互いの手駒を駆使したリアルタイム作曲録音ーー大島輝之&大谷能生のアルバムをハイレゾ配信&インタヴュー
大友良英とのコラボレーション盤でも知られる sim(シム)のコンセプチュアル・リーダーで、歌ものバンド、弧回(コエ)、新バンド、liiil やソロとしても活動する大島輝之と、simの同僚で、菊地成孔とのJAZZ DOMMUNISTERS(ジャズ・ドミュニスターズ)、蓮沼執太フィルのメンバーとして音楽家、更に批評家としても知られる大谷能生が、二人の連名名義でアルバムをリリース。 2013 年の一年間、横浜の黄金町にある試聴室その2にて、マンスリー企画として行われた『リアルタイム作曲録音計画(仮)』(その日のイベント中に作詞・作曲・編曲を行い、録音して、最終的に楽曲を披露する)で制作された楽曲、全12曲を収録。リアルタイムというギリギリ感の中で生まれた楽曲の思いを語ってくれました。
大島輝之&大谷能生 / 秋刀魚にツナ 〜 リアルタイム作曲録音計画
【配信フォーマット / 価格】
WAV、alac、flac(24bit/48kHz、24bit/44.1kHz) mp3共に1,800円
【Track List】
01. ホーミー
02. 咲かない桜
03. 交差する黄砂
04. 40歳で正社員だよ
05. メイシック・ブルース
06. 品川シーワールド
07. 花火大会中止
08. 愛ガットも-れー
09. 秋刀魚にツナ
10. みなサ・んケン・ヌツァ
11. ジョナ9時
12. リアルタイム作曲録音計画
INTERVIEW
音楽を作るということは、どんどん私たちにとって身近なものになってきている。次々に優れた機材やソフト、アプリが現れ、より簡便に音楽を作ることができるようになった。しかし、音楽がいくら身近になっても、私たちは音楽について多くを知らない。なぜこのタイミングでこういう音が鳴ると気持ちが揺さぶられるのか、単なる音から音楽になる境界はどこなのか。音楽は身近にありながら常に未知のものだ。そして、今回、大島輝之+大谷能生が出した『秋刀魚にツナ ~ リアルタイム作曲録音計画』というよくわからないタイトルのアルバムは、その未知のものと遊んだ記録である。ロック、ポップス、テクノ、ヒップホップなどなどの普段からよく耳に入ってくる音楽が、ここでは微妙にずらされた形で組み合わさり、そのずれが私たちが普段は意識しない音楽の側面をあぶり出す。遊ぶということは最も効率の良い学習行為であり、彼らが遊んだ結果として出来た曲たちは音楽を知ることの楽しみに満ちている。と、小難しい感じのことを書きましたが、気楽に笑って聞けるアルバムでもあるので、大島輝之+大谷能生のおふたりへのインタヴューとともにお楽しみください。
インタヴュー : 滝沢時朗
どっちかがアイディアを出したらとにかく「いいよ!」って受け入れるんですよ。
――『秋刀魚にツナ ~ リアルタイム作曲録音計画』は「リアルタイム作曲録音計画(仮)」という横浜の黄金町にある「試聴室その 2」で行われた イベントで作られた曲を収録しているということですが、どのようなイベントなんですか?
大島輝之(以下、大島) : 最初は自分1人で作曲をワーク・ショップっぽくやろうかなと思ってたんですけど、そういうのはやっぱり苦手なので、もっと気楽な感じで曲を作ってるところをお客さんに見てもらうという方向に切り替えました。イベントは2013年1月からはじめたんですけど、2012年12月頭ぐらいに大谷に頼んだら面白いかもなと思ってメールしたら「やるやる」「じゃあ、よろしく」という感じで。
大谷能生(以下、大谷) : 最初から毎月やるって話だったっけ?
大島 : 最初は1月だけやるって言ってた。それで、決まった途端に、面白いから毎月にしようとなったんだよね。どうせなら2013年いっぱいかけて12曲録ってアルバムにしたら面白いんじゃないかと。
――リアルタイムということですけど。事前になにも準備しないでやっていたんですか?
大島 : 楽器はもちろん準備しますけど、曲に関してはほとんどなにもないよね?
大谷 : なんとなくですけど、あまり即興にしないで楽曲を作ろうという意識はありました。即興は色々とやってきたので、そうした方が今までやらなかったことができそうだと。このアルバムには普通の歌ものもあれば、テクノっぽいものもあって色んなジャンルがあるじゃないですか。これはそういう意識の結果、ギリギリで曲になってるということですね。踏みとどまってこのぐらいっていうね(笑)
――お二人でステージに上がって、まず最初に何をするんですか?
