謎多き音楽家、DJまほうつかいによる新作EPを特殊フォーマットでお届け!
“ターンテーブルを持っていないDJ”であり、“まほうのちから”で音楽を作る音楽家、DJまほうつかい。9年前から音楽家としての創作をはじめ、DJではエレクトロニカ、クラシック、はたまたX-JAPANと、自由にジャンルを行き来するスタイルで聴くものに強烈なインパクトを残してきた。近年ではフリー・ジャズ、即興シーンとの関わりを深めたことにより、活動の面においてもさらにジャンルレスに、自由になった。
そんな彼から、まるで劇伴音楽のようなメロディーをフィーチャーした新作『Ghosts in the Forest EP』が届いた。またOTOTOYでは本作収録の22分にもおよぶライヴ音源「“Sound and Vision”(Live at SuperDeluxe)」を高音質で体感していただくために、ライヴ音源のみでも販売! このライヴ音源には、変幻自在のヴォーカリスト、MOE(Moe and the ghosts) や日本のフリージャズ界で、オタク文化と即興を融合させるなど、異色の活動を展開しているバリトン・サックス奏者、吉田隆一が参加。まるで“まほう”のような奇怪な音のレイヤーを是非ハイレゾでお楽しみいただきたい。
本作『Ghosts in the Forest EP』とハイレゾ・ライヴ音源「“Sound and Vision”(Live at SuperDeluxe)」をお求めの方はこちら
DJまほうつかい / Ghosts in the Forest EP + “Sound and Vision”(Live at SuperDeluxe)(24bit96kHz)
【配信フォーマット / 価格】
wav / alac / flac / mp3 まとめ購入のみ 1,200円
【Track List】
01. Ghosts in the Forest(piano)
02. Ghosts in the Forest(Metaltronica Haunted mix)
03. Ghosts in the Forest(1UP Suicide remix) -- 椎名もた
04. “Sound and Vision”(Live at SuperDeluxe)
こちらの商品には「“Sound and Vision”(Live at SuperDeluxe)(24bit96kHz)」が付属します。
ハイレゾ・ライヴ音源「“Sound and Vision”(Live at SuperDeluxe)」のみをお求めのかたはこちら
DJまほうつかい / “Sound and Vision”(Live at SuperDeluxe)(24bit/48kHz)
【配信フォーマット / 価格】
wav / alac / flac(24bit/48kHz) まとめ購入のみ 700円
【Track List】
01. Don't be so sad -- DJまほうつかい
02. windandwindows -- DJまほうつかい
03. Last Summer -- DJまほうつかい
04. Guillotine-- DJまほうつかい
05. Ghosts in the Forest -- DJまほうつかい × 吉田隆一(blacksheep)
06. Hollow -- DJまほうつかい × 吉田隆一(blacksheep)
07. All those moments will be lost in time -- DJまほうつかい × 吉田隆一(blacksheep) × MOE(Moe and ghosts)
『Ghosts in the Forest EP』収録の22分におよぶライヴ音源「Sound and Vision(Live at SuperDeluxe)」を7トラックに分けた仕様となります。
DJまほうつかい / “Sound and Vision”(Live at SuperDeluxe)(24bit/96kHz)
【配信フォーマット / 価格】
wav / alac / flac(24bit/96kHz) 単曲 700円
【Track List】
01. “Sound and Vision”(Live at SuperDeluxe)(24bit/96kHz)
こちらは『Ghosts in the Forest EP』に付属するライヴ音源「Sound and Vision(Live at SuperDeluxe)(24bit/96kHz)」と同仕様となります(7トラック分のエディットなし)。
INTERVIEW : DJまほうつかい
DJまほうつかいはマンガ家の西島大介による音楽プロジェクト。2013年8月にはマンガ『すべてがちょっとずつ優しい世界』(以下、『すべちょ』)とリンクする『All those moments will be lost in time EP』をリリースし、今回は続編的な内容の『Ghosts in the Forest EP』を発表する。ジャケットにはかわいらしいおばけたちが描かれているが、このゴースト(もしくはおばけ、幽霊)は近年の西島のマンガの中で象徴的な存在だ。ネタバレになってしまう部分があるが、『すべちょ』では、村の歴史を知っていて、村の象徴であるオーロラに関連した存在。『Young,Alive,in Love』では、主人公の少女には霊として見えるものが、少年には見えない放射能として感知される。『ディエンビエンフー』では、ベトナム戦争の中で役割や人との関わりなどを失い、戦争の部外者になってしまった主人公が誰からも視えない幽霊のような存在として描かれる。このようにゴーストという存在が複数の作品で扱われている。ゴーストたちはすべての作品で関連するところがありつつ、すべてが微妙に異なっている。それは3.11以降の西島による「見えないもの」をどう扱うかという取り組みであり、『Ghosts in the Forest EP』は音楽面からこのテーマにアプローチした作品だ。
