
新進気鋭ネット・レーベル! Shakuya Recordsを先行配信開始
Maltine Recordsなどの活躍によって近年その存在感を増しているネット・レーベル。日本ではアニメやゲーム音楽を経由したテクノ、ヒップ・ホップが主流だが、今回そんな流れとは一味違うレーベルShakuya Recordsがコンピレーション・アルバム『Shakuya Records' Paper Sounds』をリリースする。名前を漢字とカナにすれば借家レコーズだ。アンビエント、エレクトロニカ、フォークを中心にリリースし、ネットで活動しながらこうした生活感の強い言葉を使うあたりに、彼らの面白さが既に表れている。そんなShakuya Recordsを主催し、Shippolliesとしてコンピレーションに参加もしているYouki KoyamaとKirito Yamadaの2人に、この一風変わったレーベルについて話してもらった。
インタビュー&文 : 滝沢 時朗
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Shakuya Records / Shakuya Records' Paper Sounds
自らもシンガー・ソング・ライターである代表のYouki Koyamaを筆頭に、Bunkai-Keiからリリース経験のあるKanouKaoruや、アイスランドのBad Pandaにも参加するend's not near、自新次元のインストゥルメンタル・ミュージックを標榜するWagaci主宰のSohtaro Kandaなど、国内外問わず活躍中の若き才能ばかりが集結。
【特典】
アルバム購入者には、デジタル・ブックレットが同梱されます!!
【参加アーティスト】
Hirotaka Shirotsubaki、Sohtaro Kanda、affable noise、end's not near、Shippollies、Youki Koyama、KanouKaoru、Tichrimz、翳、end's not near & KanouKaoru、ルイ・リロイ・田中、大竹竹大、Shippollies With Taro Ueda
INTERVIEW
ーー最初にShakuya Recordsをはじめた経緯やきっかけを教えてください。
Youki Koyama(以下、Y) : 元々2人とも地元が和歌山で高校から一緒なんですけど、高校出てから2人で音楽を録り出したんです。学生だったんで夏休みに2人で集まって、3日とか4日で曲を作って、宅録で録ってました。それをCDRで焼いて友達に配ろうとなった時に、そういうことをやるんだったらレーベルでやったほうがかっこいいと思って、Shakuya Recordsにしました。それを1、2年やったかな。それで、特にそれからなにもしてなかったんですけど、2010年の2月か3月ぐらいにネットでコンピレーション・アルバムをやろうって話になって、友達で賛同してくれる人が多かったので、その人たちと曲を持ち寄ってネット・レーベルとしてやりだしました。

ーーコンピレーションに参加されているアーティストは全員知り合いなんですか?
Y : 今コンピレーションはVol.6まで出してるんですけど、最初の1とか2は本当にオフラインの友達です。3ぐらいからtwitterとかで呼びかけました。音とかつぶやきの面白さとかから独断と偏見で選んで、こういうことをやってるので曲を作ってくれませんかと声をかけていったんです。それで、話を受けてくれた人が参加してくれています。
ーー今までのコンピレーションや今回出される『Shakuya Records' Paper Sounds』はアンビエント、エレクトロニカ、フォークなどの楽曲が多いですが、最初からそういうカラーのレーベルにしようと思っていたんですか?
Kirito Yamada(以下、K) : 好きなようにやってる仲のいい人たちを集めたらこうなりましたね。
Y : あんまり最初からShakuya Recordsはアンビエントで行こうっていうのはなかったんです。集まった曲がアンビエントが多かったので、たまたま今の方向性になったところはあります。実際、最初に2人でCDRに焼いてたのはハード・コアでしたから。
K : レゲエもやってたし、自分たちが好きな音楽を何でも詰め込んでました。
ーーハードコアとかレゲエからどうやって今の方向性になったんですか?
