1992年生まれの女性シンガー、コムアイを中心とした音楽ユニット、水曜日のカンパネラ。元Hydeout ProductionsのKenmochi Hidefumiがサウンド・プロデュースしたポップでメロウなエレクトロ・サウンドに、「駒込」「吉祥寺」「米騒動」など脈略のない単語をコムアイが記号的に歌う。5月15日には、1stミニ・アルバム『クロールと逆上がり』が、ヴィレッジヴァンガード下北沢店とライヴ会場限定でリリース。そこからわずか1週間で、新曲3曲をパッケージした配信限定EP『ノルウェイの盛り』をOTOTOY限定でリリース。さらに、そのなかから1曲をフリー・ダウンロードでお届け。まだ謎が多い、水曜日のカンパネラに迫るため、『クロールと逆上がり』の論評とともに彼らに迫った。
>>「モノポリー」をフリー・ダウンロード(2013年5月30日まで)
OTOTOY SPECIAL Edition
水曜日のカンパネラ / ノルウェイの盛り
【価格】
wav 単曲 200円 / まとめ購入 400円
mp3 単曲 150円 / まとめ購入 300円
【Track List】
1. モノポリー / 2. ものぐさ太郎 / 3. 素子
醸し出される不思議で非日常な世界観
カンパネラとは、イタリア語で“鐘”という意味を持つ。「水曜日の鐘」という名前を持つプロジェクトがリリースした1stミニ・アルバムのタイトルは『クロールと逆上がり』。そして、OTOTOY限定でリリースするタイトルは、『ノルウェイの盛り』。小説のタイトルのようなプロジェクト名に、なんとも不思議なアルバム・タイトル。ちなみに、クロールと逆上がりとは、水曜日のカンパネラの中心人物であるコムアイが、成人してもいまだにできない弱点であるとのこと。このアルバムは、彼女の弱点がつまっているのだろうか。
収録曲のタイトルを見ると、「ゴッホ」「マチルダ」「マルコ・ポーロ」「素子」など、人名と思われるタイトルが並ぶ。「浮雲」「ヒカシュー」というのは、ミュージシャンやバンドの名前だろうか。歌詞を読むと、〈開会式のはためくリボン / エイエイオー〉(「ゴッホ」)、〈跳び箱 / 空中旋回 / つま先立ち / 2千回〉(「ヒカシュー」)と、一見タイトルとまったく関係のなさそうな単語が並ぶ。これらがアルバム・タイトルである彼女の弱点に通じているとも思えない。統一感がありそうで見つからない奔放な世界が広がる。なんとなく気づいていたのだが、じつは彼女はなにも考えていないのではないかとすら思えてしまう。
曲を聴いてみると、どこか機械的な冷めた印象のあるアコースティック・サウンドと電子音が融合した浮遊感のあるサウンドの上に、コムアイの脱力したメロディや、ラップのような歌が乗る。相対性理論以降の良質なギター・ポップといった感じの曲が並ぶ。そこに前途の歌詞が乗ることで、ますます不思議で非日常な世界観が醸し出されている。
そんなつかめそうでつかめない世界観を生み出すコムアイとは、いったいなにものなのだろうか。1992年生まれで、まだ20歳という彼女のプロフィールを読むと、曲の持つのらりくらりとしたイメージから一転する驚きの言葉が並ぶ。高校時代に地雷撤去のための募金活動に参加したかと思えば、社会主義国キューバへ高校生2人だけで旅をするなど、なんとも活発な社会活動を繰り広げている。現在も海外へ渡航しながら、鹿の解体の技術を習得するなど、自然や世界に対して飽くなき挑戦を続けているらしい。脅威の行動力。ここまでくると、彼女の弱点は本当にクロールと逆上がり以外にないのではないかとさえ思えてくる。しかし、そんな世界は曲のなかには見えない。ますますわからない。
彼女が実生活で続けている飽くなき挑戦は、もしかしたら思いつきによる突発的な行動なのかもしれない。そして、この水曜日のカンパネラというプロジェクトも、そんな彼女の探究心による突発的な行動の1つにすぎないのかもしれない。思想を排除したような情景的な歌詞も、あえて彼女がうちに抱える思いを隠しているのかもしれないし、ある日突然変貌をとげるかもしれない。結成から1年足らず、またライヴなどの表立った活動はほとんどなく、その実態はつかめない。しかし、気になる存在であることは確かだ。とりあえず『ノルウェイの盛り』と『クロールと逆上がり』を聴いて、いまのうちに彼女の弱点を探ろうと思う。(text by 前田将博)
映像も独自の質感を持つ水曜のカンパネラのPV集
LIVE SCHEDULE
2013年5月27日(月)@月見ル君想フ
出演 : 大森靖子 / jan&naomi / OA水曜日のカンパネラ
2013年6月1日(土) ゆるめるモ!presents「ゆるフェスモ!」@渋谷 WWW
出演 : いずこねこ / 画家 / 水曜日のカンパネラ / →SCHOOL← / TAKENOKO▲ / ナト☆カン / ふぇのたす / 藤岡みなみ&ザ・モローンズ / BELLRING少女ハート / ゆるめるモ! / lyrical school / and more
2013年6月27日(木)@渋谷 O-nest
出演 : 藤岡みなみ&ザ・モローンズ / 吉澤嘉代子 / Charisma.com / 水曜日のカンパネラ
PROFILE
水曜日のカンパネラ
2012年、夏。初のデモ音源「オズ」「空海」をYouTubeに配信し始動。
「水曜日のカンパネラ」の語源は、水曜日に打合せが多かったから… と言う理由と、それ以外にも、様々な説がある。当初グループを予定して名付けられていたが、現在ステージとしてはコムアイのみが担当。それ以降、ボーカルのコムアイを中心とした、暢気でマイペースな音楽や様々な活動がスタートしている。
コムアイ
担当 : 主演 / 歌唱
1992年7月22日生まれ。
神奈川県出身。
成人しても未だ「クロール」と「逆上がり」ができないという弱点を持つ。
高校生時代には、いくつかのNGOやNPOに関わり活発に動き回る。
サルサ・ダンスに毒され、キューバへ旅し、同世代100人のチェキスナップとインタビューを敢行。
その後は、畑の暮らしを体験したり、たまに海外へ。
最近は、鹿の解体を習得中。
好物は、今川焼と明石焼といきなり団子。
また、“サウンド・プロデュース”にKenmochi Hidefumi。
その他、“何でも屋”のDir.F。
などが、活動を支えるメンバーとして所属。