あ、石風呂さん新曲出してるじゃん!」って
──さすがです(笑)。“深夜の街にて”は先ほど“原曲準拠ではない曲”として話題に上がりましたが、もっささんのポエトリーリーディングは新鮮ですし、その裏で鳴っているバンド・サウンドも聴きごたえがありますね。他の7曲とは雰囲気が違うので、アルバム全体のスパイスになっています。
もっさ:原曲がDTMっぽい感じだから、この5人で演奏しても全く同じようにはならないということは分かっていたんですよね。だからこそ、おもしろいものができそうだなと思ったのと、それこそアルバムのいいスパイスになりそうだなということで、今回入れることにしました。
朝日:元々生楽器では再現できない音がふんだんに入っていた曲だからこそ、今回バンドで演奏するにあたって“人間臭さ”をテーマにしてアレンジを作っていきました。曲が肉体を得た感じがするというか、演奏している人の姿が見えるのがいいですよね。
──ライヴで聴ける日も楽しみにしています。7曲目の“サカナぐらし”は、石風呂の“サカナ暮らし”、コンテンポラリーな生活の“さかな暮らし”に続く3バージョン目という認識でよろしいでしょうか?
朝日:はい。石風呂とコンテンポラリーな生活とネクライトーキー、3名義で発表している唯一の曲です。
──どういった経緯で今回収録することになったんですか?
朝日:この曲はいろいろありました。最初は藤田が収録に反対していたんですよ。
藤田:はい。私はこの曲をコンテンポラリーな生活の曲だと認識していたので、最初は入れたくないなあと思っていたんですよ。そこで朝日さんに、この曲はどういうものだと思っているのかを改めて問うたら、「これは石風呂の曲だと思っている」とのことだったので、「じゃあ入れてもいいと思う」と答えて。ただ、コンテンポラリーの生活の“さかな暮らし”と石風呂の“サカナ暮らし”はアレンジが全然違うので、「さらに違うアレンジで作ることが条件かな」という話もしました。
──結果的にネクライトーキー版はとてもドラマティックなアレンジになりましたね。曲が進むにつれて、熱量が上がっていくような展開にグッときました。
朝日:「言われてみれば確かに」と思われるかもしれないですけど、前半と後半で作り方が違うんですよ。前半はひとりで宅録で作ったんですけど、後半はロック・バンドらしいものにしたかったので、みんなでスタジオに入って、向かい合って音を鳴らしながら形にしていきました。ドラムも、エイトビートで力強く叩いてもらって。
藤田:私のなかでは行進曲っぽいイメージがあったものの、いざタケちゃんと合わせてみたら、お互いのイメージする行進曲が微妙にずれていて。なので、自衛隊の行進曲や吹奏楽を参考にして、イメージを合わせるために調整する必要があったんですが、上手く収めることができたし、ネクライトーキーの“サカナぐらし”としていいものを作ることができてよかったです。終盤の盛り上がりに関してはもう、気持ちで弾いていますね。
朝日:ギター・ソロもお気に入りなので、ぜひ聴いてください。
──朝日さんの内にあるものがかなりダイレクトに表現されている曲でもありますよね。だからこそ“唯一3名義でリリースしている曲”というのも合点がいく。
朝日:あ、俺のなかでは「そうなんだ、この曲なんだ」「不思議だなあ」という感覚なんですよね。この曲は、バンド活動に対する不安のようなものが付きまとっていた時代に書いたもので。バンドをやっているけど、どこかに向かって進んでいる感覚がなかったというか、日々は流れているけど、自分はこのバンドでなにをしたらいいのか分からないという時期に虚ろな状態で作った曲なので、こんなに長い付き合いになるとは思っていませんでした。それはそれで嬉しいんですけどね。
もっさ:この曲は確かに、パワーのある曲ですよね。私、石風呂楽曲としてこの曲をはじめて聴いた当時、「うわあ、ちょっと強いなあ」と思ったんですよ。私のなかにも似た感情はあるから、共感もするんですけど……だからこそ歌う時は、自分のことのように考えすぎないように意識しています。歌うのが結構大変でしたね。
──ネクライトーキーにはもっささんが作詞をしている曲もありますが、基本的には“朝日さんが書いた言葉をもっささんが歌う”という構造ですよね。朝日さんは、自分の内側から出てくるパーソナルな言葉をもっささんという他者に託すということを5年間続けてこられたわけですが、そこに対して抵抗はないんですか?
