ライヴ・セッション盤『Sessions』が限定配信! インタビューも掲載
DJ KENSEIとDJ SAGARAXX、二人の腕利きDJによるユニットCoffee & Cigarettes Band。彼らが2月14日に青山のライブ・ハウス「月見ル君想フ」で行ったセッションをアルバムとしてリリースする。彼ら二人にギターを加えたセッションは、DJプレイのように様々なムードに展開していくが、そこにはジャム・バンドのようなグルーヴが一貫して持続する。そのゆるいながらも芯を感じさせるダンス・ミュージックは、音楽を楽しみ、共有することで場を作ることへの確かな意思と温かさを同時に感じさせる。そんな独自の活動を続ける二人に話を聞いた。
インタビュー&文 : 滝沢時朗
Coffee & Cigarettes Bandの『Sessions』がWAV配信開始
Coffee & Cigarettes Band / Sessons
DJユニット、Coffee & Cigarettes Band(DJ Kensei & Sagaraxx)が、ゲスト・ギタリストのコスガツヨシとともに2011年2月14日に東京青山の「月見ル君想フ」で、行った45分あまりのライヴをまるまる録音。また、音源の編集を一切おこなっていないない本物のライヴ・セッション。
廃盤となっている過去作『Love Thing』もオトトイ独占配信開始
Coffee & Cigarettes Band / Love Thing
ディスコ、ヒップ・ホップからハウスと時代を駆け抜けてきたDJ KenseiとSagaraxxによるユニットの1stアルバム。リラックスした空気の和みを感じさせる、メロウで落ち着いた心地よい雰囲気を醸し出す作品。
【特典】
アルバム購入者には、クレジットが表記された美しいデジタル・ブックレットが同梱されます!
テーマはグルーヴしていくこと
——『Sessions』という形で、月見ル君想フでライヴをまるまる通しで収録した形でリリースされるということですけど、今まで沢山ライヴをやられてきた中で、なぜこういった形でこの時のライヴを収録したものを出そうと思ったのでしょう?
DJ SAGARAXX(以下、S) : クラブとか深夜の自分たちのパーティをずっと青山蜂で毎月やっていたんですけど、いわゆるライヴ・ハウスでセッションをやるのは月見ル君想フが初めてだったんですよ。その日、ライヴ・ハウスの方に録っていただいていた音源を、リリースするかしないかは全然考えずに、ただ聴いてもらおうと思ってお渡したんです。そしたら、原(雅明 / disques corde代表)さんにすごく気に入ってもらって、この音源を『Sessions』としてシリーズ化していこうということになりました。
——この時のセッションはお2人としても手応えのあるものでした?
S : すごく楽しかったですね。
——セッションする前は何かしら打ち合わせとかしておくんでしょうか?
S : 1セクション、2セクション、みたいな形で曲調によって大きく分けていました。それだけ決めてあとは自由にやって、あるタイミングで展開して次のセクションにいくって形をとっています。だけど、その順番も、実際はライヴになってみて当日どうなっていくかはわからなくて、それも含めてセッションでした。その日の気分で6番目にもってきていたものが一番最初にくる時もあるし。月見ルの時もリハーサルの時にやっていた順番とは全然違っていましたね。
——この時にギターで参加されているコスガツヨシさんにもある程度聴かせて伝えられてから、本番に臨んだんですか?
S : 曲を作る段階から一緒でしたね。その時にギターを乗せる、乗せないっていう判断をしていて、乗せるところはギターを即興で弾いてもらいました。
——お2人はラップ・トップとターン・テーブルとで、そこにギターを加えるという編成が珍しいと思うんですけど、どうしてそういう形でやろうと思われたんですか?
S : 彼は普段はバンドでベースを弾いているんですよ。だけど、元々ギターをやっていて、その音色がよかったので、ぜひギターで参加してもらいたいなと。あと、音響的にもベースはラップ・トップでも出せるので、ギターの高い音色とか歌心が欲しいと思ってました。
——セッションは毎回、ある程度交流がある方で、この人やったら面白いかなって選び方をされるんですか?
S : そうですね。普段は交流のある人から選んでやっています。ただ最近、幡ヶ谷のFORESTLIMITでやっているセッションは、原さんにも選ぶ時に参加してもらって、アイデアを出し合っています。どんどんやる人の幅や、合わせる楽器の範囲も広がっていっていますね。
——どなたかを選ばれる時に、今回はこういうテーマだとか、こういう雰囲気で行きたいよねってことは、最初に話し合ってから決められるんですか?