しかし、西島はなぜこんなに様々な活動をしているのだろうか。マンガと音楽以外にも小説の挿絵、個展、評論など常に動き続けている。そして、『Ghosts in the Forest EP』について同じように考えているとき思い出したのは、岡崎京子の『森』というマンガに出てくる「すべてはばらばらでありつつ同時にすべてがつながっているということ。そしてそのことにすこやかに対処するのは とてもむつかしいということだ。」という言葉だ。おそらくこの取り組み方が西島の「すこやかに対処」することなのだろう。その中でDJまほうつかいはどんな存在なのか、今作がどのような考えを出されたのか、メール・インタビューから知って欲しい。
インタヴュー&文 : 滝沢時朗
おばけのことをよく考えます
——DJまほうつかいの音楽は、近年ではヴィジュアル系、メタル、エレクトロニカ、ジャズと音楽ジャンルが持つ特定の様式に注目して変遷して来ましたが、1曲目の「Ghosts in the Forest(piano)」からは演劇や映画などに奉仕するために音楽ジャンルを使い分ける劇伴音楽のような印象を受けました。この変化は意図的なものでしょうか?
DJまほうつかい : 特に意図したものではないですね。でもDJまほうつかいの音楽はいつも劇伴といえば劇伴と言えます。自分のマンガ作品の劇伴って意味ですけど、例えば1stアルバムは『世界の終わりの魔法使い』、2ndは『ディエンビエンフー』のサウンドトラックでした。変化というなら原作となる作品の質が変わったのかもしれません。ピアノ曲は今までと作風が異なる作品『すべてがちょっとずつ優しい世界』の劇伴のようなもので、実際あの作品を描き始めてからピアノ曲を書きためるようになりました。MVがアニメーションだから余計に演劇や映画っぽくそう聴こえるのかもしれません。
——「Ghosts in the Forest」のMVは曲展開と映像の結びつきが楽しいMVですが、なぜこうしたものを作ろうと思いましたか?
DJまほうつかい : もともとこれは広島パルコで展覧会と公開制作をした際に展示した映像作品です。MVというよりも先に「アニメーション作品」という形がありました。それを今回のEPリリースに当たってMVに転用した感じ。でも中身はイコールです。アニメーションを作ってくれたのは以前ALTEMA Recordsで星のカービィの曲(fu_mou『Green Night Parade』)のMVを作った子犬さんという人で、以前から一方的に「絵が似てる」と思っていたんですが、ひょんなことから出会う機会があってお願いしました。枚数少なめで最小限の動きで物語を表現しようというところが、僕の絵と子犬さんは相性いいなと感じています。
——劇伴音楽的という印象がある程度の的を得ている場合、映画館バイトや映画祭審査員の活動は音楽制作に影響していますか?
DJまほうつかい : 映画館バイト、これもちょっと説明いると思うんですけど、省略しますね。そうですね。関係あるのかな? これについては考えたことはなかったです。手伝っている映画館には、スクリーンの横にアップライトピアノが置いてあって、最終上映後の誰もいない静かな映画館でポロポロと弾いたりすることもあります。それは何とも不思議な風景ですね。詩的な。そう考えると影響あるかもしれません。MOOSIC LAB審査員はあまり関係ないかもしれないけど……。
——タイトルに含まれているゴーストは、西島さんの近年のマンガにも頻出するものです。マンガのゴーストたちの存在と『Ghosts in the Forest EP』のコンセプトに通じるところはありますか?
DJまほうつかい : おばけのことをよく考えます。見えない。けど、よく見ると見える。人によっては見えないし、見えるひともいる。放射能の計測の真逆、科学的な計測の反対側と言えるかもしれない。見えなくてもそこにいるような気がする。「Ghosts in the Forest」は「森の中でおばけたちがふわふわかくれんぼしてる」というシーンを念頭に置いて作曲しました。『すべちょ』の終盤で描いた、文明化の前にかつてあった世界。失われた、自然とともにある幻想的な風景。そんなシーンを思い浮かべて作った曲だから、やはり劇伴なのかもしれません。「Ghosts in the Forest」の曲にはフリー・セッションのようなおばけが出たり消えたりするかけあいパートがあって、低い音は大きなおばけ、高い音は小さなおばけと役割分担があり、演奏がとても楽しいですね。しかし、よく考えてみると生ピアノだって文明の産物です。最低限のテクノロジーを使って「見えない何か」をあぶりだすような行為かもしれないですね、この曲。あと、とにかくリリースがお盆に間に合ってよかったです。おばけが戻ってくる季節なので。
アイドルには「人を狂わせる何か」があるのだと思います
——2曲目には前作と同じくMetaltronicaシリーズのリミックスがあります。アルバム『Metaltronica』の後もセルフリミックスとしてこの手法を続けるのはなぜですか?
