井出靖(Grand Gallery)によるUlrich Shunaussアンビエント・セレクト!
メランコリックでメロディアスなレイヤー・サウンドが魅力のドイツ出身エレクトロニカ・アーティストUlrich Shunauss(ウルリッヒ・シュナウス)。彼がこれまでにリリースしたアルバム『Far Away Trains Passing By』、『A Strangely Isolated Place』そして『Goodbye』より、井出靖(Grand Galleryレーベル・オーナー)がアンビエントな楽曲を中心にセレクト。世界初のUlrich Shunaussセレクト・アルバムが完成しました。情緒漂う楽曲の数々を、隅々まで聴き尽くします。
ulrich schnauss /A Letter From Home An Ambient Selection
1. Einfeld / 2. Blumenthal / 3. Molfsee / 4. Blumenwiese Neben Autobahn / 5. Never Be The Same / 6. Knuddelmaus / 7. Wherever You Are / 8. Monday Paracetamol / 9. Gone Forever / 10. Love Forever / 11. Goodbye
販売形式 : mp3 / wav
心象風景を描く音色の実験
1980年代後半から1990年代初頭に確立され、ギターのホワイト・ノイズやシンセを中心にした音響を重視した音作りと甘いメロディを同列に楽曲の中心とするロックの一ジャンル、シューゲイザー。近年ではWashed Outなどのチル・ウェイヴ全般、他にM83やThe Big Pinkなどシューゲイザー的な音楽性を持つアーティストがインディー・ロック・シーンの中で活発な動きを見せている。また、シューゲイザーは活発だった時期が重複しているマッドチェスターの影響もあり、アシッド・ハウスのダンサブルなビートを取り入れたものもあったため、クラブ・ミュージックとの親和性が高い。今ならThe Field、Gui Boratto、Fuck Buttonsなどが、ミニマル・テクノやエレクトロにシューゲイザー的なサウンドを取り入れ、良作を発表している。このようにシューゲイザーはその音楽的な特徴を様々なジャンルに応用され、現代のインディー・ミュージックのベースとなる要素のひとつになっている。
1995年頃から活動し、2000年代に発表した3枚のアルバムが高く評価されているドイツのエレクトロニカ・アーティストUlrich Schnauss(以下、Ulrich)は、そうしたシューゲイザーをロック以外のジャンルに応用した代表格の一人だろう。そして、そんな彼の先述の3枚のアルバムからの日本独自編集企画アルバム『A LETTER FROM HOME -AN AMBIENT SELECTION-』がリリースされる。タイトル通り、彼のアンビエントな側面、つまり、主にシンセによる音作りがよく映えている楽曲が中心になっているが、ここで伺えるのはシューゲイザーというよりはそれより先の1980年代初頭に出てきたドリーム・ポップの影響だろう。
ドリーム・ポップはシューゲイザーの類似ジャンルとして出てくることも多く、ギター・ノイズが楽曲の中心になるわけではないということ位しか相違点はないが、Ulrichのシンセの音色には、このドリーム・ポップの筆頭であるCocteau Twinsの影響が聞いて取れる。Cocteau Twinsは、Brian EnoやHarold Buddに代表されるアンビエントの音使いをロックに応用することで耽美な内面表現を確立したアーティストである。つまり、音響や音色の実験という側面の強いジャンルの音を、内面を描くことに応用したわけだが、Ulrichもこれと同様のことを成し遂げたアーティストだろう。エレクトロニカも初期には音響実験という面が強かったが、1990年代後半から2000年代初頭に他ジャンルにも影響力を持ち始め、他ジャンルにも援用されていく。そんな中で、彼はCocteau Twinsの流れにあるシンセの音とシューゲイザー的な音の中に消え入りそうな歌を取り入れることで心象風景を描き出すことに成功し、その音楽性を確立したのだ。
チル・ウェイヴの楽曲にはエレクトロに由来する刺激の強い音使いが主流だが、クラブ・ミュージックをベースにしている先にもあげたThe Field、Tycho、WallsなどはこのUlrichの流れを汲むサウンドで活躍している。シューゲイザーとしてはもちろんだが、こうしたアンビエントに端を発しているサウンドのアーティストとしての彼の作品をまとめた本作を聞くことでまた新たなものが見えてくるだろう。(text by 滝沢時朗)
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Ulrich Schnauss PROFILE
1977年ベルリン生まれ。2001年リリースの『Far Away Trains Passing By』を皮切りにこれまで3枚のオリジナル・アルバムをリリースしているエレクトロ二カ・アーティスト。Depeche Mode、Rachel Goswell、Mark Gardener、Asobi Seksu、A Sunny Day in Glasgow や、シューゲイズ・アーティストのリミックスを数多く手掛けている。ロックやテクノ・サウンドをベースに、表層に流れだす全編を通したメランコリーなレイヤー・サウンドは彼独自の世界観を大いにあらわしている。