大島 : まず、前の月にできた曲を聞く。ひとしきり自画自賛してから、じゃあ、今月は何をしようかとなって、先月と同じことしても面白くないねっていうことで、今回はこうしようみたいな流れになっていました。
大谷 : 大島は基本的にはギターで、俺はサックスで曲を作るのは難しいから、店のキーボードを使ってました。他にもドラムがあって、機材もマイク、ミキサー、大島のPCとあってその場で録音できる環境でした。そこでなにをやろうかって言いながら適当に弾き始めて。
大島 : どっちかが最初にはじめて、それをいきなり録っちゃうんですよ。それに続いて俺が何をやろうとか、ベースをやろうとか、ドラムやろうかとかそういう感じですね。
――とりあえず録音してみて、それを聞いて、また録ってみての繰り返しなんですね。
大島 : そうですね。あと、とにかく時間がないんですよ。19時から22時までの3時間で終わらないといけない。だから、どっちかがアイディアを出したらとにかく「いいよ!」って受け入れるんですよ。
大谷 : それで、「ん!? これで大丈夫?」とか言いながら録音して(笑)
大島 : 基本的に二人でひたすら作ってるだけで、会話もお客さんに聞こえるような声量でしてなかったですね。だから、お客さんのことを全く見ないまま終わった時もあって どうなのかなと思って(笑)
――6曲目の「品川シーワールド」でラップしている柴田聡子さんや8曲目「愛ガットもーれー」と11曲目「ジョナ9時」に参加している入江陽さんがいるときはどうやっていたんですか?
大島 : その時は僕はいつもより引いた感じでやっていました。
――柴田さんや入江さんはどういう意図で呼んだんですか?
大島 : 家が会場の近所だからです。「遊びに来る?」みたいな感じで。
大谷 : そのぐらいなんですよ。本当に(笑)
大島 : 11月の「ジョナ9時」の時は、入江くんは新宿にいたんですけど、電話してちょっとそこで歌ってくれって頼んで。彼はジョナサンの前にいたらしくて、そこででかい声で歌ってもらいました。爆笑してたよね(笑)
――最後の「リアルタイム作曲録音計画」ではかなり演奏に参加している方が増えていますね。
大島 : この回は忘年会も兼ねて昼の15時から夜の21時までやってました。僕が同じ場所でやっている「即興室」っていうワークショップ的なものがあるんですけど、そこに来ている人たちも楽器持参で来てもらってます。
大谷 : この曲では、俺らはほとんど演奏してないよ。30人ぐらい来てて、その内の半分ぐらいは演奏できる人だったから(笑) 年の瀬だったし、紅白歌合戦みたいな感じでやってもらいました。
――この曲でダジャレ混じりの詩を力強く朗読しているは、どういう方なんですか?
大島 : この「クッキー」の部分は彼の持ち歌なんですよ。普段は全然違う感じでピアノの弾き語りで歌ってるんですけど、これはその前に僕らが入れたドラムとかベースに入れてくれって。
大谷 : 「あ、MELODY KOGAが来た。ちょっとこっち来て」っていう感じで。その場でその場でやる感じをこういう風にポップスにできて面白かったですね。
人前で3時間で歌ったり、歌詞書いたり、録音したり編集したりアレンジするとかをやってみるっていう実験ではあったかな。
――このイベントはお二人のやってきたsimであったり、ジャズや即興と地続きなんですか?