朝日:うーん……ないことはないですね。「これをもっさに歌ってもらうのか?」と思う瞬間はやっぱりあります。そこに対する回答はまだ出ていませんし、もしかしたら、続けていくなかでだんだん見えていくことなのかもしれないですね。
──なるほど。そして“サカナぐらし”から“だれかとぼくら”へと物語が繋がっていく流れが素晴らしかったです。“だれかとぼくら”は石風呂3年ぶりの新曲として昨年1月に投稿された曲でしたね。
タケイ:僕らは(朝日が)“だれかとぼくら”を投稿するのを全く知らなかったんですよ。上がっているのを見て、「あ、石風呂さん新曲出してるじゃん!」って。
中村:そのあと自分らのスタジオがあった時に「新曲出したんだね!」って話をしたよね。
タケイ:そうそう。「めっちゃいいよね」「(バンドでも)いますぐやろうよ!」と盛り上がった記憶があります。
──いいですね。5年一緒にバンドをやっているメンバーなのに、石風呂のコピバンを組んでいるファンと変わらないようなテンションなのが微笑ましい。
タケイ:しかもちょうど『FREAK』を作っていた時期だったので、「『FREAK』に入れたいな」という話も出たんですけど、最終的に入らず。それで今回の『MEMORIES2』の曲決めミーティングの時に、僕が「やろうよ!」と言ったらみんな同じ気持ちだったみたいで。
藤田:満場一致だったし、何なら曲決めミーティングの時に「この曲は絶対ラストだよね」というところまで話しましたね。
もっさ:この曲はキーボード・ソロとギター・ソロがあるんですけど、その裏で私もちょっとだけギターを頑張って弾いているから……聴いてね!
藤田:あはは。読者に直接伝えたね。
──振り返れば、ネクライトーキー結成の背景には、石風呂楽曲も含め、“自分たちがいいと思える音楽を埋もれさせたくない”、“しっかりと光を当てたい”というみなさんの強い意志がありましたよね。そこで最後に伺いたいのですが、この5年間の歩みはみなさんにとってどのようなものでしたか?
朝日:本当に、身に余るというか。夢みたいなことばかりでありがたいなあと思っています。どんなバンドにも等しくチャンスはありますけど、この世界って大きく運も絡んでくるじゃないですか。誰かに見つけてもらえて、こんなにも「好き」と言ってもらえるなんて……本当にありがとうという気持ちです。それ以外の言葉が見つからない。ジョジョ7部のラストみたいな感じですね。
一同:????
朝日:あ、伝わってない……?(笑)
藤田:拾えなくてすみません(笑)。
編集:梶野有希・稲垣志真
ネクライトーキーの愛あるセルフ・カヴァー集
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過去インタビュー
LIVE SCHEDULE
ネクライトーキー <ゴーゴーメモリーズ!2022夏>^
6/25(土)千葉 LOOK
6/30(木)岡山 YEBISU YA PRO
7/2(土)広島 セカンドクラッチ
7/3(日)香川 DIME
7/9(土)石川 AZ
7/10(日)長野 ALECX
7/15(金)北海道 ペニーレーン24
7/23(土)長崎 DRUM Be-7
7/24(日)福岡 DRUM Be-1
7/30(土)青森 Quarter
7/31(日)宮城 Darwin
8/4(木)大阪 BIG CAT
8/5(金)愛知 ボトムライン
8/18(木)東京 リキッドルーム
詳細:https://necrytalkie.jp/live.html
PROFILE : ネクライトーキー
2017年に朝日が中心となり、もっさ、藤田、カズマ・タケイにより結成。2019年3月に中村郁香が正式加入し現在の5人組体制に。一瞬でリスナーの耳をキャッチするもっさの歌声と、朝日の描くシニカルな歌詞世界、音楽愛に溢れた一筋縄ではいかないメロディーは中毒性満載で、バンドシーンに留まらず多方面で話題を呼んでいる。
■公式Twitter:https://twitter.com/Talkie_official
■公式HP:https://necrytalkie.jp/index.html