DJまほうつかい : iTMS(iTunes Music Store)を調べてみると、もっとも反応が薄いのがMetaltronicaです。クラブ系じゃないから踊れないし、メタラーにも届いていない。特に求められていないこともわかっているのですが、でもMetaltronicaには哲学が宿っているなとは思っています。わかりやすい例えを出すと、DAFT PUNKの最新作『ランダム・アクセス・メモリーズ』。あの作品には彼らがどういう場所から来て、どういう変容を遂げ、今何を提示するかという一連の思考と決断が読み取れます。エレクトロニック、覆面、ロボットごっこを経て、最終的に生演奏に至ってしまう。そこに哲学が読み取れます。僕の場合はシーケンスされない素朴なピアノ演奏の逆としてMetaltronicaを置いている気もします。実験として曲は膨大に作り続けているのですが、発表の機会がないですね。
——3曲目にはボカロPとしても有名な椎名もたさんがほぼ新曲のようなリミックスを提供しています。彼をリミキサーに選んだのはなぜですか?
DJまほうつかい : 椎名もたさんとは、ネットで出会いました。僕の『I Care Because You Do』という作品を読んでくれて、「僕の話だ!」って言っているのを見つけて。その時は彼が高校生とは知らず。だって90年代の物語だから椎名もたくんは生まれたばかりなのに「僕の話だ!」なんて……。そこから交流が生まれて、ボカロPの主戦場たるニコニコ動画用にイラストを1点描きました。「ガラクタのエレジー」という曲です。その後『ぽわぽわーくす』というベスト盤のジャケを担当したんですけど、その時にギャラの一部として「リミックス券」を発行してもらいました。子どもがお母さんに渡す「肩たたき券」みたいなもので、好きな時にリミックスを1回お願いできるという券。それを今回使ったんです。元がシンプルなピアノ曲なので、「ミクが歌う歌モノ」にとだけ伝えてお願いしました。仕上がりは全くの別物で、リミックス超えて新曲ですね。とても贅沢な券の使い方になりました。でも歌詞をよく読むと僕のマンガ作品群からのインスパイアや引用に満ちていて、歌詞として思いっきりリミックスしていただいた感じですね。マンガ家としての僕がリミックスされた曲です。ありがとう!
——初音ミクに関連してアイドルについても聞かせてください。DJまほうつかいは、アイドルのプロデュースやBiSの「日本エヴィゾリ化計画」への参加などアイドルとも関わっています。アイドルについてどう思っていますか?
DJまほうつかい : アイドルには「人を狂わせる何か」があるのだと思います。正直怖いし、遠ざけています。でもそんな僕にもアイドル由来の仕事が来るので、やはりブームは大きいんだなと感じています。最近だとヤングジャンプのでんぱ組.inc特集号に夢眠ねむさんの四コマを描かせてもらって、でんぱ組さんのおかげでヤンジャンデビューできたと感謝しています。「日本エヴィゾリ化計画」はみんな応援してるから、ちょっとやってみようかなと子犬さんと相談して。あ、ベルリン少女ハートのためにイラスト描いたこともありました。DJまほうつかいで、ディア☆ステージ所属の白水桜太郎&龍宮さかなさんをプロデュースしたこともありました。「トラックメーカーにはなれないから、譜面と伴奏家でプロデュース」と考えて、これはBECKの譜面リリースを意識したものですが、譜面をFAXして伴奏者がそれを弾くという生演奏アイドルを目指して、ライヴも1回行いました。楽しかったです。今大きく関わっているのは、映画『世界の終わりのいずこねこ』です。関西のアイドル「いずこねこ」の茉里ちゃんが主演。神聖かまってちゃんを撮り続けている、たけうちんぐこと竹内道宏さんが監督で(彼にはメディア芸術祭のライヴMVも撮影してもらっています)、基本設定や脚本をサクライケンタさんの楽曲から構成しました。アイドル映画ですね。「シブカル祭」で上映されるそうです。実は共同脚本だけではなくて、先生役で出演もする予定で、撮影今月です。もうすぐ衣装のための採寸です。あれ……? 多いですね、アイドル仕事……。
マンガよりも音楽に似ているのかもしれません
——4曲目には第17回文化庁メディア芸術祭受賞作品展のライヴ・パフォーマンスが収録されています。当日のライヴにはどのように臨みましたか?
