現代LA BEATSの象徴でもあるAlpha Pup、日本とLAとの繋がりを担うcorde
LAではFlying LotusやMadlib、DJ shadow、Cut Chemist等の西海岸のアンダーグラウンド・ヒップ・ホップを表すアーティストがいつしか独自の音楽スタイルを生み出していた。それは同時にLA BEATSというシーンとしてクラブ・ミュージックの枠を超え、新たなスタイルとして浸透し始めて来ている。とは言え、まだまだ「?」なこのシーン。本頁ではライター滝沢時朗が、ポッドキャストのCosmopolyphonic Radioを運営するSauce81とRLPにインタビューしながら「LA BEATSの面白さ」をじっくりと掘り下げる。そして西海岸のアーティストを集結させ根強い音楽フリーク達を集めるレーベルAlpha Pupと、日本とLAとの繋がりを担うcordeの音源がHQD配信決定! LA BEATSを聞きながら、本頁を読みながら、未知の音楽にダンスしよう!
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配信がついに解禁となったAlpha Pup / cordeの音源! LA直輸入のビートを高音質で感じ取れ!
Free The Robots / 『CTRL ALT DELETE』
Free The Robotsことクリス・アルファロは、カリフォルニア州サンタ・アナの郊外を拠点とするプロデューサー&DJ。Free The Robotsとしては2003年から活動を始めた。トラディショナルなジャズからヒップ・ホップ、サイケデリック・ロックなど多様な音楽からのサンプリングのみならず、自らキーボードやギターなどの楽器類を演奏したサウンドをブレンドした有機的で躍動感のあるトラックが特徴的だ。The Crosbyというレストラン&クラブの共同オーナーとして、ファッション・ブランドOBEYのパーティのオーガナイズも手がけ、シーン周辺の活性化にも寄与している。
Take / 『ONLY MOUNTAIN』
PooBahやAll Cityの10インチ・シリーズでも知られるLAビート・メイカーの代表的存在。10年のキャリアを誇りながら、常にフレッシュなビートを作り続けているテイクの待望のフル・アルバム。テイクは、ネット・ラジオDublabの正式メンバーとしても活動し、またラス・Gやサムアイアムのリリースで知られるPooBahレコードにも関わっている。そしてLow End Theoryにも頻繁に出演し、遂にAlpha Pupから最新アルバムのリリースが実現した。
今後配信されるタイトルはNosaj Thing『Drift』、Carlos Nino & Miguel Atwood-Ferguson『FILL THE HEART SHAPED CUP』の2タイトルとなります。乞うご期待!
「LA BEATSの面白さとは?」 Sauce81 × RLP インタビュー
近年のクラブ・ミュージックで最もブレイクし、ジャンルを越えて聞かれている存在と言えばFlying Lotusだろう。彼はAphex TwinやJay Dee(※)、John Coltraneなど多様な音楽からの影響を公言し、今回取り上げるLA BEATS自体も本当に色々な要素が詰まっている音楽ばかりだ。そんなLA BEATSの成り立ちや特徴、その背景にあるものについてDJ / ビート・メイカーであり、ポッドキャストCosmopolyphonic Radioを運営するSauce81とRLPの2人に聞いた。
※(後期にJ Dillaと改名するが、以下インタビュー内ではJay Deeで統一する。)
インタビュー & 文 : 滝沢時朗
まず、作り手としてLA BEATSはどこが面白いと思いますか?
RLP(以下R) : LAは全体的にローファイな感じで、ちょっとゆるくて角の取れたような質感の音なんです。 きれいな音を作るよりも面白いものを作ろうっていうのが強くて、BPMの壁も簡単に越えていくし、面白いと思ったものをなんでも吸収する。そういうところがいいですね。
——ローファイで意図的にずらすような音が今注目を集めてるのは何でだと思いますか?