大谷 : 誤解のないように言っておくと、 即興って言うとジャズを思い浮かべられるんだけど、そんなに関係なんだよね。 まず、ジャズ・ミュージックはそれで1ジャンルで、即興っていうのは全部のジャンルに入りこむ要素だから、そこが違う。それで、俺らが90年代の即興のシーンにいたことは確かなんだけど、それはジャズ・ミュージックとはそれほど関係ない。俺は逆に意識してジャズをやろうとしているタイプで、それも即興とはそんなに関係ない。
大島 : 僕はジャズのことは全然知らないですから。僕らより上の世代はまた違いますけど。
大谷 : 上の世代は即興って言うとジャズしかなかった時代の人たちだからね。
大島 : でも、僕の世代でもジャズから即興に行った人はいるか。
大谷 : でも、それは少数派で、ジャズの人はジャズだけやってて、即興演奏はもっと広いっていうか複雑な状況になってるのが我々の世代から下の状況なので。それから、simに関して言うと、即興はほとんどないからね。
大島 : そうだね。
大谷 : simはコンポジションなので、インプロヴィゼーションはないんですよ。
大島 : simはジャズの延長線上でもないし、即興とは反対のベクトルから来ているものの考え方でやっています。でも、僕らの活動が結構ごっちゃになっている人は確かに多いんですよ。僕は即興もやるし、simみたいなこともやるんだけど。
大谷 : シーンとして一緒にされるのは問題ないんだけど、未だにちゃんと腑分けしてもらっている気がしない。2005年にsimのファースト・アルバムを出したんだけど、同じ頃に出たSTUDIO VOICEに載ったんですよ。それはいいとして、「ポスト・ジャズのサウンド・テクスチュア」っていう特集で、ジャズの先の音楽として捉えられていて、全然違うのになって思った。だから、そういう形で取り上げられると、ジャズと関連した音楽として出回って、まだそれが続いてるんだろうなって気はしてるけど。
大島 : simをやっている時っていうのは、自分のやれることをあえてすごく狭めているんですよ。例えば、歌わないとかコード進行がないとか。本当にリズムとノイズだけであえて限定してやっていた。それをここ2、3年でわざと元に戻すというか、広げている最中なんです。simの作曲は僕がPCでこつこつ打ち込みやっていたので、それを見せてもつまらないじゃないですか。このアルバムは、孤回で歌を歌うことで広げたから始まったことなので、その流れのものです。全く関係なくはないんですけど。
大谷 : 前にやっていたことに対するアンチとかっていうことでは全然ないし、意識もそんなにしていなくて。ただ、しっかり細部を詰めた音楽を作ることは、できるからいいやと。でも、人前で3時間で歌ったり、歌詞書いたり、録音したり編集したりアレンジするとかは結構無理なわけ。でも、どこかで見切りをつけないと曲としてまとまらない。それをやってみるっていう実験ではあったかな。
大島 : このイベントでこういうのもありっていう範囲を広げているている感じはあった。もっと広げるつもりではあるんだけど、いい過程になりましたね。
大谷 : 自分はこうだからっていうことをあんまり決めない方がいいので。
大島 : 30代の人は自分はこうだってなるからね。僕らも30代の時はそうだったんですけど。
――全体としてお二人の今までの作品にない独特のゆるさがあって、それが曲のポップさとか楽しさにつながっているのかなと感じました。
大谷 : 「ゆるさ」とか「ゆるい」っていう言葉があんまり得意じゃなくて、悪口に聞こえちゃうんだよね。そうじゃないっていうのはもちろんわかってるんだけど。それは多分、俺がわりと真面目な人間で、かっちりやったほうがいいと思ってるところがあるのかなと。でも、「ゆるい」って大体の場合、褒め言葉なのね。それも含めてだけど、このアルバムに関しては、とにかく色んなところに隙があって、詰めていけばもっとバージョンアップできる。その上に、どれか1曲のアイディアでアルバムが1枚作れるぐらいのものではあるんですよ。ところが、それをやらずに次々とやってるから、そこらへんをお客さんが、特に音楽をやりたいって思ってる20歳ぐらいの人がどう聞こえるかなっていうのが、興味深い。90年代にローファイ( 代表的なバンドはPavement、God Is My Co-Pilo、Trumans Waterなど )っていうブームがあって、ガンガン曲を作って、録音してテープで出すみたいなことが流行ってたけど、今の若い人には一番アウトだと思うんだよね。今回はそのノリに近いわけ。でも、ポイントとしては音がこっちの方が良い。
――アウトなものなんですか?
大谷 : 今はちゃんとプロダクションされてないと聞かれないと思うよ。それは俺の勝手な思いなんだけど、若い人と喋ってるとそういうことが伝わってくるわけ。このアルバムは微妙な線をついているので、ちょっと面白いかなとは思っているんですけど。聞いてみて欲しいね。
やっぱり、「40歳で正社員だよ」ってフレーズは残ると思うんだよね。
――歌詞はどうやって作っていきましたか?
大島 : 歌詞を人前で作るっていうのが、本当に大変で。2曲目の「咲かない桜」みたいな歌ものの曲は、休憩中に後ろの方で倒れて歌詞を書いてました (笑) 。1曲目の「ホーミー」は、会場が京急線のガード下だから、その場で京急がどうとか言い出したんだよね。それで、曲が出来上がって、最後にタイトルはどうしようかとなった時に「HOLD ME TIGHT」って歌詞に出てくるから「ホーミー」になりました。それから、曲順は作った順番通りで、1曲目が1月なんですけど、どの曲にも季節感がすごいあるんですよ。2月の「咲かない桜」とかも、2012年の桜の開花が早かったっていう話から桜の曲にしようっていう話になって。
大谷 : 「春だべ? 桜だべ?」みたいな感じで。
大島 : 5月の「メイシック・ブルース」とか7月の「花火大会中止」もお客さんから、このイベントの前日にあった浅草花火大会が中止になったっていう話を聞いて、そこから詩を作ったり。
大谷 : その画像を見たらすごかった。花火がバーンと上がってて、上から雷がビシャーンと落ちてて(笑)あと、3曲目の「交差する黄砂」もそうですね。ちょうどその時にやり直し選挙が行われてて、あと、黄砂が大変ですっていう話をもらって、「黄砂」「やり直し選挙」でフリースタイルしたらこうなった。
――歌詞を見ていると、意味があるようなないような、脈絡があるようなないような感じを受けるんですが、歌詞で意識したことはありますか?
