12/30 アニマキュレート2@秋葉原 MOGRA
秋葉原にあるDJバーMOGRA。DJバーと言ってもかかる曲はダンス・ミュージック中心ではなく、アニメ・ソングやゲーム音楽で、昨年一気に知名度をあげたインターネット・レーベルMaltine Recordsのイベントもここで行われ知られるようになってきている。筆者もアニメは好きで見ているものもあり、こういった所に足を運んだことはなかったが、2010年12月30日に行われたアニマキュレート2というイベントが面白くなりそうだということで参加してみた。というのも、DJ陣の中にスチャダラパーのクルーLB Nationの一員でもある脱線3のDJ/MC KING3LDKと、クラムボンのミトとagraphの牛尾憲輔によるアニメ・ソングDJユニット2 ANIMEny DJ'sが入っていて、アニメやゲームの文脈とは異なるミュージシャンが、アニメやゲーム音楽のイベントでどんなことをするのかにも興味が湧いたからだ。イベント自体は16時からだったが諸事情で遅れ、秋葉原駅から5分ほどのところにあるMOGRAに18時少し前に到着。階段を降りて料金を払い、イベント用に配っているサイリューム(※1)を受け取ってフロアに入る。するとそこには想像していたより、濃ゆい空間が広がっていた。ちょうど近年のアニメ・ソングの代表格「もってけ! セーラーふく」が、かかっていて場は大盛り上がりの真っ最中。正面と左右の壁面いっぱいにVJが編集したアニメの映像が流されている中、みんな歓声をあげて踊っている。いきなりの濃密さに、ややたじろいた位だった。だが、筆者の着いた時間が半端だったせいで、その時のDJはすぐに終わった。一息ついていると、今度はお客さんがDJブースの前にスペースを作り始め、そこに女の子が一人登場。自己紹介をはじめてアニメ・ソングに合わせて踊りだした。後で調べたところによると、みきのみんというニコニコ動画で自身のダンスの動画をアップしている人で、多いものでは10000回以上再生されていた。
ダンスが終わるとDJタイムに戻り、兄弟ユニットThe LASTTRAKの登場。彼らはMaltine RecordsからMINT(ex.韻踏合組合)の楽曲をリミックスした「だぶ☆すてEP」(※2)をリリースしていたので知っていた。The LASTTRAKはすべての曲を彼ら自身のリミックスで使っていて、バリエーションの多いプレイでフロアの温度を上げていく。先述のEPからはアーバンなダブ・ステップ、新旧のアニメ・ソングをディスコやドラムンベースにして耳にも楽しませてくれる。そして、 韻踏合組合「前人未踏」のリミックスでは、最早アニメ・ゲームとは関係なくても盛り上がりが最高潮に達していた。それから、女装コスプレをしたイラストレーター伊達る〜がDJの後ろで大きい紙に萌え絵とセットリストを、同時進行で描いていくというパフォーマンスもしていて、ラップ以外はヒップ・ホップと同じ要素が出揃ってるなとやや感心した。続いてアキシブ系(※3)のDJであるDominikがプレイし、その後にKING3LDKがついに登場。アニメ・ソングでのDJは今回が初ということで、ベテランの彼も最初はさぐりさぐりフロアに声をかけ、「Say Ho」と言ったら「Ho」と返すヒップ・ホップのお決まりのコール & レスポンスでコミュニケーションを取っていく。そして、DJを開始。様々なアニメ・ソングに加えて初音ミクを使った楽曲も織り交ぜていき、時間が経つとさすがのキャリアでフロアをわかせていく。ルパン三世のオープニングでは合唱まで起こっていた。だが筆者が一番グッときたのは、あるアニメの中で一言ネタとして使われていた「ラップだけがヒップ ・ホップじゃないポコ」という台詞をDJプレイに混ぜて流したことで、KING3LDKの意思が見えたことだ。
KING3LDKが終わり21時前といい時間にもなってきたところで、次はDJニッチがプレイを始める。DJニッチはアニメ・ソングのテッキーな四つ打ちリミックスで終始攻めるプレイを披露。さらに場をヒート・アップさせる。そこに満を持して2 ANIMEny DJ's。コスプレ(※4)で現れた二人はとてもテンションが高く、続けてみんなを踊り狂わせる。ミトは本当にいい笑顔で楽しそうにDJをするし、牛尾憲輔も激しい動きで煽りまくる。二人とも本体のアーティスト活動では、あまり見せない面を見せていて面白い。途中に声優の園崎未恵が登場して生で歌うというサプライズも用意して、サービス精神あふれるDJだった。トリにはロサンゼルスで開催されるアメリカ最大のコンベンション、Anime ExpoにもDJとして出ているDa/Leが「戦場のメリークリスマス」なども混ぜ込んだ、メロディアスで透明感のあるアニメ/ゲームソングのリミックスをかけていき、イベントは落ち着いて終了した。
最後に初めてこういったDJを体感した感想。最初にマイナス面を言うと、アニメ/ゲーム音楽だけだと踊るための音楽としては正直弱いところもある。リミックスで補強はしているけど、原曲もかけないと盛り上がらないところもあるだろうから、今後の課題になると思う。もっとも音楽よりアニメ/ゲームの体験がメインで、その点をVJの映像で補える人には余計な意見かもしれない。そして、それを補って有り余るプラス面は、みんなとても自由に楽しんでいたことだ。踊れれば何でもいいというクラブ・ミュージックの姿勢が雑多で豊富な音楽性を生んでいるように、この場では萌えられればなんでもいいという姿勢が、刺激的な場を作っていたと思う。女の子も含めて色々な種類の人が混じって踊っていたし、アンダーグラウンドな自由さが満喫できるいい場だった。(text by 滝沢時朗)
※1化学反応で光る簡易的な棒状のライト。アイドルのコンサートなどでよく使われる。
※2 Maltine Recordsでフリー配布中。
※3アキバ系と渋谷系を融合させることを目指すスタイル。詳しくはこちらを参照。
※4おそらくこれの男子学生服。
アニマキュレート2@秋葉原 MOGRA
開催日 : 2010年12月30日(木)
会場 : 秋葉原 MOGRA
出演 : 2 ANIMEny DJ's、KING 3LDK (AUTOROCK RECORDINGS)、DJニッチ、Da/Le (AVSS)、Dominik (PURE IBIZA/2D/LAST ATTACK)、The LASTTRAK feat.伊達る〜にゃん(The LASTTRAK+る〜マニア。/らすとら)... etc