ステージでギターをジャーンって弾いてる時に、死んでもいいなと思ってる(松本)
──ヴォーカリストとしての松本素生って、どう思います?
半田 : ライヴを観た時に、本当に丁寧に歌う人なんだな、って感じました。
松本 : あ、そう?
半田 : はい。それが、これみよがしに「ちゃんと歌ってますよ」って感じじゃなくて。ライブを観ていると、耳が分析に入っちゃうんですけど。「なんでこんなにいいんだろう?」って考えると──。
松本 : ……あの、一所懸命歌ってんね。なるたけほんとに、一所懸命歌ってる……わかると思うけど、ほんと、ライブをやっているあの瞬間、ステージでギターをジャーンって弾いてる時に、死んでもいいなと思ってる。
半田 : ああ、なるほど。
松本 : これ以上の楽しいことはないな、って思うから、一所懸命歌ってる。
半田 : めちゃくちゃ伝わります、観ていると。
松本 : 自分の好きな人は、そういうふうに歌ってるような気がするんだよね。曽我部(恵一)さんとか、「この人、死んでもいいなと思ってるな」っていう。だから心がけてる、一所懸命歌うことを。人生のなかでいちばん楽しいことだと思ってるのよ。だから、誰にもじゃまされたくないし、誰にも侵されたくないから、そういうふうになるんだろうね。っていうか、自分もそうなんじゃない?
半田 : いや……僕、FEVERでゴーイングを観た時から、自分のなかで意識が変わったんです。がむしゃらに歌っていこうっていうのはダメやな、俺もちゃんと伝えてえわ、と思って。
松本 : ああ。MCも、いいこととか、一切言わないようにしようと思ってる。
──昔は言ってましたよね。
松本 : 昔は言ってた時もある。メンバー5人の時は、そのマインドまで持っていけたけど、ふたりやめると、そんな「嘘ぉ?」みたいなこと、言えないですね。
半田 : あの、本当に思ってないことまで、ノドのこのへんまで出てきて、「あ、やめよう」みたいな。なりませんか?
松本 : ああ、その場が盛り上がるような?
半田 : はい。それは本当に、やめようって思いました。
松本 : 絶対やめた方がいいよ。だってお客さんさ、気づくよ。ライブハウスの規模で観に来てくれてるようなお客さんって、本当にそのバンドが好きなんだと思うんだ。本当に好きな人に、盛り上げるために、思ってないことを言うと、バレるね。僕がお客さんだったら一瞬で気づく。
半田 : そうですね。GOIND UNDER GROUNDのライヴを観たあの日は、自分のなかで、いろいろターニングポイントだったですね。
松本 : そんなライヴだったんだ? ありがたいね (笑)。対バンの時も、あのままやります。
半田 : それがうれしいです。だから、最近そういう感じです。MCも、あんまり力まないようにして、歌を歌う時だけ真剣に、みたいな。あの、当日、正直に言ってください。
松本 : (笑)。「まあまあだったね」とか?
半田 : 「今日、いまいちだったでしょ?」とか。とりあえず「おつかれさまー」みたいな感じだったら、悲しいです。
松本 : いやいや、でもそんな、ツアー・ファイナルで、よくないなんてことは、本当はないと思ってるから。「失敗しそうだ、ヤベえ、今日は変な感じになりそうだ」ってもがいてる姿も、いいわけだから。バンドって。
──ここまでのツアーは、いかがですか?
半田 : 僕、このツアーでいちばん感じてるのは、自分たちのやりたいことが、ちょっと見えてきていて。自分たちの向かいたいところに、すごく向かえているので、状態はめちゃくちゃいいなとは思っています。ただ、それが早く伝わってくれ、という感じですね。
──ゴーイングは、最近ライヴは?
松本 : めちゃめちゃ楽しいんですけど、楽しいからこそ、次、もう1個なにかないと、つまんなくなるな、っていう予感がしていますね。もう最高なんですよ? やりたいようにやって、ギリギリ食っていけていて。でも、「これ、つまんないな」って思うようになりそうだな、っていう感じがあります。このままやっていても、いまのおカネは得られるけど、そこからパイを広げるっていうことにはならないから、飽きてきそうな感じがするんですよね。今回、アルバムを全部自主で出して、気づきました。おカネは、流通とかレーベルを通すよりも入ってくるし、「アルバムこれで3枚ぐらい作れんじゃん」っていう感じになったけど、でも、ここから増えないな、みたいな。いまは楽しいけど、このままだとつまんなくなりそうだから、なんかおもろいことをぶちこもう、と思っています。メンバーにも相談せずに。
半田 : (笑)。相談せずにですか?
松本 : うん。それを楽しみたいなと思って。
──たとえば?