R : 僕は今Flying Lotusがずらしてるからずらし始めているわけじゃなくて、パイオニアはJay Dee*だと思ってるんです。あの人はドラムを打ち込むときにクオンタイズっていうタイミングを補正してくれる機能を全部オフにして、打ったタイミングそのままで打ち込むっていう形でシーケンスを組んでた人なんです。そうやってわざとリズムをずらすことによってグルーヴを揺れるようにするっていうことを、90年代終わりぐらいからずっとやってる。今ほど明確に派手なずらし方とか壊し方はしてなかったんですけど、そこから微妙にずらしたり揺らしたりする流れが出てきたんですね。その流れをフォローする形で、Flying Lotusよりも上の世代のSa-RaとかWaajeedがもっとずれを強調した音を作った。レーベルで言うとUbiquity Recordsあたりからリリースされてる音ですね。さらにそこをもう一段階先にしたのがFlying Lotusたちのやってることです。
sauce81(以下S) : それをわかりやすい形で提示したのがコンピレーションで言うとCarlos Ninoの『The Sounds of L.A』で、インターネットラジオのdublabやBTS Radio、Amp Soul Generationだよね。
R : そうですね。『The Sounds of L.A』が出たぐらいのころはMySpaceが今のTwitterみたいな感じでミュージシャンの間ではすごい盛り上がっていたんです。そこで海外のアーティスト同士が直接交流して、曲を共作したりとか。例えば実際に会ったことはないけど、ヨーロッパの人にLAの人が自分がやってるポッドキャストのミックスを依頼すると、そういう形の交流が生まれていってました。 そんな流れが音の面白さにつながっていて、今注目されてるのかもしれないですね。
——今ではLAのビート・メイカーで知名度の高いFlying Lotusですが、はじめはどのように聞かれていましたか?
R : 最初は多分『The Sounds of L.A』に入ってるトラックかMySpaceで聞いたのか。あと、『Beat Dimensions Vol.1』ってコンピレーションをRush Hourってアムステルダムのレコード屋さんが出してるんですけど、そこにFlyamsamっていってFlying LotusとSamiyamの合同のユニット名義でのトラックが入ってました。どれが先かはわからないですけど、そこらへんで聞いたのが最初ですかね。
——最初に聞いてこれは新しいなと思われましたか?
R : そうですね。僕はそれ以前は結構サンプリング主体の音楽をずっと聞いてきていたので、わりとエレクトリックな要素が強いなって印象でしたね。Flying LotusとかSamiyamもそうだし。『Beat Dimensions Vol.1』自体がエレクトリックなヒップ・ホップの先の形をコンパイルしていた、すごく新鮮なコンピレーションでした。
S : 僕はPrefuse73とかが出てきた時と同じような感覚が、Jay Dee以降の流れでも現れてきたんだなぁ、と思ってました。
——Jay Deeらしいオフ・ビートなサウンドの最新ヴァージョンという印象が強いんですか?
S : 初期はそうです。今もそういう要素はあると思うんですけど、今年出た『Cosmogramma』に関しては、生音もいっぱい入れて新しい試みをしてるところが面白いですよね。
R : 初期は本当にシンセばりばりで、Warpに行く前にPlug Researchから出したファースト・アルバム『1983』がもろにファミコンみたいなチップ・チューンっぽい音と、Jay Deeっぽいオフ・ビートな感じを一緒にしたっていう感じでした。BPMも完璧にヒップ・ホップだけじゃないのもいいですね。彼自身色んなヨーロッパのフェスとか行ってたりするから、そこらへんで経験したのかはわからないですけど、ダブ・ステップっぽいリズムも入れてたりするし。
S : そうですね。元々ビートは、BPMはやっぱりヒップ・ホップな感じ80から100いかない90台ぐらいでやってた人たちも、ライブを経験した人たちはみんなBPM上がって速くなってきてる感じがあります。盛り上がらないとライブをやっていても面白くないところがあるので、踊れるものをみんな意識してきてるってのはあると思います。
——Flying Lotusの音にLAシーンの特徴を感じることはありますか?