S : その都度話しあって決めてます。人数が多くなれば、そのことを考えてまとめていかなければいけないですから。ただ、このセッションは、音楽を作っていく段階からやっていたので、自分たちの想像を絶するような展開にしたいっていうよりは、グルーヴしていくってことをテーマにしていました。
——セッションをされる際に、3人いらっしゃって、それぞれ役割はおのずと出来てくるものですか?
S : 当日になってみなきゃわからないところも結構ありますよね。ギターの役割ってことはあらかじめあるとは思うんですけど。
——お2人の間では、どういう部分を担当するというような振り分けは明確にありますか?
DJ KENSEI(以下、K) : 明確にはないです。その時できることをやるって感じですかね。リズムは僕が出すことが多いんですけど、彼がターン・テーブルでリズムを出すこともあるし、そのやる曲によってやりやすいほうを役割にしています。ミニマルにリズムを続ける時は、ラップ・トップで僕がやったり、もうちょっとフィジカルにリズムを出す時は彼がターン・テーブルでやったり。
S : だから、とにかく実験ですね。そこが楽しみでもありますから。ただ、40~45分間ずっと同じリズムや同じパターンだと、自分たちもおもしろくないので、セクションで区切って決めて、ドラム・パターンやリズムを変えていくんですね。そこで、ギターも変えていって、ターン・テーブルで新しい音色を入れていくっていうイメージで演奏していました。
——お2人はラップ・トップとターン・テーブルで、コスガさんはギターですよね。いわゆる楽器のプレーヤーとは感覚的に違いはありますか?
S : 楽器が入ると明らかに違いますよ。基本的に2人ともDJをやっているので、そのDJ的な感覚の上で楽器を弾いてもらいたいっていうのはもともとあるんですね。やっぱりミュージシャンの人とやると、ミュージシャンの人はミュージシャンで、やっぱりDJとは感覚が全然違う。でも、そこが面白いんです。自分達がセッションするミュージシャンはDJが作った音楽に対してオープンな人たちなので、すごくやりやすいですけどね。彼もギターを使ってミュージシャンが考えつかないようなことを提案できたらいいなって話していましたから。
——コスガさんもどこかしらDJ的な感覚はあるかたなんですね。
K : 彼はDJを普段からやっていて、そういう音楽も好きですからね。
——お2人とコスガさんの間で、共通項というかいい落としどころを探るような作業はありましたか?
K : 誰かのソロで終わるんだったら、その人がちゃんと締めるとか。それくらいですね。そこまで細かく決めちゃうと、やっている側が冷めてしまうので。
——感覚的なプレーが中心なんですね。
K : そうですね。ただ、全員がどういう感覚でプレイしていて、どう来るかはなんとなくはわかっています。なので、エナジーとかヴァイヴスのコントロールで、ちょっと想像を越えるところにいけたらいいなって感じですね。かといって、完全フリーな感じでもないというか。
——本番のセッションでは想像を越えるような展開とか、意外な展開とかはあったんですか?
K : そうですね。わざと自分が音を抜いちゃったりとか、一人になった時にどうなるかなって、そういう楽しみはありましたね。でも、ちゃんとそこで締めてくれたりするので。
——SAGARAXXさんもいろいろやられてたんですか?
S : やってたっていうより、やってしまったというか(笑)。
——(笑)。それは瞬発的にこうやってしまったら面白いと思ってやるんですか?
S : そうですね。やっぱり、その場で思いついたことをやったほうがいいと思うので。それは音楽を作る時も同じで、ひらめいたことはまずやってみるんです。ただ、あまり合わないのはよくないと思っているので、そこはバランスです。
——お客さんに対して仕掛けていくような部分があるんですか?
S : 状況によりますね。この日はSPANOVAも出てたんすけど、そのライヴがすごくよくて、転換の時のBGMもかっこよかったです。すごく店内の雰囲気がよくて、リラックスして演奏できたんですよ。お客さんも一緒に楽しめた感じはすごくありましたね。
——セッションを沢山やられてきていて、月見ルでのセッションは2人にとってエポック・メイキングなものになりましたか?
S : 『Sessions』シリーズとして出していく最初のきっかけなので、スタートのスタートみたいな位置づけなのかな。この次の『Sessions』が、また全然違う内容になっていて、それはそれですごくいいんですよね。常にエポック・メイキングしていかなきゃいけないなと思っています。あと、3月11日の前の記憶っていうのがどんどん薄くなってきていて、それをこの2月14日のセッションを出すことによって、ライヴをやったという記憶も残るし、いろんなことが思い出されるんですよね。ライヴが終わった後に表に出たら雪が降っていて、東京が真っ白になっていたんですよ。西麻布から渋谷まで帰ったんですけど、雪の街いいなとか思ったりしながら。そういう記憶に残る日で、地震の前のことを思い出せるから、僕らとしては重要にはなっているかな。2月の記憶がどんどんなくなっていってしまうので、こういう風に記憶に残せば思い出せるし会話にもなるし、それができるのはありがたいことだと思っています。
Sessionsはシリーズとして続く
——生の記録というか、ドキュメンタリー的な意味合いもあるんですね。
S : 地震がなかったらそういう風に思わなかったかもしれないけど、たまたま前の月にはこういうことをやっていたって記録にもなりましたね。
——その次にリリースの予定があるものは3.11の前のセッションなんですか?
