
4/10・11 KAIKOO POPWAVE FESTIVAL’10@東京晴海埠頭客船ターミナル
4月10日・11日と行われた都市型フェス KAIKOO POPWAVE FESTIVAL’10。晴海埠頭で行われたその第一回に行って来た。POPGROUPが主催し、DJ BAKUが呼びかけたというだけあって、色々なジャンルの音楽が集結し、アーティストのラインナップはインディー・ロックとヒップホップが同じぐらいの割合で占めている。サイプレス上野とロベルト吉野などの登場によってヒップホップにより興味を持ったロック・ファン、つまり、筆者のような人間にうってつけのフェスだ。どストライクだ。というわけで、四谷駅からの都バスで晴海埠頭に向かった。
1日目は13時40分からのP.S.Gに合わせて会場に到着。バスを降りるとチケットと入場のためのリストバンドを交換するために列が並んでいて、その横にはDJがプレイするFANTASTIC PLAYGROUNDというDJのテントがあり、DJ YAZIが回している最中だった。並びながら良い感じにテンションが上がって、P.S.Gの出る会場へ。会場は晴海客船ターミナルの1階屋外と3階屋外にステージが設置されていて、主にヒップホップ・アクトが出るBLACK EMPEROR Stageは会場の3階に張られた狭いテント。その中は昨年話題を呼んだS.L.A.C.Kを擁するこのグループを見たいという人でぎゅうぎゅうだった。持ち前の人を食っているが、音楽性の高い曲やパフォーマンスに場内が熱気で満ちていく。その熱気は次のSKYFISH&鎮座DOPENESS、そして、RUMI+SKYFISHといずれも旬を迎えているアーティストによって絶えることなく続いていった。どのアーティストもハードコアな部分と脱力した部分のバランスがよく、飽きずに見れて楽しかった。
RUMI+SKYFISHを見た後は少し休んで、1階にある一番大きなステージKING & QUEEN Fieldへ。このステージは見晴らしが最高で、海とあたりのビル郡を一望できるロケーションだ。フェスに来たことを一番感じさせてくれる。そんなステージでMONOのクラシックも思わせるようなギター・ノイズを浴びた後、再び3階屋外へ移動。3階屋外で主にバンドが出るステージWHITE KNIGHT StageでREBEL FAMILIA、その後またBLACK EMPERORに行きBLACK GANION、降神と見てWHITE KNIGHTに戻り、THINK TANKで締め。1日目は見たいアクトが見れて楽しかったけれど、BLACK EMPERORによくいることになってしまったので、あまりフェスにいる感じは味わえなかった。フジロックのように移動自体がフェスの一部として機能するような環境ならいいけど、見たいアーティストによってはいまいちフェスの感覚が味わえないということは、KAIKOOに限らず都市型フェスの課題だろう。

2日目はKING & QUEEN一発目のNATSUMENから景気よくスタートした。ギターのA×S×Eの弾き倒しぶりや雄叫びは、思わずウッドストックを頭に浮かべてしまうような気迫で、フェスに「来たーっ」と、いう感覚が高まる。頭からいい気分になって、BLACK EMPERORでサイプレス上野とロベルト吉野。この時はテントから人が溢れ過ぎて、見れない人が出るほどの盛況ぶりで、それも納得のパフォーマンスだった。クルーの仲間も引き連れての男子校的バカ騒ぎを、確かな音楽性をベースに見せ、適度にふざけながら客を煽りつつコミュニケーションを取る。次はキセルを見に1階へ移動。今のキセルのライブは、アレンジも演奏もよく練られている上にとても風通しがいい。こんなに自然に心に入り込んでくる音楽はなかないだろう。フェスの環境に合ってる音楽かと言えば合ってないけど、流れとしてはいい感じに気持ちが落ち着いた。キセルを見終えて、3回へ移動。途中から七尾旅人、次にあらかじめ決められた恋人たちへのぶち切れたパフォーマンス、クレバーさとガキっぽさでオーディエンスを撃ちぬく環ROYを体感。そして、1回へ移動してTHA BLUE HERB。18時になりフェスも終わりに向かう時間帯で、ILL-BOSSTINOの力強いどっしりしたラップが物語をつむぎだしていく。KAIKOOフェスに人が集まることの意味が劇的に語られ、多少大げさには感じたけど、その存在感に圧倒された。
THA BLUE HERBの後は、FANTASTIC PLAYGROUNDのやけのはら+ドリアン。THA BLUE HERBとは対照的に、何十人かの人がDJのテントの前に集まり小さく親密な空気を醸し出していた。やけのはらのキミドリ「自己嫌悪」のカバーが終わって場がいよいよ温まったところで、七尾旅人が飛び入りで登場。七尾旅人のソロのステージの時にもやっていた「Rollin' Rollin'」をシングルに収録されているドリアンのMIXで再びやり始め、辺り一体に合唱が響き渡る。日が落ちてそろそろフェスも終わりに差し掛かるという状況と、その場にいるオーディエンスの笑顔や一体感が伴って、「Rollin' Rollin'」が描き出しているような光景に今自分がいるのだと感じて心が震えた。