Y : 元々2人ともハード・コアとかパンクを高校の時に聞いてたんですけど、山田くんの父親がジャズのプレーヤーで、色々ジャズを教えてもらったりしてました。それから、大学に入ってもっとジャズを聞くのにはまっていって、そこから色々と興味が広がって、テクノ、アンビエント、ドローン、フォークとかを聞くようになりました。音楽漬けで生活が内向的になるとともに、自分の音楽もそうなり始めたというところでしょうか。山田くんは明るいんですよ。ドローンとかアンビエントとか家では全く聞かないですね。
K : クラブに行きますし、テクノとかは好きなんですけどね。でも、僕は楽器ができるのでそっちで音楽を作る方が無理がなくて、聞く音楽も人間が楽器を演奏してるものが多くはなります。

ーーShakuya Recordsのアーティストの仲間内で音楽の話をしますか?
Y : 元々知り合いだった人たちとは音楽の話をしますよ。最近、仲間内では鈴木常吉(さん)が流行ってます。深夜食堂っていうドラマのオープニングを歌っていた東京のフォーク・シンガーで、わりと年配の方なんですけど、みんな高田渡さんとか往年のフォークが好きなんですよ。自分らの中では高田渡さんと細野晴臣さんは別格です。鈴木常吉さんも同じような感じのするシンガー・ソング・ライターで好きですね。
ーー細野晴臣さんは確かにアンビエントなこともフォーキーなことも両方やっていますね。
Y : 細野さんはほんまに大先生だと勝手に思ってます。
K : 僕は細野さんが最近やっているラグタイムな感じでバンジョーが入ったりしてるがアルバムが好きです。みんなSKETCH SHOWとかも好きやし。色々聞きますね。
Y : あと、フォークとは別にWarp Recordsは常にかっこいいなとみんな思ってます。
ーーWarpの話で行くと、アンビエントはAphex Twinから入ったんですか?
Y : 僕はアンビエントに関してはBrian EnoとWilliam Basinskiが好きです。WarpだったらbibioとかClark、Flying Lotusとかヒップ・ホップっぽいのはかっこいいですよね。
ーーでは、ネット・レーベルをやるにあたって参考にしたレーベルなどはありますか?
Y : ホームページを作ったのが最近なんですけど、ネット・レーベルに1番大事なことはホームページが整頓されてて、見やすい、ダウンロードしやすいことだと思ってます。そこは試行錯誤しました。 あと、日本のネット・レーベルは電子音楽がメインなので、生楽器を使ったフォークとかも入れていきたいなともやり始めの時は思っていました。
ーー『Shakuya Records' Paper Sounds』はアンビエントやフォークといったジャンルではなくて、電子音と生音を同じものとして音楽を作っているところが印象的でした。
K : 楽曲は作っている人に全部任せているので、自然とそうなってるところもあります。
ーーインターネットで音源を配布すると、大体の場合、PCや携帯音楽プレーヤーなど低音質で聞かれることになると思います。アンビエントなど音響が重要な音楽をやられていますが、その点を考えて楽曲を作りますか?
Y : それは考えてます。これをダウンロードして聞いても、パソコンのスピーカーだとなにも聞こえんのちゃうかなとか。特に重低音がずっと鳴ってるドローンみたいな音楽だとそうですよね。でも、最終的にはまあ、いいかと思います。
K : 今回の『Shakuya Records' Paper Sounds』のスタジオでのマスタリングには愕然としましたけどね。
Y : うちの環境はパソコンだけでちゃんとしたモニターのスピーカーもないですし、モニター用のヘッドフォンも持ってないんですよ。DJ用のヘッドフォンしか持ってなくて。だから、マスタリングの時には少しびっくりしたんですけど、その程度なんですよね。音質に関してはそのぐらいにしか僕は考えてないですし、音質は音楽の重要な部分ではないと思うので。
ーー全くないがしろにしているわけではないですけど、ある程度割り切れるものなんですね。
Y : そうですね。
K : 最後の曲とかiPhoneを囲んで1発録りで録りましたから。もちろんピッチなんかもとれてないんですけど、そういう修正もかけずに。
Y : パソコンを使ってはいるんですけど、機械的にピッチを修正したりとか、歌のキーを合わせたりするのは絶対に嫌なんです。もうそんなことするぐらいなら音楽をやめたほうがいいぐらいに思ってます。あくまでパソコンは録るだけです。もちろん重ね録りはしますし、コンプレッサーとかのエフェクトをかけたりはしますけど。
好きにやってくれればいいと思いますよ。
ーーレーベルとして電子音楽がメインであると同時に生音に対しても信念があるんですね。
Y : アナログが大事だと思ってて、デジタルだけになりたくないなっていうのはすごくあります。アンビエントを作る時は特にパソコンをあまり使わずに、4トラックのMTRにギターとかフィールド・レコーディングした音を使って作ることが多いですね。
ーー低音質に気持ちよさを感じることはありますか?