R : 『Cosmogramma』は、ちょっと生音っぽい感じとかサイケっぽい雰囲気とか通じるものはあると思います。
S : まあ、広くLAのシーンを捉えたものではある気はしますね。
R : LAの中でもあくまで我が道を行って自分の音守ってるタイプの人なんじゃないかなって感じが、逆にFlying Lotusはしますね。
S : 本人もよく人が真似しだしたら自分から変えていくって言ってますね。LAはもちろん本人にとって重要なんでしょうけど、自分の道を行ってる感じはします。
——アメリカ以外にもLA BEATSと共通するようなサウンドのアーティストがいます。例えばスコットランドのHudson Mohawkなどがいますが、彼らはそんなLAの実験精神に惹かれたんでしょうか?
R : Hudson Mohawkとかに関しては、Flying Lotusが出てきてそのフォロワーみたいに思われてるかもしれないですけど、違います。MySpaceとかで実際に海外のアーティストと交流して、流れを見ていた感じでいくと同時多発的に出てきた印象ですね。Flying LotusとHudson Mohawkは音の感じも全然違うけど、Jay Dee発のオフ・ビートな感はインスト・ヒップ・ホップをやってるある部分の人間にとっては世界中で流行っていたことでした。ただその中でFlying Lotusが先に注目されて成功したから、その後に出てきた人たちが全部彼を追ってきたように見えるだけです。実際はFlying Lotusがやってる時にみんな各地でやってたことで、Flying Lotusが頂点のピラミッドみたいな形ではないんです。
S : Gaslamp Killerなんかはまた違う感じでDJプレイの派手さでYouTubeで注目されましたけど。みんな本当は同じようにやってたんだけど、外側から反応があったのがFlying LotusだったりHudson Mohawkだったりだったんですね。
——じゃあ、ヒップ・ホップの流れとしては普遍的なものでLAだけ特別な流れがあったわけではないんでしょうか?
S : Flying LotusやHudson Mohawkが出てくるきっかけになったのはBTS Radioです。BTS Radioがその辺の音をピック・アップしていたからLA発って印象がついたところもあるんだと思います。
R : そうですね。LAの人じゃない人もいっぱい出てますからね。でも、ベースがLAの人が多く出てた。Flying Lotusも音源出す前に何回もそこでゲスト・ミックスしてそこで自分の曲をかけてたりとかしてましたから。
S : LAが注目されてるのは元々のミュージシャンもすごく多いし、土壌が豊かだから、まとまって出てきたって感じがするんでしょうね。LAに越して行ったアーティストもいるし、魅力的な土地なんでしょうね。さっきからJay Deeばっかり言ってますけど、もちろんMadlibもいるし。
R : LAのレーベルではStones Throwはかなりでかいと思います。一時期Stones Throwはラップのアルバムを出しても必ずそれのインストのアルバムも出してたんですよ。そういうことを意図的にやってるなっていうのを気付いたのが、それこそLA BEATS前夜ぐらいのころで。インスト・ヒップ・ホップ自体が売れるからやっていたのか、それがきっかけでインスト・ヒップ・ホップが流行ってきたのかわからないんですけど、多少の起爆剤にはなってると思いますよ。僕もわりと好きな曲はインストで買ったりとかしてたし。Stones Throwはそういうインストでも楽しめるっていう感じを提示しようとしてたのかなと、今思えば考えられなくもないですね。
——LAはdublabとStones Throwの存在が大きいんですね。
R : そうですね。両方ともフック・アップをよくするし、新しい才能を発掘することにすごい熱意があるから。
S : ※『Secondhand Sureshots』の制作はdublabが作ったけど、販売してるのはStones Throw国内盤は(disques corde)で垣根を越えて協力してるし。
※(4人のビート・メイカーが中古レコードを5ドル分買って、そのレコードをサンプリングして作った曲をまたレコードにプレスして店に並べるドキュメンタリー)
——dublabとStones Throwは昔から結びつきが強いんですか?
