
12/7 青葉市子@青山EATS and MEETS Cay
弱冠20歳のシンガー・ソングライター青葉市子のワンマン・ライヴが表参道にあるEast and MEETS Cayで行われた。会場は地下1階にあり、普段はバーとして運営しているところをライヴ会場としても使っている。落ち着いた雰囲気で、観客も食事を楽しみながら開演を待つ。場がまったりしてきたところで、青葉市子の登場。ガット・ギター1本を手に持ち、母からのプレゼントだという人形を譜面台の端にひっかけて、席に着いた。二部構成のライヴの第一部のはじまりだ。最初は今年リリースのファースト・アルバムの1曲目でもある「不和リン」、次にオトトイからの配信シングル「レースのむこう」を続けて演奏する。彼女のライヴを見るのははじめてだったが、儚げだけれども芯があって大貫妙子を思わせる声と、その声がつづる心情の背景をしっかりと描き出すような確かなギター・プレイに、この2曲だけで聞き入ってしまった。そして、一転してMCではニコニコし、手にペットボトルを持って観客に向かって乾杯。力の抜けた話をして場をなごませる。第一部は、このような2〜3曲演奏されユーモラスなMCがはさまれるという構成で小気味良く進んでいき、あっという間に終わってしまった。もっといかにもアーティスティックでシリアスなライヴをするのかと思っていたが、しゃべる姿も堂に入っていたし、いい演奏をしつつそのほかの部分で楽しませることも忘れておらず、第一部を見終えて彼女にプロ意識さえ感じていた。一緒に来ていた友人とすごかったねと話して、次を待つ。

第二部は色々と挑戦のなされたステージだった。最初は青葉市子のピアノの即興演奏からはじまる。ギター同様、景色が見えるような確かな演奏だったが、すぐに弾き語りに戻った。はじめて作曲したという名曲「ココロノセカイ」に胸を打たれていたが、次の曲で面食らった。封印していた曲だそうなのだが、イソフラボンボンという歌いだしから始まり、火に焼かれるとしても巨乳になることは拒否する、というなんじゃそれはという内容の歌詞の曲を同じ調子で演奏する。場内に沸き起こる笑い声。確かな実力がないとすべるだろうから、これはこれですごい。続いて今度はカバーのメドレーをやるという。曲は童謡「赤い靴」→「ひょっこりひょうたん島のテーマ」→「妖怪人間ベム」→「赤い靴」→「神田川」→フラメンコ・ギタリスト沖仁の楽曲(失念)と、やや突飛だが彼女のギタリストとしての幅の広さがわかるものだった。第一部の演奏からもうっすらとはわかってはいたが、ギター・プレイがジプシー音楽やボサノヴァなど様々な要素をはらんでいて、世界観に広がりを持たせている。そして、先月出された大貫妙子&坂本龍一『UTAU』から「3びきのくま」をカヴァーし、改めて歌声の良さに感じ入る。そこからは最後のアンコールまで自身の曲を歌い上げ、気づけばとても満足のいくライヴだった。
青葉市子の歌の世界観自体は繊細で危うげなのに、それを伝える演奏やパフォーマンス自体はとても地に足が着いている。作曲や演奏からも様々な音楽性の芽が出ているし、第二部での一筋縄ではいかないところも、可能性を感じる。見れる機会があったら見ておくことをおすすめしたい。(text by 滝沢時朗)

青葉市子ワンマン・ライヴ「空(から)より殻からの景色」@青山EATS and MEETS Cay
開催日 : 2010年12月7日(火)
会場 : 青山EATS and MEETS Cay
出演 : 青葉市子(Vo、G)