駆け出しインディーズ・バンドのリーダーって究極の奉仕活動だと思うんですよ
──今回満を持してフル・アルバムじゃないですか。バンドとして掲げた目標はありましたか?
日置:目標はいままでの方が逆にあって、今回はもうなかったって感じかもしれなくて。いままでは制作期間が短かかったり、次はこういうものを作ろうみたいな、ある程度明確な目標みたいなものがあったなかで作っていったんですよ。でも今回は制作期間が2年ぐらいあったから、そのなかで4人で集まって作っていったら、よりメンバーの関係性とかもフラットになった気がしますね。本当に楽しみながら作るじゃないですけど、今作はそういうのがテーマだったと思います。日常と音楽を作る時間を全く分けないみたいな感じで、普通に遊びの延長を作ってるっていう感じがテーマというか、自然とそういうモードだったかなと。
──そういうモードから生まれた10曲をアルバムタイトル『泡のような光たち』が象徴しているような。
日置:そうですね。タイトルがなにを意味するかっていうと僕も言葉で説明できるわけじゃ全くないんです。だけど音楽っていうものが自分の生活のなかでどういうものかなって考えたら、いまの演奏ってこの4人でしかやれなくて、それを4人で長い時間をかけて作れていること自体が、すごく儚いし尊いものだなってすごい思っていて。それをバンドが続けば続くほど身にしみて感じるというか、それぞれの生活が変わっていくなかで4人でこの音楽をどれぐらいできるかっていうこと、そういうことを考えていた部分もありました。そのなかで光じゃないですけど、4人でひとつのものを追い求めていくみたいなことが大きなテーマとしてはあったのかなとは思います。
──音楽を作ることが日常だっていうことが"Melt"みたいな少しダークな曲もあれば"Our Place"みたいなオーセンティックな曲もあるという多彩さにつながっているように感じました。
日置:あ、そうですか。
──バンドの状態が結実してるのかなと。"Our Place"で終わるのはいいですね。
日置:(笑)。そうですね。この曲はいままでの自分たちだったら確実に「や、ナシでしょ」みたいになってるところなんですけど、それこそ荒木さんにお願いした曲がもう返ってきていて、なんとなくアルバムの曲が出揃ってきたなかで作った曲だったんで、そういう状態ではなかったらアルバムに入れないっていう選択になったかもしれないですね。でも別に自分たち4人で演奏してるしなにやってもいいみたいな。必要のないこだわりをとっていた先にめちゃくちゃシンプルな自分の状態を受け入れれるようになった感じというか。普通にみんな賛同して「じゃあこの曲も録音しよう」って感じでした。

──いまバンドをやるっていうのはどういうおもしろさがあるんでしょう。荒木さんはどう感じます?
荒木:まあどっかに所属していればお給料が出たり、作曲をすればちゃんと作曲者にお金が入ったりしますけど、駆け出しのインディーズ・バンドのリーダーって究極の奉仕活動だと思うんですよ。特にリーダーとか曲作ってる人。両方やってる人もしばしばいる。究極の奉仕活動だなって。インディー・バンドのリーダーというのは人生の経験上、人間的にこんなに成長させられる体験はない。
日置:ははは(笑)。
荒木:頑張れば頑張るほどお金は減っていくし、やっぱ売れないうちはなめられるから、嫌なこと言ってくる人だっているんです。こんなに成長させられるもの、恋愛とバンドのリーダーぐらいかなっていう。
日置:(笑)。
荒木:SNSとかで心の無い発言とか人を簡単に傷つけるような、不毛なエネルギーを持て余している人、そういう人は是非バンドをやってみるべきだと思う(笑)。 人を傷つけている同じ言葉を使って、人を喜ばせる事が出来るかもしれない。余計死にたくもなるかもしれない。
日置:(笑)。
荒木:だからね、いまこそ人前でお金をもらって失敗できる、まだ許されると思ってるのは街のライヴハウスっていう。失敗した経験がいまの人は圧倒的に少ないから、喋りや文章を書くことにウエイトいっちゃってる感じがして。もうどんどん失敗すればいい。でもこんな夢のあることもないんで。そんなにいうほどお金もかかんないわりに、チャンスだけは結構無限にあるから。めちゃくちゃにお金を稼げるかもしれないし、稼いだとしても傷つける人が圧倒的に少ない、バンドって。すごいいいことだ思う。と、僕はもういまの人にはバンドをはじめることはすごくお勧めです。おじさんにもおすすめするし。
日置:(笑)。
荒木:なんかイライラしてしょうがない人はバンドをやる(笑)。
──原点でもあり究極ですね。日置さんはどうですか? いまの荒木さんの発言に共感する部分があるのでは?
日置:そうですね(笑)。まあでもバンドでどうなりたいとか、どういう風になるってことも、もともとバンドはじめたときは考えていましたけど、バンドを続けていくなかでは、バンドをやれてるってこと自体が、なんかヤバ過ぎるというか。週に一回集まって、みんなで曲を作って演奏するっていう。それだけでバンドってやっぱすごいなって思って(笑)。それこそひとりで制作したり、自分でソロのアルバムとか作ったこともあったので、そういうのも経て、改めてやっぱバンドっておもしろいです。特に僕らはセッションで作ることが多いんで、自分のアイディアだけじゃなくてほかのアイディアが入って4人でひとつのものを作るぞっていう意識もあって。そういう少年漫画みたいなおもしろさがあるんだなと思っています。
──最後に日置さんがなにかこれから荒木さんとやりたいことがあるとすれば?
日置:やりたいこと…。
荒木:対バンしましょう。
日置:対バン!! したいですね。それはそうですね。10年前に対バンさせてもらってそれきりなので、確かに一緒にステージ作ったり、そういうフィジカルなことはやりたいですね。今回の制作は荒木さんとリモートでやり取りすることが多かったんですけど、今日こうやってはじめて直接会って話すこともできたので、もうちょっとフィジカルな関わり方ができたら。それこそ対バンだったり、と思ってます。はい。

編集:梶野有希
待望のファースト・フル・アルバムがついに完成!
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ライヴ情報
日付:2024年2月17日(日) 場所:東京 新代田 FEVER
w/ エイプリルブルー / dansa med dig / D.B.Inches
“泡のような光たち” Release Tour
日付:2024年3月10日(土)
時間:OPEN 17:00 START 17:30
場所:京都GROWLY
出演:EASTOKLAB / MoritaSaki in the pool / ズカイ / 水平線
チケット:https://eastoklab.com/live/awakyoto
日付:2024年3月19日(火)
時間:OPEN 18:30 START 19:00
場所:東京 Shimokitazawa ERA
出演:EASTOKLAB / polly / THURSDAY’S YOUTH
チケット:https://eastoklab.com/live/awatokyo
日付:2024年3月23日(土)
時間:OPEN 18:00 START 18:30
場所:名古屋 stiffslack
出演:EASTOKLAB ONE MAN SHOW
VJ : Yumi Sueishi
チケット:https://eastoklab.com/live/awanagoya/
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PROFILE:EASTOKLAB
名古屋を拠点に活動。バンド・サウンドとエレクトロ_ミュージックを同列にミックスしたフォーピースバンド。美しいメロディーと、国境やジャンルを横断して鳴らされる独創的なサウンド・スケープ。ライヴでは多数の機材をコントロールしつつ人力ならではのアプローチを追求している。
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