Y : 去年フジロックに行った時にJohn Fogertyを見て、すごくかっこよかったんですけど、音質が今の音なんですよ。僕はそれまで彼のライヴを見たことはなくて、60~70年代のCCRの音源のイメージで見に行ってたから、そこが少し残念でした。好き嫌いだとは思うんですけど、最近の録音システムなりスタジオ・システムがよくなってると言われていることに、非常に疑問を持ってます。50年代のブルースが、全く低音が鳴ってないのになんであんなにいいのかとか、そういうことが常に頭にあります。今の時代にああいう録音をしても、同じよさは出ないですから、難しいですよね。だから、さっき音質にはあんまり固執してないとは言ったんですけど、そういう意味では固執してるのかもしれない。宅録をするのはお金がかからないっていうのもあるんですけど、1番大事なところは自分たちでやりたいっていうことなんです。今回マスタリングは中村宗一郎さんがやってくださったんですけど、本当はマスタリングまで自分たちでやりたいですね。でも、マスタリングはかなり技術がいる作業なので、今回はお願いしました。

ーーShakuya Recordsでは「借家の間取り」というPDF形式の読み物も出されていますよね。あの内容が明治文学に出てくるお金のない書生のようなイメージで面白いと感じました。アンビエントを扱っているレーベルでは珍しいやり方だと思うのですが、なぜああいうものになったのでしょうか?
Y : あの中で植田太郎っていう文章を書いてる人がいるんですけど、そいつが全部編集とか構成をやってくれるてるんです。そいつが文学とか民俗学とかにはまっていたので、そこが出てるのかもしれないですね。
ーー「借家の間取り」は音楽の話は全然出てこなくてエッセイのような形ですけど、なぜそうしたんですか?
Y : 「借家の間取り」のまだひとつ前に紙で作ったことがあったんですよ。それは紙に印刷して180円でミニコミ展みたいなものに出して販売したんです。それはみんなブログなり何なりやってるので、軽い気持ちでこういうのやったら面白いんちゃうぐらいの感じでやったので、今回もそれと同じであんまり考えてないですね(笑)。
ーーそれでは、「借家の間取り」はそれぞれの趣味が出た結果ああなったんですか?
Y : あの中で文章を書いてるのは僕と、Tichrimzとしてコンピレーションに参加してる今津太一郎、植田太郎、あと、曲では参加してない井上周也です。井上くんは劇団TEAM-ODACにいる俳優で今日(4月6日)は青山円形劇場で公演をやってますよ。
K : あと、小野原先生。
Y : 小野原先生は大学の恩師で、詩を書いてもらいました。それと次郎っていうずっと写真をやってるやつがいて、彼に撮ってもらってます。みんな「借家の間取り」みたいな雰囲気はがありますね。
K : 半分ぐらいは同郷で高校時代からの仲間です。変な人が多い田舎だったんですよ。
ーー和歌山にいた時からミュージシャンだけではなくて、色々とつながりがあるんですね。
Y : ちょっと特別な田舎だったように思いますね。その延長線上でやるとShakuya Recordsの雰囲気になるのかなと思います。あと、Shakuya Recordsは音楽レーベルだけじゃなくて、色々なものを作る集団で、その発表の場として名前を持っているという感じです。後はみんなそれぞれ好きなようにやってくれればいいと思ってます。
ーーShakuya Records以外のネット・レーベルと交流はありますか?