R : 直接何かを一緒にやるってことはしてはいないと思うんですけど、コミュニティのような感じがあって、大体みんな知り合いみたいですね。だから、LAの中にさらに派閥があるて感じではしないんですよ。呼び名としてはあることはあるんですけど、実際はメンバーが被ってたり。対抗意識っていうよりはみんな一緒に面白いことやろうよって雰囲気が強いですね。
LAの文化性
——MadlibやCarlos Ninoがフリー・ジャズに傾倒していたり、Gaslamp KillerやNobodyがサイケデリック・ロックを基にしたりと60年代の前衛的な音楽をDJや曲に使うのも最近のLAの面白いところですね。
R : そういう昔の音楽からサンプリングしたり、レコードを掘ったりすることを日本人は手法として捉えたりするけど、LAのミュージシャンはもっと文化的に捉えてますね。ヒップ・ホップのビートを作るんだったら掘るし、掘ったらレコードのことを知るし、色んなレコードに会って色んな音楽を好きになるしっていう捉え方をしてる感じがします。それこそMadlibの影響もあるんですけど、僕も昔のレコードをすごい掘ってる時期があって。それで、レコードを掘るにしてもレアなレコードを探してるっていうよりは何でも来いって姿勢で、 LAの人は掘るパワーがすごいんですよ。その点もやっぱり、Stones Throwの影響力がでかいと思います。MadlibとかJ.RoccとかPeanuts Butter WolfとかみんなDJで来ると、今聞きたい昔の音楽をちゃんと提示してくれるんです。それこそMadlibがYesterday's New QuintetをMadlibがやってた頃とか、彼は60年代〜70年代のスピリチュアル・ジャズとかちょっとレアなヨーロッパのフュージョンやプログレをDJの時にプレイしてました。Peanuts Butter Wolfは60’sのポップスみたいなものをかけたり、80’sなちょっと間違うとダサいようなギリギリ感のある曲をかけるのが彼の持ち味ですね。DJプレイからもすごく掘ることに対してこだわりを感じる。去年、Stones ThrowからDam Funkって出てきたじゃないですか。彼は出てくる前からずっとああいう音楽をやってた人なんです。でも、今の時代の流れとか過去の音源を発掘していく時のトレンドの流れとかで、今スポットをあてるべきだとPeanuts Butter Wolfは思ってフック・アップしたんだと思うんです。それがきっかけで80’sな流れが来てるって感じすらちょっとあるし。
S : Carlos NinoなんかはBuild An Arkとかやりながら『The Sounds of L.A』出したり、次作『Turn On The Sunlight』はアンビエントを通過したようなもろフォークやったりしてますからね。
——LAのヒップ・ホップのように聞いててディグの文化を感じられるっていうことは、他の土地の音楽にはあんまりないことなんですか?