S : それ以後にやったものですね。結果として以前と以後のドキュメントを残すの意味が出てきてしまったんです。地震の影響がセッションにも出ていますね。
——それは意識してではなく出てしまったんですか?
S : 出てしまっているんですよね。3月末、みなさんでやれることをやりましょうってことで集まって演奏して、いい内容になったと思っています。節電もまだ始まっていない時に音を出して共有して、すごく気持ちがこもった夜になったと思っています。
——『Sessions』はシリーズとして続くということですが、ジャケットをDJでもあるKutmahが書いていたり、Coffee & Cigarettes BandでINTO INFINITYに参加されていたりと、LAのWebラジオ局で音楽コミュニティのDublabと接点が多いですよね。お二人の活動はDublabに影響を受けるような形で続けれるのでしょうか?
S : 昨年末にCarlos NinoとFrostyも来て、一緒にDJパーティをやったり、札幌で彼らのトーク・ショーを聴いたり、話しながら飯を食ったり、アート・ワークやホーム・ページも見ました。歳も近いってこともあるんですけど、すごく勇気をもらいますね。
——話をされて共感する部分が多かったですか?
S : 共感する部分もあったし、アメリカと日本はこんなに違うんだって思わされる部分もありましたね。例えばNPOのシステムとか、寄付をするっていう考え方の違いとか、今回の地震のことに関するお金の集め方のシステムの管理の仕方とか、多様性とか進歩性とか。彼らは2000年くらいから11年ずっと音楽に関わり続けているので、継続することによる強度はすごく感じます。だから今すごいことをやってやるぜっていうよりも、その継続する強度や日々のライフ・スタイルの中の音楽のあり方をすごく考えているんです。そこはヒントになりました。
——生活の中にもっと音楽が近いような感覚ですね。
S : 近い。彼らはその上でイベントをやっていて、イベントを成功させる以前に、生活していく人々と音楽をどう結びつけるかっていう根本的なことに当たり前に考えているんです。普通のことなんだけども、東京に住んでいたりすると意外に忘れがちなことですよね。
——そういったことをするには、日本の習慣とか制度だと難しいと思いますか?
S : やり方によると思います。国のシステムが違うので難しいと思うんですけど、そこはやっぱり徐々に変えていくしかない。そうしていきたいなって気持ちに、彼らと接することで、よりなりましたね。
——Dublabの活動はマイナーでも何でも自分達のアンテナにひっかかる音楽をどんどん面白いと思ったものをかけていって、それを積み重ねていろんな人が集まって交流もあったり、ジャンルとかも混ざって面白い音楽ができていると思うんですね。セッション・シリーズもいろんな方と交流して、音楽を作りあげるっていう部分で交流って点が共通しているとおもうんですけど、セッション・シリーズで交流は大きなタームですか?
S : 音楽面も交流していきたいですけど、INTO INFINITYで関わっている映像を撮っている方とか、交流は広がっていっているので、音楽以外のビジュアル面でもいろんな人たちと交流していきたいなとは思います。
——『Sessions』のジャケットはどのように決めたんですか?
S : Kutmahが描いた絵の中から選んでいるんですよ。Kutmahは普段MIX CDのジャケットとかで線の細いタッチの幾何学的なイメージの絵使っているんですけど、それとは違うものをジャケットにしました。いろんな目があるところが面白いよねってKENSEIくんも言っていたので、俺もそう思ったんですよね。いろんな視点という意味でも目がいっぱいあると面白いなと。
——音だけじゃなく全部含めて音楽文化という感覚はありますか?
S : そこもFrostyと話してて、アート・ワークやビジュアルと音楽との関連性に対する感覚が近いというか、ほぼ一緒なんだなってこともわかったんですよ。それも含めて交流できてよかったなと思ってます。
——それは国の違いは関係なく感覚を共有できるんですか?
S : そうですね。面白いジャケットは彼も集めていて、神保町にレコードを買いに行ったりしてましたね。海外に来たらSP盤とかジャケットが面白いものを買って帰るってところとかも似ているんですよね。
——とりあえずレコード屋に行くんですね。
S : そうですね。そこはあんまり変わらない。
——他に日本とアメリカでもそんなに変わらないなと思うことはありましたか?
