ベースのアプローチは、セカンドとは全然考え方が違う
──なるほどね。仁也くんは今回渋いというかなんというかアブストラクトなジャズと現代音楽っぽいものが多いよね。共通項で言うとグライムが入ってるけど、それ以外の電子音とかジャズとか全体的にアブストラクトな。
市川 : 大悟が2020年の春くらい3月にロンドンから帰ってきて、これがよかったとかいう話を聴いて。それに影響を受けてレゲトンだったりジャングルとかドリルとか、聴くようになって。そこからアルバム作っていく中でダイゴが「これよかった」とか「これ参考になるんじゃない?」っていうのは各々で共有してたので。全員知ってるというか。その中でも僕のパートでイメージするために聴いてたのを入れました。
The Inspirations For "NO MOON" by Jinya Ichikawa
──この辺はサイケデリックな感覚って、インタールードに如実に表れているけど、実はアルバム全体の空気感という感じがするんだよね。今回のアルバムって全体的にビートは立っているけど、独自のサイケデリック感があって、このあたりって、特に仁也くんがあげているリストの後半からすごい匂ってくるというか。わりと音を重ねてく作業が多かったというのもさっきチラッと話してたけど、その感覚はこのあたりからかなとか。
市川 : そのへんの感覚はプレイリストでいえばJockstrapとか、Ben Vince、Oliver Coatesはデカかったですね。雰囲気づけだったりとか、展開が面白い曲が作っていく中でできていってという感じだったので、そのアイディアになった曲たちというか。打ち込みでフレーズを急に入れて、音階的にいえば全然ちがうんだけど急な飛び方をする展開があるときに、Jockstrapとかはやる手法の参考に聴いてました。
──今回のアルバムが生んでるスケール感はそのあたりが出ているのかなというのがわかるリストですが。
櫻木 : その部分はやっぱり仁也ですよ、そこは市川仁也が出てました。
──アグレッシヴなドラムとかでちょっと後ろにある要素だけど、間違いなくアルバムの空気感を構成している要素なりを、このインタールードのところで実は「こういうことをやってます」って、秘密をバラしてる感じがして。仁也くんのそういうところが出てるのかなという。
市川 : ともかく今回は自由にやってたかもしれないです。土台がしっかり、それはシンセと歌だったりメロディとドラムのビートだったりがしっかりあったというのが土台にあって。今回はわりと作るときはクラブ・ミュージックにより傾倒していったので参考にした曲とかは、ほぼ弾いているようなベースなんて入ってない。キックに合わせたシンベが鳴ってるとか、ドリルとかそうですけど、ベースラインで踊らせるとかベースラインが歌ってるとかはほぼなくて。
──音響的に入っているという感じですよね。
市川 : そうですね、体に気持ちいいとか楽曲を支えるものとして使われてたんで、それは参考にはしますけど自分でプレーとして反映させるのは無理だなと思って。その中でチェロだったりっていう方向に変換したんで、そこは結構変わりましたね。だから楽曲を作るときのベースのアプローチは、セカンドとは全然考え方が違う。
──全体的に、セカンドってシンプルにバンドを録ってるって感じが今聴くとしていて。3人の音しかしない。今回はエレクトロニックに振れて作り込んだアルバムだから音数も多いというか、いろんな音が出たり入ったりしている感じがして。
櫻木 : どうしてもセカンドはライヴで表現できるってところの、プレイアビリティを重視したアルバムだったんだと思います。こっちはもう少し三人それぞれのプロデューサー的アプローチを三人の角度でやってみたって感じですね。
──3人みんなでDAWをいじってたって感じ?
櫻木 : 大体は自分がメインですけど、二人もエディットしたりとかはやってて。
──それは例の作業場でやっていると。
櫻木 : 狭いワンルームで防音がされてるわけでも無いんですけど、そこに機材をバーっと並べてやってます。
──生音は出せないけど、みんなでそこで作業してると。そのスケッチを元に最終的には生楽器とかをしっかりしたスタジオで入れてと言う。今回の新しいシングル以外はそこで作ったスケッチの存在が大きい?
櫻木 : めちゃめちゃ大きいです。
──コロナの影響って今回あったと思う?
櫻木 : スーパーあります。