R : ニューヨークの90年代の黄金期って言われるような、ニュー・スクールの頃のヒップ・ホップを作ってたプロデューサーでPete RockだとかLarge ProfessorだとかThe Beatnutsとかには感じます。彼らが活動していて世の中的にもヒップ・ホップの中心地がニューヨークだった頃って、掘るってことに関してもみんな競い合ってたから、そこで発展したんです。多分Madlibたちもそれを見て育ってるんですね。でも、ヒップ・ホップが商業的に大きくなってアメリカン・ポップスのいちカテゴリーに食い込んできたあたりぐらいで、ニューヨークでのディグの文化がちょっとしぼんじゃうんですよ。それ以上にもっとサンプリングを手法として使って、ヒット曲を生み出そうとするプロデューサーが前に出てきちゃって。ディグに関して面白いと思ってた人はニューヨークにあんまり魅力を感じられなくなってきた時に、逆側の西海岸で面白いことをやりだした。それこそJurassic 5のCut ChemistとかDJ Shadowもそうですけど。もう病気なぐらいものすごい掘ってるじゃないですか。もうオタクの極みで、世界に何枚しかないレコードを探すとか。そんな極限までサンプリングを突き詰めてる人間が今度はLAから出てきた。
S : あと、昔から西海岸には独自のヒップ・ホップ・カルチャー自体はあったわけですけど、今のビートっぽいものになっていくきっかけとして、Low End Theoryが大きいですよね。Low End Theoryはベース・ミュージックに焦点を当てていて、ダブ・ステップがよくかかるんです。今までアメリカでヨーロッパの音楽がここまで受け入れられることってそんなになかったと思うんですけど、LAなんでレゲエの流れがあって受け入れられたんじゃないかなと。ダブ・ステップの速いけど遅いようなBPM70か140ぐらいのどっちとも捉えられるビートは影響があったと思います。
——僕は去年の日本で行われたLow End Theoryは行けなかったんですが、いかがでしたでしょうか。
S : みんなDJやってない時もマイクを握ってお互いサポートしてましたよ。いわゆるMCはNocandoしかいないんですけど、Gaslamp Killerとかもよくしゃべるし、みんなでパーティーを盛り上げようって感じがすごくしました。
R : 海外はお客さんとやってる側に壁がない人が多いですよね。日本の人が思ってるほど、スターとリスナーみたいな線引がない。海外の色んな国の人を呼んで一緒にイベントをやったりするけど、みんな普通のお兄ちゃんですよ。
S : 音楽がすごく日常に溶け込んでるから、アーティストが特別って意識じゃないんだと思うんですよ。BrainfeederにいるTeebsなんかは、昔Low End Theoryにただのお客さんとして行って、自分と同じ黒人のFlying Lotusがいきなり出てきてあんな曲やビートをかけてることに衝撃を受けて、曲を作り始めたって言ってましたから。
R : Low End TheoryのレジデントでもあるDaddy Kevが主宰するAlpha PupなんかもLA Beatを語る上では外せないですね、Take、Nosaj Thing、Free The Robotsなんかも今のビートの流れを取り入れているアーティスト達だと思います。Takeはわりと内省的なサウンドが持ち味だったけれど、Beat Dimensionsのツアーでヨーロッパを回った辺りから音が一気に変化しました。様々な場所でのギグを経験してサウンドがどんどん明解にフィジカルになっている気がします。ここら辺もビート・ミュージックという流れがもたらした変化だと思います。
——DJでプレイしている時にLA BEATSをかけるとお客さんの反応はいいですか?
R : やっぱり、パーティーによりますよね。例えばそういう音楽の存在を知らない人がメインで来るようなパーティーと、そういうものを認識して求めて来てくれている人のいるパーティーでは、今は温度差が結構あると思います。僕もラップ・トップで自分の曲を色んなところでやったりするんですけど、すごく受け入れられる時とお客さんがなんだこれは? っていう感じで見てる時と両極端なんですよね。
S : そこらへんは徐々に変わってきているような気もします。それこそFlying LotusやHudson Mohawkの作品がWarpから出てるから、こういうものもあるんだっていう認識にみんななってきてるんじゃないかな。僕達はその前からちょっとずつそういう音楽をやってたから、その段階ではそれはもうウケないですよね。
R : ウケなかったね。彼らみたいなスタイルの人が大きなレーベルから出して商業的に成功してくれることによって、みんなの興味が向いてき始めてるって感じはあります。今はTOKiMONSTAが日本のレーベルから作品をリリースするぐらいですからね。
——今年はMonkey Sequence 19やRLPもアルバムを出して、日本でLA BEATSの影響を受けたアルバムがよく出ている印象があります。お2人みたいな人がコツコツやってきてやっと認知されるようになってきたんですね。
R : 僕達がやっているポッドキャストのCosmopolyphonic Radioでかけているような人も2〜4年前からMySpaceでデモを交換し合ってました。でも、やってたことは今の音楽とそんなに変わってないですよ。実際僕のアルバムも4年前の曲とかざらに入ってるし。ああいう感じの雰囲気は日本でもあるとこにはあったんです。今はこういう音でもアピールしたら反応がちゃんともらえるようになってきました。そこらへんはFlying Lotusとかの商業的な成功とかがきっかけになっている部分はでかいと思います。
——Cosmopolyphonic Radioはどのように運営されているんですか?
