
Gak Satoの新作『gF』をHQD音源で配信開始!
Gak Satoはいくつもの面から音を作り出している。テルミン奏者、Webや電話機のサウンド・デザイン、福富幸宏や東京スカパラダイスオーケストラなど名だたるアーティストを手がけるリミキサー、そして、今回はgiuliano Fujiwaraのファッション・ショーのために5年間に渡って書いてきた楽曲を再構築し、アーティストとしての新作『gF』を聞かせてくれる。そのサウンドはダブ、ジャズ、テクノ、ハウス、エレクトロニカと様々なジャンルを思わせるが、ひとつひとつの音が考え抜かれ、絶妙なバランスを保つことで見事にポップで端正な楽曲として成立している。クールに洗練されていると同時に素直に楽しめる稀有な作品だ。その成立過程と彼の音楽への考え方をメール・インタビューで答えてもらった。
インタビュー & 文 : 滝沢 時朗
>>>『gF』収録の「little rift」のフリー・ダウンロードはこちらから!
傑出したクオリティ! 24bit / 48khzの高音質でリアルな音の粒を体感してください!
Gak Sato / gF
【TRACK】
1. protection & movement / 2. diagonal path / 3. erratum dub / 4. little rift / 5. so what you want? / 6. alluda / 7. liquification / 8. dtrt / 9. a man's attitude / 10. my favorite chaos / 11. my favorite things
Art Director : 松村正大
『Easy Tempo』シリーズや数々のリミックス作品で知られるGak Satoがgiuliano Fujiwara(ジュリアーノ・フジワラ)ミラノ・メンズ・コレクションのために過去5年間に渡り、書き下ろしたサウンド・トラックを再構築したアルバム。ともにミラノを拠点として活躍する音楽家とアパレル・ブランドのコラボレーション作品である。ミニマリズム、洗練されたイメージを残しつつ、アバンギャルドでモダンなコレクションを展開するブランドの精神を忠実に表現した音楽になっている。
推薦コメント到着!
現役の音楽家で、かつファッション・ショーの評論(特に、ショー音楽)をやっており、東京に関しては2003年SS以来ほとんど総てのショーを観ている。という立場から私感を申し上げますが、Gak Sato氏の、特にジュリアーノ・フジワラに提供しているショー・ミュージックの水準は、それ単体としても、服とのマリアージュとしても明らかに傑出しており、それは東京水準ではなく、4都総てを見渡しても、ランバンに於けるアリエル・ウィズマン、プラダに於けるフレデリック・サンチェス以外に肩を並べる物件は見当たりません。特に重要な事は打率で、所謂外れ年がなく、一定以上の水準をキープしている。という力量は素晴らしく、今回のように作品がアイテムとして独立させる意義を持つ、数少ない音楽家だと言えるでしょう。
ー菊地成孔(音楽家 / ファッション・ショー評論)
実験音楽的感覚を内包したサウンド・トラックでありながら、一方で叙情的なダンス・ミュージックとしても成立している。Gak Satoによる"美しきカオス"をとくとお楽しみあれ!
ー松浦俊夫(DJ & CREATIVE)
僕らは皆、子供だ? 誰の? 未来派のおとしご。いや、ゴダールの弟分。イーノの従兄弟? いやいや皆、腹違いで血はまじって、誰が誰やら。僕らは、そしてGakもまた、20世紀的都市の流動性の遊び場で、モンタージュやら編集のアルスを身につけた子供だ。僕は今、21世紀の朝や夜中、日々Gakが贈ってくれたミュージックを聴いて、暮らしてる。いや、暮らしながら聴く。彼の音楽は、調理であり、チューナーだが、でも、そのコラージュは進化し、もはやコラージュでなくスープのよう。溶けこみ、毎日たべられるよ。20世紀の子供は、色男になり、ビートルズからスティーブ・ジョブズが神様の時代になって、音楽の調理魔術も変わるだろう。さて、Gakはどうするかな、なんて、妄想させてくれるのだ。
ー後藤繁雄(編集者/クリエイティヴ・ディレクター/京都造形芸術大学教授)
Gak Sato INTERVIEW
ーー『gF』のタイトルの意味を教えてください。
Gak Sato(以下、G) : どの曲もショーで使ったままではなく、リアレンジ、リプロダクションしているので、ショーのサントラから派生した別物でもあるという意味も込めてgiuliano Fujiwaraそのままでなく『gF』と略しました。
ーー『gF』の楽曲はgiuliano Fujiwara(ジュリアーノ・フジワラ)ミラノ・メンズ・コレクションのために作られたということですが、そのために出た楽曲共通の特徴はありますか?
G : コレクションのテーマは毎回異なるので、スタイルは変わっても、シンプルでエレガントでありつつストリートっぽい雰囲気も感じられるというのが共通する特徴だと思います。
ーー楽曲を再構築してアルバムにされたということですが、具体的にどのような作業をされたのでしょうか?