Y : Maltine Recordsから三毛猫ホームレスとしてリリースしているOba Masahiroくんは友達です。ワールド・ミュージックの会、略して「ワー会」っていうオフ会をやってて、みんなで民族音楽をひたすら聞くっていう会なんです。今では大きな会になってるんですけど、そこでよく会ってます。元々は神戸の大学時代にtwitterで知り合ったんですけど、Oba Masahiroくんが神戸にライヴに来た時に1回会って、僕が去年から東京に住み始めてからまた会うようになりました。

ーーネット・レーベルとして無料でコンピレーションを配信してきたわけですが、今回有料のコンピレーションをリリースすることにどんな意味があると思いますか?
Y : ネット・レーベルはフリー・ダウンロードが基本ですよね。でも、その方法だとすぐ広がるけど、すぐ収まってしまうと思ってます。そのカウンターになるようなネット・レーベルになりたい。今まで自分たちの音楽にお金を払ってもらうっていうことを考えたこともなかったんですけど、今は音楽を買うっていう手続きをすることで、もっと集中して聞いてもらえるかなと考えています。あと、CDとしてもリリースするので、形として残るっていうことはうれしいですね。今回はジャケットとかのデザイン面も周りにアドバイスをしてもらいながら、全部Shakuya Recordsの中で作ったんですよ。Shakuya Records総出でひとつのものを作ったっていう自分たちの喜びはすごくあります。みんなプロではないんですけど、今回のコンピレーションを作ることでShakuya Recordsの中での得意分野とか役割分担が明確にできて、レーベルとして成長しましたね。
ーーそれでは、Shakuya Recordsは今後どのように活動していくのでしょうか?
Y : これからはコンピレーションじゃなくてアーティスト単位のアルバムやEPをリリースしていきます。『Shakuya Records' Paper Sounds』にも参加してるHirotaka Shirotsubakiが最近アルバムを出したので、それを皮切りに今まで通りダウンロードでリリースします。あくまで自分たちのペースでやりたいことを長く続けていきたいです。
K : あと、ライヴをやりたいですね。
Y : そうなんですよ。みんな出不精なのか、ライヴをやってるやつが少なくて。僕らはライヴもやったことないのにCDが先に出ちゃったっていう、あんまりないタイプなんです。ライヴをやってるのは『Shakuya Records' Paper Sounds』に参加している中だと、Sohtaro Kanda、end's not near、KanouKaoruぐらいですね。他にやってるにはやってる人もいますけど、ここに入ってるようなソロの形ではやっていなくて、グループでやってます。
K : ライヴを見に行くのはすごく好きなんですけど、自分たちがやってることに関してはあんまり人前でやりたいと思ったことがなくて。自分たちが楽しんで作って、せっかく作ったから配信ぐらいしようって感じだったので。でも、今回こうして形になったので、これを機会にやろうかなと。
Y : ライヴはライヴで、その時だけで終わるっていうこともいいと思うんですけど、僕はそれより記録するっていうことに興味があります。だから、録音したいっていう思いが強いですね。でも、今はライヴもしたいです。
PROFILE
Shakuya Records
2007年兵庫・神戸にてShippollies(シッポリーズ)のYouki KoyamaとKirito Yamadaを中心に設立。徐々にメンバーを増やしながら、拠点を東京・世田谷に移動。レーベルとして音楽部門だけではなく、WEB部門、デザイン部門、編集部門などといった様々な分野にて活躍中。2010年から本格的に活動を開始し、音楽配信だけではなく、WEBマガジンの配信にも力を入れていれはじめている。
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