S : MySpaceで知り合ったり、ネット上でしか知らないようなアーティストやプロデューサーから曲を直接もらったり、付き合いのあるレーベルさんからプロモをいただいたり。何人かメンバーがいるので、それぞれのコネクションで音源を持ち寄ってます。そういう形で毎月1回音源を集めて、僕が日本語と英語で紹介する形でストリームやポッドキャストとして配信してます。
——はじめられた経緯もWeb上の交流からなんですか?
S : 元々MySpaceで2006年〜2007年ぐらいにつながって。
R : 今いるメンバーもMySpaceでつながってました。
S : そこからイベントとかで顔を合わせるようになって、一緒に曲を作ったりするようにもなったんです。僕が2008年にRed Bull Music Academyに行ってたんですけど、そこから帰ってきて2008年の暮れぐらいからポッドキャストをやらないかって話をしはじめました。それで、2009年の1月から活動しはじめたんですね。せっかく周りにいっぱい音楽を作ってる連中がいるし、どうしても言葉の壁があって日本人が海外にアプローチできない部分であったり、逆に海外の人が日本人にリーチしづらい部分があって、そこを日本語と英語でちゃんと紹介していければいいかなと。雑誌とかだとタイム・ラグがあるし、誰かの視点になっちゃうから、日本と海外の差をないように、フレッシュなまま紹介できたらいいですね。
——海外の方からの反応はどうですか?
R : 半分以上の反応は海外で、ヨーロッパの人が多いです。
S : 最近は4割ぐらいが日本で、アメリカ、ヨーロッパが残りを大体占めてます。世界中から砂漠と中東以外はわりといます。南米とオーストラリアも少ないけどいますね。
R : 色んな国の人から聞かれて多少認知されてくると、曲を提供してくださいってお願いすると、向こうがもう僕らのことを知ってくれてたりしますよ。
——やり方はdublabを参考にされたりしてるんですか?
R : 完璧に僕達はボランティアです。
S : はじめるきっかけはdublabではなかったですね。
R : 面白い音楽を伝えてるポッドキャストは色んな国に大体あって、日本にもあっていいんじゃなって感じでただ単にはじめただけですね。別にそれで収益を得ようって考えもなかったし、めちゃくちゃ大きくしたいって感じでもなかった。自分たちで発信する場が1個あっていいっていう感じですよ。
S : あえて言うならUKの海賊ラジオみたいな感覚ですかね。自由に自分たちから発信していくっていうような。日本だとポッドキャストは権利どうのこうのがあるけど、自分たちの曲をかける分には問題ないから。リリースもしてなければ尚更問題無いし。でも、音楽を紹介して、それを聞いて音楽を好きになる人がいてっていうある意味昔と変わらないラジオ・カルチャーというか、そういう感覚はありますね。
——アメリカでは元々小さいラジオ局が無数にあって、特徴的なことをしてきた文化がありますが、日本にもそういうものがあったらいいと思いますか?