G : ショー自体は大体10分から15分程度の長さなので、全体を一曲(というか、ひとつのかたまりとして)として繋がるように作っていきます。DJとして選曲で2時間なり一晩なりで、自分の流れをつくるような感覚を15分の中で行うわけです。何曲か作ってからDJミックスしてまとめていくのではなく、最初に出来た曲から触発され、次の曲のアイデアが生まれていき、その作業が進んでいくと、朧げに全体像が見えてくる。そうやって全体の流れを作ることがショーのための音楽の基本だと思っています。しかしアルバムという形にするには、各曲の長さや細部をショーとは離れて見直し、独立した楽曲として精度を上げていく作業をしています。言わば、リミックス・バージョンをオリジナル・バージョンに戻していくような感じでしょうか。
ーーアルバム全体としてテーマやコンセプトがありますか? また、ひとつのアルバムとして統一感を出すために苦労されましたか?
G : 制作の契機になっているのは、服を美しく見せるために相応しい音であるかどうかということだけです。その上で、ジャンル感はありつつも、それを露骨に出さないようにはしています。その理由は、フジワラの服に強いジャンル感のあるもの、例えば、これはスポーツ・ウェアですとか、フォーマル・ドレスです、というようなアイテムがほとんど無く、フォーマルでエレガントではあるけれども、どこかカジュアルだったり、その逆だったり、繊細なミクスチュアで成り立っているので、音楽もそこに対応しています。ミニマルだけど暖かいとか、ストリートっぽいけどエレガントとか、ミリタリー調だけどシックだとか、そういった一見相対するような要素をまとめていくことが、結果的に統一感に繋がるのかもしれません。あとは曲順でしょうか。年代順でも良かったのですが、アルバムとして聞くとどうもしっくりこない。一番最初に作った唯一のカヴァーである「my favorite things」をアルバム最後に持って来て、ようやくまとまった感じがしました。

ーーアルバムにはレゲエ、ダブ、テクノ、ジャズ、エレクトロニカなど様々な音楽の要素が聞き取れます。音楽的な背景やルーツを教えてください。
G : 僕の世代には多いと思うのですが、80年代テクノ・ニューウェーヴから派生して、あらゆるジャンルを聞いてきたつもりになっていて、実は王道のロックやポップスが全く欠落していたり、オーネット・コールマンは持っていても、チャーリー・パーカーはまだ聞いてないとか、混沌と脈絡なく色々聞いてきたこと自体がルーツなのかもしれません。その結果、異種ジャンルの音楽同士を同じ耳で聴けるという感覚は養われているのかな? と、思うことがあります。
ーーひとつの楽曲の中に先の質問でもあげたいくつもの音楽的な要素が、自然に同居していて楽しませていただきました。こうした楽曲を作られる際のポイントはなんでしょうか?
G : ポイントは、要求されていることを無駄なく表現しきることと、その中の如何に自分のアイデンティティをすりこむかということでしょうか。スタイルの引用としてのジャンル感はあるかもしれませんが、特定のジャンルがやりたい訳ではありません。例えば、”今回はデトロイト・テクノっぽく行きたい”という要求に対して、そのままデトロイト・テイストを表面だけなぞってもだめで、デトロイト・テクノの意味することは何なのか? という理解することが重要です。その理解は全くの誤解でも良いのですが、自分なりに解釈してルールを見出していくことが重要だと思います。特定のジャンルの音にしてしまうと、そのジャンルの元来持っているスタイルが強く出過ぎ、そこを強調したいのであればむしろ選曲でやった方がいい訳で、オリジナルで制作する意味合いが薄くなってしまいます。そういった匙加減がポイントです。
ーーベースにしているジャンルは違っていても、きめ細かくビートが打ち込まれていてグルーヴを保っていることがアルバムを通して印象的でした。楽曲制作の際に試行錯誤されましたか?
G : No groove, no music.ダンス・ミュージックはもとより、ノー・ビートの曲でもグルーヴは生じます。試行錯誤した点は、先ほどの答えと重複しますが、ジャンル感を踏まえつつ、自分の趣味の領域に入り込み過ぎないということでしょう。
ーーWebや電話のサウンド・デザインもされていますが、アーティストとしての作品にそうした仕事の経験は反映されていますか?
G : サウンド・デザインは音の必然性を考える仕事なので、なぜそこに、その音が必要なのかということを吟味するという意味では全ての制作に共通すると思います。DJとして選曲する場合も、生演奏をする場合も、今、どの音が必要とされているかを頭と身体で感じながらリスナーと自分との間でフィード・バックしあうことなので、全ての仕事の経験は様々に反映しあっていると思います。
ーーイタリアに長年住まれていますが、ご自身の作られる音楽に影響があると思いますか?
G : これは自分ではわからないですね。特にイタリアに住んでいるからということでは無く、イタリア人でも日本人でもなくて、常に外人という立場で在りたいなと思ってます。第三者としての視点みたいなことは常に意識しています。ミラノに住んでいるからこそショーの音楽を作るという機会に恵まれたという部分はもちろんあります。
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PROFILE
Gak Sato
1969年東京生まれ。ミラノでRight Tempo Recordsのディレクター、アーティストとして10年に渡り活動。3枚のオリジナル・アルバム、Easy Tempoシリーズで70年代イタリアン・シネ・ジャズのコンピレーション、リイシュー、多くのリミックスを手がける。近年はサウンド・アートの分野や、テルミン演奏家としても活動の幅を広げている。