松本 : 楽曲ですよね。楽曲ありきだから、バンドは。「こんな曲どうやんの? ゴーイングで」みたいなことをしていかないと、おもろくないだろうな、と思ってるんですよね。
──失礼なことを言いますけど、今回の対バンは、GOIND UNDER GROUND的には心配はないですか? お客さんの世代が違うから、灰色ロジックのファンからしたら「誰?」みたいな──。
松本 : 全然大丈夫。むしろ、そういうふうに思われたいです。いちばん集中してできるんじゃないですか、その時が。曲を聴いてもらえたらいいや、と思ってるから。盛り上がってる盛り上がってないとか、お客さんの腕が上がってるとか、そういうことで測ってないし。だから、あんまり気になんないんですよね。
半田 : 僕もライヴの時に、そういうことは感じたりします。ツアーとかで、知らないお客さんの前でやって、はじめて観た人が「うわ、なんだこのバンド?」って思ってくれたら──。
松本 : わかる。物販が売れたりね、単純に。もうそれでわかりますね、「この街もう1回来れるな」っていうのが。いちばんわかりやすい。
──灰色ロジックのファンにゴーイングを観てほしい、というのも大きい?
半田 : はい。だって、得しかないじゃないですか? 自分のルーツを知ってもらえるのって、最高だな、と思うんですよ。自分の音楽が、その人から見て、より深くなる気がする。
松本 : ……言ってみようかな、第一声で。「僕が影響を与えてるんだぞ」って。
半田 : はははは!
──やめてください。
松本 : 言うわけないじゃないですか(笑)。
半田 : でもほんと、いまツアーで各地で、「すごいじゃん、ゴーイングとやるなんて」って言われるんですよね。それもうれしいです。
編集:梶野有希
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LIVE INFORMATION
灰色ロジック"see the sea tour 2022" FINAL
出演:灰色ロジック / GOING UNDER GROUND
日時:6/12(日) open/start 17:00/18:00
場所:渋谷WWW
出演:灰色ロジック / GOING UNDER GROUND
PROFILE : 灰色ロジック
メンバー:半田 修土(Vo,Gt)、深谷 雅博(Dr)。2013年、茨城・つくばにて結成。 過去に3枚のミニアルバム、2枚のシングルを自主制作にてリリース。地元つくばを拠点に、ライブバンドと称されるほど精力的なライブ活動で磨かれたパフォーマンスは、時に激しく人を鼓舞し、時に切なくも暖かく人を包み込み、誰しもが心の中に持つ言葉や文字では表し難い"あの"感覚を全開放させる。ライブ、楽曲、歌詞、サウンド全てと真摯に向き合う姿勢は各地で高い評価を獲得し、耳の早い一部のオーディエンスからは「国宝」とも評される。2020年のメンバー脱退を超え、2021年10月に遂にファーストフルアルバムの発売が決定。
■公式Twitter:https://twitter.com/gray_logic
■公式HP:https://twitter.com/gray_logic
PROFILE : GOING UNDER GROUND
メンバー:松本 素生(Vo/Gt)、中澤 寛規(Gt)、石原 聡(Ba)。1992年埼玉県桶川市にて結成。河野丈洋(Dr, Vo)が加わり、何度かのメンバーチェンジを経て、高校卒業時に5人体制となりGOING UNDER GROUNDと名乗り始める。インディーズシーンでの活躍を経て、2001年にシングル「グラフティー」でメジャーデビュー。「ミラージュ」「トワイライト」「ハートビート」など、切なく爽やかなメロディで幅広い支持を集める。2005年には「トゥモロウズ ソング」をNHK「みんなのうた」に提供し、新境地を開拓。2006年7月に初の東京・日本武道館公演を行い成功を収める。2007年初頭には彼らの楽曲が原案となった映画「ハミングライフ」が公開された。2009年4月に伊藤が脱退。2011年5月には東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブを行い、元メンバーの伊藤と共演してファンを驚かせた。同年11月には映画「ハラがコレなんで」の主題歌としてシングル「愛なんて」を発売する。2015年1月に河野が脱退し、現在は松本、中澤、石原の3人編成で活動中。2016年5月に新体制になってから初の全国流通盤としてニューシングル「the band」をリリースした。2018年、CDデビュー20周年を迎え、再録盤アルバム3部作、シングル「スウィートテンプテーション」、アルバム「FILMS」、2枚組ベスト盤「ALL TIME BEST」と作品を次々とリリース。019年よりコンセプトライブシリーズ「雨旅selection」「夕旅selection」「星旅selection」を敢行。2020年、コロナ禍で活動が制限される中、完全リモートレコーディングによる新曲「望郷東京2020」「ビーチパーティー」を立て続けにダウンロードリリース。2022年3月 通算15枚目のオリジナルアルバム「あたらしいともだち」をリリース。
■公式Twitter:https://twitter.com/official_gug
■公式HP:https://goingunderground.tokyo/