S : あったらもっと日本の音楽の土壌も豊かになるんだろうなって思うんですけど、今となってはインターネットで海外とシーム・レスになってるので。
R : 今はインターネット環境が整って、自分たちのやる気しだいでできる選択肢がたくさんありますよね。そういう背景があってこその僕達のポッドキャストで、LAの人たちもヨーロッパの人たちもそこは同じです。Beat系の音楽も国の中だけじゃなくて地球規模でネットを使って育んでていった音楽だと思うんですよね。その中でもLAはわりと音に地域性が強いとは思うんですけど、住んでる地域の重要性が曖昧になってきてるとは思います。
S : Beats系のアーティストはみんなLAが中心だと思ってやってるわけではないし、LAはLAのシーンがあるけど、それより個人間でもつながっているんです。
cordeから更なる新ユニットが始動する! カルロス・ニーニョの美しき新境地
Build an Arkのカルロス・ニーニョによる新ユニット、Turn On The Sunlightのデビュー・アルバム『Turn On The Sunlight』が9月8日にリリース決定! フォーキーでアンビエントな新しいアプローチを展開した大注目作で、cordeオリジナル企画盤。10月にはJAPAN TOURを決定!
Carlos Nino profile
ファビアン・アモンとのユニット、アモンコンタクトで、ジャズとファンクの影響下にあるヒップ・ホップ・ビートの新たなスタイルを創出。Eastern Developments、Soul Jazz、Plug ResearchやNinja Tuneなどからリリースを重ね注目を集めた。ニーニョはプロデューサーとしても頭角を表したが、何と言ってもファラオ・サンダース・クインテットのヴォーカリスト、またホレス・タブスコットのパン・アメリカン・ピープルズ・オーケストラのヴォーカル / コーラス・ディレクターだったドワイト・トリブルにスポット・ライトを当てたことで大きな評価や信頼を得た。ニーニョはLAの有名なインターネット・ラジオ局Dublab.comにおけるオリジナル・レジデントDJの1人でもあり、KPFK90.7FMの金曜夜のラジオ番組Spacewaysへの出演は11年以上になる。これらを通じて彼は常に若いクリエイティヴな才能の発見に務めてきた。
来日情報!
corde presents 『Turn On The Sunlight JAPAN TOUR 2010』
2010/10/11@京都 CLUB METRO with Rei Harakami、TERRAS
2010/10/12@神戸 GUGGENHEIM HOUSE
2010/10/13@大阪 PINE BROOKLYN
2010/10/15@代官山 UNIT with Rei Harakami、Tenniscoats + 梅田哲也
2010/10/16@札幌 ASIL SAPPORO
RLP profile
東京の次世代ビート・サイエンティスト。サンプリングとエレクトロニクスが有機的に融合したコズミックかつソウルフルなサウンドを展開。Jay Scarlettにフック・アップされたことにより国内外のDJやビート・ヘッズの話題を集め、Amp Soul Generation、Vibes & stuff等、海外のラジオやポッドキャストでも度々デモ楽曲がプレイ、Basic Soulではゲスト・ミックスも行っている。2008年にリリースされたreplifeの『The Unclosed Mind』(futuristica/UK)にて、Dego(4hero)、Kaidi Tatham(Bugz In The Attic)等、大物プロデューサーらとともに2曲プロデュース。Onra、Dorian Concept、Fulgeanceとの共演、Called Understandable Souls、TOKiMONSTAなど国内外多数のアーティストのリミックス・ワークを担当するなど、ビート・シーンからの厚い信頼を得ている。世界中に2万人以上のフォロワーを持つ日本発クオリティー・ポッドキャスト「Cosmopolyphonic Radio」をKez YM、sauce81らとともに主催。そして、待望のデビュー音源をOil Worksよりリリース、世界に向け新たなサウンドを発信し続ける。
Sauce81 profile
Red Bull Music Academy 2008に日本人として唯一参加し、Onra、Nino Moschella、Fatima、Dorian Concept等と意気投合しレコーディング、セッションをする。Benji B.、Jay Scarlett、Kev Beadle等が彼の楽曲をプレイ。2009年、Kez YM、RLPとともに”cosmopolyphonic radio”を始動。日本の新しい才能を発掘し、世界に向け発信。同じように地球の裏側で”今”鳴っている音を日本にも紹介。また、Onra、Pursuit Grooves、Andrew Meza、Teebs等の来日をサポート。国内外のパイプ役として暗躍する。