そして、KING & QUEEN というかフェス自体の大トリ・クラムボン。最初からメンバー全員がテンションが振り切れていて、それが音からもどんどん伝わって広がっていき、渦巻くグルーヴ、沸きあがる歓声。ピースフルな雰囲気に包まれたまま最後にTHA BLUE HERBのILL-BOSSTINOが登場して「あかり from HERE 〜NO MUSIC, NO LIFE.〜」がはじまる。この曲と「Rollin' Rollin'」はヒップホップとインディー・ロックのミュージシャンが共作した、KAIKOOのコンセプトを象徴するような曲だ。THA BLUE HERB単体の時と同様スケールは大きいのだが、ヒップホップのハード・コアさとインディー・ロックのやわらかさがバランスを取り合い、両者が持っているドラマチックさが会場全体をフェスの持つ物語性で満たしていく。フェスという場によって、曲がアンセムとして鳴らされる瞬間を聞いた気がした。大円団の後のアンコールでは、名前を明言はしなかったものの、Nujabesのためにと「Folklore」が演奏された。熱気が覚めやらないまま「Folklore」も終わり、去り際にミトが「最後に一曲聞いてください」と言って、Nujabes「reflection eternal」がかかる。帰って行く人もいたものの、多くの観客が音に身を任せながら、誰もいないステージを見つめいていた。
全部終わって振り返ると、KAIKOOでは「Rollin' Rollin'」に象徴される親密さと、「あかり from HERE 〜NO MUSIC, NO LIFE.〜」に象徴される大きな物語性の両方を、随所で体験する事ができた。改善点はいくらでもあるとは思うけど、作り手側の理念が感じられるいいフェスだった。(text by 滝沢時朗)

KAIKOO POPWAVE FESTIVAL
2010/04/10、11(日)@東京晴海埠頭客船ターミナル
Live : 石野卓球 / ケン イシイ / toe / mouse on the keys + α / MONO / ソウル・フラワー・ユニオン / DJ BAKU / いとうせいこう & DUB MASTER X / YOUR SONG IS GOOD / 曽我部恵一BAND / 二階堂和美 / REBEL FAMILIA / THINK TANK feat. OPTRON / 降神 / DEXPISTOLS / THE LOWBROWS / group_inou / oak / RUMI+SKYFISH / Eccy / P.S.G (PUNPEE S.L.A.C.K GAPPER) / FUCK YOU HEROES / ABNORMALS / BEYONDS / BLACK GANION / WRENCH / SKYFISH & 鎮座DOPENESS / Universal Indiann(N.R.B.K.J/Family Tree/CONTACT) / DJ Conomark (Mother / GRASSROOTS) / DJ YAZI (THINK TANK/BLACK SMOKER RECORDS) / DJ RILLA (ALMADELLA) / HITOMI AZUMA / DJ YUUDAI(Cubithm) / R.I.P dj klock / ~direction of rainbow live mix in new york 2004~ / クラムボン / 渋さ知らズオーケストラ / THA BLUE HERB / DJ BAKU HYBRID DHARMA BAND / TURTLE ISLAND / 七尾旅人 / キセル / DJ HIKARU / DJ NOBU / NATSUMEN / sleepy.ab / SHINCO(スチャダラパー) / DJ 刃頭 / サイプレス上野とロベルト吉野 / with ZZPPP / B.I.G. JOE / NORIKIYO + BRON-K(SD JUNKSTA) / COKEHEAD HIPSTERS / グッドラックヘイワ / YOLZ IN THE SKY / NUMB / Rival Schools(from NY) / SKUNK HEADS / SHIRO THE GOODMAN / あらかじめ決められた恋人たちへ / ORdER / NICE VIEW / やけのはら+ドリアン / LUVRAW&BTB + MR.MELODY(PAN PACIFIC PLAYA) / Dorian / Latin Quarter (PAN PACIFIC PLAYA) / TAKARADA MICHINOBU (HONCHO SOUND) / VIZZA CASH MONEY(BLACK SMOKER RECORDS) / GROSS DRESSER (MAGNETIC LUV) / tomad (maltine records)