音楽を聴いてる間は嫌なこと忘れられるように
──“寒い朝”は美しい曲で。特にこの曲で思ったのがどの楽器の音もいいなと。楽器自体の鳴りへの執着を感じます。
倉橋:ラフ・ミックスも相当時間をかけて自分がやったんですけど、まあそれでいろいろ支障が出ました(笑)。
廣松:スタジオのミックスの人にもちょっと嫌がられたかもしれない(笑)。
倉橋:それぐらい、力は入れていたかもしれないです。そこの部分はリスナーが聴いていちばん分かりやすい部分ってリズムと音だと思うので、妥協してはいけないっていうのが自分のなかにはあります。
──“Tide Pool”はギター・リフのチョーキングが特徴的で耳に残ります。
倉橋:イントロとアウトロのリフが?そうですね確かに。
──Tide Poolって干潮時の水溜り?
高野:ああ、そうです。Tide Poolってフレーズ自体は日常的なところというか、新しいギターが欲しくて探してた時に、フェンダーのデュオソニックにタイドプールっていう色があって、で「これなんだろう」と思ったら潮溜まりっていう意味で。丁度その時、この曲の歌詞を考えていた時で。前作の『Mibunka』を録った時には学生だったんですけど、社会人になってからは当たり前に会社員をやって、当たり前に働いて、なんか土日とかゴルフ行ってみたいな。そういった人たちが周りにいるなかで、みんなが先に行っちゃう──先かわかんないですけど、どこか別のところに行って、自分は取り残されてはないんですけど、青春の延長をずっとやり続けていくっていう気持ちが、潮溜まりの残されていく感じにリンクして付けた歌詞です。
──皆さんの同世代というと合理的であったり、将来の為にいまやりたいこと我慢してるみたいな人が多い気がして。だから先に行ってるっていうより未来に対して保険をかけないといけなかったりするのかな?と。
高野:そういうことですね。なるほど。そこはいま、言語化できなかったところですけど、そうですね。
──仕事終わりにライヴを観に行ったり、音楽好きですっていう人もいるだろうし、全然そこまで回んないって人もいるでしょうけど。Seukolとしてはどういう人に向けて作ってると思いますか?
廣松:もともとSeukolっていうバンド名は自分たちが音楽やってる間は嫌なことも忘れられるように、聴いてる人も僕たちの音楽を聴いてる間は嫌なこと忘れられるようにみたいな感じでつけた名前ですし、“Tide Pool”の歌詞もそうですけど、他の歌詞も曖昧な、岐路に立たされているまではいかないけど、なんとなく悩んでるとか、もやっと不安なものがある人に刺さる音楽なんじゃないかなとは思ってます。
倉橋:僕はそれ全くいまもう考えないようにしています、っていうのはあくまで僕のなかではそれは建前で。結局自分のためにやってるなっていう。誰かのためにというけど、結局こういう音楽とか、僕らは自分が思ったことしか書けないので、最終的には自分のためにやってるんだと思う。
廣松:うん、そうですね。僕がいま話したのも自分のことですわ(笑)。もやって悩んでる人は自分なので。
高野:最終的にそういう人にも楽しんでもらえたらいいよねっていう結果論。それは結果そうなればいいなと思うけど、やっぱり自分たちのためにやっているっていうのが第一にあると思います。
──こういうすごく無意識にも感じられる音楽を天然じゃない人がやってるっていうところが新鮮で。
廣松:私たちも作りたいものを作った結果で、あんまり主義みたいなものを掲げながら曲を作れてないけど、いま持ってるジャンル、持ってるルーツみたいなものをとりあえず出して行ってる段階なのかなと思ってます。
倉橋:Seukolってどんなバンドなんですかって聞かれることがあって、すごい難しいんですね、説明が。サポートのドラムの方もよく人に聞かれて、いつも「返答に困る」って言ってるんですけど、確かに僕らもよく考えてみたらSeukolってどんなバンドなんだろう?っていうのは本当に難しいですね。でもそこが僕らのいいところで、それを言えるものにすると、その瞬間にすごいありふれたものになる可能性もあるので、そこは見失わずやりたいなと思ってます。
──ところでこのセカンドEPに「Long Take」ってタイトルをつけた理由は?
高野:正式な名前か使われ方かわかんないんですけど、ロングテイク=長回しっていうのがあるみたいで。ほんとの長回しだとワン・テイクとかなのかなと思うんですけど、1日の流れを追いかけるような意味を込めて、僕らなりの解釈として「Long Take」っていうタイトルにしました。
廣松:一応4曲で、真夜中からはじまり朝になり、昼になり夕方という感じで、曲のテーマがあるので。それを1日にして「Long Take」という感じです。
──なるほど。今後、どういうところで観て欲しいイメージがありますか?
高野:まあフジロックに限らずでも野外ではライヴしてみたいなっていうのは深い意味じゃなく憧れとしてはあって。あと、台湾でライヴしたいよねっていうのはあります。
廣松:台湾とかタイとか。
高野:意外にでも近いし現実的に行けるんじゃないかと思って。
倉橋:その国の人たちが僕らの音楽見たり聴いたりしたらどう思うんだろう?って単純に気になる。
高野:たまに台湾とかタイの人がインスタとかフォローしたり見つけてくれたりしてて。その国だからどうっていうわけじゃないですけど、できるだけいろんな人に見てもらったら、それだけ見られ方も変わって、僕らもいろんな形で存在できるのかなっていうのが楽しみなんです。その海外の人とかが聴いてくれてたりするのを知って、そう思うようになりましたね。
編集:梶野有希
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PROFILE:Seukol
2021年から本格的に始動した都内を中心に活動するバンド、Seukol(スコール)。メンバー共通のバックボーンとして、くるりやFishmansをはじめとする邦楽バンド、USインディーの影響を公言している。同年3月にリリースされた1st EPはオルタナティブなバンドサウンドと 儚い歌詞の世界観が表現されており、実際にくるりが自らのラジオ番組で楽曲を取り上げるなど、話題となった。1年間の活動を経てリリースされた、セカンドEP『Long Take』は4曲で1日の流れを表現したコンセプトEPとなっている。
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