大谷 : ないですね。伝えたいことが何もないからそういう歌詞になるんじゃないですかね(笑)
大島 : こうなっちゃうんですよ。「咲かない桜」もよく読むと意味がわからないですから。9曲目の「秋刀魚にツナ」もよく見ると「秋刀魚にしぼる すだちのように 焦げては苦すぎて」ってすだちが焦げるって辻褄があってないし。やっぱり、人前で作ってるからこうなっちゃう。
大谷 : でも、辻褄は合わせなくても大丈夫だっていう自信はありますよね。
――歌詞に関して言うと、アルバムを聞いていて井上陽水の「リバーサイドホテル」を思い出しました。というのは、あの曲は曖昧なイメージを提示するだけでサビはホテルがリバーサイドにあることしか言っていなくて、ほぼ意味がない。でも、他の音楽的な部分が抑えられているのでいい曲に聞こえる。このアルバムの曲にも同じことが言えると思っていて、また、ポップス一般にも通じる構造でもあるのかなと考えました。
大谷 : まあ、そんなもんですよ。
大島 : 確かに井上陽水とかその世代の人の歌詞って、本当にわからないものが多いんですよ。別にそれを意識して作ったわけじゃないですけど、僕もそういうものは好きですね。だから、そういう曲が全然ありだということはわかって作っています。
大谷 : このアルバムみたいな歌詞を真面目に作ってたら、結構な才能があるかバカかのどっちかだと思う(笑) でも、意外と聞いた人の心にダメージを与えたり、頭に残るようには作ってる。やっぱり、「40歳で正社員だよ」ってフレーズは残ると思うんだよね。だから、そこだけ聞こえればよくて、その前後はどうでもいいところもあって。やっぱり、川沿いに行ったりすると「ホテルはリバーサイド」って歌っちゃうから、そういうところにチューニングを合わせて行きました。
――「40歳で正社員だよ」は残りましたね。将来への不安を掻き立てる感じが...。
大島 : マスタリングをしてくれた中村(公輔)くんが超嫌がってたよ(笑)
妙にサンバっぽく明るく歌われているところがまた嫌でしたね。
大谷 : あれは「未来世紀ブラジル」をイメージしてる。そういうある種のワンフレーズであるとか、そこさえできていれば後はなんとかなるっていうのがポップス。それだけじゃヒット曲には絶対にならないんだけど(笑)
――でも、まだ詰める余地があって、途中経過だけどいい曲というのは確かにそう思います。相対性理論にしてもサビは同じフレーズを繰り返しているだけでいい曲になるように作ってあるので、そういう普遍的な良さもあると思います。
大谷 : 「パラレルパラレル」って言ってるだけだからね。ああいうのは強いよ。今の曲は話が長いからさ。
大島 : 彼女たちも確かに意味のない歌詞の良さっていうのをわかってるのかなと思いますね。
大谷 : 調子が良ければなんとかなるんだよ。Aメロ、Bメロ、サビって全部をちゃんとたどって意味がわかる構成で、「でも、あなたと一緒にいたい」とかいう話だったりしてさ。5分聞いてそれかよみたいな。サビ一発で決めて欲しいって思うじゃないですか。そういうのがあんまり得意じゃなくて、辻褄は合ってない方が楽かも。往々にして意味がわからないって文句を言われたりするんですけどね。
――アルバムを聞いたまた別の印象として、お二人ともどういうフォーマットにすれば曲として成立するのかを知っていて、そのフォーマットから何かを抜いたり足したりして成立するか試して遊んでいるのかなとも思いました。ジェンガのようなゲームとして楽しんでいるような。
大島 : ギリギリ曲になるぐらいのね。
大谷 : ジェンガ感はあったね。ジェンガっていうか、最初にやってみてこの形で残っちゃったから、そこにどう積み上げたら立ってられるかみたいな。
大島 : 歌と詩があるだけで、バックがなにをやっていても曲になるということはもうわかっているんですよ。極端な例を出すと、デヴィッド・シルヴィアンの「Blemish」みたいにデレク・ベイリーの即興に歌を入れても成立するじゃないですか。だから、その場で思いついたありとあらゆることをやってみました。
大谷 : 普通にコードを弾いていい感じに歌って、ボーカルだけ残してバックを切って、全然違うものを混ぜても3分ぐらいだったら曲になるんだよね。そうやって作ってもいいんだけど、それだとあんまり面白くない。できることはわかってるから。