S : 代官山「M」っていうところでINTO INFINITYのセッションをやった時に、LAのグラフィック・デザイン・クルーのHIT&RUNからMikeが来てくれて、その場でシルク・スクリーンでTシャツを刷ってくれたんですよ。イベント中にずっとそういうことをやってて、音楽を聞いているひとは音楽を聞いているけど、Tシャツ刷ってもらいたいひとはTシャツを刷ってもらっていて、すごくいいなと思ったんですよね。ビジュアルと音楽が同じ空間で、同期している感じがして。彼に聞いたらいろんなところでイベントに出ていて、常にいろんなTシャツを刷っているんだよって言っていましたね。日本だとビジュアル作る人と音楽っていうのが結構分離されている部分があったりとか、常に横にいる感覚がまだあんまりないんですよね。
——『Sessions』 シリーズを通してそういった感覚も広がっていけば、それはお2人の考えや感覚が伝わったということですね。
S : そうですね。アート・ワークとか写真とか、映像もモーション・グラフィックでもいいと思うし、ドキュメントするものは常に撮り貯めていって、音だけじゃない目で見せる部分っていうのもやっていきたいなって話もしています。
——今後は音源だけではなく、映像媒体でもやられたりという計画もあるんですか?
S : 映像で音楽を伝えるっていうことの重要性ってことも感じています。最近だとErykah Baduのビデオ・クリップをFlying Lotusが作っていたりとか、そういうアプローチも面白いと思うし、KENSEIくんが写真をよく撮ってるんですけど、その写真をのせてどこかジャケットに組み込むっていうのも面白いし、いろいろアイデアを話し合っているところです。
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タイラー・ザ・クリエイターはLA出身のヒップ・ホップ・グループOdd Future Wolf Gang Kill Them Allのリーダー。今まで、すべての音源を無料ダウンロードでリリースしカルト的を誇ってきたが、遂にアデル、M.I.A.等を擁するイギリスの名門レーベルXLと契約。カニエ・ウェストがシングル「ヨンカーズ」のビデオを「2011年一番ヤバイ、ビデオだ!」とツイッターで絶賛するなどの既に話題沸騰。
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アメリカのWax Poeticsからリリースされたアルバム『9dw』が日本でも好セールスを記録し、都内クラブ・イベントへの出演を中心に活動の幅と認知を確実に上げている9dwによる、国内外の著名プロデューサーやリミキサー、DJとのコラボレート・アルバムが完成。初回盤限定スリーブ・ケース2枚組、catune/eneの合同企画リリース。
PROFILE
Coffee & Cigarettes BAND
DJとしてのスタンスにこだわる自分達がプレイしたいトラックを作りたいと、2006年、六本木RootsNで毎月第4火曜日に開催していたイベント”Coffee & Cigarettes”(現在イベントは一時休止中)でDJしていた、KenseiとSagaraxxの2人が中心となりスタート。互いに東京で生まれ育ち、毎晩DJとして東京の街の音を作っている、彼等の感覚がフィードバックされたトラックは、周りのDJ、ミュージシャン、アーティスト達に好評を得る。又、アナログに対する質感を大切にしながら、今鳴って面白いと思う音を追求し楽曲制作を行う姿勢は、80年代後半〜90年代のHipHop、Acid JazzとDance MusicのベースにあったJazz、Funk、Soul、Rock、DiscoやRare Groove等を多様に取り込んでいく、自由でオープンなスピリットに通じる。Coffee & Cigarettes Bandの楽曲は、自分達が生きる日常に心地の良い風を注ぐであろう。現在、新たなプロジェクトを構築すべく、周りのミュージシャン達とDJ的視点でのLive Sessionを積極的に行っている。
INTO INFINITY
『INFINITY LOOPS』では、クリエイティブ・コモンズとdublabの共同アート・プロジェクト「INTO INFINITY」のアーカイブに格納されているループ音源や円盤画像といったCCライセンス・コンテンツのみを使ったプロのアーティストによるリミックスのプロセスを記録し、その成果を同じくCCライセンスで公開します。第一回となる今回はINTO INFINITYにも音源提供をしているDJ KenseiとDJ SagaraxxによるDJユニットCoffee & Cigarettes Bandによるリミックス・セッションの映像記録に加えて、そのための専用のステージ・セットを組み上げ撮影・編集を担当した気鋭の映像作家DBKNが、新たにループ音源にインスパイアされたループ映像を42個制作し、独自のリミックス映像に仕上げた作品をクリエイティブ・コモンズ・ライセンス付きで公開します。『INFINITY LOOPS』シリーズの今後の展開にもご期待ください。