもしろかったりするのをいっぱい見てきたから。それで自分も、これでいいんだって助けられています。
──そのなかで今回のシングル『POSITIVE STRESS』は小室哲哉さんが作曲しましたよね。大森靖子という存在を強く打ち出してきた流れがあって、小室さんと言えどもここでほかの人に作曲を依頼するのは少し意外でした。一方で歌詞は「無理やりポジティブ あわせて 潰れそうさ」や「奇跡は手作り 全ては地続き」など、今回も大森さんらしい言葉のなかに強いメッセージが込められていると感じました。
大森 : もちろん自分の曲もいいと思っているけど、私にあるなかでほかの人に絶対にできないものは作詞の能力だと思うんです。私は作家をやりたいので、そのための能力をもっと身につけたいと思っているんですよね。なのでほかの人に曲を作ってもらうと、曲をすごく解体しないと詞を作れないから、その人の手癖とかもわかってすごく勉強になるんです。
──なるほど。
大森 : あとは、単純にまだツアーやっていないじゃないですか(※対談はツアー直前に実施)。なのに新曲を作らなきゃいけない状況なので、ライヴを想定した曲が作りづらいんですよ。いまはアルバムの曲をライヴでやりたいから。なので別のトキメキがほしくて、誰かと一緒に作ることで、この人だったらこの言葉をあてるなっていうふうに考えられたりする。それがあった方が作る気持ちになれるっていうか。
──最後に、大森さんに言っておきたいことはありますか?
里咲 : いつか2マンをしましょう!
大森 : しましょう! 都合のいいときにいつでも。
──大森さんは、そういう姿勢も昔からずっとフラットですよね。
大森 : (オファーは)なんでも受けていますからね。
里咲 : じゃあ今年もう1段階売れるので、そのときにお願いのメールをします。
大森 : 私としては、ぶっちゃけ売れてる度合いはどうでもいいですけどね(笑)。
リリース予定
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第1弾シングル『ピンクメトセラ/勹″ッと<るSUMMER』、第2弾シングル『POSITIVE STRESS』に続き、最終章となる第3弾両A面シングル。本作の1曲目には前作のファンクラブ盤にデモ数曲が収録され、その中からファン投票で選ばれた「オリオン座」を収録。サウンド・プロデューサーに直枝政広(カーネーション)を迎えた珠玉のバラード。2曲目には“生ハムと焼うどん”とのコラボ楽曲を収録。こちらは大森靖子楽曲ではお馴染みの出羽良彰がサウンド・プロデュースを担当。
配信中の過去作
里咲りさ / THE-R
2015年8月にライヴ会場と通販で500枚限定で発売され、すでに完売となっていた1stアルバム。CD-Rの「R」と彼女の名前の頭文字から命名された本作は、それまでCD-Rで発売したシングルを中心に全11曲を収録。里咲りさのソロの歴史、音楽の変遷がわかる一作。
連続リリース第1弾となる両A面シングル。1曲目は大森靖子自身がジュレ役として声優に初挑戦するWEBアニメ『逃猫ジュレ』のテーマ・ソング。2曲目「グッとくるSUMMER」は“ゆるめるモ! ”の“あの”をゲスト・ヴォーカルに迎え、情念たっぷりのサマーソングに。カップリングには、1980年代に大ヒットしたSugar(シュガー)の名曲「ウエディング・ベル」をカヴァー。
LIVE INFORMATION
里咲りさワンマン
2017年9月22日@Zepp Diver City
全席自由 ¥3800-
PROFILE
里咲りさ
早稲田大学をお金がもったいないという理由で中退。江頭2:50命名のアイドル・ユニットに在籍、裏方や舞台、ナレーター等幅広く経験。ユニットを卒業後、独立して事務所と音楽レーベルを設立。赤裸々な経営事情トークなどで注目を集める。シンガー・ソングライター・アイドルとしてソロ活動を再開と同時期にアイドル・グループ「少女閣下のインターナショナル」を立ち上げ、運営兼メンバーとして活躍する。
グループ活動休止後はソロ活動に専念。確かな楽曲クオリティとは裏腹なバラエティ番組などでみせる破天荒なキャラクターと型破りな活動で人気を集める。「ビートたけしのTVタックル」出演以降メディア出演が急増。インディーズのCD-Rながら史上初のオリコン・ランクインを果たしたことなどが話題を呼び、2016年8月現在、テレビ番組やラジオ、雑誌などメディアでも幅広く活動中。愛称はしゃちょー。
大森靖子
新少女世代言葉の魔術師。超歌手。弾切れも気にせず畳み掛けるように言葉を撃ちまくるジェットコースターみたいな弾き語りや、ときにギターすら持たないアカペラによる夜のパレードのような空間制圧型ライヴの評判が広がりメジャー・デビュー直後2014年11月26日、道重さゆみさんモーニング娘。卒業、現在道重再生待ち。
音楽の中ならどこへだって行ける通行切符を唯一持つ、無双モードのただのハロヲタ。あとブログ。