行き着いたのが、「映像」の世界でした
──どのように新たなスタートを切っていきたいといったビジョンはすでにあるんですか?
佐藤 : 振り返ったら、曲を描いたり技術を磨いたりしながらも、ひたすらひとりで楽しんできた15年だったので、これから先の15年は、もっとjohannというバンドを知ってもらう為の期間にしたいなとは思っています。まあ、ここまで頑張ってきたんだし、頼むから俺らを知ってくれ!という、縋るような気持ちです(笑)。もちろん、すでにjohannを知ってくれている方々には本当に感謝していますし、その方達には更に楽しんでもらいたいです。
──切実な願いですね。
佐藤 : でも、いままで人生そのものを音楽に懸けてきたので、2018年~2019年頃は、あえて音楽から離れた生活を送っていたんです。ライブ本数も減らしたし、音源もリリースしなかったですし。メンバーが辞めたということもあったし、音楽だけで食っていくのは無理だということは自分のなかで結論づいていたので、遠回りでもいいから、音楽に関わる仕事を身につけていこうと考えたんです。そこで行き着いたのが、「映像」の世界でした。CMでも広告でも、多くが音楽と映像がセットになっているということに気付いて、「映像を作れるようになったら、自然と音楽の仕事も増えるのでは?」と考えたんです。なので、映像制作会社に3年勤めて、いまは、自分で映像会社を設立して活動しています。今回の15周年企画における様々な施策も、映像の世界に飛び込んだからこそ成し得たものだと思っています。
──遠回りとはいえ、バンド活動においてめちゃくちゃ強いスキルを手に入れたんですね。
佐藤 : MVも自分たちで撮れますしね。人の動きにしてもお金の動きにしても、全貌をしっかりと把握した上で動けるという点では、いままでとは大きく違います。大変ではありますけど、楽しいですよ。仕事も仕事のように思えないから、ストレスも全くないですし。なので、30代になってからがめちゃくちゃ楽しいです。ほんと、死にたくないですもん(笑)。
──ストレス社会と呼ばれるこの時代において、最高の生き方をしていますね。
佐藤 : 昔に比べると、こだわりもなくなりましたしね。音に関してもメンバーに関しても、いい感じに肩の力を抜けるようになったといいますか。例えば、練習で入るスタジオごとに「ここのスタジオなら、アンプの位置は絶対にここ!」っていう感じに頑なに指定していましたし。いま思えば、人格的に破綻していたんだと思います。だからメンバーが辞めていっちゃうんですよね……(笑)。
──……笑っていいのかどうなのか(笑)。
佐藤 : いや、もう全然笑ってください(笑)。でもその頃は、バンドに楽しさを求めていたわけでもなかったので、ただただストイックだったんですよね。そうしたなかで、深っちゃんと「このままじゃだめだよね」と話したりもしましたし。でも、考え方が変わったいちばんの要因は、会社を立ち上げたことですね。自分のことだけを考えていたら会社は回らないので、周りにいる人に対しての気遣いだったり、モチベーションを上げる為の工夫だったりをするようになる。そういう意識変化が、バンド活動にも大きく影響しているように思います。そもそも自分が勝手に始めたバンドに人を巻き込むんだから、そりゃ楽しんでもらえないと続かないよね、っていう。なので、そこからは皆に楽しんでもらいつつ、自分も変に気張らずに楽しんで音楽をやっていこう!というマインドになりました。
──いい変化ですね。
佐藤 : 諦めという意味ではなく、ただ「僕の自己満に付き合ってくれてありがとう!」という感謝がもたらした変化だと思います。
──その後、タイミング的にはコロナ禍にもなりましたけど、そこもポジティブに転換できたんですか?
佐藤 : そうですね。いまはライヴ以外の経験を培う時期なんだと割り切って、作曲の仕事や会社の基盤を強めるように動いていました。なので、無駄なく過ごせました。