・sauce81 MySpace
・cosmopolyphonicradio MySpace
COSMOPOLYPHONIC
2010/10/1(金)@渋谷Koara
open : 22:00
Guest : Robert Green Jr. (Super Smoky Soul / Circulations)
RLP / Fujimoto Tetsuro / Tidal and sauce81
Alpha Pup
ダディ・ケヴは、ビート・メイカー、プロデューサー、エンジニア、レーベル・オーナー、そしてパーティ・オーガナイザーとして、長年LAのアンダーグラウンド・ムーヴメントを支えてきた最重要人物。プロデューサーやエンジニアとして、フリー・スタイル・フェローシップやリヴィング・レジェンズからデイデラスやFlying Lotusまで、幅広いアーティストと仕事をしてきた。ケヴがパートナーのダニエルと共に自分の楽曲のカタログをライセンスさせるための会社として、Alpha Pupを2004年に立ち上げた。しかし、斬新で実験精神に溢れた音楽を作っているLAの大勢の仲間からインスピレーションを受けたケヴは、半年後にAlpha Pupをレーベルに変身させた。メイン・ストリームから外れ、クリエイティブで、果敢で、エッジの効いたサウンドを出しているアーティストたちが次々とAlpha Pupに集うようになった。デジタル・リリースにもいち早く対応し、レーベルとして飛躍的に発展したAlpha Pupは、ケヴが運営するクラブ・ナイトLow End Theoryと同様、ヒップ・ホップ、エレクトロニック・ミュージック、実験音楽、インディ・ロックをキーワードにしながらも、どれにもカテゴライズしがたいエキセントリックなアーティストが刺激しあえるコミュニティとなっている。
corde inc.
音楽評論家、プロデューサーとして活動してきた原雅明が主宰するクリエイティヴなコレクティヴ--corde inc.。レーベル運営、イベント企画、執筆、編集と多岐に渡る活動を、関係各所と協力して実現している。前身にあたるsoup-diskとして、RiowArai、Suzukiski、Cappablack、Ill Suono、Inner Science、Conflictなどの精鋭達の優れた作品を多数輩出し、日本のブレイクビーツ、エレクトロニック・ミュージックを前進させる役割の一翼を担った。2005年には新たな10年を迎えるべく、新レーベルdisques cordeを立ち上げ、RATN(Riow Arai + Tujiko Noriko)やKarafuto (aka Fumiya Tanaka)のリリースを皮切りに、よりワールド・ワイドで総合的な視野から、アーティストの更なる可能性を引き出すプロジェクトや埋もれた作品の発掘などを企画。Alpha Pup、Plug Research、Ubiquity等の海外レーベルと提携したリリースも進行中である。
イベントとしては、「moxa」を主催。Pole、Jan Jelinek、Opiate、The Weather(Busdriver, Radioinactive, Daedellus)、Lusine、DavidLast、Nobody、Trioskなどを日本に招聘し、独自のフリー・フォームなスタイルのパーティを作り上げてきた。2008、2009年とLAのパーティLOW END THEORYの日本ツアーを実現。またネット・ラジオ局DublabとCreative CommonsによるプロジェクトINTO INFINITYの日本でのプロデュースも担う。
Corde NEWS!
Low End Theory JAPAN TOUR 2010が開催される! 参加メンバーとしてはDaddy Kev、Nobody、Nocando、Free The Robots、Take、TOKiMONSTAが来日決定! 東京UNIT、京都METROは来日メンバー全員が出演する。 また11月6日は高崎、金沢の2チームに分かれて開催される! パフォーマンスと盛り上がりが想像つかないpartyになりそうだ。見逃せない一夜になることは間違いない!
Low End Theory JAPAN TOUR 2010
2010/10/30(土) 札幌
2010/11/2(火) 代官山 UNIT
2010/11/3(水) 京都 CLUB METRO
2010/11/5(金) 大阪 sound-channel
2010/11/6(土) 高崎 / 金沢