大島 : だから、それよりも無茶苦茶なことにならないかなとか、こうしたらおもしろいんじゃないかなっていうことをその場で考えてやってましたね。それで、お互いに方向が違っていてもOKなんですよ。多分、もっと若かったらケンカになって、3時間経って終わりになる。相手が違う人だったらできないだろうなと思いますよ。他に思い浮かばないですからね。
大谷 : お互いに色々やってて手駒が多いからね。あと、音楽的な話で言うと、基本的には2人とも色々と細かいことを気にするよ。でも、時間内にやらなきゃいけないからということでやっていて。だから、自分でも人にはどう聞こえるのかが本当にわからない。
――僕はやってる方が楽しそうだし、こっちも聞いてて楽しいなと思いました。
大谷 : それが一番いいですね。楽しい感じが伝わるといいって子供みたいだけど、あんまり難しく聞かないでください。
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大友良英+高田漣 / BOW(dsd/2.8MHz+mp3)
レコーディング・スタジオでの一発録りをライブとして公開し、そこでDSD収録した音源を配信するイベント“Premium Studio Live”。その第1弾として、東京・一口坂スタジオ Studio 1に、即興演奏家として名高い大友良英と、マルチ弦楽器奏者である高田漣の2人を招いて行われた際の記録。EBOW E-Bow Plusを使って生成されたアンビエントなサステイン・サウンドや、アコースティック・ギターやスティール・ギター、さらにはパーカッションやターンテーブルを使ってのノイズ、そして電子音など、さまざまな音源によって繊細かつ濃厚なサウンド・スケープが描かれていく。一発録りだけではなく、3台のKORG MR-2000Sを同期運転させ、ピンポンによるダビングも敢行。スタジオの機能、そして居合わせた観客の力も存分に借りつつ、極上の音世界を現出させた。
菊地成孔 ダブ・セクステット / LIVE at BLUE NOTE TOKYO 2011.05.05 (dsd+mp3)
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弧回 / 纒ム(24bit/48kHz)
ROVOなどを擁するワンダーグラウンドの加藤Roger孝朗と、ROVO、DUB SQUADでの活動でも有名なエンジニア益子樹が立ち上げた新レーベル、Bright Yellow Bright Orange。バンド・メンバーには、波多野敦子(バイオリン、コーラス等)、千葉広樹(コントラバス、トランペット)に加え、本作では、ゲスト・ドラマーとして、山本達久を起用。彼らなりの解釈で演奏された、TODD RUNDGRENの「I SAW THE LIGHT」も収録。実力派メンバーたちによる新しいPOPSがここに誕生。
LIVE INFORMATION
大島輝之
2014年4月19日(土)@黄金町試聴室2
2014年4月29日(火)@高円寺カフェu-Ha
2014年5月2日(金)@吉祥寺バウスシアター
2014年5月4日(日)@黄金町試聴室2
2014年5月21日(水)@黄金町試聴室2
2014年5月23日(金)@小岩bushbash
2014年5月30日(金)@下北沢apollo
大谷能生
2014年4月26日(土),27日(日)@表参道スパイラル・ホール
2014年4月29日(火)@西麻布スーパーデラックス
PROFILE
大島輝之(左)
音楽家。 sim、liiil、《《》》、相殺~、bootles、弧回など、色々な活動をしている。横須賀在住。
大谷能生(右)
1972年生まれ。音楽家・批評家。96年~02年まで音楽批評誌「Espresso」を編集・執筆。以降も、菊地成孔との共著『憂鬱と官能を教えた学校』や、単著『貧しい音楽』『散文世界の散漫な散策 二〇世紀の批評を読む』を上梓するなど、積極的に執筆活動を行う。その傍ら、音楽家としても精力的に活動し、sim、masなど多くのグループに参加。ソロ・アルバム『「河岸忘日抄」より』、『舞台のための音楽2』をHEADZから、『Jazz Abstractions』をBlackSmokerからリリース。映画『乱暴と待機』では音楽を手がけており、「相対性理論と大谷能生」名義で主題歌も担当した。演劇やコンテンポラリー・ダンスの舞台などを含め、さまざまなセッションで演奏を行っている。