DJまほうつかい : バリトン・サックスの吉田隆一さんとは何度もデュオや石塚周太くんとのトリオで演奏したことがあって、安心してお任せしました。さっきの椎名もたくんもそうですが、僕はジャケットを手掛けたアーティストとすぐ仲良くなってしまう傾向があり、吉田隆一さんとはblacksheepの2ndアルバム『2』を描いたことがきっかけですね。blacksheepは僕のピアノ活動に大きな影響を与えていて、僕が1番身近で演奏を観ているピアニストって、実はblacksheepのメンバーでもあるスガダイローさん。ダイローさんが基準になっているから、圧倒されつつ、ステージ上で起こることは何でもアリなんだなって思いました。彼らがDJまほうつかいを面白がって新宿PITINNに上げてくれたし、僕も少し舞台度胸がついたのかもしれません。DJまほうつかい初めてのPITINNステージはYOSHIKIとキース・ジャレットを交互に流す謎のDJでした。メディア芸術祭のライヴテイクは2011年頃から始まった僕の「フリージャズの大冒険」の集大成だと思います。MOEさんは、全く別のルートのつながりがあって、「東京でライヴをするので遊びに来てください」とイベントにお誘いしたのですが、本来はただのお客さんだったはずが、「あ、MOEさんはラッパーだから、飛び入りでフリースタイルできるじゃないか」と思いついて。電話して、僕の『すべちょ』を持ってきてもらって、出演30分前にMOEさんが到着、リハなしぶっつけ本番のテイクです。むちゃぶりすぎましたが、奇跡的なテイクが録れたと思います。MOE and ghostsとはおばけつながりで親近感持っています。ゴーストコーストですね。
——2013年にAI KOKO GALLERYで行われた展示「すべてがちょっとずつ優しい世界」展では、オリジナルと複製の対比がテーマとして掲げられていました。ライヴ音源を収録することには、この展示と同じく表現の1回性を問うような意味があるのでしょうか?
DJまほうつかい : いや、その頃は初めての本格的な個展だったので、それについて深く考えていたのですが、もうだいぶそういうガチガチな考えは薄れてきて、今回は「またとない良い演奏が録れたからそれを使おう」という素直な理由でした。でも、そうですね。1回性というのは「またとない」を繰り返し聴けてしまうってことですよね。実は、メディアアートらしい面白い仕掛けがなく、MCも一切しなかったDJまほうつかいのステージは、会場の中ではとても浮いていました。他の出演者はZ-MACHINESという演奏するロボットの頭部だけとか、仕込みiPhoneの森翔太さんとか、とても面白い方々が登壇していて、それに対して僕たちは演奏に真剣すぎて逆にすべっていたかもしれないのですが、こうして音声だけを切り取るとまた違う音楽風景が立ち上がっているなと感じます。観客の息や、椅子の音が入っているのも良いですね。
——8月27日に『Ghosts in the Forest EP』と同じく『すべちょ』をベースにした画集『くらやみ村のこどもたち』を出されますね。今作との関連はありますか?
DJまほうつかい : あります。『くらやみ村のこどもたち』は今まで刊行したどの書籍よりもアート的な作品集です。画集です。ピアノ曲もそうですが、特に誰かに頼まれたわけでもないのに、2011年以来「くらやみ村」という不思議な風景を僕はずっと描き続けています。1点ものの作品が多数収録されていて、そこには明確な「物語」もありません。僕はストーリーテラーでもあるけれど、ここでいつも僕が使う多くの言葉を排しています。だからマンガよりも音楽に似ているのかもしれません。是非EPと合わせて読んでみてください。伝わるものがあるといいなと願っています。ありがとうございました。
DJまほうつかい過去作、関連作をご紹介
PROFILE
DJまほうつかい
DJまほうつかいはターンテーブルを持っていないDJです。まほうのちからで音楽を作ります。MIX CD『世界の終わりmix』(2005)や自作のサントラ盤『ディエンビエンフー サウンドトラック』(2007)、さらにX JAPANのコピー・バンドを経てメタルをエレクトロニカで再構築した『Metaltronica』(2011)など、その音楽性は常に変化。相対性理論presents「実践III」や、フリー・ジャズの聖地新宿PITINNなどで演奏を行う異端の音楽家。ピアノ曲をまとめた『All those moments will be lost in time EP』を2013年8月7日HEADZよりリリース。本業はマンガ家の西島大介です。